《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#00

皇國暦1560年3月17日―――

スルガルム宙域某所の宇宙空間。彼方に紫と紺の星雲が大きく広がり、生まれたばかりと思われる恒星が幾つか、自らの誕生を祝福するかのように、強く白く瞬いている。

それを背景に視界の全てを覆う大小の宇宙艦。イマーガラ家の宇宙艦隊24個。さらに従屬するミ・ガーワ宙域星大名、トクルガル家の宇宙艦隊が6個。合計30個艦隊約2600隻の大部隊だ。この大部隊の全てが、皇都星キヨウへ向かう上軍であり、しかもイマーガラ家には留守居の艦隊がまだ、4個も殘るのである。

この日はおよそ二ヵ月後を予定している、上軍の進発に備えての総火力演習が行われていた。目標は敵艦隊に見立てた小星群で、砕けた自由浮遊星のなれの果てである。

帯狀となった三千個以上ある巖塊に向け、壁のように並んだイマーガラ家の宇宙艦が、主砲を一斉撃する。続けさまに砕け散る小星。すると今度はその破片を敵のBSIユニットに見立て、1萬機ほどのBSIユニットやASGUL、そして攻撃艇が仕掛ける。

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本格戦闘さながらの実弾演習に、真空の宇宙空間であっても、イマーガラ家の兵達が放つ熱量が伝わって來そうだった。

そんな中で、イマーガラ家宇宙艦隊総旗艦『ギョウビャク』の甲板上に、巨大なBSHOが艦から、専用と思われるエレベーターに乗って出現した。長が30メートル以上と、ノヴァルナの『センクウNX』など、標準型BSHOの倍ほどもある機だ。

「『サモンジSV』起完了。全システム異常なし」

機関士の報告に頷くのは、イマーガラ家當主ギィゲルト・ジヴ=イマーガラである。三座式のコクピットにはギィゲルトと機関士、さらにパイロットがいた。ギィゲルトの専用BSHO『サモンジSV』は、三人で機を制する方式なのだ。

縦はパイロットの役目。五つも搭載した小型対消滅反応爐の、出力制は機関士の役目。そしてギィゲルトの役目といえば“手”であった。

「よろしい。『D‐ストライカー』による狙撃を行う」

ギィゲルトがそう告げると、パイロットと機関士は「意」と聲を合わせ、所定の行を取る。それに合わせ『サモンジSV』はバックパックから、機のサイズに比例した、超大型ライフルを摑み取って構える。

「目標。左15度、上方3度。距離4萬5千の小星」

スコープ式の撃照準センサー畫面に顔を押し當て、ギィゲルトは諸元を力していく。距離4萬5千といえば戦艦の主砲並みの程で、通常のBSIユニットが狙撃を行えるような距離ではない。だがギィゲルトは當たり前の口調で告げた。

「照準よし。発

次の瞬間、銃口の先に発が輝く。だが銃弾が飛び出した様子は無い。ところがその直後、4千5百萬キロ離れた小星は、大発を起こしたのである。

「目標を完全破壊」

パイロットの報告に頷いたギィゲルトは、何の慨もじさせない聲で「次の目標を設定」と告げ、銃口を別の小星に向ける。それがギィゲルト自慢の『サモンジSV』が有する必殺兵、超空間狙撃砲『ディメンション・ストライカー』の威力であった………

▶#01につづく

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