《骸骨魔師のプレイ日記》蛙人の縄張りにて
「で、ここよりも北に向かうと蛙人(トードマン)の縄張りになるわけだな?」
「はい、そうなります」
我々は初遭遇した蜥蜴人(リザードマン)の漁師に案されて湖畔の中程まで進んでいた。し歪んだ円形である湖の真ん中からし北までが蜥蜴人(リザードマン)の縄張りらしい。
その領域で狩猟と採集を行って生活しているのだと言う。蛙人(トードマン)も似たような生活をしていて、更に食べるモノも被っているらしく、故にこれまではお互いに縄張りを意識し合って余計な爭いに発展しないようにしてきた。
なのに今回の騒である。絶対に何らかの問題が発生しているのは確かだろう。それが何なのかを調べるのが、今回のクエストだからな。
「案をしてくれてありがとう。気を付けて帰ってくれ」
「お気遣い、ありがとうございます」
萬が一の事態に備えて、彼にはここで離してもらう。ここから先は何時戦闘が起きるかわからないからな。危ないし、上手く連攜が取れない相手と一緒に戦うのは難しいだろう。
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「帰ったか…それにしても、NPCをパーティーに加えられるとは知らなかった」
「そんな機會がありませんでしたからね」
しかし、何よりも驚いたのはNPCをパーティーに加させられる事だ。これまでマトモなNPCと會話する機會が無かったから知らなかったが、雙方の同意があればNPCをパーティーにれる事は可能であるようだ。
この辺りのシステム的な仕様は掲示板に載っているのだろうが、興味が無かったので無視していた。何とも間抜けな話である。
「しかし、蛙人(トードマン)かぁ…強ェといいがな」
「殘念だけど、蜥蜴人(リザードマン)よりも弱いって話だよ」
実際に蜥蜴人(リザードマン)から聞き取り調査を行ったところ、一対一かつ進化の段階が同じならば確実に蜥蜴人(リザードマン)が勝つそうだ。唯一気を付けるべきは【奇襲】だが、逆に言えば正面きっての戦いだとそこまで脅威にはならないと言う意味である。ジゴロウが満足するような戦いにはりにくいだろう。
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「チッ、つまんねェな」
「これこれ、そう言うでない。ならばこそ異常の源への期待が強まるじゃろう?」
「まぁそうだけどよォ…」
文句を垂れるジゴロウを、源十郎は宥めるように諭している。いやいや、アンタはそれを期待してるだけだろう?
こ、これでもし異常の原因が大して強く無かったらジゴロウは暴れだすんじゃないか?ボスよ、どうか我々が程よく苦戦する程度に強くあってくれ。私は切実に祈ることしか出來ない。
「あ、何かいるよ。警戒して」
そうこうしているにルビーが何かを発見したらしい。もう蛙人(トードマン)が現れたのか?
「そこっ!」
ルビーはに収納していた投げナイフを取り出すと、泥の中に向かって投げつける。先制攻撃を仕掛けたが、どうなる?
カン!
しかし、ナイフはアッサリと弾かれてしまった。盾か何かを持っているのか。しっかりと武裝している…いや、違う。あれは蛙人(トードマン)では無いぞ?
――――――――――
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種族(レイス):泥田螺(マッドスネイル) Lv10
職業(ジョブ):なし
能力(スキル):【殻】
【地魔】
【水魔】
【出】
――――――――――
泥から出てきたのは、馬鹿デカイ田螺(タニシ)だった。そう言う魔もいるんだな。ハッキリ言ってかなり弱いし能力(スキル)も大したものを持たないが、殻は相當いらしい。【投擲】を持っているルビーの投げナイフで傷一つ付いていないのだから。
上手く殻を壊さずに倒せれば、素材として手にるかもしれないな。何となくだが、ひっくり返してやれば簡単に倒せそうな気もする。ここは私が闇腕(ダークアーム)を使って…
「面白ェ!俺の拳で砕けるか、試してやらァ!」
「ちょ!」
そんな私の考えを伝えるよりも先にジゴロウがいた。どうやら、い相手に興味津々なご様子。それを砕けるかどうかを試してみたくなったのだろう。
けど!待って!私は殻を壊さずに倒す方法を考えていたんだぞ!?
「オッラァ!」
ミシィッ!
ジゴロウの右ストレートが殻に突き刺さる。それによってヒビがったものの、砕くには至らなかった。
何と、耐えたと言うのか!驚く程にいのだな!
「しゃらくせぇ!」
バキャッブチュッ!
だが、流石にヒビのった狀態では二発目を耐えられなかったらしい。ジゴロウの左手による追撃によって、泥田螺(マッドスネイル)の殻は無慘にも砕け散り、さらに殻を砕いた勢いのまま臓部分を潰されて絶命した。
「毆り応えのあるさだったな!」
ジゴロウが満足したようで何よりですよ、ホント。一応、剝ぎ取ってみますか…って、何も落とさないか。まあ、出たとしても殻は砕けてたし中はグチャグチャだったしでまともな品質では無かっただろうけど。
「儂も負けてはおられんの。殻ごと中を切ってくれるわ」
「あの、殻がドロップするかもしれないので出來れば壊さないで倒してくれませんか?」
「な、なんじゃと!?」
私が言いたかった事をアイリスが代弁してくれた。さすがは生産職、素材の大切さは我々の誰よりも知っているらしい。
実際、一発とは言えレベル10の魔がジゴロウの拳に耐えたという事実は驚くべき事である。あの殻がドロップし、それを加工した防が作れればかなりの能となるに違いない。その可能をみすみす逃す手は無いだろう。
「そうだよ、お祖父ちゃん!素材は大切にしないと!」
「むうぅ…」
「はっはっは!殘念だったな、爺さん?」
ルビーに叱られてしょげている源十郎と勝ち誇ったように笑うジゴロウ。おい、お前が笑うのは違うんじゃないか?
「ジゴロウもだよ?」
「ぐっ…」
凄まじく冷たい聲音でルビーはそう言った。おお、あのジゴロウがたじろいでいるぞ!これからは戦闘狂(バトルジャンキー)二人の面倒は彼に見て貰うとするか。
「ん…また敵だよ。多分、さっきと同じ奴。…わかってるよね?」
「「は、はい!」」
二人はビシッと直立して答えている。なんだか軍隊みたいだな。さて、今度こそひっくり返して倒してみますかね。多分、これが正攻法っぽいしな。
◆◇◆◇◆◇
あれから何度か戦闘をこなしたのだが、一向に蛙人(トードマン)とは出くわさなかった。きが活発になっているんじゃなかったのか?蜥蜴人(リザードマン)の長が噓を付いていた可能まであるぞ、これは。
それはそうと、あれから泥田螺(マッドスネイル)や魔魚(イビルフィッシュ)・鯲(ローチ)を狩りつつ進んだのでドロップアイテムは手出來た。魔魚(イビルフィッシュ)・鯲(ローチ)はとヒゲだけだったが、泥田螺(マッドスネイル)はこんなを落としてくれた。
――――――――――
泥田螺(マッドスネイル)の貝殻 品質:良 レア度:R(希級)
沼地の泥の中に生息する泥田螺(マッドスネイル)の貝殻。
捕食者からを守る為、かなりの度を誇る。
加工は難しいが、優れた盾や防の材料となる。
――――――――――
思った通り、泥田螺(マッドスネイル)は貝殻をドロップしてくれた。良質な素材が手にって、アイリスはホクホク顔になっている。…顔は無いので雰囲気であるが。
「しっかし、ドジョウとタニシばっかだな。蛙人(トードマン)なんざ一匹もいねェじゃねェか」
「ああ、そうだな」
ジゴロウが不満げにそんな事を言う。それに関しては全面的に同意するぞ。蛙人(トードマン)が不振なきを見せているという話だったのに、縄張りにって結構経つ我々を見逃しているのには違和を覚えるぞ。
「…今思ったんですけど、ひょっとして私たちはい込まれたんじゃないでしょうか?」
「まさかそんな…いや、あり得るか」
アイリスがふと気になる事を呟いた。我々は『活が活発化している』と聞いていたが、実際はそう単純な話では無いのかもしれない。そして彼の予想が事実なら、私達は敵陣の奧深くで孤立している形となる。これは危険だ。
「よし、一旦引き返そう。仕切り直しだ」
「えぇ~?マジかよ」
ジゴロウは心の底から嫌そうな聲を出す。しかし、この決斷を下すには々遅すぎた。
「!?て、敵だよ!凄い數だ!囲まれてる!」
ルビーが悲鳴を上げるようにして敵襲を告げる。すると、気付かれた事を察したのか、泥や湖の中から二足歩行の蛙、即ち蛙人(トードマン)が姿を表した。その數はざっと數えただけでも二十は下らない。ヤバいぞ!
「ゲコッ!」
「ゲロォ!」
蛙人(トードマン)達は聲に明らかな敵意と殺意を込めてつつ、此方に突撃してきた。ええい、ままよ!
「迎撃するぞ!」
「待ってましたァ!」
これからどうくにしても、この集団をどうにかしないことには始まらない。とにかく、今は戦わねば!
◆◇◆◇◆◇
――――――――――
種族(レイス)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
職業(ジョブ)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
【鎌】レベルが上昇しました。
【魔】レベルが上昇しました。
【召喚】レベルが上昇しました。
【付與】レベルが上昇しました。
【降霊】レベルが上昇しました。
【邪】レベルが上昇しました。
【言語學】レベルが上昇しました。
――――――――――
蛙人(トードマン)の領域に踏み込んだ時、私達は異変など無いではないかと文句を言っていた。しかし、実際には想像を遙かに越えた異常事態が起こっていたのである。
「ゲロロロロ!」
「ゲロッゲゴォォォ!」
二足歩行する蛙としか言い様の無い蛙人(トードマン)達が殺意を剝き出しにして迫ってくる。奴等の言葉も鼠男(ラットマン)と同じでそれに籠められた位しか聞き取れない。蜥蜴人(リザードマン)の言葉は普通だったのにな。何が違うんだろう?
「しつけぇ…っつの!」
ジゴロウの怒聲と共に放った拳が、二匹の蛙人(トードマン)を吹き飛ばす。うん、現実逃避はこのくらいにしよう。我々は今、追い詰められているのだから。
最初の二十匹は既に片付け終わっている。しかし、奴等は數が減ってくると仲間を呼ぶ聲を上げたのだ。そのせいで敵の援軍が次々とやって來て、私達は逃げることも出來ずに連戦を繰り返しているのだ。
「ゲコッゲコッ!」
「ゲロォ!ゲゴゲゴ!」
それからというものかれこれ二十分は休憩なしで戦い続けているのだ。延々と援軍がやってくるので、経験値は溜まってくれるが流石に疲れが見え始めている。ジゴロウが苛立ちを伴った悪態を吐くのも無理も無い。
それに戦闘続きで肝心の調査は全く進んでいない。そんな余裕が一切無いからな!…ダメだ。ここはやはり退卻するべきだろう。
「皆、撤退しよう!これじゃ、埒が明かない!」
「逃げるって、誰が時間稼ぎすんだ!?殘った奴は絶対死ぬぞ!」
「殿は私が喚び出す!星魔陣起、亡者召喚!」
【降霊】によって大量の亡者が現世に降り立つ。それらは一一は蛙人(トードマン)に劣るが、數では勝っている。我々がやられたように、數の暴力で無理矢理足止めすることは可能だろう。
「召喚(サモン)、骸骨盾戦士《スケルトンシールドウォリアー》!そして不死強化(アンデッドブースト)!」
さらに【召喚】で防に優れる骸骨盾戦士《スケルトンシールドウォリアー》を喚び出して【死霊魔】で強化する。これが計五。私の魔力の最大値が一気に半分を切ったが、逃げるための必要経費だ!
「よし、今のに逃げるぞ!」
「おう!」
我々は兎の如く逃げ出した。私と源十郎は飛行し、移速度に難があるアイリスをジゴロウとルビーが抱えて全力疾走する。
こうして第一回の調査ではただただ敵の數が多い事が判明した以外には、何の果も得られなかった。これは我々に危機と作戦らしい作戦を無かったのが原因だと思う。次回からはちゃんとした作戦を立ててから挑まなくては!
「これは中々厄介な問題になりそうだな…」
敵に背を向けて逃げながら、私はそう獨りごちるのだった。
田舎で暮らしていた時、今の時期は夜に蛙が鳴いてうるさかったのを思い出します。なので蛙人はやられ役になってもらいました。
…冗談です。
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