《VRMMOで妖さん》44:謝っておこう。

【吸】と結晶作りをして三往復ほど作業を進めた頃、裏門の開く音がした。

ここからだと草に遮られて見えないけど、誰が來たんだろう?

「ほう、庭の手れはしづつだが進んでいるようだな」

この聲はアリア様か。奧に住んでるから裏を出り口に使ってるのかな?

様が通る道なのに、一人分の幅以外が雑草に覆われてるってどうなのさ。

「お待ちください姫様。草のに何か潛んでいるようです」

今度はコレットさんの聲だ。

と言うかマズい、警戒されてる。何かが居る事は察知したけど、私だとは気づかれてないじか。

飛び出して攻撃されたりするのは困るから、出るのは聲をかけてからにしよう。

「私です、白雪ですー。ちょうど今、雑草処理の仕事中ですー」

言い終えてからゆっくりと草の上に顔を出す。

「おや、白雪さんでしたか。これは失禮致しました」

私を見て警戒を解いてくれたようだ。

っていうか作業してるって聞いてるなら、私だって初めから察してくれていいんじゃないか?

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いや、そもそも誰が引きけたかって事まで報告が上がってるか知らないけど。

まぁ私が作業してるって知ってても、萬が一を考えたら警戒は必要か。

「おぉ白雪、ご苦労。しかしそので、どうやって除草しているのだ?」

その辺は報告されてないんだな。

「【吸】で気を吸い盡くしているそうです」

コレットさんに中継して貰い、頷いて手近な草で実演してみせる。

「ほう、そのような使い方もあるのか。それにしても【自】といい、中々に危険な生きよの」

まぁ戦いになったら攻撃する前に死ぬんだけどね。

「それはさておき白雪、何やら良いを贈ってくれたそうだな。ジョージが執務室の機に置いてきたと言うので、まだ現は見ていないのだが」

「あ、はい。拙(つたな)い出來で恐ですが」

「いやいや、出來がどうであろうと贈りは嬉しいものだ。それに、ジョージが「壊れちまいそうなんで」などと言う位だからな。相応に繊細な代だろう。ありがとう」

なんかハードル上がってるじがするぞ。

って、あぁっ! アリア様って【細工】出來るんじゃん!!

素人丸出しの作品を力作なんて言って渡しちゃったよ…… これは恥ずかしい。

ジョージさんが伝えてないことを祈…… 無理だな。

あの人、その辺を解った上で絶対言うわ。

「まぁきちんと謝を告げるのは実を堪能してからにしよう。

しかし何だ、俄然やる気が増したな。これは張り切って家を作らねばならん!」

「いえ、見返りを期待した訳じゃないので。というか張り切りすぎず、程々にお願いします」

いや本當に。

「さて、執務室に戻り仕事を進めるとしよう。それでは白雪、引き続き庭の手れをよろしく頼む」

立ち去る二人を頭を下げてから見送り、作業を再開する。

端まで進めて、思い付きで一センチほどしかない魔力結晶を大量生産してみた。

このサイズならビーズみたいに埋め込んで使えるんじゃないかな?

まぁ作るのにも殆どMPを使わないし、何か効果が付くことは期待できないけど。

というかMPの消費は殆ど無くても、作る事に時間がかかりすぎて肝心の草取りが進まない。

時間が余っているときにしづつ作り溜める事にして、今はお弁當を作っていく。

しばらく続けていると、今日もお姉ちゃんからの帰還メッセージが屆いた。

こちらも同じく噴水広場で待ち合わせをするメッセージを返信。

今日はドアの問題も無いので普通にホールへ戻り、ポチを引き取る。

殘念そうな視線を振り切って役場を後にする。

お姉ちゃん達はまだ著いていないようなので、ベンチに伏せたポチに寄りかかって待つ。ぬくい。

せっかく時間が空いたので早速ビーズ作りと行こう。

それほど待つことも無く、數分もすれば歩いてくる三人が見えた。

手に乗せた結晶をすべてボックスに押し込み、飛び立って手を振る。

「おかえりー」

それぞれが挨拶を返し、早速屋臺へ向かう事になった。

「ところで、今日は無事に生き延びたかい?」

なんだその質問。いや気持ちは解るけどさ。実際死んでるし。

「今日は一回しか死ななかったよ!」

「一回は死んでるんだな…… 何があったんだい?」

「自分で作った溶巖を冷ますために水を出して、その蒸気で蒸された」

「いや、本気で何やってんのさ……」

うん、やっぱり呆れるよね。仕方ない。

「どうしたって?」

「自分の魔法のせいで蒸し上がって死んだってさ」

「えぇ……」

「雪ちゃん、アホかわいい!」

うっさいやい。

今日は焼き鳥の屋臺で、塩とタレを二欠片ずつ貰った。

ちなみに私はどちらかというと塩が好きだ。だから何だという話だが。

皆が食べ終わってから銅貨をこっそり置いて飛び立ち、南通りへ向かう。

「そうだアヤメさん、そこの素材屋さんに通訳で付いてきて貰えないかな?」

「いいけど、どうしたんだい?」

「せっかく服にしてもらったハンカチがダメになっちゃったから、謝ろうと思って」

正確にはするのを手伝ってもらっただけだけどね。

ボックスから取り出して見せた。

「うわ、こりゃ酷いね。あぁ、蒸気で傷んじゃったのか」

「リボンを選んでくれたお姉さんにはもう謝って、気にする必要は無いって言われたんだけど。

やっぱり一応言っておこうかなって」

「解った、それじゃ行こうか。ちょっと白雪が店員に話があるらしいからそこの店にるけど、二人はどうする?」

「それじゃ、私たちは表で待ってるよ。ポチちゃーん、こっちおいでー」

「そうですね。どうぞ、存分に話してきて下さい」

そう長くはならないと思うけど。まぁ行こうか。

「いらっしゃいませ!」

「どうも。この子が話があるって言うんで、私は通訳としてついてきました」

「はい、なんですか?」

持っていたキトンと帯をカウンターに置いて見せ、頭を下げる。

「せっかく売ってもらったハンカチと、選んでもらったリボンをこんなに早くダメにしてしまって申し訳なく思って謝りに來たと」

「そんな、謝らなくてもいいですよー。ちゃんとお代は貰ってますし、リボンを選んだのはフミちゃんで私は糸を用意したくらいですから」

「その方にはもう謝って気にするなと言われたそうです」

「だったら尚更ですよ。えぇ、気にする必要はありませんよ。大丈夫です」

まぁ付きあわせるのは悪いけど、けじめみたいなだから。

再度頭を下げて、ボックスに仕舞っておく。

店にって何も買わないのは申し訳ないけど、失禮させてもらう。

「冷やかしみたいで済みませんが、失禮します」

「いえいえ。またよろしくお願いします!」

店を出てお姉ちゃん達と合流する。

「あ、終わった? それじゃもう良い時間だし、今日は解散しようか」

「そうですね。それでは失禮します」

「あぁ、私も落ちるとするよ。またね」

「お疲れさまー」

三人ともログアウトしていった。私も寢よう。

あ、そういえばすっかり忘れてたけど掲示板とかあるんだった。

落ちる前にちょっとだけ見てみようかな。

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スレッド一覧

1: 【YES妖】妖さんを優しく見守るスレ Part3 【NOタッチ】 (243)

そっとパネルを閉じた。うん、寢よう。

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