《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#10
マーディンとキノッサが自分の中隊と合流して、一時的に母艦へ帰投を果たしていた頃も當然、イマーガラ軍本陣の中心付近では死闘が続いていた。
攻めるウォーダ軍はノヴァルナと『ホロウシュ』。そして第1艦隊から発進し、イマーガラ軍の迎撃を突破して飛來した、量産型BSIの小部隊。守るイマーガラ軍はギィゲルトの親衛隊と、こちらも第1艦隊からの増援の量産型BSIだった。數はイマーガラ軍の方が多いが、ウォーダ軍は気力で優っているようにも見える。
「うおおおおおお!!!!」
小星デーン・ガークの地表で、中央突破を図ったノヴァルナが、『センクウNX』の両手に握るポジトロンパイクを一閃させた。行く手を妨げようとしていた敵の量産型『トリュウ』が、袈裟懸けに両斷される。真っ二つになった敵の機を搔き分け、ギィゲルトの『サモンジSV』との間合いを詰めようとするが、先に『サモンジSV』が超電磁ライフルの銃口を、『センクウNX』の進路に向けていた。
Advertisement
「チィ!」
瞬時にそれに気付き、舌打ちと共に縦桿を引くノヴァルナ。反重力ホバリング狀態の『センクウNX』が、機を急角度にらせると、ギィゲルトの放った銃弾が左脇腹を、紙一重で掠めていく。
間合いを詰め直そうとするノヴァルナだが、その時には『サモンジSV』も素早く距離を取っている。五つの小型対消滅反応爐を持ち、三人でる三座式の『サモンジSV』は、戦闘中も縦士は機機に専念していられるだけに、巨ながら驚くほど軽快なきを見せ、ノヴァルナの手を焼かせていた。遠距離からの銃撃では仕留められない、と判斷しての近接格闘戦を狙ったノヴァルナの意図を見抜き、ギィゲルトが距離を置く戦を取っていたのだ。
「よいぞ。そのまま奴を、近寄らせるでない」
ギィゲルトは『サモンジSV』のコクピットで、前に座る二人の部下へ満足げに指示を出す。そして小さくとも視線の鋭い眼を細めて続けた。
「それに狀況が好転する前に、ノヴァルナめを追い詰めて…例の“トランサー”とやらの解放されては厄介じゃからの」
Advertisement
ギィゲルトがノヴァルナとの近接格闘戦を避けている、もう一つの理由がこれであった。ノヴァルナが窮地に立たされ、死を目前にした際に発させる、BSHOとの超深々度サイバーリンク、“トランサー”。ギィゲルトはノヴァルナにそれを発させるのを避けるため、距離を置き続けていたのだ。そしてこのノヴァルナの“トランサー”能力保有をギィゲルトに伝えたのは、イマーガラ側に寢返ったヴァルキス=ウォーダである。
“トランサー”の概念は以前から知られてはいたが、それはヤヴァルト銀河皇國の全NNL(ニューロネットライン)システムを統括する、星帥皇と一部の上級貴族のみが有する特殊能力だと考えられていた。
ところが近年になり、一般人の中にも程度の差こそあれ、生まれつきそういった能力を持つ者が存在する事が判明した。発見が遅れたのは“トランサー”を発させるには基本的に、BSHOの縦適を得られるレベルのサイバーリンク深度が必要で、そういった人間はそう多くないからだった。
ただこれはまだ銀河皇國中央を発祥として、その近郊宙域でようやく広がり始めた報であって、ノヴァルナも、キヨウへ向かう途中に戦した、私兵集団『ヴァンドルデン・フォース』のエースパイロットであったベグン=ドフから初めて、自分が“トランサー”である事を聞かされたのだ。
オ・ワーリに戻ったノヴァルナの口から、自分がその“トランサー”であった事を聞かされたヴァルキスは、重要報としてイマーガラ家に伝えた。ギィゲルトがこの戦いでノヴァルナの座乗艦に対し、超空間狙撃砲『ディメンション・ストライカー』での超遠距離狙撃にこだわったのも、接近して來たノヴァルナが『センクウNX』で自ら出撃し、“トランサー”を発させる事態になると、非常に厄介だと考えたからである。
だがノヴァルナには自が戦ったベグン=ドフや、星帥皇テルーザ・シスラウェラ=アスルーガのような、自分の意志で“トランサー”を発させる力はないらしいという、“弱點”までをもヴァルキスは伝えていた。そこでギィゲルトは萬が一、『センクウNX』に乗ったノヴァルナに接近を許した場合の、対抗策も考えていたのである。この“近接戦闘でノヴァルナを迂闊に追い詰めない”、という今の戦がそうだ。
こう聞くと些か消極的に思えるが、ギィゲルトの意図は何も、ノヴァルナを逃がそうと言うのではない。充分な數のBSIユニットで一斉に押し包み、數の力で潰してしまおうと言うのである。
幾ら凄腕のパイロットとは言え、何十何百というBSIを一度に相手取って勝利する事など、本の神でも無い限り不可能だ。そしてイマーガラ家にはそれだけの數の、BSIを揃えるだけの力がある。
事実、ノヴァルナの本陣奇襲に浮足立っていたイマーガラ家全軍も、次第に統制を取り戻しつつあった。ともかく戦力においてはウォーダ軍の倍以上を有しているのだ。今は必死に主君の周囲を斬り防いでいる『ホロウシュ』も、いずれは押し寄せる數の前に力盡きてしまうだろう。ギィゲルトにすれば、そうなるまでの時間稼ぎを行えばいいのだ。
「星キイラの初陣では五十機の我が軍BSIを、“トランサー”の発で葬ったと聞くが、百機…二百機ではどうであろうな?」
『サモンジSV』に超電磁ライフルの牽制撃を行わせながら、ギィゲルトは僅かだが余裕の笑みを見せた。かつての師父…前宰相のセッサーラ=タンゲンが恐れたノヴァルナの、正が見えた気がしたのだ。
牽制撃とは言え正確な照準に、回避を加えた『センクウNX』の追撃が、また幾分か遅延する。戦狀況ホログラムを見遣るギィゲルト。機作は敏腕の縦士と機関士に任せておけば問題ない。
戦狀況ホログラムは態勢を立て直し始めた自軍艦隊が、ウォーダ軍の本陣突部隊三個艦隊を、外側から包み込もうとしている狀況を表示している。包囲網が不格好なのは、実戦経験のない司令の艦隊だが、今は致し方あるまい。
その外側には殘りのウォーダ艦隊がいるが、これまでの戦闘ですでに戦力を相當消耗しているらしく、包囲網を突き崩すほどの勢いは無さそうだ。
“どれほどの能力か知らんが、戦(いくさ)は數を揃えたるが勝ち。一人二人の異能を頼んで、どうにかなるものでは無いが道理じゃ。のう、ノヴァルナ殿…”
ギィゲルトは必死に食らいつこうとしている、ノヴァルナの『センクウNX』の姿を、全周囲モニターで眺めながら心で語り掛ける。
狙っていた専用艦の『クォルガルード』からではなく、どこからともなく突然、眼の前に出現した『センクウNX』には度肝を抜かれたが、凌いでみれば何の事は無い、厚みのない薄っぺらの攻勢だったのだ。
ただギィゲルトはすぐに、自分自でその考えを否定した。結局、最後にものを言ったのは、戦力拡充を左右する國力の差だったからである。
オ・ワーリ宙域をようやく統一したばかりのウォーダ家に対して、スルガルムとトーミ、さらに実質的にミ・ガーワまでの三宙域を支配するイマーガラ家では、軍備を増強するための幹である経済力が、段違いである事は言うまでもない。おそらくノヴァルナは、ノヴァルナなりに必死に軍備を整えたのであり、それを國力差を笠に來て薄っぺらいと嘲るのは、星大名家當主として相応しい事ではない…それがギィゲルトの、思い直した考えだった。
そうこうするうちに、『サモンジSV』のコクピットの戦狀況ホログラムは、勢を立て直したイマーガラ軍のBSI部隊が、大挙して援護に集まり始めた様子を表示し始めたのである。
“これで終わりじゃ”
二重の意味でので呟いたギィゲルトは、『センクウNX』への牽制撃で空になったライフルの弾倉を、新しいものへと換させた。
▶#11につづく
モテない陰キャ平社員の俺はミリオンセラー書籍化作家であることを隠したい! ~転勤先の事務所の美女3人がWEB作家で俺の大ファンらしく、俺に抱かれてもいいらしい、マジムリヤバイ!〜
【オフィスラブ×WEB作家×主人公最強×仕事は有能、創作はポンコツなヒロイン達とのラブコメ】 平社員、花村 飛鷹(はなむら ひだか)は入社4年目の若手社員。 ステップアップのために成果を上げている浜山セールスオフィスへ転勤を命じられる。 そこは社內でも有名な美女しかいない営業所。 ドキドキの気分で出勤した飛鷹は二重の意味でドキドキさせられることになる。 そう彼女達は仕事への情熱と同じくらいWEB小説の投稿に力を注いでいたからだ。 さらにWEB小説サイト発、ミリオンセラー書籍化作家『お米炊子』の大ファンだった。 実は飛鷹は『お米炊子』そのものであり、社內の誰にもバレないようにこそこそ書籍化活動をしていた。 陰キャでモテない飛鷹の性癖を隠すことなく凝縮させた『お米炊子』の作品を美女達が読んで參考にしている事実にダメージを受ける飛鷹は自分が書籍化作家だと絶対バレたくないと思いつつも、仕事も創作も真剣な美女達と向き合い彼女達を成長させていく。 そして飛鷹自身もかげがえの無いパートナーを得る、そんなオフィスラブコメディ カクヨムでも投稿しています。 2021年8月14日 本編完結 4月16日 ジャンル別日間1位 4月20日 ジャンル別週間1位 5月8日 ジャンル別月間1位 5月21日 ジャンル別四半期2位 9月28日 ジャンル別年間5位 4月20日 総合日間3位 5月8日 総合月間10位
8 162【書籍化&コミカライズ】婚約者の浮気現場を見ちゃったので始まりの鐘が鳴りました
婚約者である王太子の浮気現場に遭遇したソフィーリアは、自分が我慢の限界を迎えていたことを知る。その時、ソフィーリアの前に現れたのは一人の騎士だった。 ーーーーーー 婚約破棄から始まるものを書いてみたいな、と軽いノリで書き始めたシリアスもどきのギャグです。 第3章始めました! ー------ 1/7異世界(戀愛)&総合/日間ランキング1位 1月 異世界(戀愛)/月間1位 1月 総合/月間2位 ー------ 書籍化&コミカライズ決定しました!!!!! 本當に有難うございます!!!!
8 89【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】
書籍化が決定しました。 レーベルはカドカワBOOKS様、10月8日発売です! 28歳のOL・哀川圭は通勤中にとある広告を目にする。若者を中心に人気を集めるVRMMOジェネシス・オメガ・オンラインと、子供の頃から大好きだったアニメ《バチモン》がコラボすることを知った。 「え、VRってことは、ゲームの世界でバチモンと觸れ合えるってことよね!? 買いだわ!」 大好きなバチモンと遊んで日々の疲れを癒すため、召喚師を選んでいざスタート! だが初心者のままコラボイベントを遊びつくした圭は原作愛が強すぎるが為に、最恐裝備の入手條件を満たしてしまう……。 「ステータスポイント? 振ったことないですけど?」「ギルド?なんですかそれ?」「え、私の姿が公式動畫に……やめて!?」 本人は初心者のままゲームをエンジョイしていたつもりが、いつの間にかトッププレイヤー達に一目置かれる存在に? これはゲーム経験ゼロのOLさんが【自分を初心者だと思い込んでいるラスボス】と呼ばれるプレイヤーになっていく物語。
8 175【書籍化・コミカライズ】愛さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる
「君を愛することはないだろう」 政略結婚の初夜、生真面目軍人ジェラルドにそう言い渡された伯爵令嬢アビゲイル。 前世は魔王のアビゲイルだが、魔王とはいえ食生活は貧しかった。 憧れの人間に転生して、これで豊かな食生活がと期待するも、継母と義姉は餓死ギリギリを狙って攻めてくる。 虐げられた生活を送っていた彼女にとって、政略とはいえこの結婚はそんな生活から脫出するための希望だった。 だからせめて、せめてこれだけは確認させてほしい。 「……ごはんは欲しいです」 黒髪青目でいかつい系の軍人旦那様は、ひもじい子には意外と優しかった。庇護欲にあふれた使用人にも大切にされ、アビゲイルの美味しい食生活がはじまる。
8 136【書籍化・コミカライズ決定!】過労死寸前だった私は隣國の王子様と偽裝結婚することになりました
書籍化・コミカライズが決定しました! 情報は追ってお知らせいたします。 宮廷付與術師として働くフィリス・リールカーン。彼女は國內で初めて宮廷付きになった付與術師として活躍していた。両親を失い、多額の借金を肩代わりしてくれた婚約者とその家に恩返しをするため、日夜パワハラに耐えながら仕事に打ち込む。 しかしそんな努力も空しく、ある日突然信じていた婚約者から婚約破棄を言い渡されてしまう。知らぬ間に浮気されていたことを知り、悲しみと怒りが溢れるフィリス。仕事で朝帰りをしている時に愚癡を漏らしていたら、見知らぬ男性に聞かれてしまった! しかもその相手は、隣國の王子様だった! 絶體絶命の窮地に陥ったフィリスに、隣國の王子は予想外の提案をする。 「フィリス、お前は俺の嫁になれ」 これは無自覚な天才付與術師が、新天地で幸せを摑む物語。
8 52同志スターリンは美少女です!?
歴史にその悪名を知らしめるスターリンは美少女になりました。その中身は日本の元社會人ですが、何の因果か女の子スターリンの中身になりました。 なので、第二の祖國、ソビエト社會主義共和國連邦。通稱USSRを戦禍から守っていこうと思います。 やることの多いソ連ですが、まずは國內のゴミ掃除から始めましょう。 いや、割とマジで國內の腐敗がヤバイのです。本當に、頭を抱えるくらいに真剣に。 あと、スターリンの著しいイメージ崩壊があります。 *意味不明な謎技術も登場します(戦力には関係ありませんが、ある意味チートかも)
8 165