《高校生男子による怪異探訪》1.旅行明け

新章、《流言飛語》始まります。

今章はストレス展開が含まれますのでご注意ください。

またお付き合い頂けたら幸いです。

十一月ラストの木曜から修學旅行に行って來た。二泊三日して土曜日には帰還するというあまり忙しない旅行である。

行き先は日本南方に位置する南國な県。今の時期だと最盛期は過ぎててそこそこゆったりと寛げるのではと樹本がガイドブック片手にはしゃいでいたのは記憶に新しい。

飛行機なんていうまず乗ったこともない乗り乗って海越えて、そして十一月も終わるのにまだまだ半袖が通用する暑い気候の下に到著。飛行機から降り立ってすぐ南國とはこんなにも暖かいものかとかっちりと著込んだ制服(冬服)でした。

地元じゃそろそろ雪もちらつき出すというのに、緯度がし違うだけでこうも気候にも変化が生まれるのが不思議だった。

旅行中はクラス単位での行以外ではずっといつもの男四人組でいた。樹本、嵩原の薀蓄を檜山と共に流し聞きながら観名所巡るのは正直楽しかった。

流石に海は時期的に厳しいと遠目で眺める程度に終わったが、地元は海からも離れた山間にどんと鎮座しているんだ、遠目でも綺麗なエメラルドグリーン見れただけでもなんか満足した。

『修學』と付いているからには學習面での果や得るものもあって然るべしなのかもしれないが、まぁ、修學旅行が校外學習染みたものになるのは進學校とか余程學びに力れてる學校以外では稀だろう。大概は単純に學生生活中の良い思いで作りといったじ。クラスの野郎共とも夜中騒いだりなんだりと一般的な學生の旅行を満喫し、そして広大な碧い海に別れを告げて先週戻ってきた所である。

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日曜挾んで月曜。三日ほど留守にしていた學校へと旅行明けのだるい引き摺って登校となる。もう十一月も終わりだ、こっちはしっかりコート羽織ってないと寒くてそこらも歩けない。旅行との溫度差がえぐいなぁ。

南國の快適だった気候思い出してのそのそ乗り込んだ教室では、まだまだ旅行記分抜けてないクラスの奴らがわいわいと思い出語りに忙しくしていた。

「あ、おはよう、永野」

自席に向かえば溌剌とした樹本が挨拶をしてくる。旅行明けだというのに気力の充実してる様を見るに付け、こいつも隨分楽しんでいたなと南國の島での記憶が頭に過ぎった。

「おはよう。機嫌良さそうだな、お前」

「そう? まぁ、いつかは行きたいなって思っていた旅先だしね。自由時間もそこそこあって結構いろんな所を回れたから満足出來たかな。これで海にもれたら良かったんだけどね」

そういって軽く苦笑する。今回の修學旅行で新たに分かったことがあるんだが、どうやら樹本、結構な旅好きであるらしい。ガイドブックなどもよくよく買い込んで細かな見學ルートを事前に構築しておくなどと意気込みが半端なかった。

見た目はインドア派な雰囲気纏っといて、旅行に関しては意外にもアグレッシブな行見せられて驚いたというか楽出來たというか。そういや、夏休みには家族で旅行行くとか前に言ってたっけ? ひょっとして家族で旅好きなのかもしれないな。

「もうちょい時期早めじゃないと流石に無理って話だったな」

「せめて九月、ううん、十月中でもギリギリ大丈夫だったんだけどね。行事も重なってたし難しいよね。學校としても文化祭は無礙にはしたくなかったかな?」

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「そこら辺の思は俺には分からん」

敢えてシーズンは外して旅行計畫組むとかいう話もあるって何かで聞いたことあるからな。

マンモス校とは言わないまでも、昨今の生徒數減に悩む諸學校と比べれば我が校は人は多い方だろうし。実際に百人越えの団が三つも四つも一つの観地に集合とか人口度高まり過ぎて通とかに支障出そう。

「おはよう。二人も修學旅行の思い出振り返ってるのかな?」

「「嵩原」」

橫合いから朝を意識したような爽やかな聲で以て嵩原が割り込んできた。こいつもご機嫌というかリフレッシュしたじ?がある。

「おはよう。まぁ、一昨日帰って來たばかりだしね。嵩原だって楽しめたんじゃないの?」

「そこそこ? 本當ならの子と一緒に買いとか水族館とか巡りたかったんだけどね。ずっと男との団強いられてその點がマイナスかな?」

「あー……。いや、班行なんて當たり前じゃない。一応學校行事の一つだよ? 個人の旅行じゃないんだけど?」

一瞬納得した様子見せ掛けた樹本が真顔になって否定してる。

旅行、場所は太も眩しい南國の島。否が応でも気分の上がるロケーションとなれば、それは男ももいろいろ弾けるというもので。

旅行中それはもう我が班は子からの熱烈ないに遭うこと遭うこと。より正確に言えば俺以外の野郎が、だが。文化祭に引き続き修學旅行でも思い出作ろうと躍起になる子は遠慮も恥もかなぐり捨てるものなのか、何かに付けて「一緒に行しない?」というおいをうちの野郎共はけまくった。

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旅行の最中のちょっとした男流、班での行を強いられていたとしても班と班が合流すること自はそう目くじらを立てるものでもないはずなのだが。

嵩原始めとするこのモテ三人の集客力は伊達ではない。二つの班が合しても十人以下のグループにしかならないが、それが三つ四つと集まれば立派な団だ。當然目立つ。そして場合に寄れば周囲への邪魔にもなる。

そうなると學校側も傍観はしていられなかったんだろうな。「公共の場に相応しい節度ある行を取るように」との名目で二班以上の合流は止された。もちろんクラス単位とか最初から団予定している時は別。自由に観楽しめと放流される時ばかり班での行を強制されてしまったのだった。

そのために一番思い出作りに適してる自由行は専ら班単位。子はぐぬぬと唸ることしか出來なかった訳で。

「建前は分かるんだけどさ。でも男だけで水族館もなんじゃない? ああいうのは男で楽しむものだと俺は思うんだよね」

「言いたいことはなんとなく分かるが……。元々お前が八方人かましたのが問題じゃないか? 男らしく斷るか、きちんと誰かを選んどいたら教師も飛んできて旅のしおりに『不純異止』とか書かれずに済んだんじゃ?」

「それ冗談でもなんでもないのが笑えないよね」

「學校から咎められるような後ろ暗いことは何もしてません。の子からのい斷るとか男が廃る行為だし、誰か選んだりしたらそれこそ選ばれなかった子が可哀相でしょ。俺は皆と楽しい思い出を作りたかっただけだよ」

「それが問題を大きくしたんだけどねー……」

「フェミニストなのか単なる多なのか、トランプの表と裏みたいな発言だな」

一回刺されないとこいつに自重という単語はインストールされないのかもしれない。掛けるだけ掛けて結局思い通りに行かなかった子の鬱憤が教師と、そして何故か俺へと向けられたのだから本當に反省してしい所なのに。

「自分たちは我慢を強いられてなんであいつは一緒に回れるの?」とか斜め上な嫉妬を旅行中に直接・間接的にぶつけられた俺のにもなってくれ。なんで俺が文句言われなきゃならんのか。俺元々班員なのに。男なのに。

ただでさえ朝日関連での男からのやっかみが再燃してるこの微妙な時に、子からも嫉妬向けられるとかマジ勘弁。男共は百歩譲って気持ちは分かるとなっても、流石に子からの嫉妬は理不盡以外の何者でもない。

「うはー! 間に合ったー!」

「あ、檜山が來た」

「それじゃもうそろそろ教師も來るね。席に戻っとこ」

その辺りの不満をどうにか嵩原にも理解してもらおうと、愚癡吐こうとしたそこで騒々しく駆け込んできた檜山によって遮られてしまった。ちょ、タイミング。果たして嵩原の読みは素晴らしい度で當たり、十秒後には出席簿持った擔任が教室にってきた。これじゃあ、あと追って文句も言えない。

嵩原が多なのもたらすのも、それは個人の趣味嗜好なのだから好きにすればいいとは思うが、その余波に他人を巻き込むのは話が違うだろうて。そこら辺は一度ちゃんと話し合うべきなのかもしれんな。まぁ、付き合いも一年以上となった今言い出すのも今更はあるけど。

旅行の名殘で浮ついた空気が教室処か學年全に漂っていたとしても、授業は淡々と進み現在時刻晝。ガタガタ機かしてグループ作って晝食にる。

もう秋も終わって冬が始まろうとしている。空が晴れていようとも空気自が冷たいので外で食べるのはもう限界だな。

「こっちは寒いねー」

「だな。まぁ、毎年のことだけど一回南國挾んだのが響いてるわ」

「あっちは暖かかったなー」

プルルとを震わせた樹本に同意を返す。本日の戦利品に早速と齧り付こうとした檜山も頷いた。

そろそろ十二月、暖房もってない教室では凍えるとまでは行かないまでも足先なんかは冷える程度には寒さもじる。

これからガンガンと気溫が下がっていくことを思えば、青い海広がる南國の島が非常にしくも思えた。

「また修學旅行の話してる」

呆れたように嵩原はツッコむ。同じ話題が続いて飽きた、というよりはオウムみたいに繰り返す様を馬鹿にしてるじだ。

「楽しかったのは分かるけど、朝から同じ話題の繰り返しで飽きない?」

「えー、俺全然修學旅行で語れるぞ? 一日目誰が最後まで起きてたとか、お土産のタルト?くっそうまかったとか」

「あー、買ってその場で食べてたもんね。お土産とはってまさか旅先で言葉の定義考えるとは思わなかったよ」

「最後まで誰が起きてたとか、枕投げに強制的に參加させて同室者全員薙ぎ倒して優勝したお前以外に誰がいるのかと」

檜山の発言に直ぐ様言い返した。まぁ、文句やツッコミも含めるのなら確かにまだまだ語れそうではあるな。

二泊三日と決して長いとは言えない旅行だったにも拘わらず、こうもポンポンと話に花が咲くのはそれだけ能的にき回った証拠か。旅好きと力馬鹿と自重知らずの三人に引っ張り回された結果とも言う。

「楽しかったな!」

「まぁ、それには概ね同意、かな? 嵩原は楽しい思い出とかないの? 旅行振り返るのだって、結局は楽しい思い出があるから共有したいって話すものでしょ」

の子分が足りない潤いに欠ける旅行でした」

「お前は結局それなのな」

遠く地元を離れても全くブレない嵩原の好きよ。その揺るがなさは見習い……、たくはないな、うん。

「あ。そうだ。の子で思い出したんだけど」

ぐるりと嵩原の顔がこっち向く。

「真人、二岡さんとはまだ冷戦中なの?」

「は?」

全くとそれまでの流れに沿わない質問が突然飛び出してきて間の抜けた聲が溢れ出た。いきなりなんだこいつ。

「お? なんだなんだ?」

「なんでいきなり二岡さん?」

二人も突然の話題の変化に著いて行けてない。聞き返す聲が小さくなるのは當人が教室にいるからか。釣られるように四人顔を近付けてこそこそと話し合う。

「突然なんだよ」

「いやね、旅行中何度か二岡さんたちとも顔合わせることもあったでしょ? その時どうにもギクシャクしてるというか、二人共あまり目を合わさないなーと不思議に思ってはいたんだよね。だからまだ仲直りしてないのかなって」

「え、そうだった? 普通に話はしていたと思う、ような」

確信持って話す嵩原と比べて樹本ははてと懐疑的だ。表面は必死に取り繕いながらも、どうか嵩原の勘違いという形に収まってくれと心の中では冷や汗だらだら流して祈る。

二岡とのあれやこれやは誰にも明かしていない。告白云々も、鏡に宿っていた悪魔とのやり取りもそう口外出來るものじゃないからだ。

悪魔に関しては手助けしてもらったの上で、そして朝日のためにも解決したことは話した方がいいかなーと思ったが結局言い出せてない。上手く真相をぼかして話せる気がしなかったためだ。知力高い三人を納得させられるだけの作り話が思い浮かばなかった。

旅行前に先輩が悪魔を封印する方法を多數実施してくれたので、この方法のどれかが効果あって悪魔の働きを阻害出來たんだ!という結論に持って行くことを畫策中である。

無駄働きさせていること、そして真実を黙っていることに罪悪じないでもないが、でもこれが俺の中では一番ましな誤魔化し方なのは確かだ。下手に言い訳なんかして、そこからボロでも見付けられれば諸々を明かさなければいけなくなる虞もある。だったらここは賢く沈黙を保った方が良いに違いない。

こそっと、お禮代わりだと旅行中奢ったりお土産用意して己の心の平穏を保とうとはしたりしたけども。

まさか嵩原が二岡とのやり取りに気付いて、そして言及までしてくるとは思いもしなかった。あんまり深く突いてきたりはしないでしいのが正直な所だ。

「永野」

追及してくる気満々の嵩原にどう乗り切ろうと頭ん中ぐるぐるさせてたら檜山に呼ばれた。

なんだと目を向けたら笑顔の欠片だって乗ってない真剣な表がこっちを見ている。

「二岡さんの話、ちゃんと聞いたか?」

茶化しも浮ついた気配もさっぱりとじられない聲で訊ねられる。なんでそこまで真面目なトーンなんだと違和じて、それで檜山が気にしていたことも思い出した。

「……おう。一応、な」

誤魔化した方がいいかなと、一瞬頭に過ぎったりもしたが正直に明かしておく。果たして正解だったか、檜山は答え聞くなり安心した様子でニッコリと笑った。

「そっか。なら大丈夫だな」

「……え。今のやり取りで何が分かったの?」

「さぁ? 亨なりのなんじゃない?」

一人満足そうな檜山と違って二人は訝しげにひそひそしてる。

まぁ當然か。俺も檜山が何に納得してるのか分かってないからな。

「えっと、檜山的には問題ない?」

「ないだろ。ちゃんと二岡さんが言いたかったことは聞いたんだろ? なら問題なし」

「その判斷が理解出來ないんだけど。現実、ぎこちなくやり合ってるの俺見ちゃったし」

「でも大丈夫だって。多分。そのまた元に戻ると思うぞ?」

「うーん。なんでそう言い切れるかなぁ。やっぱり納得がいかない」

自信満々言い切る檜山に嵩原も困げだ。拠も何も示してないから仕方ない。檜山だったら「勘!」の一言で済まされそうではあるが。

「お話聞いたっていうなら仲直りはしたってこと? だったら多ぎこちなくなるのも仕方ないんじゃない? 直ぐに元の関係に戻れるかというとそれは人それぞれだろうし」

「うーん、まぁ、それもそうなんだけど……。何かありそうな気配がプンプンしてるんだよなぁ」

樹本の仲介もあってどうにか俺への追及は治まりそうではある。嵩原は納得いかないようで不満ありありな視線なんて向けてはきているが、俺だって気軽な気持ちで口噤もうと思った訳じゃない。これは頑張って墓まで、なくとも悪魔のほとぼりが冷めるまでは絶対に明かさない所存だ。どうしても話さないといけないとなるなら話は別だけども。

まぁ、そんな事態は早々に起こることもないだろうが。

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