《VRMMOで妖さん》10:乗せてもらおう。

レティさんの左手の上で急上昇に耐える姿勢を取ってから、ゆっくりと立ち上がって貰った。

指をそろえて付けを曲げて貰い、壁兼手すりを作ってもらっている。

聲が屆かないのでジェスチャーでお願いした。

さっきの握手で思った通り、レティさんはかすのが上手い。

きれいな加減速で出來るだけこちらの負擔を抑えてくれた。

泣きわめくお姉ちゃんをなだめたアヤメさんが近づいてきた。

お姉ちゃんは落ち著いたみたいだけどその場で佇んでいる。

「すいません、また取りしました。ご迷をおかけしました……」

レティさんの手の上で立ち上がり、頭を下げる。

「いやー、あれは取りすのも仕方ないだろう……」

「ですよねぇ。むしろこの短時間でまともに喋れている事の方が驚きですよ。

私ならログアウトして逃げて、戻ってくるかも怪しいですもの」

あっ。

「ログアウトっていう手段を完全に忘れてた顔だな……」

お恥ずかしい。

視線を逸らして周りを見て気づいてしまった。

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肩の高さまで上げて貰ったけど、今ここすごい高い。レティさんの手もそう広い訳じゃない。

「あの、失禮かもしれませんが座ってお話させてもらっても良いですか?

上げて貰っておいて悪いんですが、ちょっと高くて怖いので……」

「あー、そっちの覚だと五階建ての屋上くらいの高さなのかな?そりゃ持つとこあっても怖いわ。

ってか私たちも座らない?そこにベンチもあることだしさ」

う、移か。レティさんは丁寧に運んでくれるとはいえ、橫のきに耐えられるかな?

「そうですね。では移の準備をするので白雪さん、し手を下げますので揺れに備えて頂けますか?」

と思ったら考えがあるようなので、言うとおりにしゃがんで構えた。

それを見てゆっくりと私が乗った左手を下げていく。

お腹の前の辺りまで下がった所で止まった。手は橫向きになっている。

一旦指から手を離してくれと言われたので両手を下に降ろす。

指がまっすぐばされ、そこに右手が近づいてきて指を重ねる様に左手の下に添えられる。

「これから親指をかしますので、指の中ほどまで行って外側に向かって深く腰かけて下さい。

両手は後ろについておいて頂けると助かります」

言われた通りにき、恐る恐る指の端から足を出し座る。

するとゆっくりと左の手の平が起き上がり、私のお腹の前に親指が添えられた。

左手が靜止すると今度は右手が同じようにき、親指同士を接させる。

座禪の時の手の形を平たくしたじかな?

「私の親指に摑まっていてくださいね。

それでは參りましょう」

ジェットコースターの安全バーみたいに置かれた親指にしっかりと摑まる。

ある程度を固定できていると安心があるな。

ただこれ、傍から見るとかなり微笑ましい絵面になってるんじゃ……

いや、やめよう。考えないでおこう。

アヤメさんのこちらを見る顔がすこしほっこりしてたのなんて気のせいだ。

やっぱりレティさん凄いな。

歩いていても重心がブレてないのか、手も殆どかない。の制能力がとても高い。

とはいえ、私のスケールだと揺れ幅が10倍になるから流石にそれなりには揺れる。

しかし親指を抱えていることでなんとかなる程度の揺れだ。

程なくしてベンチの前に著いた。

手を元に戻すと言われたので先ほどと逆の順番でく。

但し今度は手の高さを上げることは無く、私の乗った手の高さを殆ど変えることなく自分のだけを降ろして靜かにベンチに腰掛ける。

レティさんは日本舞踴でも嗜んでいるんだろうか?

あれってゆっくりと正確に、自分の意識した通りにかせないといけないらしいし。

いや詳しくは知らないけどね。

それはさておき、お姉ちゃんが未だに近寄ってこない。

「アヤメさん、お姉ちゃんに私は怒ってないよって伝えて貰えませんか?」

「あいよ。 おーい! 白雪ちゃんが怒ってないからさっさとこっち來いってさー!」

ちょっと言葉盛られた。

それはいいけど、割と近くで大きな聲を出されたので思わず耳を押えてしまう。

「おや? ごめん、うるさかったかな?」

「すいません。聲の大きさもサイズと同じような差があるみたいなんです。

私の聲がアヤメさんにしか聞こえないくらい小さいのとは逆に、皆さんの聲がかなり大きく聞こえてしまうんです」

「あー、そっかそっか。気付かなくてごめんよ。

二人とも、白雪ちゃんからだと大聲に聞こえるらしいからし聲を抑えめに話してあげて」

あ、説明してる間にお姉ちゃん來てた。

ベンチに座らずに膝立ちになってこっちと目の高さを合わせてくる。

まだ涙目のままだ。

「ごめんなさい……」

返事をしても聞こえないのは解ってるので顔の前で大きく「気にするな」と手を振っておく。

「ほら、怒ってないって言ってるんだから座りなよ。

さっきみたいな事にならないように、ちゃんと気を付ければいいんだよ」

「……うん、 うん!」

アヤメさんに諭されて普段通りの表に戻ったお姉ちゃん。

私(というかレティさん)を挾んで反対側に座った。

……やっと普通に話が出來るよ。長かったなぁ。

いや、普通にって言っても私の聲はアヤメさんしか聞き取れないんだけど。

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