うーむ、敵が出ない。いや、それ自は問題ではないんだ。そこまで強くない敵を倒しながら進むのは結構面倒だし、それがく骸骨(スケルトン)系であればドロップも必要ない。

しかし、こうも敵がいないとこの先に何もない気がしてしまう。結構歩いているし、これで無駄足だったら皆の士気に関わりそうだ。何かあってくれ！そう祈らずにはいられなかった。

「…ストップ」

ルビーから指示が飛ぶ。何か見つけたのだろうか。

「し進んだ所に大きな空間があるよ。何かがいてた」

よし、ビンゴ！やっぱり何かあるんじゃないか。さて、問題はその何(・)か(・)が我々の敵かそうではないのかだ。私としては無駄な衝突は避けたいのだが、戦いとなった時は全力で行くとしよう。

「行こう。先頭は源十郎に変更、ジゴロウは前へ。ルビーはアイリスの隣に」

我々は隊列を変更して広い空間へと歩を進めた。

◆◇◆◇◆◇

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イザーム達は隠しエリア『窟の隠れ祭壇』を発見しました。

発見報酬として10SPが授與されます。

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そんなインフォが全員の頭に流れる。ルビーが発見した空間がその『窟の隠れ祭壇』なのだろう。パッと見たところ、確かに何らかの聖堂のようだった。これが最奧には何かの祭壇が、そしてその周辺には棺のようなが六つ置かれている。ハッキリ言って不気味だな。

ルビーの言っていたいていた何か。それはボロボロで汚れた異國風の、というか中華風と言うべきか。そんな服を著た人型の魔であった。何故魔だとわかるのかって？マーカーが真っ黒だからだよ！

その魔は姿勢からおそらくは祀っている神に祈っている最中なのだろう。きも中華風を踏襲しているのか、正確な名稱は忘れたが頓首とか稽首とか言うはずの古代中國の禮法を繰り返している。あれって神に向かってやるものだったっけ？

まあいい。ゲームの中の世界観なんだから、そういうものなんだろう。何にせよ我々は大事な時にお邪魔したようだな。

「…何者だ？」

おっと、祈っていた魔は我々に気付いていたらしい。こちらを振り返るでもなく、不快を滲ませる聲音で聞いてくる。これは答えるべきだろう。

「祈りの邪魔をして申し訳ない。我々はただこの窟を探索していただけなのだ」

「否、わかっておるわ。貴様らはアールルの使徒であろう！？」

アールル？それは『と秩序の神』の名前だな。それなら絶対に違う。むしろその神のお気にりらしい勇者君とその仲間を皆殺(PK)したんだからな！

「違うぞ、我々は…」

「是非も無し！アールルの使徒は殺す！殺す殺す殺すコロスコロスコロコロゴロズゥゥ！！」

「あ、話が通じねぇわ」

ジゴロウの言う通りらしい。相手は最初、ハッキリとしゃべっていたので理ある相手かと思われた。しかし、魔である事を隠そうともしていない我々を見てこの反応。明らかに正気を失っているのだろうな。

奴ここでようやくこちらに向き直る。その顔にはの気が無く、瞳もドロリとして生気が無い。どうやら、不死(同族)のようだな。

「戦闘は避けられんようだ。全員、備えろ！」

「出デヨ、我ガ友ヨォォォォォ！」

「何？」

祭壇の橫にあった棺の蓋が側から吹き飛ばされる。そして中から出てきたのは二種類の魔だ。片方はく骸骨(スケルトン)系が四、そしてもう片方は映畫等で見慣れた顔に札を張り付けた有名な化けが二だった。

「く骸骨(スケルトン)の化けと…キョンシー？」

そう、キョンシーだ。中國の道教における反魂によって作られし生ける(ゾンビ)。途轍もない怪力と上位の者になれば神通力まで使いこなすと言う。

そしてく骸骨(スケルトン)の化けとは…四腕のく骸骨(スケルトン)だ。肩甲骨以外の骨は全て人型なのだが、その肩関節部分が二つあってそこに腕が二本くっついているのだ。何なんだ、あれは？【鑑定】してみよう。

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種族(レイス)：僵尸(キョンシー) Lv23

職業(ジョブ)：拳法士 Lv3

能力(スキル)：【拳】

【蹴撃】

【軽業】

【筋力強化】

【防力強化】

【暗視】

【怪力】

【狀態異常無効】

【屬脆弱】

【火屬脆弱】

種族(レイス)：混合骸骨戦士《キメラスケルトンウォリアー》 Lv15

職業(ジョブ)：戦士 Lv５

能力(スキル)：【剣】

【槍】

【盾】

【長柄武】

【暗視】

【狀態異常無効】

【屬脆弱】

【打撃脆弱】

種族(レイス)：死霊道士(アンデッドメイジ) Lv25

職業(ジョブ)：上級死霊魔師 Lv5

能力(スキル)：【拳】

【蹴撃】

【魔力制】

【大地魔】

【暗黒魔】

【神聖魔】

【召喚】

【付與】

【死霊魔】

【呪】

【暗視】

【怪力】

【狀態異常無効】

【屬脆弱】

【火屬脆弱】

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ほほう、混合骸骨戦士《キメラスケルトンウォリアー》と來たか。これ、恐らくは【死霊魔】で造り出したんだろうな。と言うことは、私にも造れるかもしれないと言うこと。ふふふ、創作意が湧いてくるではないか。

そして予想通り、あっちは僵尸(キョンシー)か。レベルも高いが、能力(スキル)も格闘方面に特化しているみたいだな。これは厄介な相手だ。

だが、それ以上にヤバいのは最初にしゃべっていた死霊道士(アンデッドメイジ)だ。こいつ、レベルだけなら『蒼月の試練』で登場する魔と同格だぞ。しかも、【死霊魔】と【呪】という深淵系魔も取得している。

更に【魔】の進化先まで持ってるじゃないか。【屬脆弱】があるのに、何故持っているんだ？もし私に當たったら、即死してしまう事は肝に銘じておかねばな。

「ジゴロウはく骸骨(スケルトン)を出來るだけ早く仕留めろ！アイリスは援護！源十郎とルビーは僵尸(キョンシー)を足止め！相手は格上だから無理はするな！私は全を援護する！」

「わかったぜぇぇ！ウシャァアアアアア！」

私は急いで指示を飛ばす。今は勝つために必要な事をするだけだ！

「魔法陣展開、魔強化(マジックブースト)、魔強化(マジックブースト)、魔強化(マジックブースト)…！」

私は自分自に魔強化(マジックブースト)を三重に付與すると、ジゴロウ、源十郎、ルビーそしてアイリスへと矢継ぎ早に【付與】で強化を飛ばしていく。相手は私と同じかそれ以上のが使えるのだ。油斷は許されない。

「ウグッ！？」

何だ？混合骸骨戦士《キメラスケルトンウォリアー》を一方的にボコボコにしていたジゴロウのきが止まった？って麻痺か！これは【呪】だな？させないぞ！

「解呪(ディスペル)！アイリス！」

「はい！球(ライトボール)！」

「っと、サンキュー！」

けるようになった瞬間、ジゴロウは眼前に迫っていた混合骸骨戦士《キメラスケルトンウォリアー》の槍の穂先を屈んで避ける。そして空振った一のにアイリスの魔が直撃した。

「ウラァ！」

力が一気に減った所にジゴロウの剛腳から繰り出される蹴りが頭部にクリーンヒット。そのまま頭を砕した。これで一はお仕舞いだな。むっ、死霊道士(アンデッドメイジ)が何かを使おうとしているな。狙いは、ジゴロウか！

「させんよ！魔陣遠隔起、魔力盾(マジックシールド)！」

私は死霊道士(アンデッドメイジ)の目の前に三枚の魔力盾(マジックシールド)を展開し、奴の魔にぶつけて相殺させる。使おうとしたのは恐らく闇槍(ダークランス)か。

行き場を失ったの衝撃を浴びて、死霊道士(アンデッドメイジ)は後ろに転がる。今がチャンスだ！

「源十郎、ルビー！魔行くぞ！雙魔陣遠隔起、火炎放(フレイムスロー)！」

私の合図に従って、二人は後ろに飛び退く。それまで二人がいた地點と僵尸(キョンシー)共の背後に私の魔方陣が浮かび、【火炎魔】が炸裂した。弱點である火屬、しかも進化した能力(スキル)による一撃は二の力をゴッソリと削っていく。

本來は近距離でなければ當てられない火炎放(フレイムスロー)だが、魔法陣によって起點を設定すれば近寄らずとも十分に使えるのだ。工夫次第、という奴さ。

「一気に仕留めるぞ！源十郎、ルビー！腳を狙ってくれ！」

「ほいっと」

「はあぁっ！」

私の無茶とも言える頼みに、二人は何も言わずに応じてくれる。源十郎は正確な一太刀で僵尸(キョンシー)の腱を斬って転がし、ルビーも自慢の速度を乗せた短剣の一撃で片方の足首を両斷した。

「溶弾(ラーヴァショット)！」

私は転けた僵尸(キョンシー)へと溶弾(ラーヴァショット)をお見舞いする。著弾後、地面に殘る特を持つ溶弾(ラーヴァショット)だ。今の奴らは火山の火口に飛び込んだようなものである。

思った通り、一気に燃え上がった。火達磨になった僵尸(キョンシー)達だが、溶巖の池からどうにか這い出る事に功している。流石は格上、と言うべきか。だが、もう詰んでいるぞ？

「ふん！」

「イヤッ！」

這い出た先で待っていたのは源十郎とルビーである。彼らは容赦無く連中の首を落とした事で、二の僵尸(キョンシー)はかなくなった。

「オオッラアアアアアァ！」

ジゴロウの方はと言うと、混合骸骨戦士《キメラスケルトンウォリアー》を全て倒し終わっていた。アイリスの援護が的確だったのも一因だったようだが、それでも同格の魔の四相手にして圧倒するのは流石としか言い様がないな。

「後は死霊道士(アンデッドメイジ)だけだ！ジゴロウと源十郎は接近して魔を使う暇を與えるな！相手は近接もこなせるから注意しろ！」

「あいよ、大將！」

「ほいほい！」

「ルビーは背後に回って牽制、二人に集中させるな！アイリスは私と一緒に魔で援護！」

「はい！」

「任せて！」

起き上がった死霊道士(アンデッドメイジ)に向かって、ジゴロウと源十郎は走る。數秒でたどり著く距離なのだが、その數秒さえあれば魔は使える。奴が選ぶ魔はおそらく…

「地震(アースクェイク)」

やはりそう來たか！突如として震える大地に、私はバランスを崩してしまう。ジゴロウと源十郎はリアルチート特有のバランス覚で揺らぐこと無く走っていた。

ぐぬぬ、一流アスリートか何かかよ！？の能はそれ以上なんだろうけど！

「シャッ！」

「チェイッ！」

ジゴロウの正拳突きと源十郎の鋭い剣先が死霊道士(アンデッドメイジ)を襲う。前者は水月を、後者は頚部を狙っている。

このゲーム、リアリティーを追及してあるので、格上相手でも急所を突けばアッサリと殺せるのだ。私が勇者君の仲間の戦士を魔力剣(マジックソード)で殺せたのもその仕様のせいだ。

そう言う意味では力バーはあくまでも目安でしかない。キレイに急所を突くのは凄く難しいので普通の人には関係ないのだが、彼らのような化けはそれをしっかりと活かしてくる。やっぱり不公平だ！

「カアア！」

その仕様のおでどっちが當たっても大ダメージは避けられないだろうと私は思っていた。しかし、やはりレベル差というのは大きいらしい。我々の視力では捉えるのも難しい二人の一撃を、死霊道士(アンデッドメイジ)は躱してみせたのである。これは、援護無しでは無理だな。

「食らえっ！」

背後から音もなく近づいていたルビーは、補食時に用いる酸を吐いて牽制する。【狀態異常無効】で毒の短剣が通用しないことを見越しての判斷だろうな。毒と違ってや武裝を溶かす酸は純粋な理攻撃なので無効には出來ない。的確な行だ。

「罠設置、水槍(ウォーターランス)、雷矢(サンダーアロー)、茨鞭(ソーンウィップ)」

酸を浴びるのを嫌がったのか、死霊道士(アンデッドメイジ)は鬱陶しそうにルビーを蹴ろうとする。その隙を私は見逃さない。とある場所に罠を設置し、三種類の魔を放つ。水の槍が奴を濡れ鼠にし、雷がそのを痺れさせ、茨が奴を傷付けながら縛り上げる。

どれも奴の弱點ではないので大して効いていないし、麻痺は効く訳もなく、茨も一気に引きちぎられてしまった。だが、この一瞬が稼げればそれで良かったのだ。

「神獣化！オッラアアアアアア！」

金のオーラと雷を纏ったジゴロウは、拳を全力で叩き込んだ。メキメキと何かが潰れるような音を立てつつ、死霊道士(アンデッドメイジ)は漫畫のように吹っ飛んだ。そして壁に激突した瞬間、その位置が大発する。勿論、偶然などではない。

「フフフ、予想通りだ」

弾(マジックボム)を仕込んだ私の【罠魔】だ。キレイに嵌まったようだな。仲間には私が仕掛けた罠の位置が見えているので、ジゴロウはそちらに毆り飛ばしたのである。

だが、ここで終わりではない。ここから何もさせずに滅ぼしてくれよう！

「下僕共よ、押さえ込め！アイリス！火屬付與(ファイアエンチャント)！」

「…ッ！はいっ！」

私の召喚獣である骸骨戦士(スケルトンウォリアー)達が必死の力で死霊道士(アンデッドメイジ)の手足を押さえ込む。力に圧倒的な差があるので、これも數秒しか意味がない。だが、アイリスが何時でもばせるように準備していた手を使うには十分に時間を稼げていた。

【火屬脆弱】を持つアイリスの手に火屬付與(ファイアエンチャント)は相が最悪で、既に表面が焦げ初めている。今にも焼き切れてしまいそうだ。

仲間の攻撃が無効の仕様なはずなのにダメージを與えているぞ？地味な新発見である。

しかし、発でうつ伏せになった狀態で拘束されればそれだけできにくくなるのは當然。そうなると、隙だらけの背中を曝す事になる。

「火屬付與(ファイアエンチャント)、行け二人とも！」

「先ずはボクが！」

ようやく出來た時間を使って、私はジゴロウ達三人の武に火屬を付與する。これで普通の攻撃もかなり効果的になるはずだ。

ルビーは死霊道士(アンデッドメイジ)の背中に乗ると、その付與された短剣を心臓部に突き立てた。死霊道士(アンデッドメイジ)は言葉にならない絶を上げる。側からを焼かれる痛みをじているのかもしれない。

「食らいやがれェ！」

「終わり、じゃ！」

幸か不幸か、彼の苦痛は長続きすることは無かった。何故ならジゴロウの拳がにを開け、源十郎の剣によって斬首されて一生痛みをじることは出來なくなったからだ。

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戦闘に勝利しました。

種族(レイス)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

職業(ジョブ)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

【杖】レベルが上昇しました。

【魔力制】レベルが上昇しました。

【水氷魔】レベルが上昇しました。

【火炎魔】レベルが上昇しました。

【樹木魔】レベルが上昇しました。

【溶巖魔】レベルが上昇しました。

【雷撃魔】レベルが上昇しました。

【裂魔】レベルが上昇しました。

【虛無魔】レベルが上昇しました。

新たに魔力妨害の呪文を習得しました。

【召喚】レベルが上昇しました。

【付與】レベルが上昇しました。

【魔方陣】レベルが上昇しました。

【死霊魔】レベルが上昇しました。

【呪】レベルが上昇しました。

【罠魔】レベルが上昇しました。

――――――――――

よし、勝った！我々の勝利だ！…って、本當にもう終わり？

という訳で隠し中ボス戦でした。

死霊道士が何故【魔】系を持っていたかというと、まだ生きている時に取得していたからてすね。なので今は使えません。

本文では主人公が魔を使う機會をほとんど與えなかったので、補足です。