《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#11
戦場となるであろう第五星と第六星の公転軌道の中間點に、両軍が到著するのとタイミングを合わせるように、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラの総旗艦『ギョウビャク』は、直卒の第1艦隊と共に小星帯フォルクェ=ザマの中へ進した。その目標は、第八星ルグラに近い側で安定した軌道を持つ大型の小星、デン・ガークだ。
デン・ガークは星ラゴンの月以上の大きさがあり、北極部に穿たれた巨大な二重のクレーターが特徴となっている。ギィゲルトは『ギョウビャク』をそのクレーターへ著底させ、周囲を第1艦隊の宇宙艦で囲んで護衛態勢を取らせた。
艦橋の戦狀況ホログラムには、こちらの半數しかないウォーダ艦隊を呑み込もうとしている、味方の大艦隊のグラフィックが映し出されている。またウォーダ側には、恒星間警備艦隊を再編した遊撃部隊の表示も、周辺に點在。狀況に応じて、戦闘に加わって來る姿勢を見せていた。
遊撃部隊の大半は偵察用重巡航艦を旗艦とした、軽巡と駆逐艦で構された部隊であって、戦闘力はそう高くない。ただこの中の二つの部隊は巡航戦艦と軽空母を有し、基幹艦隊に準ずる規模で危険度が高い。そのためギィゲルトは、第22及び第23艦隊を分離し、この危険度の高い警備艦隊をマークさせていた。
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さらにホログラム上には、オ・ワーリ=シーモア星系を航行している、全ての貨船団も表示されている。通常ならこういったものは、補助的報として戦狀況ホログラムに直接表示はされないものだが、ギィゲルトはこれらをウォーダ軍の哨戒船だと見抜いており、その向を監視するため、今回は表示させていたのである。それによるとここ、フォルクェ=ザマ近辺にも二つの貨船団がいるようだ。おそらくこの本陣の位置もほどなく知られるだろうが、ギィゲルトからすればむしろ好都合である。別隊を率いたノヴァルナが、この本陣を直接狙って姿を現すに違いなく、それを仕留める事で勝負を一気につけられるはずだからだ。
その際一番警戒すべきだったのが、宇宙要塞『マルネー』の高出力要塞主砲で狙撃される事であったが、その要塞はイェルサス=トクルガルの艦隊が、すでに陥落させている。
“これはもう、どう見ても詰み…じゃの”
すべてに対抗策を打たれている現狀を見て、ギィゲルトは不意に、ノヴァルナを哀れに思えて來た。師父セッサーラ=タンゲンを死に追いやった憎い若造ではあったが、三宙域を支配する大々名が昨日今日當主になったばかりの子供相手に、せめて命乞いの機會ぐらい、與えてやっても良いのではないか…そう考えたギィゲルトは、通信參謀を呼び、ノヴァルナへ対し降伏勧告を発信するよう命じた。
“そうよのぉ…平低頭、まことを盡くして許しを乞うなら、あらゆる人も財産も権利も剝奪してただ一人、我が領地のどこか辺境の植民星で平民として、暮らさせてやってもよかろう”
通信科のオペレーターへ命令を伝える通信參謀の後ろ姿を視界に、ギィゲルトは余裕の表で底意地悪く思考を巡らせた。そのような屈辱的な待遇の生涯に、あの尊大な若者が耐え得るとは思えないからだ。
そうなるとこちらの降伏勧告など、無視するであろう…通信參謀の「全周波數帯での発信、完了致しました」の聲に、ギィゲルトは一人納得した。無視するならするで、こちらから差しべた救済の手を、ノヴァルナの方が拒否した事になって、それでいい。
全周波數帯で発信されたこの降伏勧告は、ラゴン周辺に展開中のウォーダ家全軍へ屆いた。そしてこれに反応したのはノヴァルナではなく、妻のノア姫だ。
ノアは夫の格から、こういったものは無視せず反応するであろう事。だが現在は極行中で、位置を特定される恐れがあるため、返信したくとも出來ない狀況である事から、自分が夫にり代わって返信しようと考えた。その容は勿論、夫がこのような狀況で必ず発するであろう言葉である。
「先程の降伏勧告への、返信が屆きました」
カレンディ星人の通信參謀が、ウォーダ家からの返信文を記したデータパッドを片手に、早足で近づいてくると、半ば予想が外れたギィゲルトは「ほほぅ…」と、片方の眉を軽く上げた。
「読め」
ギィゲルトが命じるが、テントウムシのような頭を持つ、カレンディ星人の通信參謀は、口元の小さな角をせわしなくかしながら、「はっ…しかし…」と口ごもる。何か不都合な事でもあるのか?…と問う眼で促すギィゲルト。
「構わん、読め」
「ははっ。“発:ウォーダ家統合軍総司令部、宛:イマーガラ家宇宙軍総司令部、本文:―――”」
そこで通信參謀は僅かに躊躇いを見せ、そして言い切った。
「やなこった!」
それはノアが発した返信であったが、まさにこの狀況で、ノヴァルナが発する言葉そのものであった。これを聞いた者すべての脳裏に、いつもの不敵な笑みを浮かべた、星の海を翔る風雲児の顔が浮かび上がる。
「ホッホホホホ!…面白い。面白いぞ、ノヴァルナ・ダン=ウォーダ!」
高笑いを放ったのはギィゲルトだ。太った腹を揺らせながら司令席を立ち、參謀達へ言い放つ。両軍の主力部隊は砲戦距離目前であった。
「もはや問答無用じゃ。全艦任意に攻撃開始。我のパイロットスーツを用意せよ。『サモンジSV』で出るぞ!」
▶#12につづく
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