《高校生男子による怪異探訪》7.表出した悪意

噂話に耽っているんだろう、靜かなざわめきはここ屋上にまで微かにそして余震のような空気の震えを伴って伝わる。

本日は良い天気だ。雲に隠されることもなく青い空の只中を陣取る太が燦々と頭上から暖かい日差しを注いでいた。

もう十二月、外で駄弁るのも寒さがに染み過ぎて遠慮したい暦であるが、おかげで想像していたよりかはまだマシな環境で寒さに凍えずに済んだことは良かったと思う。

寒風吹けばやはり誤魔化しようがないけれども、それでも神的にはまだ外の方が暖かさをじられた。

「……なんだったんだろうね。あの騒ぎ」

「原因はわざわざ口にする必要もなくない? いやー、凄い騒ぎになったもんだよね」

「最後は皆何言ってるか分かんないくらい好き勝手んでたな。そんなに永野のことが許せなかったのか?」

育座りで膝抱える俺の隣で三人が思い出したくもない騒について語ってる。

分かってる。事の原因は俺だ。一応こいつらも噂の中には登場はしてたけど、騒ぎになる要因となったのは俺でそして教室を飛び出す結果を招いたのも俺だ。風を防げる屋から屋外へと移しなければならない理由を作った當人なんだから、直ぐにでも現実と向き合って対策練らねばならないのも分かってはいるんだ。

でもあとちょっと。ほんのし休憩させて。もうここまで來るだけでも疲れたから。神ガリガリ削られたから。

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メンタルポイント回復するだけの時間を々くれい。

やむを得ず教室を飛び出し、しかしどこに向かえばいいかと宛てがあるはずもない。四人全員、クラスメートの過激な反応には困を隠せなかったし、這々ので抜け出してきただけなんだからそりゃ次への行指標だって浮かんでる訳がない。

とりあえず中庭辺りにでも避難しとくか?とそんな意見も出された中、俺は自に向けられる刺すような視線をまた自覚的に捉えざるを得なかった。

見られてる。そっと周囲を窺えば、いるわいるわこちらを見つめる生徒たちの數々。晝休み、そしてあれだけ騒いでいたらそりゃ同階の生徒たちは出刃亀発癥して俺らのクラスを覗きにも行くわな。新たな噂の手機會とでも思ったのかもしれない。そんなハイエナ共の前にノコノコと俺たちは現れ出た訳で。

そしてその場で俺の噂がとっくに周知されてしまったことも理解した。向けられる敵意の籠もった刺すような視線は噂を聞いた何よりの証拠で、そんな視線を切るために教室を出たというのに逃げた先でも己の事実無の悪評が流れていると突き付けられたらそれはもう心も折れるというものだ。

こりゃ中庭に行きでもしたらそれこそ針の筵にしかならないと、気を遣った三人の判斷により俺たちは屋上にと避難先を変えたのであった。

の経緯はこんなものだ。ここまでの行程を思い出してちょっとは頭の中も整理出來たと思う。まぁ思考が落ち著きを取り戻したとしても気分は一向に上向いたりはしないが。

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「えーと、と、とりあえず元気出して永野! 僕らは君が噂通りに下劣な理由で僕らに近付いたんじゃないってことは理解してるから!」

「そうそう! 永野は友だちだもんな! とか関係なく仲いいんだ!」

「仲いいかは別にしても実際斡旋なんか頼まれてないんだから噂は噓だってのは分かるよね」

しょんぼり肩落としていたらめられた。あんな噂、虛偽以外の何者でもないが実際にああも糾弾されるとめっちゃ凹む。こいつらだけでも噂を鵜呑みにしないでくれて本當救われる思いだよ。まぁ當たり前と言えば當たり前なんだけどな。

「うぅ……。お前らだけでも冷靜で正直助かった」

「うわぁ、すんごい弱ってる。でも當然だよね……。皆なんだってあんな簡単に噂なんて信じ込んじゃうんだろう。他のクラスの人たちならまだ噂だけで判斷するのは分からないでもないけど、同じクラスなら普段の僕らのやり取りだって知ってるだろうに。簡単に信じ過ぎだよね?」

「だなぁ。それになんだっけ、永野が俺たち利用するために近付いた?だっけ。俺永野と仲良くなるために追い掛けた記憶はあっても永野から寄ってきた記憶ってないぞ」

「あー……。そこからもう違ってるよね」

こきりと首を傾げて疑問を吐く檜山に、樹本は遠い目なんか浮かべて同意を返した。

確かにそうだったな。俺とこいつらの出會いはあの長雨の時が初対面だった訳で、事の元兇をどうにかして後々の騒ぎを嫌った俺が気付かれることなく現場を逃走したことで縁は切れた、はずだったのだが。

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まぁ、普通にその後三人に捕獲されて事だなんだ、なんで逃げた押し付けた、それはそれとして面白い噂あるんだけど一緒に検証に行かない?となってずるずると今日まで腐れ縁が続いたんだ。

そりゃあの場面でいきなり現れていきなり消えたりしたら興味持たれるよな。更には樹本と同クラだったし、元なんざ始めからバレていたんだから逃げた意味もあんまなかった。

それでもあの時はいろいろ突っ込まれるのも本當に面倒だったし、ついでに倒れてる人間もいたから関わらないのが一番だなと全て放り出した訳で。

ああ、その倒れてるのが朝日だったんだから、巡り合わせというのは実に不思議なもんだよなぁ。

いや、思考が逸れた。つまりは俺は全力で樹本たちとは関わり持たないように避けに避けていたのであって、俺が積極的にこの三人に近付いた事実はない。

今こうして連んでるのも樹本とは同クラで、檜山は単純に懐っこくて、嵩原は自分の趣味に巻き込むために度々呼び出してくれたからという理由の積み重ねに他ならないこれ原因嵩原じゃねぇか。

この四人でく切欠は確実に嵩原の噂検証が引き金だわ。俺は無実だわ!

「四人で行共にするようになったのは嵩原が奇怪な噂検証しようとか言い出したのが切欠、だよね?」

「そうだったっけ? 俺気付いたら四人で遊んでたからそこら辺はあんま覚えてない。あー、でもいっつも神社とか廃墟とか行ってた気もするからそうなのかな?」

「それは確実に嵩原案件でしょ。僕は好き好んでそんな所行きません。二年になって全員同じクラスになったのは偶然だし、それ以前から仲良くはしてたんだから今更立つには遅い噂だよね。なんだって今頃になってケチなんか付けられなくちゃいけないんだろ。誰かが注目されたいからってでっち上げたのかなぁ?」

「そうじゃね? 俺たち友だちだってのに酷いこと言う奴もいんのな。こんなん言い掛かりじゃんよ」

プリプリと檜山は噂流した當人に憤りをぶつけてる。

友だちを悪く言われるのを嫌う奴だから俺のためにも怒ってるんだろうな。樹本も理解出來ないと言わんばかりに眉間にシワ寄せながらうんうん頷いてる。

「あー、うん。それがねぇ、元々真人が俺たちと行することに不満抱いていた人間はそこそこにはいたっぽいんだよねぇ」

なんとも言えない表して不意に嵩原が口挾んできた。

訳知り顔か? こいつなら俺たちの知らない報持っていても不思議はない……、いや、まさか。

「え?」

「え? 不満?」

「そう、不満。『なんであんな平凡がイケメンたちと一緒にいるの』という外野からの言い?」

「「は?!」」

ああ、やっぱりそれか。嵩原が口にしたのはこいつらと行を共にし出した頃に散々に叩かれた口だ。

三人は學した當初からイケメンだと方々から注目されていたし、その三人が集まってしかもそこにプラス一されていたらそりゃ周囲の連中はあの集まりはなんだと気にもするもので。

樹本はクラスが同じだからまだ繋がりがあるのもおかしくはないが、他二人とはそれこそなんで一緒にいるのかも分からないと口さがない連中には言われ放題されてたんだよな。

んなもん當人の俺が一番理解出來んかったわ。まぁ、目立つ三人といれば俺にだって嫌でも注目集まるもんだと、そう己を納得させて柳に風と躱し続けるに気付けば聞こえることもなくなったから放置して正解だった訳だが。

嵩原が知っていたことは々驚きだ。それ知ってて平然と俺に絡んできてたのこいつ? 勝手な言い分だから嵩原を責める気はないけど、しは労りとかあっても良かったんじゃないですかね? 孤軍闘してたの知らないとは言わせんぞ。

「え!? 何それ!?」

「あれ? 二人共知らなかった?」

「知んない! それ、文句?悪口?だよな? え、永野そんなこと言われてたのか!?」

「え」

また隨分懐かしい話持ち出してきたなと、記憶を掘り起こしていたら鬼気迫る二人に詰め寄られた。何その反応。というか二人はやっぱり知らなかったんだな。

まぁ、俺に不平不満持ってた奴らは樹本たちにはある種幻想見てるような人間が多かったから、こいつらの耳にらない所でチクチクやってたからさもあらん。俺も特に口には出さなかったし。

だから嵩原が知ってたのは意外だった訳で。尤も、人の裏を探るのは得意中の得意だろうから順當と言えばそうだ。

「ああ、うん、そんなこともあった、か?」

「いやいや、一時は聞こえよがしに非難してくる人間もいたようじゃない? 周囲からの聲が煩わしくて、それも一因になって俺たちとの接も最初は最低限に止めようといていたんじゃないの?」

「お前部事知っててそれでも俺に絡んできてたのか?」

指摘通りにこいつらから逃げ回っていた理由には周囲からのやっかみも関係はしている。

知ってて何かというと一緒に探索しようといに來てたのかマジかこいつ。そこまでいけば格悪い通り越してタフだなという想も出て來るわ。

「やっぱり言われてたんか!」

「えぇ、なんで黙ってたの。僕らの所為で心ないこと言われてたなら文句くらい言ってよ。そしたらいろいろ対応も出來ただろうに」

格悪くない二人が不満そうにこっち見るけど、なんで俺が睨まれなくちゃいかんのか。

なんで言わなかったって、避けた方が簡単に事は収まると思ってたし、それにこいつら自(嵩原除く)には悪意はないのが分かってたから文句言うのも違うよなとそもそもがぶつける気がなかっただけだ。

「いや、お前らに言っても……」

「は? 何それ? 僕らじゃ頼りにならないってこと? それとも友だちのためにくこともない薄な奴とか思ってるの?」

「え?」

え、なんでそんな解釈になる。単に文句のぶつけ先が違うだろってことを言いたかったんだが。

……あ、話し出しが悪かったのか。いや反応早過ぎるって。これ、樹本の奴結構が上ってないか?

「いや、そういう意味じゃなくて」

「力になるに決まってんじゃん! だって永野には助けられたし、友だちだし! そりゃ的なことはなんも思い浮かばないけど、お前がイジメられてるなら盾くらいやったっての!」

「落ち著け。いやだから、言っても無駄とかそういうことじゃなくて」

檜山も怒ってる。ええ、なんで二人して急に沸騰してんの。もう一年も前の話で、そしてとっくに解決してるのに。黙ってたのがそんなに気にらなかったのかよ。

実際、こいつらに明かした所で不快な思いはしてもそれ以外にはどうすることも出來なかったと思うんだが。

「まぁまぁ。二人共落ち著いて。その頃の真人は今にを掛けて無口だったし、あくまでも口止まりであって、手を上げられるとかの実害までには至ってなかったようだから本人も大事だと捉えてなかったんだと思うよ?」

「む」

「んん? そうなのか?」

どうしようといきり立つ二人を眺めてたら流石に放っておけなかったのか嵩原が仲裁にった。まぁ、元はと言えばこいつが弾を放り込んだもんだけど。

「真人は放任主義な所があるからね。どうせ自分への口だって、放っておけばそのなくなるだろうとか考えていたんじゃないの? 本人としては頼る頼らない以前に誰かに助けを呼ぶ気もなかったんでしょ。違う?」

「う」

心のをズバリと言い當てられてき聲がれてしまう。俺がこいつらを避けていた理由といい、やはりこいつは侮れない。まぁ、今はその神分析のおかげで誤解は解けそうではあるけど。

「……そうなの?」

「そうなのか?」

まだまだ納得とは程遠い、みたいな顔を向けてくる二人に頷きで答える。これで怒りを抑えてくれるかな?

なんで俺が顔窺わなければならないのかという不満はあるが、檜山はともかく拗ねた樹本は面倒臭いからな。

「嵩原の指摘通りそんな大したことじゃないと思ったし、何よりお前らが悪いんじゃないんだから文句言うのも筋違いだろ? だから黙っていただけだ」

「……」

「えー。言えよなー、困ってたんだろ? 俺らにも関係あるなら俺らがどうにか出來たかもしんないじゃん」

「いや、八つ當たりにしかならなかったと思うけど……」

やっぱり完全な鎮火は無理だったようで、樹本は押し黙るし檜山はブーブー文句言ってきた。でも話聞いてもらえるだけでもマシだわ。さっきのあの一方的に不満ぶつけられたターンは教室でのやり取り思い出して今更ながら嫌な汗出て來た。

「……確かに、僕らに直接的な原因はなかったかもしれない。でも、君が困った狀況にあったのは事実で一人で解決するには難しい事態だったのは間違いないよね?」

かと思えば黙り込んでた樹本が真剣な面持ちで何やら靜かに語り出してきた。険しい表は俺を責めてるのか、怒ってるのかちょっと判斷し難い。

「お、おう……」

「だったら言ってよ。なんでもいいんだよ。「助けて」でも「ちょっと聞いて」でもなんでもいい。ちょっとした愚癡吐く気分でも構わない。何か思う所があるならちゃんと口に出してよ。ただ自分の中でなんでもかんでも完結させようとしないで。永野は、そういうとこあるよ」

迫られてる、そうじたのは間違いだったようで樹本の言葉は最後には縋るようなを持った小さなものになってしまっていた。

実際、言うべきかどうか悩んだ節はありそうだ。樹本が口にしたのは俺への不満なんだから。

「……」

何を言えばいいだろうか。適當に肯定でもしとけと頭の中では呟いている。でも、そう簡単に折れることは出來そうにない。こればっかりはどうしても。

「……ま、真人が報隠し持つなんて今に始まったことでもないし。そう簡単にはいそうですとはいかないよね」

俺が返事をしないために重くなった空気を掻き回すように、嵩原がいつものやれやれといったポーズをかます。

「……言い掛かり止めろよ」

「あれ? 自覚ない? それならいろいろ聞きたいことがあるんだけどなー。文化祭の時とかー、コックリさんやった時とかー。凄く遡って凍雨の時のことも聞いちゃってもいいかな?」

「……」

くそぅ。やっぱりこいつには口では勝てそうにない。ニヤニヤした目の奧が笑ってないのにも気付いてしまってそっと顔逸らすことしか出來ない。

「んー、難しいことは分からんけど、永野があんまり頼ってくれないってのは俺も思ってるぞ。他の誰かのピンチって時は直ぐどうしようって言うのに、自分の時はギリギリまで何も言わないよな。今年の春の、縁切りの時とかそうだったし」

こっちはこっちで不満が。また懐かしい話を持ち出してきよった。あの時は結局尋問されたんだよな。

……あれ? この流れ、これから尋問されたりしないよな? 思い出したんだけど二岡関係でにしてることあるから早速と樹本の要請蹴っ飛ばしてるんだが。

「……」

「真人の振る舞いに不満は多かれなかれあるだろうけど、でも今はそれは脇に置いといた方がいいかな? 元々なんの話を俺たちはしていたのか覚えてる?」

「え? ……永野が周りからいちゃもん付けられてた」

「そう。そしてなんでそんな話をしていたかって言えば、急に広まった真人の事実無な噂話が発端だったよね?」

ああ、と誰とも言わずに聲を上げる。そうだ、すっかりと話がどっか飛んでたが、今回の噂にも似たやっかみが既にあったって嵩原が言い出したのが始まりだったな。

「あ、そうだった。今はそっちについて考えないと。嵩原としては以前に出ていた不満が今回の噂と関係あるって考えてるの?」

「んー、時期が開き過ぎてる気はしないでもないけど、真人はほら、旅行前にまた目立ち始めてたし、丁度良くセンセーショナルなネタとして拾われた可能は否定出來ないかなって。朝日さんとの存在を絡めて炎上させようとか考える愉快犯みたいなものはいそうじゃない?」

つまり注目集めるためのネタとして一時校で浮上してた俺をタネにしようと過去の口まで浚ってきた馬鹿がいたと。そういうことか。とんでもない迷クソ野郎がいたもんだな。

「なんだそれ。朝日にも迷掛けんなよな」

「俺に文句言われてもね。ま、真人は完全に狙い撃ちされたみたいだし、これからも炎上目的の噂は流れるかもね。衆目集めるためのネタとしてだけでなく、個人の嫉妬心由來でもこんがり焼かれそうだよね」

「そんな軽々しく「ね」とか言われても」

冗談を多分に含んだ言い方してるけど容は頭抱えるしかないくらい最悪だ。

別に俺だって目立ちたくて噂になった訳でもないのに、どうしてこうピンポイントで祟ってくれるのか。今後を思うと重いため息しか口から出なかった。

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