《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#04

バックパックのウエポンラックにライフルを戻し、代わりにポジトロンパイクを手に取ったノヴァルナの『センクウNX』に、最初に仕掛けて來たのはナガート=ヤーグマーとクローズ=マトゥであった。

ヤーグマーとマトゥの『シデンSC』がポジトロンパイクを手に、上下から迫って來る。そしてやや遅れ、前後左右からヴェール=イーテス、セゾ=イーテス、ガラク=モッカ、サーマスタ=トゥーダが仕掛けようとする。さらにセンサー反応からは、ショウ=イクマが超電磁ライフルによる、狙撃タイミングを狙っているのが分かっている。また後詰の遊撃という形で、シンハッド=モリン、タルディ・ワークス=ミルズ、モス=エイオン、カール=モ・リーラ、トーハ=サ・ワッツ、ジョルジュ・ヘルザー=フォークゼムがイクマの周囲に控える。

全方位から仕掛けて來る『ホロウシュ』。しかしノヴァルナ様はご機嫌そのものだ。まず急上昇。『センクウNX』のバックパックが放つ重力子リングが、黃を大きくした。

Advertisement

「アッハハハハハ!」

高笑いを発したノヴァルナが、ナガート=ヤーグマーの『シデンSC』に向かって行く。ただヤーグマーも、ノヴァルナの子飼いの親衛隊員だけあって、自分達の主君の行パターンは理解しており、ノヴァルナの『センクウNX』が繰り出すパイクの斬撃を、自分の『シデンSC』のポジトロンパイクで打ち防いだ。

「くく!」

だが『センクウNX』の斬撃は苛烈で高速。ヤーグマーはけ止めるのが一杯である。これに第二撃を放とうとするノヴァルナ。しかしその第二撃は、下方から突撃して來たクローズ=マトゥのパイクが阻止した。素早く突き出されたパイクの刃が、『センクウNX』のバックパックを貫こうとする。一方それに対するノヴァルナの反応も速い。瞬時に機を翻すとマトゥの『シデンSC』をやり過ごし、上から板を蹴りつけた。

そこへ四方向から殺到して來る四機の『シデンSC』。ノヴァルナはヤーグマーの機にタックルを喰らわせて後方へ突き飛ばすと、そちらから來るセゾ=イーテスの行く手を妨害。その隙に『センクウNX』は、ポジトロンパイクを大きくひと振りし、殘る三機の斬撃をまとめて打ち払う。

「くっそ強ぇ!!」

まるで自分達のきを先読みしているような『センクウNX』に、トゥーダは舌を巻いた。その直後、ガガン!と激しく揺れるコクピット。一瞬後の返す刀で振り下ろされた『センクウNX』のポジトロンパイクに、左肩から斜めへ打ち據えられたのだ。実戦なら撃破である。

「隙を見せんな。真剣勝負だつってんだろ…」

鋭く言い放つノヴァルナ。

しかしながら指揮のカージェスにも相応の考えがある。ノヴァルナの直掩役のランとササーラを分斷し、その役目をさせない事だ。

打ち合う刃から発した火花が、ランとキスティス雙方の『シデンSC』の顔に降り注ぐ。

「ジュゼ!」

ランを引き付けるキスティスの呼びかけに、ジュゼの『シデンSC』が橫合いから切りかかる。だがランの『シデンSC』は機に特化した機である。素早く機を半回転させて位置をれ替えると、キスティスとの同士討ちを狙った。

「くっそぉ!!」

咄嗟にスロットルを開くと同時に縦桿を引いて、キスティスは突っ込んで來るジュゼの『シデンSC』を、紙一重で回避する。だが真っ直ぐ通り過ぎたジュゼの機は、ランのいい的だ。一閃されたランのポジトロンパイクの刃が迫る。

「!!」

しかし次の瞬間。ランは斬撃を中止して後方へ飛びずさった。すると元いた位置にキュエル=ヒーラーの放った銃弾が通過する。さらに二弾、三弾と飛來する銃弾を、ランは右へ左へ躱しながら距離を取った。

ただヘルメットには被弾警報が鳴り響く。機重視のランの機に正確に照準し続けられるのは、キュエルの向上した撃技の賜だ。

それだけでなくキスティスの斬撃の力強さや、ジュゼの間合いを詰めて來る素早さなどは、『ホロウシュ』の先輩格のランの口許を、自然とほころばせるレベルのものである。

そこへキスティスも超電磁ライフルでの銃撃に加わる。こちらの照準も以前より正確さが向上しており、ランの回避運は切迫を増した。さらに再びポジトロンパイクを構えて突撃して來る、ジュゼの『シデンSC』。二機の銃撃でコースを限定させ、距離を詰めたジュゼが格闘戦で仕留める―――三機の戦変更を察知したランは、スロットルを全開にして一気に急加速した。

「うそっ!!」

「速っ!!」

銃撃を浴びせていたキュエルとキスティスが、同時に驚きの聲を上げる。二人はランがすでに全速を出していると勘違いしていたのだ。稲妻のような機で二人の照準を外したランは、超鋭角的なターンをかけて、突撃して來ているジュゼの機へ向かう。瞬時の判斷、向かって來るランの方が速いと悟ったジュゼは、無理にすれ違いざまの斬撃を繰り出すのではなく、ポジトロンパイクを短く持ち直して防に徹した。次の剎那、ランの放った斬撃がジュゼの機を揺さぶる。だが激しくはない。被害判定は機の右前腕部を切り裂かれ、手首から先が制不能になっただけで済んだ。

間を置かず援護を始めるキュエルとキスティスの銃撃を躱しながら、ランは自分を手こずらせるようになった三人の戦いぶりに小さく頷いた。

▶#05につづく

    人が読んでいる<銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください