《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#05
キノッサが目標にしたのは、自分と同じように単機行をしているイマーガラ軍のASGUL、『ゼラ・ランダン』であった。ウォーダ軍はキノッサが搭乗している『ルーン・ゴート』と、その先代の『アヴァロン』を併用しているが、イマーガラ軍は二十年ほど前から、『ゼラ・ランダン』をバージョンアップしながら使用し続けている。
ただその過程で『ゼラ・ランダン』は二つのタイプに分かれていた。一つは赤を基調に塗裝された、火力重視の『バスター』。もう一つは青を基調に塗裝された、機重視の『スレイヤー』である。キノッサの目指すは赤い塗裝の『バスター』だ。『スレイヤー』は対BSIユニットとして機を上げているため、あまり相手にしたくないという気持ちもある。
“上から行くッス!”
キノッサはスロットルを全開にして、機を加速上昇させた。形狀は攻撃艇形態のまま、一撃離戦法を仕掛ける。ASGUL同士の戦闘ではセオリー通りだ。
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上空から一気に間合いを詰め、照準センサーのモニターにロックオン表示がなされた直後、キノッサはトリガーボタンを押し込んだ。機右舷に裝備されたブラストキャノンが、ビームを連続発する。
ところが敵の『ゼラ・ランダン』は命中の直前に、機を橫りに錐みさせ、キノッサ機のビームを回避と同時に人型へ変形すると、ブラストキャノンを裝備した右腕を突き出した。
「!!」
敵の思わぬ素早い反応に驚いて、咄嗟に縦桿を引くキノッサ。その機後部を敵の『ゼラ・ランダン』が放ったビームが掠めて、僅かながら破片と火花を飛び散らせる。
「マズいッス!」
火力重視の赤タイプの機とは思えない敵機の俊敏さに、キノッサの背筋に戦慄が走った。つまりはそれだけの技量を持つ、パイロットが乗っているという事になるからだ。キノッサは機を再加速し、反撃して來ようとしている『ゼラ・ランダン』を引き離しにかかる。だが『ゼラ・ランダン』も再び、一瞬で攻撃艇形態に変形すると、猛然とキノッサを追撃し始めた。
「んなぁあああ!!」
ヘルメットにロックオン警報が鳴り、キノッサは機を右へ左へ、必死に不規則蛇行させる。敵は練パイロットが何らかの理由の結果として、単獨飛行となっていただけで、未なせいで味方とはぐれたわけでは無かったようだ。
“ツッ…ツイてないッスーーー!!!!”
心の中でぶキノッサの眼前に飛び出して來る、イマーガラ軍の駆逐艦。その迎撃火がキノッサ機の方を向く。どうやら駆逐艦は、キノッサが攻撃して來ると勘違いしているようだ。
「ちょ、ちょ、ちょっとちょっと!!」
前方に迫る駆逐艦からもロックオン反応をけ、キノッサは猿顔を強張らせた。自分には主君ノヴァルナは無論の事、『ホロウシュ』に比肩するような縦技は無い事を、自覚しているキノッサである。そんな自分に出來る事と言えば、びながらとにかく縦桿をかすだけだ。
「ひえええええええ!!!!」
ノヴァルナの配下となって約五年。役職名もない単なる雑用係から、事務補佐という肩書の雑用係まで“出世”する一方、ASGULのパイロットとしても実戦の経験を積んだが、技量は大して向上していない。戦果もASGULが通算五機、平均すれば一年に一機の撃破數しかない。
だがそれでも何より重要なのは、生き延びているという事だった。正規のBSIユニットに乗るパイロット―――特に親衛隊仕様機以上のパイロットからすれば、雑魚扱いのASGULだが、それを縦するのは生きている人間である事に変わりはない。彼等は彼等で戦い、自らの技量と運の狹間で、生き延びる事に死力を盡くしているのだ。
「死んでたまるかッスーーー!!!!」
駆逐艦のビーム砲連を紙一重で躱すキノッサ。幾つかのビームはその機の表面を削っていく。すると追撃して來た『ゼラ・ランダン』は、同士討ちを恐れたのかコースを変えて離した。次の瞬間、キノッサは『ルーン・ゴート』が裝備していた、二発の対艦導弾を発する。
だがその二発は駆逐艦の舷側に命中する直前に、迎撃のビームをけて発を起こし、敵艦に損害はない。ただこれは危機をするため放った、キノッサの牽制であり、対艦徹甲弾への迎撃で火力が鈍った駆逐艦の艦底部を、『ルーン・ゴート』は速度を落とさず潛(くぐ)り抜けていく。
「手柄を立てて、ネイを迎えにいくんスからぁ!!」
と思った瞬間、潛り抜けた駆逐艦の向こう側にいたのは、イマーガラ軍BSIユニット『トリュウ』の三機であった。しかもそのうちの一機は親衛隊仕様機の『トリュウCB』だ。中隊長以上の指揮機に違いない。それを見てキノッサは絶で頭の中が真っ白になる。
別のウォーダ軍部隊へ、遠距離撃を行っていたと思われる三機の『トリュウ』は、不意に飛び出して來たキノッサの『ルーン・ゴート』に、“なんだ、雑魚がこんな所に”と言わんばかりで量産型の一機が、面倒臭げに超電磁ライフルを向けて來た。
「お…終わりッス…」
呟くキノッサ。しかしその量産型『トリュウ』は、突如として銃口を別方向へ向ける。そして発。キノッサを狙っていた『トリュウ』は、トリガーを引く前に砕け散った。続いてキノッサの耳に屆いた通信音聲は、トゥ・シェイ=マーディンである。
「下がれ。キノッサ!!」
▶#06につづく
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