《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#08
ただそれでも現実は現実だった。スルガルム宙域首都星系スルガルム、その第四星シズハルダは、周囲をおよそ2500隻の宇宙艦に囲まれている。スルガルム宙域とトーミ宙域を領有する星大名、イマーガラ家の恒星間打撃艦隊の総力が集結しているのだ。
そしてそれらは決して、漫然とシズハルダの周囲に浮かんでいるのではなく、イマーガラ家が保有する二十七の基幹宇宙艦隊ごとに、見事な隊列を組んでいた。まるでこれから彼等が為そうとしている事に対し、鉄の意思を示さんとしているかの如くに。
この景は星シズハルダだけでなく、スルガルム宙域、トーミ宙域、そしてイマーガラ家が事実上支配しているミ・ガーワ宙域の全域に、當主のギィゲルト・ジヴ=イマーガラによる、皇都星キヨウ上軍進発の演説と共に中継されている。
「―――これをもって、我は皇都の政を安定化させる事が、すなわち全銀河、ヤヴァルト銀河皇國に暮らす全ての人民に、秩序に基づく平和で穏やかな日常を與える事となり、それを為す事が出來るのが我がイマーガラ家であり、我等はそれを為さねばならぬと確信したのである! それは何故か!? 正義が我等と共にあるからに他ならないからだ!!」
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演臺の上で拳を振り上げるギィゲルトの、よくえた腹が揺れる。背後の巨大な紫紺のタペストリーに、蓄の錦糸でい描かれた“丸に二つ重ね銀河”の、イマーガラ家家紋が、銀のを帯びて浮かび上がっていた。そのギィゲルトの両側には、嫡男のザネル・ギョヴ=イマーガラと二十六人の艦隊司令が、並んで立っている。そしてギィゲルトはさらに演説を続けた。
「スルガルム、トーミ、千八百億の民よ。そなた達は皆、我の子である。我と共に立ち、我と共に進め! そして銀河に平和と安寧をもたらす、誇りある者としての栄を、その手に摑み取るのだ!!!!」
締めくくりの言葉と共に、スルガルム、トーミの両宙域中で、中継を見る領民の間から歓聲と拍手が巻き起こる。ノヴァルナ達からの視點では、悪の権化のようなギィゲルトとイマーガラ家だが、その領域統治はあらゆる面で良で、領民達からも高い支持を得ていたからだ。
すると演説を終え、演臺を降りかけたところでギィゲルトと嫡男、艦隊司令達の姿は霧のように消えた。演説會場にいた彼等は全て等大ホログラムで、実の彼等はすでに、各々が座乗する艦隊旗艦の中にいたのである。
総旗艦『ギョウビャク』の艦橋、參謀達が半円狀に囲む総司令席に著いたギィゲルトは、演説の際の熱量を全くじさせない聲で、上軍の進発を命じた。
「これより出航する」
NNL(ニューロネットライン)の中継放送の畫面は、ギィゲルトの演説から宇宙空間に切り替わり、キヨウ上軍の進発風景を捉える。取材用のシャトルで現地にいるリポーターが、き始める艦隊の狀況を伝えて來た。
「あ。いまき始めました! 整然と並んだ上軍艦隊の前方部分、四つの艦隊が今、前進を始めました。數は合わせて四百隻ほどでしょうか!」
するとこの中継畫面に合される形で、アナウンサーと解説者らしき異星人の、初老の男が映し出される。異星人の男はササーラと同族のガロム星人だった。こういう場に呼ばれているのであるから、退役軍人の軍事評論家か何かだろう。
「イマーガラ家上艦隊がき出しました。まず四つの艦隊だけという事ですが、これはどのような意味があるのでしょう?」
アナウンサーが解説者に尋ねると、ガロム星人の解説者は厳めしい顔つきには似つかわしくない、非常に穏やかな言葉遣いで応じた。
「これはですね、今回のような非常に大規模な艦隊が出航する場合、全部の艦隊が一斉にき出すというのではなく、幾つかの集団に分かれて出航する決まりになっているんです」
「それはなぜですか?」
「航行序列というものがありましてですね、目的地まではその序列に従って行した方が、全の統制が取り易いわけです。宇宙空間は広いですから、各々の艦隊がバラバラにくと、艦隊ごと迷子になってしまという事も起きますので」
「迷子ですか?」
「ええ。その結果、戦場に遅參し、味方戦力が減った狀態で、戦闘に突しなければならなくなるというケースもあります」
「なるほど…すると次の集団がき出すのは、いつになりますでしょう?」」
「第一陣が全艦、出航し終わったあとになりますので、一時間後ぐらいになると思います」
アナウンサーと解説者のやり取りは、予め用意されていたものらしく、“一時間”という待ち時間の長さにも、アナウンサーは何の反応も見せずに、話題をイマーガラ家上軍の戦略に向ける。
「はい。さてそこで、今後のイマーガラ家上軍の戦略ですが、どのようなものになるとお考えですか?」
「はい。作戦の詳細はイマーガラ家から公式には発表されておりませんので、推測に留まりますが、まず上軍はミ・ガーワ宙域へり、同盟を結んでいるトクルガル家がらの応援部隊と合流。そこからオ・ワーリ宙域を抜け、中立宙域を通ってヤヴァルト宙域の皇都星キヨウを目指す事になるのは、ほぼ間違いないでしょう」
「オ・ワーリ宙域は、イマーガラ家と敵対するウォーダ家が治めていますね。やはり戦う事になるとお考えですか?」
アナウンサーの問いに、ガロム星人の解説者は、さも當たり前のように軽く頷いた。
▶#09につづく
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