《銀河戦國記ノヴァルナ 第2章:運命の星、摑む者》#12
「ぬっ!…ぬおおおおおおっ!!!!」
驚愕のび聲を上げるギィゲルト。主砲ビームの著弾が小星デーン・ガークの地表を抉(えぐ)り、超高層ビル街のように、巖と土砂の柱を大量に林立させる。
低重力の小星であるから、砕けた巖石は宙に舞ったままとなって、落ちては來ない。こうなっては、高い機を誇るギィゲルトの『サモンジSV』も、回避行はままならなくなる。戦艦の主砲撃をまともに喰らえば、ひとたまりも無いのは當然だが、至近弾で吹き上がる砕けた巖盤ですら、激突すれば危険極まりない。
そんな中で『サモンジSV』のコクピットに、ロックオン警報が鳴る。縦士が咄嗟に縦桿を引いて機を後退させると、超電磁ライフルの弾丸が、ギィゲルトの眼前を覆う、灰白をした砂塵のカーテンを貫いて飛來した。縦士の研ぎ澄まされた反神経のおかげで、その銃弾は『サモンジSV』の、右のショルダーアーマーの一部を削り取っただけで済む。
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だがその直後、砂塵のカーテンが収まらないうちに、ライフルを撃った『センクウNX』そのものが飛び出して來た。右手には超電磁ライフル、左手には起させたクァンタムブレードを握っている。
「アッハハハハハ!!」
艦砲撃への回避できの鈍った『サモンジSV』に、ノヴァルナは高笑いを発しながら間合いを詰め、斬りかかっていった。
「く、気でもれたか。ノヴァルナめ!!」
瞬時に引き抜いた『サモンジSV』のクァンタムブレードで、ノヴァルナの斬撃を防いだギィゲルトは、戸い気味に言う。バチバチバチ!…と、真空の宇宙空間であっても、音が聞こえそうなほど切り結んだ雙方の刃から、青白い火花が飛び散る。そんな二機の機を、真橫に著弾した『ヒテン』の主砲弾の炎が包み込む。
「“死のうは一定”!…コイツが俺の真骨頂さ!!」
舞い上げられる大量の巖と礫(れき)に巻き込まれながら、ノヴァルナはクァンタムブレードによる第二の斬撃を放った。その切っ先は、あれだけ素早い機で攻撃を躱していた『サモンジSV』の、左肩口を切り裂いた。
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この戦いにおけるノヴァルナの欠點。それはここまでのギィゲルトへの奇襲が全て、勝利のために計算された計畫に沿ったものでしか無かった事である。
セルシュがいた場合、計畫通りに進んだ作戦であるなら、どのような奇策でもセルシュは、怒り出したりはしないだろう。
ところがノヴァルナが最終的勝利を求めて、計畫にない無茶―――自分の命と引き換えに…いや自分の命を投げ出すような無茶な手段に出た場合、何よりもノヴァルナのを案じてセルシュは激怒したに違いないのだ。
しかし、今のノヴァルナが懸けるのは、その天無…セルシュが怒りだすような、命知らずの戦法だった。
味方戦艦の艦砲撃に巻き込まれる恐れもある中、それまで踏み込めなかった間合いに踏み込み、被弾上等で『サモンジSV』へ突っ込んでいく。突き上がる土砂の間(はざま)で、左手に握るクァンタムブレードを薙ぎ払う『センクウNX』。土砂の柱を切り裂いた斬撃はその勢いのまま、『サモンジSV』を袈裟掛けしようとする。
だが『サモンジSV』も反応自は素晴らしい。縦士が機機を、機関士が艦砲撃への警戒を、そしてギィゲルトがQブレードを作し、艦砲撃の著弾に巻き込まれる事なく、ノヴァルナの斬撃を著実に打ち払った。そこから素早く反撃に移ろうとする『サモンジSV』。しかしその時にはすでに『センクウNX』が、もう一方の右手に握る超電磁ライフルの銃口を、ゼロ距離撃で『サモンジSV』の板に向けている。
“もらったぜ!”
絶好の機會に眼を輝かせるノヴァルナ。ところが次の瞬間、ヘルメットに被弾予測警報が、普段よりひときわけたたましく鳴り響いた。直撃を含んだ、危険度がかなり高い警報を示している。そして警報音の種類は“同士討ち”…味方戦艦の艦砲撃を示している。
「んな、くそぉッ!!」
一瞬の躊躇いの後(のち)、ノヴァルナはライフルのトリガーを引くと同時に、艦砲撃に対する回避行を取った。ただその一瞬の間を見逃す『サモンジSV』では無い。機を素早く翻して銃弾を僅差で躱す。そこへ降り注ぐ艦砲撃の無數のビーム。
小星全を揺るがすほどの発が立て続けに起こって、ノヴァルナとギィゲルト雙方のBSHOまで、低重力の地表から舞い上げられる。ところが事態はそれだけに留(とど)まらない。ほぼ一箇所に主砲の集中砲火をけた結果、小星デーン・ガークの上半分が大きくひび割れ、崩壊を起こしたのである。巨大な巖盤に大小の巖塊。そして大量の砂塵が無重力の宇宙空間へ彷徨(さまよ)いだした。
「あぶねぇッ!!!!」
視界の眼前を猛然と通過し、あわや激突かと思えた大きな破片を、紙一重でやり過ごした『センクウNX』のコクピットでノヴァルナはぶ。さらに右から左から超高速で飛んで來る巖塊。どれも『センクウNX』と激突すれば、ただでは済まない大きさだ。それを驚異的な反神経で躱すノヴァルナ。そんな『センクウNX』の周りに襲い掛かる味方からの艦砲撃は、激しさを増すばかり。
しかも総旗艦『ヒテン』からの主砲撃は正確を極め、『センクウNX』と『サモンジSV』の間にあった、巨大な巖塊を破した。四散する大量の巖に巻き込まれるように、吹き飛ばされる二機のBSHO。
「ナルガの奴。無茶しやがってぇええ!!」
自分がそうするように命じたにも拘らず、ナルガヒルデの容赦ない砲撃に文句を言いながら、ノヴァルナは必死に機の姿勢を制する。
ここで利を得たのはギィゲルトの方だった。機出力と三座式の縦方式にものを言わせ、力づくで機を安定させると、表面を包む重力子フィールドで砂塵や小石を弾くままに、距離が開いた『センクウNX』へ超電磁ライフルを一連する。
「く!」
真橫へ一直線に回避するノヴァルナ。だがその眼前で、『センクウNX』より大きな二つの巖塊が激しく回転しながら激突した。砕け散った巖が『センクウNX』へ高速で向かって來る。咄嗟にそれをQブレードで両斷するノヴァルナ。だがそこでヘルメットに大きく鳴り響く、至近距離からのロックオン警報。死神の鎌が首筋に迫る覚。
そしてこの覚を打ち消すものこそが、“トランサー”の発だ―――
期せずして窮地に陥ったノヴァルナ。その神が一瞬に満たない時間で、『センクウNX』と一つになる。まるで瞬間移のような瞬発力を見せて、ギィゲルトの銃撃を躱した。限界まで研ぎ澄まされた神が、『センクウNX』を縦者たるノヴァルナのそのものに化す。モニターやホログラム畫面を見ずとも、『センクウNX』の各種センサーが捉えた報は直接、脳へ流れ込んで來る。
“來たぜ、この力!!”
それまで見えなかったすべての巖塊のきと、間もなく降り注ぐであろう味方戦艦の砲撃位置をじ取り、その間をって『センクウNX』が間合いを詰める。
「むぅ、たわけめ。しまった!!」
ギィゲルトはノヴァルナの“トランサー”を発させてしまった自分へ、呪詛の言葉を吐いた。超電磁ライフルを放ちながら、出せ得るだけの速度で後退する。だが巖塊の海が、ギィゲルトの後退速度を鈍らせていた。
『サモンジSV』の銃撃の弾道を見切ったノヴァルナは、そのすべてを紙一重で掠めさせて、自らのライフルで反撃を行う。単発モードで一発、二発、三発とトリガーを引くと、銃口を飛び出した銃弾は二発目、三発目が『サモンジSV』の右腕の付けと、左大部を貫通した。
▶#13につづく
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
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