《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#09

その後に続いた解説者とアナウンサーのわす言葉は、イマーガラ家とその領民達側から見た、ノヴァルナとウォーダ家に対する考え方を端的に示していた。

「キヨウ上の途中でウォーダ家を討伐しておく事は、イマーガラ家にとって必要不可欠な案件です」

冷靜な口調のガロム星人解説者に、アナウンサーは「それはなぜですか?」と事務的に問う。

「はい。ウォーダ家の現當主ノヴァルナ・ダン=ウォーダの父親で、故人のヒディラス・ダン=ウォーダは、ナグヤ=ウォーダ家の當主として生存していた頃、ミ・ガーワ宙域へ対する侵略拡張政策によって、家勢を高めようとしていました。その最たるものが、ミ・ガーワ宙域獨立管領のミズンノッド家と結託した、七年前のアズーク・ザッカー星団への侵攻です」

「はい」と、合いの手ように言葉を挾むアナウンサー。

「その後この目論見は、我がイマーガラ家のトクルガル家への支援によって、領域の回復をもって打ち砕かれ、ヒディラス公も急死しました」

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このヒディラスの急死は、當時のイマーガラ家宰相セッサーラ=タンゲンの策略によるものだが、報統制によって領民達には知らぬところである。

「そして現在、ヒディラス公の志を継いだノヴァルナ・ダン=ウォーダが、部紛爭の末、ウォーダ家を統一してしまっています。これは危険な狀態です」

「危険な狀態とは、イマーガラ家にとってですか?」

「そうです。ノヴァルナ公は若い頃…今もまだ若いですが、野で攻撃的な格をしていて、家中で問題ばかり起こしていました」

そこにアナウンサーが、ノヴァルナの暴さを視聴者に示す、エピソードをれて來た。

「キオ・スー城では、中庭に植えられていた、星帥皇室から賜った“金華の松”の幹を、自分のBSHOで折ったと聞きます」

「ええ。これが星帥皇室の全盛期であったなら、それだけで死罪になるほど、星大名家にとっては重大な事件ですからね。星帥皇室の権威が落ちている現代だった事は、ノヴァルナ公にとっては悪運が味方したのでしょう」

頷いたアナウンサーは話を本筋に戻す。

「確かにそのような格のノヴァルナ公が支配する、オ・ワーリ宙域を通過するのは、危険だと思われますね」

「はい。しかもノヴァルナ公も父親のヒディラス公と同じく、侵略拡張政策を取ると思われており、これを放置して上軍がキヨウへ向かえば留守を狙って、ウォーダ家が再びミ・ガーワ宙域を侵略する可能は、大きいと言わざるを得ません」

「事前に和平渉などを行って、危機を回避しておくなど、予防策は無かったのでしょうか?」

アナウンサーの問い掛けにガロム星人解説者は、ノヴァルナとカーネギー=シヴァの確執を引き合いに出し、都合のいいように解説する。

「それは尚更危険ですね。およそ二年前、ノヴァルナ公は名目上とは言え、ウォーダ家の主家で、オ・ワーリ宙域の領主であったシヴァ家のカーネギー姫を、謀反の嫌疑をかけて一方的に追放しました」

「カーネギー姫追放事件ですね」

「はい。そのシヴァ家は當時、ミ・ガーワ宙域の舊領主キラルーク家と、和平協定を結んでおり、両家の関係を挾んでイマーガラ家は、ウォーダ家とも停戦していたのです。この事を承知しながら、ノヴァルナ公はシヴァ家を追放したのですから、和平渉を行って立しても、それを利用して奇襲攻撃を仕掛けて來る、可能の方が高いでしょう」

カーネギー=シヴァ姫の追放事件は、彼の方から叛旗を翻そうとしていたのであって、ノヴァルナが先手を打って彼を追放した事で、オ・ワーリ宙域に戦が起きるのを、未然に防いだというのが真実である。それにシヴァ家とキラルーク家の和平協定に代わるものとして、アイノンザン=ウォーダ家とイマーガラ家の重臣モルトス=オガヴェイの間で、より実効のある休戦協定が結ばれており、ウォーダ家とイマーガラ家の休戦は維持されていた。

ところが解説者の言葉には、そういった真実が全く含まれていない。これではまるで、暴なノヴァルナがイマーガラ家との停戦の破棄も念頭に置いたうえで、主筋であるシヴァ家をオ・ワーリ宙域から放逐したように聞こえる。これはこの解説者がイマーガラ家の退役軍人だということから、イマーガラ家の領民に対する喧伝のための役目を與えられているか、もしくはイマーガラ家が真実を一切、匿したままにしているかのどちらかであろう。

いずれにしても“新封建主義”下の宙域國では、それぞれの星大名によって報統制が行われているのが當たり前であって、イマーガラ家の領民達は、ウォーダ家が侵略拡張政策をとる攻撃的な悪の星大名家で、イマーガラ家はそのウォーダ家のミ・ガーワ宙域への侵略行為を防いでいる、正義の星大名家だという報しか與えられない社會狀況の中で生活しているのであるから、キヨウ上の途中でウォーダ家を討伐しておくのは理に適っていると、大半の領民は考えていた。

▶#10につづく

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