《骸骨魔師のプレイ日記》思い出の北の山

今回はし短めです。申し訳ありません!

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【錬金】レベルが上昇しました。

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ログインしました。現在は現実時間で正午、ゲームでは夜中の零時でございます。

「おはよう」

「おう」

既にログインしていたのはジゴロウだけか。珍しいな。

「やっと引き籠りから卒業できるな」

「はっはっは。リアルではあくせく働いているんだがね」

そんな軽口を叩きつつ二人で時間を潰していると、ルビーと源十郎がログインしてきた。

「ゴメン!ちょっと遅れた!」

「儂の敬老會が長引いたせいじゃ。すまんの」

「気にしないさ」

これは仕事ではなくゲーム、遊びだ。所謂廃人ではない我々はそこまで厳しく時間厳守という訳ではないのである。大、この程度を咎めるならアイリスも叱らなければならないではないか。

「すいません!急に郵便が屆いたせいで遅れました!」

っと、アイリスも來たか。これで全員揃ったな。昨日二人でせっせと作ったポーション類を三人に配り、私が【錬金】で作った毒薬をルビーに渡す。窟で蝙蝠や蛇からドロップした牙の毒も加わって、より兇悪な能になっている。

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ドロップと言えば、私が墓守(グレイブキーパー)と會話している最中にルビーが鼠男王(ラットマンキング)達から剝ぎ取りをしていたらしい。本當に抜け目ない娘だ。

ドロップしたのは多質のいい武と皮と牙くらいだったらしいが。ただ、鼠男王(ラットマンキング)の杖はそこそこの能だったな。詳細は以下の通り。

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錆びた王笏 品質:劣 レア度:T(寶級)

古き國における王の証の一つ。火との力をめる。

錆び付きと汚れが激しく、修復は困難。

かつての輝きと栄を取り戻す日を待っているかもしれない。

【火屬強化】Lv1

強化】Lv1

【???】

【???】

【???】

――――――――――

うん、レア度はかなり高いけど、完全に『蓬萊の杖』の下位互換だ。っていうかこれってぶっちゃけ墓守(グレイブキーパー)に対するメタ裝備じゃないか。弱點の魔を強化する杖を持ち出してくるとか、殺る気満々ですやん。

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それよりもこれも本來の力を取り戻させるタイプの裝備だな。私の鎌との違いは素材を要求していないことだ。我等が誇る生産者たるアイリス曰く、これを修復するには【鍛冶】ではなく【細工】が高いレベルで必要らしい。ただ、それだけではダメで【細工】に加えて【考古學】も必要だという。

要するに、品の修復なのだ。だから【考古學】的な知識と【細工】の技能の雙方が必要とされるのだろう。真の力を取り戻した姿に興味はあれど、流石に面倒過ぎる。

しかし、アイリスはそれを知るや否や【考古學】を取得してしまった。迷宮イベントで余る程得たSPを使える良い機會だと言っていたが、私に気を使ってくれたのかもしれない。謝するほかに無いな。

昨日の話はここまでだ。そろそろ出発しよう。西の出口から北上し、ジゴロウと初めて會った山を越えて湖を迂回、更に奧に聳える山を登るという中々のハードスケジュールだ。

アイリスが【革職人】と【鍛冶】、更に【細工】の能力(スキル)を全て使って作った野営用テントがなければ到底無理な道程だろう。因みに他のプレイヤーも作ってはいるらしいが、品質はアイリスの方が上だ。それに価格も攻略組でも捻出出來るか微妙なラインという高さらしい。つくづくアイリスが仲間で良かったと思いましたよ。

何はともあれ、先ずは北の山を目指そう。何、あそこまではピクニックのようなものだ。それに第二陣が來たならともかく、販売當初からやっているプレイヤーで夜の山へ態々登る変人はいないだろう。サクサク進みますかね。

◆◇◆◇◆◇

「北の山…結構久しぶりじゃないか?」

「おう。俺達でド派手に暴れた時以來だな」

ジゴロウの言う『ド派手に暴れた時』とは、勿論ジゴロウの討伐部隊を返り討ちにした時の話だ。トッププレイヤーを全滅させた事はかなり騒がれてたっぽい。

ジゴロウがプレイヤーだと見抜いていた者も居たのだが、私の演出のせいで私とジゴロウはイベントモンスターだとする説が最有力となっている。よくぞ聲を震わせなかったな、あの時の私よ!

「それは兎も角、ここには何が出現するんじゃ?」

私がしみじみとあの時の事を思い出していると、その騒に関しては全くのノータッチであった源十郎が尋ねて來る。まあ、関係無い彼からすれば今必要な報は我々の思い出話ではないからな。

「それは…って、近付いて來てるよ」

「「「ゲギャギャァ!!!」」」

源十郎に解説しようとしたルビーだったが、ここに現れる魔の筆頭が現れた事で説明する手間は省けた。それは緑の皮に禿頭、醜い顔の鋭い眼をした人型の魔…まあ、ぶっちゃけ小鬼(ゴブリン)だった。

數は三。正直、大した敵ではないのは明らかだ。しかし、後學の為にも【鑑定】しておきますか。

――――――――――

種族(レイス):小鬼(ゴブリン) Lv2~4

職業(ジョブ):なし

能力(スキル):【牙】

【爪】

【悪食】

【威嚇】

【暗視】

【矮軀】

――――――――――

うおお、弱い。それにコイツら【牙】と【爪】の能力(スキル)を持っているのに、能力(スキル)を持っていない棒やら錆びの塊のような折れた剣やらを握っている。頭も弱いのかもしれない。

「百聞は一見に如かず、じゃな」

「おー、ボクも普通の奴は初めて見るよ」

ああ、そうか。そう言えば二人を発見した時、既に私とジゴロウは進化した後だったからな。最弱とも名高い普通の小鬼(ゴブリン)を見るのは初めてになるのか。

「何だか、懐かしいな」

「ジゴロウにもこんな時期がありましたね」

逆に私とアイリスは何だかとても懐かしくじていた。気分は中學生か高校生になった息子と同じ小學校に通う子供を見た時と同じ…なんだろうか?いや、子供なんていないからわからんが。

それにジゴロウは『蒼月の試練』を突破した報酬の腰巻きを裝備していたので、目の前の三匹とは雰囲気が本的に異なっている。もし、目の前に當時のジゴロウが現れればきっと判別出來るだろう。

「下らねェ事言ってんじゃねェよ。で、誰がコイツらの相手をするってんだ?」

「ん?ジゴロウならコミュニケーションがとれるんじゃないのか?同じ小鬼(ゴブリン)から進化したんだろう?」

私の疑問に対し、ジゴロウは首を橫に降った。

「多分コイツら、俺の初期地點だった集落とは別の部族だ。仲間だとはほども思って無ェみてェだ」

「…なるほど」

小鬼(ゴブリン)は集落が異なるなら同族でも殺し合いの対象なのか。まるで人間のようだ、とか言うと問題視されそうだ。心の中で考えるだけにしておこう。

「俺ァこんな雑魚とは戦(ヤ)りたくねェからな。始めたばっかの頃に腐るほど狩ったしよ」

「儂も遠慮したいのぅ。素振りの方が有意義に思えるわい」

「ジゴロウ…」

「お祖父ちゃん…」

あらら、戦闘狂二人は乗り気じゃないらしい。それを見て陣は呆れ返っている。

普段の私なら、二人の反応に同意していたに違いない。しかし、今日に限ってはむしろ戦闘狂二人が戦わないと言い出した事に謝している。何故なら、私にはやってみたい事があったからだ。

「なら、私が行こう」

「イザーム?」

私はさっきからずっと汚い聲で【威嚇】してくる小鬼(ゴブリン)達の前に出る。普段は決して前に出ようとしない私の行に、アイリスは不思議そうにしていた。

「【】の試し打ちには丁度良い。それに…」

言いながら私は杖を【錬金】によって増やした腕に持ち変えると、初めからあった方の腕に大鎌を裝備した。

「こ(・)れ(・)の試し斬りにも丁度いいだ…ろう!」

「ギャギャ?」

私は話ている最中に前へと飛び出した。まさか一人で突っ込むとは思っていなかったのか、小鬼(ゴブリン)は間抜け面でこちらを見ているだけだ。防しないのなら、遠慮なくヤらせて貰おう。

「斬撃!」

私は【鎌】の武技を使いながら鎌を振った。武技の考察板に書かれていたやり方に従って、システムがアシストする流れに逆らわない事を意識する。迷宮でボスをやっていた時も実はこうしていたのだ。

すると、自分でも信じられない程スムーズにき出し、扱いが難しいはずの大鎌に達しているかのようにしっかりと力が乗った斬撃を繰り出した。その軌跡は黒いオーラのようなエフェクトが出ている。

きっと武に宿る闇屬がそうさせるのだろう。カッコいいじゃない?

「ギャッ…」

私の斬撃によって小鬼(ゴブリン)の一匹は左肩から袈裟懸けに両斷されて即死した。私は魔師であり、パーティーで最も貧弱だとは言ってもレベルは20を超えている。武も能力の大半を失っているとは言え、初期武よりは遙かに高い能を誇っている。負ける要素が無いのだ!

「ゲ、ゲギャッ!?」

「ギャッギャー!」

レベル差の暴力によって仲間の一人が一瞬のに狩られてしまった事で、殘された小鬼(ゴブリン)の片方は戦慄し、もう片方は怒り狂って斬り掛かって來た。中々ガッツがあるじゃないか。

球(ライトボール)」

「…!?」

だが、無意味だ。私は別の腕で握っていた杖から【】を放つ。邪悪な私の見た目からは使えるなどと想像もつかない白く輝く球が小鬼(ゴブリン)の顔面に直撃する。こちらは私の本領であることもあって至極あっさりと頭部を吹き飛ばした。

「ギャッ…ゲェギャギャァァァ!」

殘った一匹のとった行は、驚いた事に逃走だった。勝てない敵だと理解して逃げる事は評価に値するが、気付くのが遅すぎたな。

球(ライトボール)」

「ギィ…」

私は逃げる背中を追うことはせずに魔を放った。【魔力制】によって軌道を曲げられる私からすれば、木々の隙間に逃げ込んだとしても無駄である。私の無慈悲な魔によって、最後の一匹も果てるのだった。

という訳で、主人公がしだけ前衛デビュー。でも、筆者も本人もこのプレイスタイルに変えるつもりは全くありません。

それに次の話で…

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