《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#13
「またえらいトコを選びやがったな…」
旗艦『ヒテン』の司令席で、艦橋の前方ビュアー一杯に映るロンザンヴェラ星雲を眺め、ノヴァルナは苦笑を浮かべた。
合同演習が行われるロンザンヴェラ星雲は、トゥ・エルーダ星系からおよそ19年の位置にあり、濃な星間ガスは赤く、直徑約4年の範囲にまるで薔薇の花のような形狀で広がっている。また部には、複數の原始恒星が點在しているために重力勾配が酷く、恒星間転移航法のDFドライヴは使用出來ず、長距離センサーなどの遠距離観測裝置も、機能が大幅に低下するようであった。
「ノヴァルナ様。シェイヤ=サヒナン殿から通信がっております」
通信オペレーターがそう知らせて來ると、ノヴァルナは「繋げ」とぶっきらぼうに命じる。すると前方ビュアーの一部が切り替わり、そこに銀髪とアイスブルーの瞳を持つ、三十代半ばのが映し出された。シェイヤ=サヒナンである。
「ノヴァルナ様」
一応、ノヴァルナの方が上位であるから、シェイヤは會釈と共にへりくだった言いをした。それに対しノヴァルナは鷹揚に頷き、「シェイヤ殿」と応じる。
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「この度の無理な申し出をおけ頂いたこと、あらためて禮申し上げます」
シェイヤがそう言うと、穏やかな笑顔で言葉を返すノヴァルナ。
「いえ。我等としても折角の機會。願ってもない話をどうして斷れましょう」
ノヴァルナの言葉に、シェイヤは僅かに笑みを見せて尋ねた。
「…時にノヴァルナ様は、ガルガシアマ星雲をご存知ですか?」
「ガルガシアマ…確かシナノーラン宙域の端にある、かなり大きな星雲のはず」
シェイヤは満足げに頷いて「さすが、よくご存知ですね」と言い、さらに続ける。
「隣國エティルゴア宙域との境界近くにあるガルガシアマ星雲は、これまでに二度、タ・クェルダ家とウェルズーギ家の戦場となっており、さらに三度目の會戦も予想されております…そして、このロンザンヴェラ星雲は規模は小さいですが、部の気象環境はガルガシアマ星雲とよく似ています。つまり今回の合同演習では、タ・クェルダ家とウェルズーギ家のガルガシアマ星雲會戦を、自分達であればどのように戦うかを試してみよう、というわけです」
「なるほど、それは興味深い趣向です」
々わざとらしい口調で応じるノヴァルナ。無論これが本當の目的ではない事は、百も承知である。
ノヴァルナの白々しい反応は、シェイヤの方でも當然の事とけ取っていた。雙方とも最初から、本気の撃ち合いになるのを共通認識として行しているからだ。そうでなければこんな常識外れの、突然で無計畫な合同演習が実現しようはずもない。
「我が師父タンゲンを何度も翻弄された、ノヴァルナ様のお手並みを拝見出來るのが、楽しみです。二時間後に演習を開始したいと思います。ご異存はありませんか?」
そうシェイヤが言うと、ノヴァルナは落ち著き払って言葉を返す。
「特には。こちらこそ、タンゲン殿の弟子と聞くシェイヤ殿の手腕、勉強させて頂きたく思います」
するとシェイヤは意味深な気配をじさせる笑みで告げた。
「ではノヴァルナ様、よろしくお願い致します。くれぐれも事故の無きよう、安全第一で參りましょう…」
そこで終了する通信。シェイヤの姿がスクリーンから消えると、ノヴァルナは「アッハハハ!」といつもの高笑いを発した。
「なかなか、おもしれーねーさんじゃねーか!」
そこに艦隊參謀が歩み寄り、まもなくロンザンヴェラ星雲に進する事と、早くも長距離センサーに障害が起き始めた事を知らせて來る。その直後、艦橋中央の戦狀況ホログラムから、幾つかの報表示が消えたり明滅したりしだした。今しがたシェイヤが告げた通り、タ・クェルダ家とウェルズーギ家のガルガシアマ星雲會戦のように、手探り同然の狀態で遭遇戦となる可能が高くなるだろう。
「シェイヤ艦隊が離れていきます」
オペレーターの報告で艦橋の窓を見ると、ロンザンヴェラ星雲の赤黒い雲海の中へと、シェイヤのイマーガラ第3艦隊が姿を消してゆく。今回の合同演習は、名目上はノヴァルナの艦隊がタ・クェルダ家、シェイヤの艦隊がウェルズーギ家の役割を演じ、ガルガシアマ星雲會戦と同様の狀況で模擬戦闘を行う事が趣旨となっている。そのためシェイヤ艦隊は一旦、ノヴァルナ艦隊と距離を置くのだ。
「シェイヤ艦隊、まもなく探知圏外」
同じオペレーターが続けて報告した。やはり濃な星間ガスの影響で、し離れただけでセンサーが反応しなくなる。
「重力勾配率増大中。左舷前方に原始恒星」
その報告に左へ視線を遣ると、黒い雲が綿飴狀に絡みついた、溶巖の塊のような誕生寸前の恒星が浮かんでいる。ノヴァルナは不敵な笑みで家臣達に命じた。
「さぁて、おっぱじめるか!!」
▶#14につづく
スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★
西暦2040年の日本。 100人に1人の割合で超能力者が生まれるようになった時代。 ボッチな主人公は、戦闘系能力者にいじめられる日々を送っていた。 ある日、日本政府はとあるプロジェクトのために、日本中の超能力者を集めた。 そのタイミングで、主人公も超能力者であることが判明。 しかも能力は極めて有用性が高く、プロジェクトでは大活躍、學校でもヒーロー扱い。 一方で戦闘系能力者は、プロジェクトでは役に立たず、転落していく。 ※※ 著者紹介 ※※ 鏡銀鉢(かがみ・ぎんぱち) 2012年、『地球唯一の男』で第8回MF文庫Jライトノベル新人賞にて佳作を受賞、同作を『忘卻の軍神と裝甲戦姫』と改題しデビュー。 他の著作に、『獨立學園國家の召喚術科生』『俺たちは空気が読めない』『平社員は大金が欲しい』『無雙で無敵の規格外魔法使い』がある。
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