《骸骨魔師のプレイ日記》北の山のスパルタ

「よし、実戦訓練にはなったか」

私は大鎌と【】の使用を確かめられて満足である。とは言ってもこんな魔法剣士改め魔法鎌士のようなプレイを続けるつもりは全く無い。

最低限はける事が解ったので、あとはいつも通りに後ろから皆を援護するつもりだ。その方が私には絶対に向いているからな。

「鎌を振るイザーム、格好良かったです!!!」

「鎌は凄く様になってたよ!【】は違和丸出しだったけどね!」

アイリスは大興手をくねられている。この子は本當にセンスが男寄りな事が多いよなぁ。後ルビー!骸骨が【】を使ってもいいじゃないか!ちょっと黒いし、怪し過ぎる銀の仮面付きだけどさ!

では、剝ぎ取って見るとしようか。まあ、大したものが出ないのは知っているけど。

――――――――――

折れた直剣 品質:屑 レア度:C(普通級)

半ばで折れている直剣。全に錆びが浮いている。

としての価値は無く、ほぼ鈍と化している。

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小鬼の棒 品質:屑 レア度:C(普通級)

小鬼が使っていた棒。

太めの枝を握りやすく削っただけの悪品。

――――――――――

うわぁ、掲示板に書いてあった通りだ。確かこれに加えて【料理】の材料となる『小鬼の肝臓』があるんだっけ?一応、滋養強壯作用があるらしいが、誰が食べるんだそんなもん。

「知っていたが、ゴミばかりだな」

「剣は溶かしてしまえばもう一度鉄として使えますけど、それだけですからね」

経験値も大して味しく無いし、ドロップもゴミばかり。ならこれ以上小鬼(ゴブリン)を狩る必要は無いな。さっさと進もうか。今日中に目的地へ著くのを目指すぞ!

「おいおい、アレで満足しちゃあダメだろ」

「は?」

ジゴロウは眉間に皺を寄せてそんな事を言い出した。あの、何でそんなに険しい表をしているんだい?さっさと行こうよ。

「そうじゃよ。きは悪く無いが、それは相手が弱すぎたからじゃ。とても実戦経験を積んだとは言えぬ」

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「え?」

いや、いやいやいや、源十郎も乗らなくていいから。それに聲がかなり真剣なんだが?

「イザームよ、これより先に現れる敵は【鎌】と【】のみを用いて対処せよ。當然、一人でじゃ」

「おうよ。悪かった點は教えてやるぜ」

「え?は?いや、私は…」

え?何?何なの?何で二人は私に近接戦闘を叩き込もうとしてくるの!?訳が分からない!

「っとォ!噂をすればなんとやらだ!アッチに居やがる!」

「行け、イザームよ!」

「い、行けと言われてもだな…」

「「早く!」」

「わ、わかったから!」

何で?どうしてこうなった!?

◆◇◆◇◆◇

――――――――――

【鎌】レベルが上昇しました。

】レベルが上昇しました。

――――――――――

「うーん、読みはまあまあ様になってきたんじゃね?」

「うむ。しかし、咄嗟の判斷がまだ甘いのぅ」

何故、こうなってるんだ?私はあれから幾度となく小鬼(ゴブリン)の集団と一人で戦わされている。何故か【鎌】と【】だけで。

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で両方のレベルが4まで上がった。もうすぐレベル5も見えてくる位である。それだけでも私がどれだけ戦ったのかがわかるだろう。この辺りの小鬼(ゴブリン)を狩り盡くす勢いだったぞ?

「あのー、お二人さん?もう良いのでは?」

「ダメだ」

「そうじゃとも。まだまだハンデを與えても儂らの相手は務まらんよ」

この二人の目的、それは私を適當なスパーリングの相手にする事なのだ。戦う前に私は自分に【付與】を掛けて強化し、逆に二人には【呪】を掛けて弱化させた狀態なら最低限の勝負になる所まで私を引き上げたいのだとか。

無茶振りなんてレベルじゃねぇぞ!?しかも拒否しようとしても無視されるし!

「いやぁ、お祖父ちゃんってこ(・)う(・)なったら止められなくてさ…」

「私が人型なら良かったんですが…」

二人が求めているのは対人戦闘の相手なので、アイリスとルビーでは務まらないらしい。前々から私に目を付けていたのだが、そこそこけるとわかったので、これを機に接近戦のイロハを叩き込むつもりなのだ。

私は前に出る魔師なんかになるつもりは無いんだぞ!?何を言っても聞いてくれないのでもう諦めつつあるがね…。

まあ、過日に【打撃脆弱】の恐ろしさを痛したので近付かれた時の対処法を教わっているのだ、と無理矢理自分を納得させている。…こちらから突っ込んでいるのだが。

「でも、ホントにあとちぃっとなんだよな」

「そうじゃな」

ま、まだ及第點をいただけないのですか?私は後何回、小鬼(ゴブリン)を倒せばいいと言うのだ…?

「訓練もいいけどさ、そろそろボスエリアだよ?」

「「!!!」」

ルビーの指摘を聞いて、二人はまるで天啓を得たかのようにハッとした顔になった。奴らが何を考えているのかはわかるぞ。

「止めてくれ。お願いだ」

「そうだよ、ボスが居るじゃねェか」

「確か鬼(ホブゴブリン)と取り巻きじゃったか?」

しかし、二人は私の靜止など全く聞いてくれない。まるっと無視である。時々思うのだが、私ってリーダーだよね?

「イザームよ、ここのボス戦を無傷で乗り切ってみせよ。無論、條件はこれまで通りでじゃ」

「そうしたら合格點をくれてやらァ」

ボス戦を無傷で終わらせる?それも接近戦で?何だ、その無茶苦茶な要求は!?

いや、逆に考えろ。これで合格點を貰えれば、この訳が分からない狀況から抜け出せるのだ。そう考えれば、俄然やる気が湧いてきたぞ…!

「いいだろう…やってやろうじゃないか…!」

私は鎌を握り締めつつ、決意を固める。ボスが何だ!取り巻きが何だ!二人のスパルタ指導に耐えた私の戦を見せ付けてやるわ!

そんな事を考えていたので、私の背後でアイリスとルビーが何かを言いたげにしていることに気が付かなかった。

◆◇◆◇◆◇

――――――――――

フィールドボスエリアにりました。

――――――――――

「ゲギャッゲギャッ!!」

「「「ゲギャァ!」」」

「「「ゲッゲッ!」」」

私達は遂にフィールドボスエリアにった。すると、小鬼(ゴブリン)をゾロゾロと引き連れた中中背の人影が現れる。こいつがフィールドボスの鬼(ホブゴブリン)だ。

取り敢えず、【鑑定】はさせて貰おう。流石にこれをじられてはいないからな。

――――――――――

種族(レイス):鬼(ホブゴブリン) Lv10

職業(ジョブ):見習い戦士 Lv0

能力(スキル):【牙】

【爪】

【悪食】

【威嚇】

【暗視】

【指揮】

――――――――――

能力(スキル)の構は小鬼(ゴブリン)から【矮軀】をとって【】と【指揮】が加わっている。順當な進化を遂げているじだ。

「…棒か。厄介だな」

【打撃脆弱】を持つ私にとって、鈍は例外なく天敵となり得る。見れば連中の武裝は全て鈍であった。小鬼(ゴブリン)は相変わらず木を削っただけの末な棒だが、鬼(ホブゴブリン)が持っているのは木の棒に鋭く削った骨などを埋め込んだクギバットめいた棒だ。こちらはレベル差と良い裝備があっても無視出來ないダメージを負うだろう。

「先ずは、取り巻きから倒す!」

掲示板にはボスを先に倒した方が楽だ、と書かれていた。しかし、それは適正な人數で戦う場合だ。我々は五人でボスエリアにっておきながら、戦うのは一人という妙な事をやっている。

しかもノーダメージ撃破という縛りまで追加されているのだ。とにもかくにも數を減らさないと、話にならないのである。

私は愚直に突っ込む…と見せ掛けて方向転換し、思い切り左へ飛び退いた。最所に狙うのは左端にいる一匹だ!

「ぬん!」

「ゲギィ!?」

私は【鎌】の武技を使うでもなく、大鎌を振るう。私が今まで何回こいつを振ったと思っている?斬撃の武技のきはアシスト無しで出來る位にされてしまったわ!

「ゲギャッ!ゲギギィッ!」

「「「「「ゲギャァァァ!!!」」」」」

私の鎌が小鬼(ゴブリン)の一匹を一撃で、しかも武ごと叩き斬ったのを見た鬼(ホブゴブリン)は、數にモノを言わせて押し潰すことにしたらしい。私が格上だと判斷したようだ。

流石は進化出來るまで経験を積んだ個だ。知能はそれなりに高いのだろう。しかし、相手が悪かったな!

球(ライトボール)!」

私はバックステップを踏みながら、【】の球(ライトボール)を放つ。私にとって、むしろこちらが本職なのだ。

私に襲い掛かろうとしていた小鬼(ゴブリン)は、魔を撃ってくるとは考えていなかったようで、棒でガードすることすら無く吹き飛んだ。勿論、即死である。

「ゲギィッ!」

「「「「ゲ、ゲギャギャァ!!」」」」

指揮である鬼(ホブゴブリン)から命令が下ると、殘り四匹になった小鬼(ゴブリン)は怯えながらも即座に従った。さっきは正面からの力押しだったが、今度は私を包囲しようと散會したな。

「いやいや、それは悪手だろ」

「ゲェ…!」

私は今度は右側に展開している最中の小鬼(ゴブリン)に向かって駆け寄ると、その勢いを乗せた大鎌を振り抜いた。哀れな小鬼(ゴブリン)君はまるでバターであるかのようにあっさりと両斷されてしまった。

包囲自は戦として悪くない。しかし、私は包囲する者を一撃で葬る事が出來るのだぞ?それに包囲している最中は完全に無防備になってしまう。だから、抵抗する間も無く一匹が斬られたのだ。

この狀況での最善策は二、三匹を捨て駒にしてそいつらを壁として利用し、私が対処した隙を狙う事だった。それももう不可能だが。

球(ライトボール)、球(ライトボール)」

私には魔と言う遠距離攻撃手段がある。包囲に失敗して慌てている小鬼(ゴブリン)を一方的に攻撃出來るのだ。放った二発の球(ライトボール)が直撃し、これで取り巻きは殘り一匹。

「ゲッ、ゲッ、ゲギャアアアアア!!!」

悲鳴のような雄びを上げながら、最後の一匹が突撃してくる。悲壯が漂っているが、同などしないぞ?私は容赦なく鎌を振り下ろし、頭から下までを真っ二つにした。

「ゲギィィィ!」

と、ここでお前が來るのか、鬼(ホブゴブリン)よ。ひょっとして部下が次々と殺られて行くのを見て、部下を全員囮に使ったのか?もしそうなら大した指揮だ。

「ふっ!」

私の背後から迫っていたようだが、生憎と私には第三と第四の腕がある。それには破壊不可能な杖が握られているのだ。それを使って、私は鬼(ホブゴブリン)の棒を(・)け(・)流(・)す(・)。

このけ流しは源十郎に叩き込まれた。私が一度、『自衛が出來ればいい』と言った際、戦士に力で劣る私が自衛したいなら覚えろ、と言われたのだ。そのせいで訓練の容が増えたんだよなぁ…。藪蛇とはまさにあの事だ。

「ゲゲッ!?」

しかし、そのスパルタ式訓練のおで、フェイントも何もない攻撃なら大け流せるようになってきた。鬼(ホブゴブリン)は力をい(・)な(・)さ(・)れ(・)て(・)たたらを踏んだ。私はその橫っ面を鎌の柄で毆りつけた。

「ゲギィィ…!」

「來い、弱きボスよ」

私は鎌の先端を地面に転がった鬼(ホブゴブリン)に向けつつ挑発する。その意図が伝わったのか、奴は棒を振りかざして突撃してきた。

「ゲァァッ!ゲギィ!ゲギャァァァ!」

連続で棒を振り回すが、どれもこれも単調な大振りでしかない。そんな力任せな攻撃では、今の私を捉える事など出來ない!

「…もういいだろう」

私は奴の橫振りを鎌で下から跳ね上げる。正面からぶつかり合うのではなく、別のベクトルから力を加えた事で、非力な私でもこのくらいは出來るのだ。け流しの応用、だな。

「弄ぶ趣味はない。これで終わり…だ!」

「ゲェッ!?」

そして返す刀で鬼(ホブゴブリン)の首を両腕ごと切斷する。訳が分からない、と言う表のまま、フィールドボスであった鬼(ホブゴブリン)は敗れたのだった。

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