《VRMMOで妖さん》20:服を買おう。
広場を抜け南通りにると、様々な店舗が並んでいた。
とはいえ數はそれほど多くなく、広場から離れるにつれて建設中の店舗や空き地が多くなっているようだ。
まだまだ出來始めの町といったじだな。
とりあえず広場から見て左手側の店を順番に見てみよう。何か見つかるといいけど。
最初にあったのは大きな武屋だ。うん、用は無いな。
もしかしたら注文すれば私にも扱えるを作ってもらえるかもしれないけど、あんまり意味がないし。
次の防屋もスルー。
なんか店の看板とか雰囲気が隣の武屋と似てる。同系列のお店なのかな?
次は鎧とかじゃない普通の服の店か。
【浮遊】が止されてるって事を見ても今の時點だと【妖】が居る事は考慮されてないっぽいし、このサイズの服なんて置いてないだろう。スルーだ。
次はー、布や革とかの素材屋さんかな?覗いてみよう。
革は分厚くて使えないだろうけど目の細かい布とか無いかなー。
って、ドアが閉まってる。店はちゃんとやってるみたいだけど、私にドアが開けられるかな……?
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幸い西洋式の開きのドアなので、押せば開くはずだ。
よし、頑張ってドアノブを押し下げるからポチも一緒に押してくれ。あ、ゆっくりね。
……ノブ固いよ!! 上に乗っかって【浮遊】で下に飛ぶ力を加えても全然かない。
うん。私のサイズだと糸が太くて使えないさ。きっとそうだ。
などと負け惜しみを言いつつドアから離れようとした時、聲をかけられた。
「中にりたいのかしら?」
おっと、邪魔になってたみたいだな。
ドアからし離れた所に、靜かな雰囲気のお姉さんが立っていた。
頷いて橫に退ける。
お姉さんが前に進み、軽々とドアを開け中へり振り返った。
「はい、どうぞ」
「いらっしゃーい。あれ、どしたの?」
中から店員さんの怪訝な聲が聞こえてくる。
られるなら見てみたいしありがたくれて貰おう。あ、ポチはっていいか解らないからお店の前で待っててね。
ドアの邪魔にならない位置までって頭を下げ禮を言う。
聞こえないだろうけどちゃんと口に出さないとね。
「中にるついでだから気にしないで」
ドアを閉め、軽く手を振ってカウンターへ行ってしまった。
そちらを見た拍子にカウンターの向こうに居た店員さんと目が合う。
「妖さんだー! 初めて見るよー! いらっしゃいませー!」
元気な人だなぁ。會釈して返しておく。
とりあえず布や糸を見てみよう。
うん、予想通りだった。
細めの糸でも結構な太さだ。布は一番薄いなら何とか使えるかも。
というか置いてあるのを見て今更気付いたけど、私にまともに扱えるような道がない。
小さめの針でも三十センチはある。編み針みたいなサイズだ。
編みなら出來るかもしれないが、これで普通のをするのは厳しい。太いし。
うーん、やっぱり當分この恰好のままで居ないといけないのか。
もうし出を減らしたいんだけどなぁ……
ん?あっちにあるのは…… 絹か。
おー、すっごい細い糸もある。私から見ても一ミリくらいだ。
こんな細いのまともに使えるのか? いや、使えるから売ってるのか。
しかし當然とはいえ凄く高いな。
素材屋なのに絹小も売ってるのか。サンプルみたいなものかね?
いや、素材屋っぽいなって勝手に思ってただけなんだけど。
む。二メートル四方の白いレースのハンカチが売ってる。
シルクオーガンジーって奴かな?かなり薄めだ。
ふちの方のレース編みみたいな部分は更に薄くなっていて、殆どけて見える。模様が綺麗だな。
これ、古代ギリシャとかの服みたいにすれば代わりになるんじゃないか?
キトンって言うんだったかな。
あ、でも絹って日焼けしちゃうんだっけ? 上著には向かないかなー。
……って高ぁっ!? 銀貨八枚!?
ブランドとか軽い品みたいな扱いなのかな……
むぅ。高いし変する可能がある。
でも買えない値段じゃないんだよな……
うん、買っちゃえ。迷ったら買う。
後悔するかもしれないけどしないかもしれないのだ。
勝手にってもいいか判らないので店員さんを呼びに行こう。
り口近くのカウンターまで飛んで行く。
店にれてくれたお姉さんが店員さんと話をしていた。邪魔になっちゃうかな。
「おっ、何かしいがありましたかー?」
話を打ち切ってこちらに話しかけてきた。いいのかな?
お姉さんもこちらを見て、軽く頷いた。よかった。
あっちだと指をさしながらハンカチの所へ飛んで行く。
店員さんもついてきてくれている。
著地して「これー」とばかりにハンカチの前をぽふぽふ叩く。
「えぇっ!? これを!?」
驚いたのは解るけど聲が大きい。 失禮な態度になるけど耳を押えてしまう。
「あっ、ごめんなさい。でも、本當にこれを?」
「大丈夫です」と首を振り、「はい」と頷く。
「ありがとうございます! じゃ、こちらへどうぞ!」
ハンカチを持ってカウンターへ向かう店員さんについていく。
「大きな聲を出して、どうしたの?」
カウンターへ戻るとお姉さんが店員さんに問いかけた。
「いやぁ、これが売れるなんて思ってなかったからさー」
「これ、結構な額の高級品じゃなかったかしら?」
「うん、だからずっと店の飾りになるだろうなーって思ってたよ」
うん、開拓と冒険に來てる人達が買う品じゃないよね。
完全にただの贅沢品だし。
ボックスの銀貨を全て取り出してカウンターに置く。
「ありがとうございます! 何か要が有ればサービスしちゃいますよー!」
「お金持ちなのねぇ」
聲が…… いいや。多分無駄だ。 あとこれほぼ全財産です。
要か。キトンみたいに著るには留めると帯が要るんだったかな?
どうするつもりなのか解ってもらう為に実演しよう。
とりあえず鞄を外して置いといて、と。
一度カウンターの上に広げて、四分の三くらいを折りたたむ。
後ろ手に折りたたんだ両端を持って右腕の下に折り目が來るようにを挾み込み、左手でまとめて持ってから右手で左肩の辺りを指さして示す。
背中に翅があるせいで布が後ろに偏り気味だな。
「えーっと?」
「ここを留めたいって言ってるんじゃないかしら? 服としてしかったみたいね」
「あ、なるほど。留めかぁ、ボタンは大きくて邪魔になるだろうし糸で留めるしかないかな?」
先程のコーナーから絹糸を持ってきた。
でも針結構太いけど大丈夫かな?
この編目の大きさなら頑張れば手で挿し込めそうだな。
「糸、ちょうだい」と右手でジェスチャーしてみる。
「自分の手で通すから糸をくれって言ってるんじゃない?」
おお、伝わった。當の店員さんは疑問符浮かべてたけど。
ついでに端っこをまとめて持ってもらおう。まとめた先端を右手で指し示す。
お姉さんがそっと持ってくれた。お客さんじゃないの? まぁいいか。
左肩の上になる部分に糸を通す。
折り返しているので一周で四枚、負擔を和らげるために三周しておいた。
糸を切ってもらい、解けない様に結ぶ。右側も同様に。
し右腕の下の余裕がなめだけど、翅があるから仕方ない。
しかし、顔の前に巨大なハサミが來るのって怖いね。
「おぉ、これはいいですねー。かわいーですねー」
あとは帯も必要だよね。ウェストを囲むように手で表してみる。
「あ、帯も要りますよね。 フミちゃん、見繕って持ってきてくれる?」
「客を使わないでくれるかしら? うん、あれが良いかしらね」
使うなと言いつつ取りに行ってくれる。良い人だ。
絹のコーナーからワインレッドの細いリボンを持ってきた。
糸もだけど絹製品をサービスして貰って良いのだろうか。
「はい」
「全く遠慮なしにシルクリボン持ってきたねぇ。全然構わないけどさ」
良いみたいだ。ありがたく貰っておこう。
ん?後ろ向けって? あ、結んでくれるのか。 ちょっと怖いけどお願いしようかな。
絞られて真っ二つになったりすることも無く、かわいく結んでもらえた。
現実だと似合わないにも程があるだろうけど、今はちっちゃいからいいよね。
宙に浮いてくるりと回ってみた。
うん、後ろがしダブついてるけど翅の邪魔にもなってないから大丈夫だろう。
後ろは布やリボンで塞がっちゃったし、鞄はボックスに仕舞っておこう。
お腹の前になら付けられるけど違和が凄いしね。
「うんうん、良いですねー。これからも當店をどうぞご贔屓にー!」
ぺこりと頭を下げ、店を出る。
……出られなかったので開けて貰った。むぅ。
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