《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#13
キノッサがのに喪失をめながらも、これまで以上に職務に勵みだしたその頃、ノヴァルナのいとこヴァルキス=ウォーダに居城、アイノンザン城を訪れていた者がいる。カルツェとクラードに最後の謀叛を教唆した、ベリン・サールス=バハーザだ。
カルツェ達の最後の謀叛の途中で姿を消したバハーザは、キオ・スー家の急配備の網を掻い潛り、星ラゴンを出していたのである。
だが疑問であるのはバハーザがここ、アイノンザン星系にいる事だった。銀河皇國報調査部を名乗るバハーザは、イマーガラ家のオ・ワーリ宙域侵攻でノヴァルナ達キオ・スー家が滅ぼされたあと、ヴァルキスより正統統に近いカルツェを、イマーガラ家の傀儡のオ・ワーリ宙域統治者として認めさせるため、暗躍していたはずである。
となると、導き出される解答は…罠―――
ウォーダ一族宗家のキオ・スー城のそれより、ふた回りは小さく思えるアイノンザン城の謁見の間で、ベリン・サールス=バハーザは玉座を前に片膝をつき、忠節を示して頭を深く下げていた。
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謁見の間には玉座に座るヴァルキスの他は、その傍らに立つ雌雄同のロアクルル星人の副にして人の、アリュスタ以外誰もいない。
ヴァルキスは頭を下げたままのバハーザに対し、鷹揚な態度で告げた。
「頭を上げられよ、サールス卿」
「はっ…」
「この度の卿のご協力…謝に堪えません」
「首尾よく事が運んで、良うございました」
薄笑いを浮かべて告げるバハーザに、ヴァルキスは眼を細めて頷く。
「これもサールス卿の、優れた演技力の賜でしょう」
ヴァルキスの言葉に、バハーザは指先でこめかみを掻きながら応じた。
「正直、これほど容易いとは思いませんでした。策謀家のクラード殿がいながら、大して疑いもせずこちらの話に乗られて…」
「フ…他人を罠にかける事ばかり考えていると、逆に自分が罠の中にいる事に気付かない、という事なのでしょう。もっとも、これまでの事で立場的に、追い詰められていた…のもあるでしょうが」
「なるほど…さすがのご見識ですな」
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半ば追従であることが明白なバハーザの言いように、ヴァルキスはこの男との會話に興味を無くしたらしく、事務的な口調で告げる。
「では約束の殘金は、ご指定された別の口座に」
「宜しくお願い致します」
バハーザの方も長居をするつもりはないらしく、おもむろに立ち上がると、「また何か、お役に立てる事がございましたら、いつでも…」と言い殘し、謁見の間を辭して行った。その姿が閉ざされる扉の向こうに消えると、副のアリュスタは些か眉間に皺を作り、不快げな表で思っている事を口にする。
「貴族院の諜報部員も…今や、金の亡者とは」
「そう言うな―――」とヴァルキス。
「あれが今の銀河皇國中央の実だ。ノヴァルナ様がご自分の眼で、見て來られた通りのな」
「はい」
「彼もかつては忠義の士であったに違いない。報調査局ともなれば、なおさらにな…彼はノヴァルナ様のご報告にあった、中立宙域の私設兵団『ヴァンドルデン・フォース』と同じだ。その失の発の方向が違うだけさ」
「なるほど…」
理解を示すアリュスタの腰に、ヴァルキスは腕を回して引き寄せた。雌雄同のロアクルル星人だが、その細い腰回りは的だ。
「それに、彼のような人間がいたおかげで、上手くカルツェ様を退場できた」
そう言い聞かせるヴァルキスに引き寄せられるまま、を預けたアリュスタは、し口調を軽くして言う。
「とは言え、あやうくノヴァルナ様を、殺してしまうところでしたが?」
アリュスタの言葉にヴァルキスは、「ハハハ…」と乾いた笑い聲を発した。副が指摘したのは、今年の2月3日に植民星リベルテルで起きた、ノヴァルナ殺未遂事件である。
農園管理用だと思っていた反重力プローブが、『ホロウシュ』達とバイクで突っ走っていたノヴァルナの直前で発し、重傷を負わさせたのだが、あれは実は、これまでの行で、ウォーダ家での立場を悪くしていたカルツェとその支持派を、さらに追い詰めるためにヴァルキスが畫策したものであった。ギリギリの安全距離を置いて発させる事が目的で、ノヴァルナの殺害を目的としたものではなかったのだ。
「まさかノヴァルナ様がいつも、あれほどのスピードを出しておられるとは、思わなかったからな。自したプローブも驚いてたんじゃないか?…しかしまぁ、そのおかげで、真実味は増した」
「面倒な話ですね…どうせなら、カルツェ様を生かしておいた方が、後々楽にだったでしょうに」
「前も言ったろ?…ギィゲルト・ジヴ=イマーガラ様は、ご自分の手でノヴァルナ様を討って、亡きタンゲン殿の無念を晴らしたいのだ、と」
「私怨…ですか?」
「ああ、私怨さ。現在のイマーガラ家の隆盛はすべて、セッサーラ=タンゲン殿の功労によるもの。そのタンゲン殿を無念の死に追いやったのはノヴァルナ様。そのノヴァルナ様を我等が暗殺して首を差し出しても、不興を買うだけだ」
「トーミ、スルガルム、そして事実上ミ・ガーワと、三宙域を支配するシグシーマ銀河系有數の大々名であるギィゲルト様が、私怨でノヴァルナ様を討つとは…正直なところ、失をじ得ませんね」
アリュスタがそう言うと、ヴァルキスは冷めた口調で告げる。
「星大名も所詮は人の子…という事さ。その點ではノヴァルナ様も、カルツェ様も然り。ノヴァルナ様は早々に、カルツェ様を切り捨てるべきであったのを、親という事でズルズル引きずる結果となった…」
アリュスタはヴァルキスにしな垂れかかりながら、言葉の続きを紡ぐ。
「それをヴァルキス様が、整理整頓されたというわけですね?」
“整理整頓”というアリュスタの言い回しは々的外れだが、含み笑いと共に頷いたヴァルキスは、甘えたそうにしているアリュスタの頬を指先でひとでして、自分の思いを口にした。
「カルツェ様は以前の謀叛に失敗した際、クラード=トゥズークなどという得のしれない側近など粛清して、ノヴァルナ様に忠誠を誓えば良かったんだ。トゥズークを罰せずに弟君に任せたのは、ノヴァルナ様からの宿題だったのさ。どころがカルツェ様はトゥズークをそのまま傍に置き続けた」
「その理由は?」とアリュスタ。
「カルツェ様も心では、ウォーダ家當主の座を、諦めてはいなかったって事だ。表立ってはノヴァルナ様に従いながら、トゥズークが何か策謀を巡らすのは黙認して、それが上手く行けば擔ぎ上げられてやって、當主の座に座るつもりだったんだろう…もっとも、その後に待っているのはカルツェ様対トゥズークの、決勝戦だろうけどね」
「業が深い話ですね」
そう言いながら顔を寄せて來るアリュスタに軽く口づけし、ヴァルキスは持論の開陳を続ける。
「そうだね。私がノヴァルナ様はに甘いと言ったのは、この狀況を知っていながらカルツェ様とトゥズークに対し、いつまで経っても、なんの処分も下さなかった事についてさ。こんな事を続けていたらイマーガラ家の侵攻の際、ノヴァルナ様が背後から撃たれるだけだ」
以前にも述べた通り、ヴァルキスには格的に歪んだ部分があり、ノヴァルナを破滅に導こうとしている一方で、本心から敬し、憧れていて、その気持ちを示したいと思っていたのだ。カルツェとクラードを罠に嵌め、排除したのも、ヴァルキスなりのノヴァルナへの忠節だったのである。
「前にきみにも言ったように…私は壊れているんだ。私がんでいるのは、全ての因縁から解き放たれた敬すべきノヴァルナ様が、全力でイマーガラ家と対峙して滅んでゆく姿を観ること…破滅の學というものを、私に見せて頂く事なんだよ」
「ほんとうに…しょうがないお方ですね」
そう言いながらアリュスタは眼を細め、ヴァルキスの髪を手指でおしそうに掻きでてゆく。「ああ。自分でもそう思うよ」と応じたヴァルキスに、アリュスタは囁いた。
「…ですから、これほどまでにお慕い申し上げているのでございます…」
そこに執務室のドアがノックされ、々不躾に室して來る若者。ヴァルキスの弟、ヴァルマスである。ヴァルマスは兄のヴァルキスとは似ておらず、細でどこか鋭利な刃を思わせる兄と対照的に、丸顔で溫厚そうな顔をしていた。
「邪魔をするぞ、兄者」
「ふ…ヴァルマスか」
「ヘルタスから聞いた。カルツェ様を謀殺したそうじゃないか?」
あけっぴろげに言うヴァルマスに一瞬、切れ長の眼を見開いた。見た目と同じくヴァルマスはオープンな格で、兄とは対照的だ。ただヴァルキスは自分の持たないものを持つ、このようなヴァルマスが嫌いではない。
「うむ…」
短く応じるヴァルキスに、ヴァルマスは口元を大きく歪めて告げた。
「そうか…なら、俺も死なねばなるまい」
ヴァルマスは約一年半前から、ノヴァルナに対するヴァルキスの忠誠の証…つまり人質を兼ねて、ノヴァルナのキオ・スー=ウォーダ家で、宙雷戦隊司令の座を與えられていた。今回の兄の暗躍が表面化すれば、人質となっている自分がノヴァルナから死を賜る事になるだろう…と、ヴァルマスは考えたのだ。
しかしヴァルキスは、弟の発言に首を振って反論する。
「いいや。おそらくノヴァルナ様は逆に、おまえを重用して下さるに違いない…おまえはそれに報いて、命を懸けて最後まで忠節を盡くせ。ノヴァルナ様とはそういうお方だ」
「兄者…」
ヴァルキスの言葉に、ヴァルマスは複雑な表を浮かべる。兄の様子が、ノヴァルナに重用されるだろうと示唆した自分を、羨ましがっていると、理解したからである。つくづく業の深い兄だと思う。そしてそこから導き出される結論は、アリュスタと同じであった。
「ハッハッハッ…兄者はまったく、どうしようもないな」
すると二人の會話のタイミングを見計らっていたかのように、ヴァルキスの執務機でインターコムの呼び出し音が鳴る。ヴァルキスが作パネルに指を走らせ、通信ホログラムスクリーンが展開すると、アイノンザン=ウォーダ家の筆頭家老ヘルタス=マスマが姿を現した。薄灰緑のをし、眉間に赤外線を探知できる第三の眼を持つポーラル星人のヘルタスは、驚くべき報をさらりと告げる。
「ヴァルキス様。イースキー家のギルターツ様がご逝去されました」
それを聞き、「ほう…」と目をらせながらヴァルキスは、報告を求めた。
「聞かせてもらおうか…その経緯を」
▶#14につづく
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8 156神々に育てられた人の子は最強です
突如現れた赤ん坊は多くの神様に育てられた。 その神様たちは自分たちの力を受け継ぐようその赤ん 坊に修行をつけ、世界の常識を教えた。 何故なら神様たちは人の闇を知っていたから、この子にはその闇で死んで欲しくないと思い、普通に生きてほしいと思い育てた。 その赤ん坊はすくすく育ち地上の學校に行った。 そして十八歳になった時、高校生の修學旅行に行く際異世界に召喚された。 その世界で主人公が楽しく冒険し、異種族達と仲良くし、無雙するお話です 初めてですので余り期待しないでください。 小説家になろう、にも登録しています。そちらもよろしくお願いします。
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