《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#13
前衛を務める各艦から、悲鳴のような損害報告がもたらされる総旗艦『ヒテン』の艦橋では、総司令代理の大役を仰せつかったナルガヒルデが、累積していく味方艦隊の損耗數を、無な眼で見據えていた。
戦闘開始以來約一時間…完全破壊された味方艦は戦艦15・重巡8・軽巡16・駆逐艦18・正規空母4・軽空母2・BSI等58。ほぼ基幹艦隊一個分だ。無論これは“完全破壊”された數であって、その數倍の艦が相応の損害をけている。
だがナルガヒルデの第1艦隊、ルヴィーロ・オスミ=ウォーダの第2艦隊、そしてカーナル・サンザー=フォレスタの第6艦隊は、まだ一隻の落艦も出してはいない。半球陣の中央やや後方で集し、戦闘に參加していないからだ。
自らはかず、周囲の味方が次々と倒されていく…キリキリと胃が痛みそうなこの狀況でも、『ヒテン』の司令席に座るナルガヒルデの表に変化はない。そうでなければまだ二十代後半のナルガヒルデが、ウォーダ家の存亡をかけたこの戦いで、ノヴァルナから司令席に代理として座るよう命じられるはずもない。
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「味方がやられてる狀況で、いつまでもこうしてはおれん。俺は出るぞ!」
そう連絡をれて來たのは、第6艦隊司令でBSI総監のカーナル・サンザー=フォレスタであった。『ホロウシュ』のランの父親のフォクシア星人は、“鬼のサンザー”とも呼ばれる猛將で、居ても立っても居られないらしい。
「出られて…どうされるのです?」
落ち著いた口調で問うナルガヒルデ。
「決まってる。俺のBSI部隊で敵の包囲を突破し、ギィゲルト殿の本陣を突く」
「本陣の位置は分かっていても、総旗艦『ギョウビャク』の位置は特定できていません。むやみに突撃して、敵本陣に達する事に功したとして、『ギョウビャク』に逃げられたのでは本末転倒です」
「逃がしはせん!」
気持ちに任せて言い放つサンザー。するとナルガヒルデは“鉄の”の本領を発揮して、この狼のような猛將にぴしゃりと告げた。
「論で押し切っていい話ではありません。安易な抜け駆けでギィゲルト殿を逃がした場合、ノヴァルナ様への不忠の極みとなる事への覚悟はお有りなのですか、フォレスタ様」
「むぬ! 不忠だと!?」
娘のランもそうだが、サンザーも“不忠”という言葉には、敏な男だった。彼等の種族フォクシア星人は、約三百年前の銀河皇國とモルンゴール恒星間帝國の戦爭の際、重大な局面で雙方へ寢返りを繰り返した事で、種族全が不忠者の日和見主義者だというイメージを持たれており、サンザーのフォレスタ家はその払拭を、生涯の目的として來た。そのため“不忠”や“日和る”といった批判には、我慢ならないものがあるのだ。
「ニーワス、おまえは―――」
生意気な小娘が!…と言いたげな眼で怒聲を発しようとするサンザー。しかしこの辺りの手綱捌きもまた、ノヴァルナから信頼を得ている所以だった。
「そのような事がお分かりにならない、フォレスタ様ではないと知った上で、あえて失言させて頂きました。それについてはお詫び致します」
「む…」
教師然とした態度で、そのように落ち著いて言われると、途端にサンザーはバツが悪くなる。
「我等がいまだ戦闘に參加せずにいるのは、今はノヴァルナ様からの突撃命令を待つ事が、我等の為すべき事の全てだからです。その時は必ず來ると信じて、どうかお待ちください」
さらに言葉を続けるナルガヒルデ。するとサンザーは、通信ホログラムスクリーンの中のナルガヒルデが、司令席の肘掛けに置いた右手を、固く握りしめているのに目を留めた。
常に冷靜沈著に見えるナルガヒルデとて、武の道を選んだ者である。味方の艦が次々と撃破されていく狀況で、何もしない…いや、何もできない今に、忸怩たるものをじているのは、自分と同じに違いない。そう理解したサンザーは、大きく息を吐いて「わかった。騒がせて済まなかった」と詫びをれる。
「だがノヴァルナ様からの突撃命令が出た時は、俺の『レイメイ』が先陣を切らせてもらう。いいな?」
ニタリ…と攻撃的な笑みを浮かべて告げるサンザーに、ナルガヒルデも僅かながら口角を上げて応じた。
「その時は、ご存分に…」
しかし事態は予斷を許さない。第五星公転軌道付近の主戦場から離れた、小星帯フォルクェ=ザマに本陣を置いたイマーガラ軍総旗艦、『ギョウビャク』の艦底部の一部が開き、大型小星デーン・ガーク表面へ降り立つ、巨軀のBSHOの姿があった。ノヴァルナの『センクウNX』より二回り以上も巨大なその機は、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラ専用機『サモンジSV』である。
『サモンジSV』は、反重力ホバーで『ギョウビャク』の下から出ると、小星デーン・ガークの特徴である巨大クレーターの端へ移。右肩に擔いでいた長砲の大型ランチャーを構えた。パイロットスーツ姿のギィゲルトが言う。
「これより超空間狙撃砲、『ディメンション・ストライカー』を使用する」
▶#14につづく
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