《高校生男子による怪異探訪》9.不信と疑心
今回ちょっと短めです。
そして次回からストレス展開注意です。とは言え比較的直ぐに救いの目は現れます。
朝日とのコンタクトはどうにか二岡経由で行えた。授業が終わる度に子でグループ形していて隙がないように思えたものの、教師からの雑用言い付けられて単獨で教室を出て行った所を急襲、なんとか用件は告げられたそうな。
その際にどんなやり取りがあったのか詳細は聞いてはいないが、とりあえず朝日にコンタクトを取ることには賛してもらえたようで、これで安否確認に要警戒の忠告は果たせたことになる。
詳しい話は放課後、依頼を取り付けるだけでも手間取ってしまったためにそこまで遅くなった。自分の現在の狀況と合わせ、なんともモヤモヤとした気持ちを抱えて過ごした半日は本當に長く長くじられた。
「心配する聲は掛けられてるけど、噂をネタにした嫌がらせなんかは特にされてないって。むしろ過保護になってて男子生徒は同じクラスでも近付くと追い払われてる狀況にあるみたい」
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教室の片隅を占拠して二岡からの報告を確認する。どうやら朝日の方はこれといった被害などは出ていないようだ。辺周りは騒がしくはなったものの、俺とは違って守られる側でいるようなんでほっとした。樹本も肩から力が抜けている。
「そうか。何事も、てことはないけど元気そうなら何よりだ。朝日自は噂についてはなんて?」
「噂の本人でもあるからか、かなり憤ってはいるみたい。永野のこともとても心配してるようだよ」
朝日は流石に當事者だから噓っぱちだって分かるか。良かった、これで実は朝日も本當は嫌々だったとか言われたら俺は學校に來られなくなっていた所だった。あの出會いの演出は一部際どいものがあったからな。
「まぁ、朝日さんはそう大きな問題もなかったようだけど……」
ほっとをで下ろしていると樹本が歯切れ悪く何か言い澱む。
なんだろうか。まだ報告しなけりゃいけないことがあるのか? 目を彷徨かせてどうにも言い難そうにしているのが気になるが。
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「どうした? 樹本」
「いや……。あの、さ、永野」
「ん?」
どこか躊躇いがちに樹本が切り出してくる。なんだ? 何をそんな遠慮することがある? 今日一日大多數のヘイト高目な視線に曝されて、もう今更、大抵の不利な話なんて平靜に聞いていられるくらい肝は鍛えられたぞ。また悪意のあるデマカセが橫行していたってふーんてじに流せる自信がある。
まぁ、それはそれとして樹本のこの態度、どこか余所余所しさがあるのは気になるな。思い返せば本日は途中からずっと何か言いたげな様子は見せていたような。あれは二岡に突貫してからだったか?
樹本だけじゃない、檜山も嵩原も今もじっと真顔で俺と樹本のやり取りを眺めているのが不気味だ。檜山は小難しい話ではとりあえず聞き手に回るから黙っているのも変とは言えないが、嵩原に関しては積極的に介して引っ掻き回すのを信條としている節があるから全く會話にらないなんて気味が悪い。樹本が言おうとしている容と関係があるのだろうか。
「その……、二岡さんとさ、何かあったのかな?」
問われたのは今はれないでもらいたい非常にデリケートな話。なんだろうと軽く構えていたおかげもあってか、どうにか致命的な失態だけは演じずに済んだ。
とは言えなんでいきなり二岡の話を持ち出すのか。ひょっとして、二岡から何か聞いたのか?
「……いや? どうした? 二岡が何か言ったのか?」
「……ううん。そうじゃない。そうじゃないんだけど……」
ふるふる首を振って否定するが、やはり煮え切らない。なんだろうか。樹本は一何が気になっているんだろうか。
「なぁ、永野」
かと思えば今度は檜山が話し掛けてきた。こいつには珍しい低目のトーンにちょっとだけビクつく。檜山は真顔でこちらを凝視して、それから靜かに口を開いた。
「お前、本當に二岡さんとは話をしたんだよな?」
言われ、し返答に詰まる。何について聞いているのかと一瞬思案して、それから修學旅行前のことかと當たりを付けた。
「あ、ああ。ちゃんと話し合ったぞ」
「仲直りもしたんだよな?」
「ああ。……いや、あれが仲直りかどうかは分からないけど、あいつが言いたかったことは、聞いた」
當時のことを思い出しながら答える。あの宵闇の中での會話。仲直り、というか元の関係に戻れたのかは謎だが、それでもあいつの告白を全て聞いたのは確かだ。
「……」
答えたのに、檜山は真顔、いや納得のいってなさそうな顔で押し黙った。
なんだ? 樹本も檜山も、俺に何を聞き出したいんだ? 目的がはっきりしなくてついつい眉間にも力がる。
「ねぇ、真人。大事なことだから確認させて」
今度は嵩原だ。本當に一何がしたいんだ。俺の何を気にしてるってんだ。
「……なんだ」
「真人はさ、俺たちに何か隠し事とかしてない?」
しの苛立ちが思考を焼く中で問われて、思わずと小さな驚きが顔に出てしまった。本當に僅かに目が開いた程度だったとは思うが、俺に注目しているこいつらの前では拙いリアクションだったと思う。
「……真人?」
窺う、違うな、問い質す目で嵩原が俺を見てくる。こいつは確信を持ったはずだ。どんな相手であれその機微を敏に汲み取れるこいつが俺の変化を見逃すはずがない。
現に嵩原からの威圧が増していた。とっとと吐けと、そうプレッシャーを掛けているんだろう。
こいつらににしていることなんて、そりゃ五萬とまでは言わないがそれなりの數はある。人間全くのオープンで生きている奴の方がないはずだ。俺だけじゃない、こいつらも、クラスの奴も皆人には絶対に明かせない抱えて暮らしているはずだろ。
一何について知りたいのかは知らない。だが、そう簡単に明かせないからこそわざわざ隠すんだろうが。
「……別に? 特にこれといって心當たりはないな」
揺した己を覆い隠して言い返す。これ以外にどう言えと。自らなんでも口に出せるほど、俺は楽観して生きていない。
「ふぅん。誤魔化すんだ」
「だから何が。お前らさっきからなんなんだ。何か言いたいことがあるならはっきり言えよ。持って回った言い方したって俺は察せないぞ」
言い換えれば的に「これ」と示してくれたのなら答えられないこともないかもしれない。確約なんて出來ないからそうはっきりとは言えない訳だが。
「別に? ただ確認取っただけだよ」
「……本當に、何もない?」
「……」
誰もが明言を避けてそれ以上奧へと踏み込もうとしない。だから不穏な空気は晴らされることもなく、互いにのを開くこともなくてそのまま解散となった。
一なんだったんだ。あいつらは何を聞き出そうとしていたんだ。あいつらの考えてることがさっぱり理解することが出來ず、抱えたモヤモヤは一層重たく存在のあるものとなって俺ののに殘り続けた。
校で気付けば流行していたらしい噂話ブーム。まさかここまでそのブームに自分自が翻弄されるとは月曜日時點では夢にも思っていなかった。
オカ研で話を聞いていた頃からは隨分と自分の環境は変わってしまったと思う。本日は土曜日、週の終わりだ。振り返ればたったの四日で俺の評判は落ちる所まで落ちたことになるのか。激過ぎる。
もうこれ以上のトラブルは勘弁だと、そう切に祈りを捧げた所で無神論者に応える神はどうやらいなかったらしい。
「ちょっと」
昨日のこともあり學校へ向かう足も鈍くなって、普段と比べればし遅くなった時間に教室にれ、ば。機に鞄を置く間もなく険しい顔の三人に引き摺られるようにして屋上にと拉致された。
「なんだよ……」
有無を言わさない力盡くでの移送だが、昨日の気まずさがぶり返していてそう強く文句も言えなかった。冷たい風が吹き抜ける屋上の只中、そっと三人から視線を余所へと向けていればい聲が前方から響いた。
「また新しい噂が出て來たよ。……君に関係した最低な噂だ」
言われてもまたか、としか思えない。まぁ、予想はしていた。これで三日連続で話を作られたことになる。噂流してる人間は余程俺への恨みを募らせているらしい。
「今度はなんだ? また絡みかよ」
「その通り。先の二つの噂とも絡めたまたまた不実な人像が描かれたものになってるよ」
怒りも通り越して疲れさえ滲むのに、ついそうぼやいてしまえば嵩原の軽い聲が容を追認してくる。本當に最低な噂であるみたいだな。朝も早くから噂の発信者は力的にいているようで。
そういえば、俺の新たな噂っていつ広まってるんだろうな? 昨日と今日は朝登校したらもう校中に知れ渡ってるといったじだったが、まさか朝一學校に來て言いらして回ってたりするのか? だとしたら早朝に張り込めば元兇を取っ捕まえることも可能なんじゃないだろうか。
はっと己の発想にこの事態の打開が見えた気がした。これナイスアイディアなんじゃないか? 早速と三人にも提案してみようと、逸らしていた目を真正面に戻した、ら。そこには嫌に冷たい目をした三人がいて。
「今度はな、『二年永野真人は朝日春乃に迫っていながら、同クラスの子である二岡梓とも際関係にある』っていう噂なんだ」
飛び出してきた名前には、ただ驚きを表すことしか出來なかった。選りに選って、なんで。朝日の時よりも大きな衝撃を食らって、頭の中は真っ白になってしまった。
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