《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#15

二機の親衛隊仕様『ミツルギCE』は左右に分かれ、ノヴァルナの『センクウNX』を挾撃しようとする。

「ヌマハック・アク!(距離を取れ)」

「ムシャット!(心得た)」

キャーメラー星人の編隊長は母國語で打ち合わせると、超電磁ライフルを構えた。敵の『センクウNX』はポジトロンパイクの他にクァンタムブレードしか裝備しておらず、距離を取れば問題ないと思ったのだ。しかしノヴァルナ専用にカスタマイズされた、『センクウNX』の瞬発力は半端ではない。片方の『ミツルギCE』に向けて、韋駄天の如く間合いを詰めた。

「ベフッマ! ノヴァルシェ!!」

自分に向かって來るノヴァルナ機に、片方の『ミツルギCE』は超電磁ライフルをしきりに撃ち放つ。だが當たらない。もう一機の『ミツルギCE』も橫合いから援護撃を連続して行うが、これも全く當たらない。稲妻のようにコースを変える『センクウNX』に照準を合わせられないのだ。

「ガッパ!(くそっ)」

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ノヴァルナに狙われた『ミツルギCE』のパイロットは、超電磁ライフルを放り出して自もポジトロンパイクを摑む。一瞬で目前に迫って來た『センクウNX』に対して、超電磁ライフルをバックパックのウエポンラックに戻している余裕はない。

「ガッパル、BSHO!(くそったれの、BSHOが)」

上級將専用機のBSHOが並外れた能である事は、織り込み済みのキャーメラー星人パイロットだった。この二人とて銀河皇國軍の一員として昨年、ミョルジ家との皇都攻防戦を戦ったベテランである。だがミョルジ家と戦った場には、ノヴァルナのような八方破れの敵パイロットなど居はいなかったのだ。

向かって來る『センクウNX』に、ポジトロンパイクを振り下ろす『ミツルギCE』だが、『センクウNX』は自らのポジトロンパイクでそれを打ち払うと、そのままショルダーアーマーごとタックルを喰らわせた。もつれ合えば、敵の僚機からの撃をける恐れはなくなる。

「ざけんじゃ、ねぇ!!」

タックルからの前蹴り、距離が空く相手にさらにノヴァルナは、び聲と共に右手に握る電子の鉾を打ち振るった。敵の『ミツルギCE』の首が吹っ飛ぶ。「クンスッ!!」と翻訳不能の怒聲を発し、首を刎ね飛ばされた狀態で反撃を試みる敵機。しかし主な近接センサー類が集まる頭部を失った事で、予備に切り替わるためのタイムラグが起きる。

敵機に出來たタイムラグの僅かな隙を、ノヴァルナは見逃さない。左腕のポジトロンパイクで敵の腹部を斬りえぐる。その次の瞬間、ロックオン警報がヘルメットに鳴り響いた。左から背後に回り込んで來るもう一機の『ミツルギCE』。仲間の死を無駄にすまいと距離を詰めて、狙撃するつもりだ。

ここでもノヴァルナは恐るべき反神経を見せた。振り返るより早く右手のポジトロンパイクを橫に払うと、敵が撃った銃弾を、盾代わりにしたポジトロンパイクの刃で防いだのだ。刃は々に砕けたが銃弾もあらぬ方向へ飛んで行く。そして慌てた敵パイロットが次の銃撃を行った時には、『センクウNX』の姿はもうそこにはなく、銃弾は仲間の死骸が乗った味方機を撃ち抜いてしまっていた。

それはノヴァルナの天賦の才である。戦闘前に頭に叩き込んだ、初見である敵機の旋回半徑と加速係數だけで、そのきを予測出來ているのだ。

「ベッ…ベルナモ、ラヌ!!(バッ…バケモノか)」

恐怖に囚われたキャーメラー星人指揮のヘルメットに、上方向から響く近接警戒警報音。音に従って上を向いたその眼前に、急降下して來る『センクウNX』がポジトロンパイクを構える。

「ヌアク、ベフッマ!!」

罵り聲と共にパイロットが超電磁ライフルを上へ向けた直後、すれ違いざまに薙ぎ払われた『センクウNX』のポジトロンパイクによって、『ミツルギCE』の両腕は切斷されてしまった。そして『センクウNX』は今度は一気に急上昇へ転じ、『ミツルギCE』の背後を取ると同時にバックパックを切り裂く。対消滅の危険を知した反応爐は急停止し、エネルギーシリンダー化反質を急蒸発させてしまった。これでもう『ミツルギCE』は、非常用電源しか使用出來ず、戦闘は不能だ。ノヴァルナはすかさず全周波數帯で呼び掛ける。

「おい貴様。公用語は話せるか?」

「は…はい、殿下」

訛りのある皇國公用語で、キャーメラー星人の指揮は恐る恐る応答した。ノヴァルナは「なら話が早《はえ》ぇ」とぶっきらぼうに言い、さらに言葉を続ける。

「てめぇは生かしといてやる。捕虜ってワケだ。あとで話を聞かせてもらうぜ」

「かしこまりました…ありがとうございます」

キャーメラー星人指揮は観念した様子で、命を救われた事に謝の言葉を述べた。

▶#16につづく

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