《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#05
それから三日後、スェルモル城の會議室に居並ぶナグヤ=ウォーダ家の重臣達は、當主ノヴァルナの発した言葉に唖然とした。
全員の気持ちを代弁して問い質したのは、BSI部隊総監のカーナル・サンザー=フォレスタである。『ホロウシュ』のランの父親だ。
「こちらから、キオ・スー家に仕掛けるのでありますか?」
「おう!」
扇狀に機が並ぶ會議室のその要の位置で、ふんぞり返って座るノヴァルナはあっけらかんと応じた。軍裝の前を開けっぴろげにしている様《さま》は、まるで學生服の前をはだけさせた、々やさぐれた高校生のようだ。
そんなノヴァルナが発した言葉が、これまでとは逆に、ナグヤ側からキオ・スー家を攻撃しようというのだから、重臣達が驚くのも無理はない。
「なぜにございますか?」とサンザー。
「決まってんだろ。キオ・スー家を討つ、大義名分が手にったからさ」
ノヴァルナがそう答えると、筆頭家老のシウテ・サッド=リンが尋ねる。
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「大義名分とはつまり、シヴァ家のカーネギー姫をナグヤに迎えれ、シヴァ家廃嫡を目論んだキオ・スー家を逆臣として討伐する…という事にございますか?」
「そういうこった。さすがはシウテの爺、よく分かってるじゃねーか」
そのような事で褒められても…と言いたげに、シウテは熊のようなベアルダ星人の顔を曇らせた。だがノヴァルナはシウテの反応などお構いなしに、全員に向かって話を続けていく。
「ウォーダ家は今でも、名目上はシヴァ家の配下。主家の滅亡を企むキオ・スー家を討伐するという話なら、こちらから戦う理由になるだろ」
とノヴァルナは言うが、はじめに問い質したサンザーも、他の重臣達も程度に差はあっても皆、そう言った理由付けなら理解している。問題はなぜこの時期に仕掛けるのか、という事だ。ナグヤ=ウォーダ家は先日の、イマーガラ家と戦ったムラキルス星系攻防戦で大損害をけ、それ以前の戦いで消耗した戦力を回復しかけていたのが、水泡に帰してしまったからである。
その事にサンザーがれると、ノヴァルナは々的外れな言葉を返す。
「ま、鉄は熱いうちに打て…って言うからな」
「とは言え、戦力的に不利なのは、揺るがぬ事実ですが」
サンザーに続き、冷靜沈著な家臣で、重巡部隊の第9戦隊司令を務めるナルガヒルデ=ニーワスも、批判的な意見を述べた。
ムラキルス星系攻防戦で大損害をけたナグヤ軍は、イマーガラ家に寢返った獨立管領のハーナイン家が治める、ティラモルドラ星系討伐のために分離した部隊の他は、ほとんどの艦が修理ドックへ渠している狀況だ。三日前にカーネギー=シヴァを救出に向かった総旗艦『ヒテン』も、修理途中を強引に引っ張り出したようなものである。
そんな中でナルガヒルデが率いていた第9戦隊は、ノヴァルナ本隊と行を共にして最前線で戦い、さらにティラモルドラ星系派遣隊にも參加。編された重巡6隻をほぼ無傷で帰還させており、運用手腕を高く評価されていた。つまり批判的な発言も認められる立場にある。
ただ近頃のナルガヒルデは、ノヴァルナよりもその弟のカルツェを支持する派閥と距離を近くしており、見ようによってはノヴァルナ自への批判とも取れた。しかしノヴァルナは気にするふうも無く、いつもの不敵な笑みを浮かべてナルガヒルデの言葉に応じる。
「戦力ならあるさ。無傷なのがな」
「は?」
眉をひそめるナルガヒルデからノヴァルナが視線を移したのは、斜め左でこちらを向いて座っている、弟のカルツェ・ジュ=ウォーダだった。ノヴァルナは不敵な笑みを大きくし、まるで雨の日に余った傘でも借りるような軽い口調で告げる。
「カルツェ。おまえんとこの戦力を出してくれや」
それを聞いてギクリとしたのは、當のカルツェではなく周囲に座る彼の取り巻き―――ミーグ・ミーマザッカ=リンや、クラード=トゥズークといった者達だった。カルツェの直率する戦力はムラキルス星系攻防戦に際し、サイドゥ家から留守居の応援部隊を得る事を不服として、カッツ・ゴーンロッグ=シルバータの部隊以外、參加していなかったからである。
いや…それ以上に、ミーマザッカやクラードの思考の裏には、自分達の戦力を、ノヴァルナから実力で當主の座を奪い取る必要が生じた場合に備え、溫存して置きたいという思があった。それをこの戦いで戦力を投し、消耗してしまっては元も子もない。そして何よりカルツェ派は、ノヴァルナを廃し、カルツェをナグヤ=ウォーダ家の當主にするという點で、でキオ・スー家と協力関係にあるのだ。
痛點を突かれたような表で押し黙るミーマザッカ達。ところが彼等の思わぬ反応をカルツェは見せた。表を消したまま靜かに応じる。
「承りました。戦力を出しましょう…」
▶#06につづく
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