《高校生男子による怪異探訪》2.帰還報告

気もそぞろな一日を終えて放課後、俺たちはオカ研へと足を運んだ。用件はお土産渡しだ。一応は部員であるのでお土産を先輩に渡すという樹本に便乗した形だな。

「やぁ、久しぶりだね、皆」

「お久しぶりです會長」

勝手知ったるオカ研部室にどやどや上がり込んで各々挨拶をわす。

思えば部員でもないのによくよくここにも顔出してるよな。前なんかは自分から近付くことだって全力で避けていたのに、隨分先輩への印象だって変わったものだ。

「これ、お土産です。どうぞけ取ってください」

「ああ。気を遣わせてしまって悪いね。有り難く頂くよ」

持ってきてた土産を樹本は早速と渡す。先輩は嬉しそうにそれをけ取るが、俺もここに乗っかっておくべきだろう。

「先輩、俺からもどうぞ。お世話になってますので」

「え? 永野君もかい? 言うほど私はそこまで手助けもしていないと思うが……」

「いえ、先輩には相談に乗ってもらったり様々な協力だってしてもらってますから。隨分お世話になってますから」

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俺もずずいと買ってきていた土産を差し出した。

流石に俺からともなればもらう理由も弱いか、戸う先輩を押し切ってどうにかけ取ってもらう。俺としてはこれは己の罪悪しでも弱めるための自己満足の賄賂なのでけ取ってもらわないと困るんだ。

々渋られたもののまぁ折角の好意ならばとどうにか先輩にけ取ってもらえた。良かった。俺の最大のミッション、無事クリアである。

「そこまで気にしなくてもいいんだがね」

「僕たちも面倒掛けたからって旅先で奢ってもらったりしたので、會長も気軽にけ取ったらいいと思いますよ?」

「……うーん、俺も先輩に何か買ってきたら良かったかなぁ?」

「亨がそんな気を回すなんて青天の霹靂なんだけど」

俺の行議が醸されたりしたけども、特に俺自は怪しまれることもなく話は別に流れていった。セーフである。

嵩原辺りなら俺の行を訝しんだりしそうだと予想もしていたが杞憂に終わったな。

一先ずこちらの用件は無事済んだということであとは世間話に花が咲く。先輩相手にも修學旅行の想など話すことになり、地元では見ることの出來ない真っ青なビーチには先輩も強い共を示してくれた。先輩も旅行先は一緒だったそうだ。

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「こちらが陸側だから旅先は海を選んでいるのかもしれないな」

「やっぱりそういう配慮はあるんでしょうか? でも時期が遅くて海にはれなかったんですけどね」

「それは仕方ない面もある。シーズンに合わせれば下手をすれば臺風に見舞われることもあるらしいからな。學校としては恙なく旅行を終えるためにも時期の選定は慎重に行ってはいるだろう。かく言う私の時も、時期は外れていたしな」

混雑の他に天候も考慮されたのか。臺風直撃して旅行臺無しになるのも嫌だけど、それで帰れなくなったらそれこそ死活問題だもんな。

長く滯在出來る!と喜ぶ気持ちはさらさらない。なんせ留まるには滯在費というものが掛かるからな。突発的な數百名規模の旅費の捻出とかまず以て実現不可だろ。

「話を聞くに特にトラブルの類もなかったのかな?」

「はい。天候にも恵まれて旅行中はずっと晴天でしたよ」

「それ! 本當晴れてたよな。空も海もめっさ青くてした。こっちと違って半袖が丁度いいくらいだったし」

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「私の時も天候は良かったよ。向こうは暑いとは言ってもカラッとした気候で過ごし易かったんじゃないかな?」

「うん! 全然じめってしなかった! ずっと太出てたし!」

「ふふ。私の時は雨こそ振らなかったけど天候が曇ることもあったんだがね。君たちの中には晴れ人間がいたのか、あるいは日頃の行いが良かったのかな?」

クスクス笑いながら先輩はそう茶化す。晴れ人間がいるかは知らんけど日頃の行い云々は決して恵みを得られるような善良な人間はいないと思う。

人のことをとやかくとは言えないけど、ここにも関係で節ない奴はいるんだし。

「まぁ、こっちはこっちで忠告通りに羽目を外さずにいましたからね。だから特には問題も起こらなかったのかも?」

話振った訳でもないけど嵩原が含み笑いかましながら意味深になんか返した。

「忠告?」

「……あ」

ハテナ飛ばしてる俺の橫で樹本が小さく聲らしてからすっと顔から表をなくす。

この顔する時は大概れたくない何かにれた時だってもう察しもするけど、樹本は一何に気付いたんだろうか。

「ふむ。含んだ言いをするね? 誰かに修學旅行に関する諸注意でもされたかな?」

「ええ。そうなんですよ。ま、尤もその誰かというのは生きた人間ではないですけど」

ええ? 突然何言い出すこいつと驚くと同時に「あ!」と檜山が聲を上げた。なんだと視線やった先で嬉しそうにぶ。

「あれか! 狐からの忠告か!」

狐、その一言で俺も思い出した。そうだわ、そんな學年主任的な自稱狐と対話なんてしましたねぇ。

「うむ? 狐?」

「ほら先輩、コックリさん! 俺らが最初にやった時に狐來たって言ったでしょ! そん時『修學旅行は羽目を外さないように』って注意されたんだ!」

「ほう。……いや、確かそんな話も聞いた覚えがあるね」

テンション上げて説明する檜山に先輩は興味深そうに相槌を打つ。

すっかり忘れてたけど、そんなやり取りもあの時にはあったよな。嵩原が素直にけ止めたとは思わないけど、それでも羽目ははず、どのラインから外したってなるんだろう?

「なるほど。コックリさんの呪いが効いたと? そう思うのかい、嵩原君?」

「半信半疑、というのが正直な所ですね。実際、コックリさんの忠告等はどの程度當たるものなのでしょうか? 何せコックリさんなんてその時初めてれたものですから」

自分で話振っといて懐疑的な目を向けてるってなんなの? まぁ、嵩原の言い分も分からないではないけど。

結局コックリさんってなんだったんだろうか。降霊儀式とか言われてるけど、冷靜になればなんで幽霊が予言の真似事出來るんだろう。死んだら超能力でも開花するのか?

「うむ。まぁ、コックリさんは科學的な解析が進められていることからも、その神的作用に関しては眉唾と稱されるのが現在では主流だね。生の中には神通力という、本來は神仏が持つとする不可思議な力を宿すものもいるとはされている。質問者に予期と思える答えを返すのも、この神通力の働きではないかと一般には言われているね」

「なるほど。予言なのか、あるいはそう仕向けているのかは分かりませんけど、だとしたらコックリさんにて呼び出されるモノは一筋縄ではいかないものであるとも言えますよね。俺たちの時に現れたのも、會長さんをえた際に出て來たものも、どちらも最後には異常現象を殘していきましたけどあれも神通力の力なんですかね?」

「十円玉に関してはその可能は高いと言わざるを得ないだろう。現にあのような現象を引き起こすには……」

互いに乗りに乗ってしまったようで急遽オカルトオタクによる意見換會が発となった。

何もこのタイミングで開催しなくともと思うが、思い返すと直ぐに『鏡』の怪談に掛かり切りになったし、そのあとも修學旅行が挾まれたりとのんびり語る暇もなかったか。

なんでいきなりコックリさんの話題振ってきたのかと嵩原を訝しんだりもしたが、こいつ、先輩と協議し合うタイミングを計っていたりしたか、実は。

よくもまぁそこまで執著すると呆れが出るが、しかし実際に起こったことを思えばそれも無理もないかなと言える。

俺たちの時のポルターガイストに先輩が參加してのあの最後。どちらも理的な説明を行うには難儀しそうな異常事態であった。本當にコックリさんは理的現象に収まるものであったのか? 疑問を抱くには充分な出來事だった訳だ。

十円玉の方は、今思えばひょっとして悪魔の介があったのではと思える。自分に辿り著かないようにか、あるいは探られるのを嫌ってああも派手なことをしたんじゃないのか。あの愉快犯染みたの悪さから鑑みてもそう外れていないんじゃないか? 俺たちを怖がらせる意図もあったかもしれない。

対して、俺たちだけでのコックリさんは。

結局あの時にあの場にいた奴はなんだったんだろうか。直前までいた『狐』とは違うものだよな? 「みつけた」なんて意味深な発言かましてくれたけど、あれはつまりはどうしたかったのか。俺たちを教室に閉じ込めてまで何を訴えようとしていたんだか。

ああ、そういえば最後に何か言い掛けていたような……。

「あー、もう考察はあとにして、二人共! 今日は怪奇現象解析のために來たんじゃないんだから!」

思考に耽ってれば樹本が議論し合う二人にとうとう焦れてしまったらしい。うがーっと聲を上げて白熱する二人へと待ったを掛けた。

樹本としては忘れたい出來事だろうしな。自分の知らない所で考察を深められるのはいいとしても、目の前で當時のこと思い出させられるような真似はされたくないか。

「折角乗ってきた所なのに……」

樹本君、君も我がオカルト研究同好會の部員であるならば現実となった事象を理、科學、神的側面からきちんと考察しなければならないよ。部室でのコックリさんで用いたあの用紙、黒く汚れた部分を鑑定してみたのだがね、どうやら黒い部分は激しく劣化した狀態にあってだね、たかが三十分程度で何故ああも急激な変化が起こったのかこれは明らかにすべき謎」

「だから止めてくださいって! はい振り返りは終了ー! あとで僕らと関係ない所で二人で好きなだけ語り合ってください!」

「唯一の部員がそれでいいのかなー? 職務放棄じゃないのかなー?」

嵩原、無意味に煽るなって。樹本怒らせて盛大にキレられた過去を忘れたのか?

青筋浮かべて目を眇めてる樹本の橫から檜山が「はいっ」と空気読まずに元気良く手を挙げた。

「コックリさんで思い出したけど、悪魔の方はどうなってますか! 先輩!」

「ああ。今の所は特に変化はないね。鏡は依然沈黙したままで朝日さんのにも異常などは起こってないよ」

「そうですか。學校行事とは言っても問題を放置して僕らだけここを離れるのは気も重かったですし、何もなくて良かったです」

「異常の片棒を擔いでるはずの真人が離れてるんだから、そもそも何か起こるはずもないんだけどね」

ほっと安堵する樹本に対して嵩原の言い草は々癇に障るぞ。その言い方ではまるで俺が原因の一部であるかのように聞こえる。

まぁ、事は解決したのに黙ってる時點で不誠実ではあるだろうけど。

「まだ経過観察の必要はあるだろうが、それでもぱたりと二人の偶然も起こらなくなった所を見るに悪魔封じの効力はあったのではと思えるね。油斷はすべきではないが、それでもしは解決への目処も立てたのではないかな? 無論、これからも鏡の警戒は続けていくから安心してしい」

「良かったなー。これなら二人が怪我をすることもないかな?」

頼もしく言って退ける先輩に、心からこちらの無事を喜んでくれる檜山に罪悪ががが。

なんとか神妙な態度裝って返事はしたけども、これ俺はずっとに出來るのかね? ポーカーフェイスの見せ処であると同時に良心の呵責との耐久勝負な気がしてきたわ。

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