《VRMMOで妖さん》35:火をろう。

何回か試してみたところ、どうも最初の一太刀は奇跡的な出來だったらしい。

大抵刃の向きと振り下ろす方向がきちんと揃わず、りはするものの斜めに持っていかれて手首を壊しそうになる。

それに力の向きが斜めなので、刀を押し付けることになっているのか途中で勢いが鈍ってしまう。

所詮は素人剣未満の代だからしょうがないか。今度ちゃんと練習してみようかな?

まぁ、とりあえず今はこれくらいにしておこう。

あ、そうだ。もう一つあった。

「アヤメさん、お姉ちゃんって【火魔法】は使えるんですか?」

「ん?あぁ、使えるけど?」

「この木に火をつけてしいんだけど、お願いして貰って良いかな?」

「はいよ。ミヤコ、そこの丸太に火ぃ點けてしいってさ」

「はいはーい。危ないからちょっと離れててね。【火矢(ファイアボルト)】」

お姉ちゃんが放った魔法が柱に當たり、炎上させる。おー、すごいなー。

剣を吸ってから火に近づいていく。

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「ん、何してんだ?」

「何かやろうとしてるのかな?」

疑問が聞こえてくるけど気にせず魔力を流そう。

あれ? この火、熱くないぞ?

「えっ、ちょっと雪ちゃん!?」

恐る恐る手を近づけてみる。うん、やっぱり全然熱くない。なんでだろ?

あっ、魔法で出來た火だから魔法防で何とかなってるのかな?

【魔力知】を意識してみると火に自分のじゃない魔力が満ちているのがなんとなく解った。

自分のじゃないっていうか普通に考えてお姉ちゃんの魔力だけど。

おおう、本っていうか燃えてる木は熱いな。いまいちよく解らん。

まぁ火にるのは大丈夫そうだ。覚悟を決めて両手を突っ込んだ。

「おいおい! 大丈夫なのか!? いや、大丈夫じゃなかったらもう死んでるか……」

火に私の魔力をし流し込んでみる。

お姉ちゃんの魔法だからなのか妙な抵抗があったけど、ゴリ押しでねじこんだ。

よし、大私の魔力で上書き出來た。ふはは、乗っ取ってやったぞー。

さて、頑張ってかすぞー。でも火ってもともと揺らいでるから判りづらいな。

まぁ普通ならあり得ないきにすればいいか。

「あれ? なんか火がいつもと違うじがする」

「どうしました?」

「なんていうか、私のじゃないみたいな。雪ちゃんが何かしたのかな?」

「あー、何か手突っ込んでるしね。しかし最初、火にフラフラ寄っていくからちょっと蟲かよって思っちゃったよ」

失禮な。熱かったら近寄らずに遠くから頑張ったよ。

「でも凄いなぁ。私の魔法でほぼダメージけない魔法防かー」

「まぁ、あのMNDなら納得ではありますね」

あ、こういうのやってたら【MND強化】の経験値溜まるかな?

流石に直に狙われるのは怖いから嫌だけど。

「ん?あれ? あの火、何かおかしくないか?」

「えっ? えっと、なんか丸っこい?」

お、ちょっとずつ摑めてきたか?

よし、こうして…… こっちこいこい。できたー。

柱の火から手の平サイズの火球を切り取ってみた。

「へっ? 噓ぉ?」

なんかお姉ちゃんの呆気に取られたような聲が聞こえた。

気にせずに手の上の火に追加の魔力を注ぎ込んでみる。

おー、燃える燃える。燃料ってじだな。

そのままのサイズで凄い燃えてるけど、溫度とかどうなってんだろ?

元の場所にお帰り。えいっ。

大量に流し込むだけ流し込んで柱に向けて投げつけた。

……なんか當たった周辺が一瞬で燃え盡きた。噓ぉ!?

「はあっ!?」

うん、そりゃ驚くわ。私もビックリですよ。

更に貫通して著弾した地面が直徑五十センチくらいの円形に溶けてるのにもビックリですよ。

どんな火力してんのかと。

「えっと、うん、お姉ちゃん自信無くなっちゃうかなーなんて」

いや、なんかほんとごめん。

「ちょっと魔力流し込み過ぎたかも」

「いや白雪、【火魔法】持ってたんなら自分でやれば良かったんじゃないのか?」

スキルパネルを確認する。お、あるある。

「おー、取れてるー」

「え、もしかして今ので自力で覚えたのか?」

アヤメさんが驚いて聞いてきた。

「うん。これで地水火風の四つが揃ったー」

うん、素直に答えたらなんか諦めたような顔になった。

「いや、うん。なんていうかもう、滅茶苦茶だな」

「どうしました?」

「今日だけで四屬全部ポイント使わずに覚えたってさー」

「自力習得って本當に可能なんですね……」

「雪ちゃん凄いなぁ。私も頑張らないと」

私が凄いっていうか【妖】のせいなんじゃないかな。

とりあえず柱と溶けた地面に放水しておく。溶巖の方は蒸気が凄い事になった。

「そうだ白雪。さっきの剣なんだけど、ちょっとこの位のサイズの奴出して試させて貰えないかな?」

そういって私の長と同じくらいの刃渡りのナイフを見せる。

まだ魔力はあるしなんとかなりそうだな。

柄の部分を中空構造にしてちょっとMPを節約し、その分を強度に注いでおいた。

「はい。見えづらいだろうから、悪いけど一旦地面に刺すね」

見えないまま柄に手が當たって自分が真っ二つとかになったらやだし。

刃を下にして地面に突き刺す。……元までスッとってしまった。

「えーっと、ここかな? あった。 手に持っても刃は全然見えないなぁ。 あ痛っ」

そーっと指先を近づけて刃のありかを探って、ちょっと刺さったらしい。何やってんの。

「怪我した指出してー」

「え? はい。 ……おぉ、治った。凄いな、それも新しいスキル?」

「アヤメちゃんずるーい!私もふーってしてしい!」

「うん。【妖吐息】っていう固有っぽいスキル。あとお姉ちゃんは落ち著いて」

「へぇ。 さて、それじゃ試してみようか」

アヤメさんの手が柱に向かって無造作に數回振るわれる。

一拍遅れて柱の上部が細切れになって崩れ落ちた。

「凄い……っていうか凄すぎて怖いわこれ。バターみたいにどころじゃなくて切った気がしないくらいだ。

私も【純魔法】取ろうかなぁ」

「でも、それ作るのに千點くらいMP使ったよ? あと、多分普通のサイズの人が作ったらそこまでの切れ味にならないかも。私の視點で限界の薄さに挑戦したからね」

「あー。それに維持してる間はMP最大値が減っちゃうんだっけか。仕方ない、諦めるかぁ」

柄を向けて差し出されたナイフを吸って回収する。

「あと、【妖】なら【吸】でMPを回収できるけど普通なら使ったMPは諦めるしかないかな」

程。なんか【妖】の為みたいな魔法だな」

まぁ相はいいね。

々作れるから食や道も作れそうだし。

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