《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#16

かなくなった敵機を一旦その場に放置し、ノヴァルナは次の目標を定めようとした。しかしその時にはもう、殘る敵のBSIはノアと『ホロウシュ』達に圧倒されている。

ノアは複數の敵機に対し、左手のライフルでイルミネーターによる同時照準による牽制撃を続け、敵機を回避行だけで一杯の狀態で寄せ付けずにいたし、『ホロウシュ』のハッチとキュエル、そしてノアの護衛役のメイアとマイアは、それぞれが二機一組となって敵のASGUL群を追い回していた。

「…となると、俺はあっちだな」

そう言ってノヴァルナが振り向いた先の全周囲モニターには、敵の軽空母部隊を示す黃いマーカーが表示されている。すかさず宙雷艇部隊に連絡するノヴァルナ。

「宙雷艇、待機してるな?」

「はい」と応答がある。

二隻の戦艦『ログバール』と『ゼルストル』から発進した六隻の宙雷艇は、BSI同士の戦闘には加わらず、戦艦の護衛を行いながらノヴァルナからの指示を待っていたのだ。

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「よし、軽空母狩りだ。ついて來い」

「了解であります!」

命令をけた六隻は一気に加速をかけ、護衛していた戦艦の脇から、素早く飛び出して來た。応答の聲に覇気がじられるのは、補給基地の警備という退屈な任務から巡って來た、敵空母への襲撃という“冒険”に心を躍らせているのかも知れない。

一方のノヴァルナは宙雷艇を待つことなく、すでに敵の軽空母に向かっている。

「ハッチ、キュエル。お前らも俺について來い。メイアとマイアはノアと合流して、殘りのBSIを頼む」

『ホロウシュ』達の空戦域を掠めながら告げるノヴァルナに対し、ハッチとキュエルは「意!」と応じ、メイアとマイアは「かしこまりました」と聲を揃える。カレンガミノ姉妹はノヴァルナの配下ではなくノアの直屬だが、納得できる指示であるならそれに従うのは當然だ。

「ノア、あとは任せるぜ」

「オッケー!」

応じながらノアは弾の盡きた一方のライフルを放り出し、殘りの一丁を素早く両手で構え直すと、敵の一機に単連で狙撃を加える。その敵機は一弾、二弾と躱したものの、三弾目に部を撃ち抜かれて発した。即座に回避行を取るノア。そのヘルメットにはずっとロックオン警報が鳴っている。次の瞬間、ノアのいた位置を別の敵機の銃弾が通り過ぎた。

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ノアを狙った敵機は、援護に向かって來たメイアとマイアから、同時に遠距離撃を喰らって散した。雙子姉妹は珍しく、聲だけ合わせて言葉はバラバラにノアを呼ぶ。

「姫様」

「ノア姫様」

ノアは攻撃にろうとしていた他の敵機に、牽制のライフルを浴びせて追い払う。そこに姉妹の『ライカSS』が合流して來た。

「すぐに敵機を撃退して、ノヴァルナ様の下へ向かいます。二人とも頼みます!」

「了解!」

シーガラック星系軍のBSI部隊を相手取るだけでなく、空母部隊攻撃に取り掛かりつつあるノヴァルナの所へ、自分も行こうとしているノアに、カレンガミノ姉妹は“困ったものだ”といった顔をする。この辺りは『ナグァルラワン暗黒星団域』で、初めてノヴァルナの『センクウNX』と遭遇した時、「私が仕留めます!」と強い口調で告げた頃と変わらない。

「フォーメーション・デルタ。右から仕掛けます。メイアは10パーセント増速、二人とも私の合図で撃開始です。テイク・ア・フォーメーション…ナウ!!」

「イエス、マム!」

大きくスクロールしながら、瞬時に高低差のある三角のフォーメーションを組んだ、ノアとカレンガミノ姉妹の機は、複數の敵機に対し、指示通り右から回り込み始める。僅かに先行したメイアと、ノアの並行位置にいるマイアが超電磁ライフルを放ち、敵機が回避行った瞬間にノアが狙撃を加えた。

「こえー…」

『ホロウシュ』のハッチとキュエル、さらに六隻の宙雷艇を従え、前方で退避行を開始している二隻の敵軽空母に向かうノヴァルナは、コクピットに浮かべたサブホログラムモニターで、ノアの戦闘行を確認し、眉をひそめて呟いた。

ノアがカレンガミノ姉妹を連れ、ナグヤ=ウォーダ家にやって來てから知ったのだが、ノアの戦闘形態は本來、カレンガミノ姉妹との三機連攜を前提にしていたのだ。

昨年ノアと対戦した『ナグァルラワン暗黒星団域』では、カレンガミノ姉妹は前『ホロウシュ』筆頭のトゥ・シェイ=マーディンとラン・マリュウ=フォレスタと戦して、ノヴァルナはノアとの一騎打ちとなった。

ところがこれは、たまたまマーディンとランの技量が高かったため、カレンガミノ姉妹がノアとの連攜を斷たれた結果であって、下手をすればノアとカレンガミノ姉妹の相互連攜により、三人とも討ち取られていた可能が高かったのである。

事実、當初の予定であった、ノヴァルナとノアのエキジビションマッチ。これに向けての訓練では、技量的にマーディンやランに及ばないハッチとキュエルを連れたノヴァルナは、模擬戦闘で悉く敗退していた。それは実際の戦闘でも同様で、ノア達の連攜攻撃をけ始めた敵の殘存BSIユニットは、苦も無く撃滅されてゆく。

三機連攜戦そのものは珍しくはない。しかしノアとカレンガミノ姉妹のそれは、レベルが別だった。一機が追い込み、一機が狙撃、殘る一機が他の敵機からの攻撃を警戒、これを流れるようなきで代しながら、連続して行うのだ。

しかしノヴァルナも口では「こえー…」とは言ったが、ノアに負ける気はない。

「ハッチ、キュエル、俺と一緒に敵駆逐艦部隊と空母の迎撃システムを叩くぞ。宙雷艇は下から潛り込んで直接、敵の空母を叩け」

「了解!」

ノヴァルナの『センクウNX』とハッチとキュエルの『シデンSC』は、オレンジのリングを機背後に重ねて輝かせ、六隻の駆逐艦へと突っ込んで行く。その間に宙雷艇部隊はノヴァルナの指示通りし針路を下に向けながら、敵駆逐艦の向こう側を逃走する、二隻の巡航母艦(軽空母)への追撃にった。

「ハッチ、キュエル。先行して駆逐艦の迎撃火を潰してゆけ。あとは俺がやる」

ノヴァルナはそう命じると、ポジトロンパイクとクァンタムブレードを起させて、それぞれを『センクウNX』に握らせる。さっきまではもう一本のポジトロンパイクがあったのだが、敵BSIユニットとの戦闘で失われてしまっていた。

敵の駆逐艦部隊は三隻ずつに分かれ、片方は空母部隊を直掩する位置にいる。

「キュエル。まずは手前の三隻だ。弾種、対艦徹甲」

ヨリューダッカ=ハッチがそう言うと、キュエル=ヒーラーが「分かってる!」と強気な口調で応じた。『ホロウシュ』は主君ノヴァルナへの忠誠は一貫しているが、個々においては互いをライバル視している場合が多い。

「―――なら、ついて來い!」

「そっちこそ!」

二人は言い放つと、パン!と弾けるように機を二手に分かれさせた。三隻の駆逐艦が二人に対して迎撃のビームを浴びせ始める。だが命中しない。急角度で回避行を取った二機の『シデンSC』は、反撃の銃弾を連続して放った。エネルギーシールドを貫く能力を持つ銃弾が、立て続けに敵駆逐艦を直撃する。

▶#17につづく

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