《VRMMOで妖さん》57:案しよう。
下に向けて押し出した魔力球は加速する事も無く、ゆっくりと降りていった。
かなり遅いな。著弾まで十秒くらいかかるんじゃないか?
まぁ暴走して目の前で破裂したら堪ったもんじゃないので、制に集中していようか。
なんか悲鳴が聞こえる。
やだなー皆、何もそんな走って逃げなくても。流石に大袈裟でしょ?
ギャラリーのが最初の倍くらいの大きさになってるよ。
もう半分は過ぎたかな。
距離が離れると制が難しくなるらしく、だんだん甘くなってきた。
「うぅ、怖いー…… もういっそ自分から……っ!」
「おいやめろバカ!」
えっ。
我慢できなくなった魔人さんが、目の前まで降りて來た魔力球に平手を叩き込んだ。
右の手の平が削り取られて消失した直後、魔力球が暴走して一気に膨れ上がり、飛び散った指先と共に二人を飲み込む。
いつもより高く飛んでおいて良かった。巻き込まれる所だったよ。
と言っても多分、十メートル以上は余裕があるけどね。
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しかし流石にあれは悪い事をしたなぁ。意図した訳じゃないけど焦らし過ぎた。
っていうかいつまでって…… あ、消えた。十秒は持続してたな。
あー、地面がでっかくくり抜かれてるなぁ。雑草(ごはん)ごと消滅してる。勿ない。
直徑四十メートル弱ってとこだろうか? これ、埋めるの大変だぞ。
「雪ちゃん凄ーい! 何この魔法!?」
「お疲れさまです」
「派手にとは言ったけど、流石にこれはやり過ぎじゃないか……?」
の淵までお姉ちゃん達が來たので降りていく。
「何の魔法って聞かれると……強いて言うなら【魔力作】?」
実質は【純魔法】かもしれないけど警報は鳴ってないし。
「なんか魔法じゃなくて【魔力作】だって言ってるけど」
「えっ?」
「登録してないから、町中で魔法スキルは使えないし」
「あぁそうか。ごめんごめん、よく考えずにぶっ放せとか言っちゃったよ」
「だからあれは、ただ魔力を外に出してぶつけただけだよ」
「ほー。町中でスキルが使えないから、魔力をぶつけただけだとさ」
「だけって……」
「しかしさっきも言ったけど、やり過ぎじゃないか?」
「いやぁ、まさかここまでだとは思わなくて。MPの使い過ぎでお腹がすいたよ」
あんまり人前で魔力結晶は出せないからお腹が空きっぱなしだ。
さっきこっそり食べておけば良かった。
「ミヤコでも食べとくか?」
「人をおにぎりか何かみたいに!?」
「妖さん酷いよぅ! あんなジワジワ殺さなくてもー!」
「罰をける側が我儘を言うなよ。當たってからは一瞬だっただろ?」
あ、帰って來た。
「いや、もっとスーッと落ちていくと思ってたんですけどね」
「ゆっくりだったねぇ。しかしこれを埋めるのは中々に骨だな」
「すいません、ちょっと注ぎ込み過ぎました」
「いやいや、いいんだよ。悪いのはこいつだし」
「うー、ごめんなさい」
「はい。もう罰もけたんだから大丈夫ですよ」
同じ事やったらまたやるけどね。
「おーい、終わったんなら自分で持ちなー」
「おー、悪い悪い。それじゃ妖さん、埋めに行ってくるから」
「はい、頑張ってください。同じ事が起きない事を祈ってます」
「俺もそう思うよ……しっかり反省させないとな」
「ちゃんと懲りてるよぅ。ほら道借りに行こう。妖さん、ばいばーい!」
あんな目に遭ったのに明るいなぁ。遭わせたの私だけど。
「それじゃご飯食べに行くかー。はい解散かいさーん」
ギャラリーが散っていった。皆聞き分け良いな。
「あ、その前に役場へ行っておきたいんだけど」
アヤメさんの提案に待ったをかける。
「ん、どうした?」
「空き地とはいえ町中に大開けたし、ちゃんと報告しておいた方が良いかなって」
「あぁ、確かにそうだねぇ。それじゃ、一旦役場に寄っていこうか」
「それでしたら、私は本日の戦利品を換金してきますね。どこで合流しますか?」
「武店の前の辺りでいいんじゃないか?」
「はい、解りました。それではまた後ほど」
「おや、白雪様。いかがなさいましたか?」
「ちょっと噴水広場の隣の空き地に大を開けちゃったので、報告にきました」
「大ですか?」
「お前本當に懲りねぇな。別に俺の仕事じゃねぇからどうでも良いけどよ」
唐突に正直だなジョージさん。
「私が話しているのです。お帰り下さい」
「へいへい」
素直に帰ったな。今の言う為だけにわざわざ來たのか?
「まぁ々あってが開いてしまったので、こちらで埋め直しはしますが報告をしておこうかと」
「そうですか。なるべく町を破壊しないでおいて頂けると助かります」
いや、なるべくでいいのか? まぁいいや。
「気を付けます。それじゃ、失禮します」
「はい。またのお越しをお待ちしております」
南通りでレティさんと合流して、屋臺でマスコットになりながらご飯を食べる。
今日はパンと野菜スープだった。味しいけど地味だこれ。
「さて、今日はこんなところかな?」
「そうだねー。一旦休憩かな」
あ、忘れてた。家を貰ったんだし案しておこう。
どうせだし詳しい事を言わずに連れて行って驚かせたいな。
「あ、ちょっと皆に來てほしい所があるんだけど良いかな?」
「うん? 私は大丈夫だよ。なんか白雪が付いて來てほしいって言ってるけど」
「はい、いいですよ」
「なになに? もちろん行くよー」
「それじゃこっちに付いて來てね」
「あれ、ここって新しく出來たっていう公園だっけ?」
「そうですね。綺麗です」
「ここに案したかったの?」
お姉ちゃんの質問には答えずに中央へ向かってまっすぐ進む。
そろそろ門だな。
「ん、この奧に行くのか?」
「ここってって大丈夫なの?」
「うん、いいよ。あ、通ったらちゃんと閉めておいてね」
「というわけで我が家です」
「いやごめん、何がどういう訳なのかさっぱり解んない。あー、これ白雪の家だってさ」
「はぇっ!? これ丸々!?」
「凄いですね……」
「なんか殺されたお詫びに王様に貰った。あとこの広場が庭だって言われた」
「突っ込み所が多すぎてコメントに困るわ。この広場もだとさ」
「うわぁ……」
「お帰りなさいませ、白雪様。こちらの方々は?」
「どうも。えーと、友人ですかね」
「そうですか。初めまして。私はこの花園の管理人のモニカと申します」
三人がそれぞれ挨拶を済ませた所でテーブルについてもらう。
「それでは、私はそちらの管理室に居ますので用があれば聲をおかけください」
モニカさんはそう言って小屋へ帰っていった。
「ところでミヤコ。あんた一緒にまとめて『友人』って紹介されてたぞ」
「さらっと絶縁された!?」
「いや、この姿で姉妹ですって言っても全然説得力ないって思ったから」
「あー、まぁね。姿が違い過ぎて説得力が無いからだそうだ」
「なるほど。……そうだ、それじゃこれからはミヤちゃんって呼んでね!」
何を言い出すんだこの姉は。というかね。
「いや、あんた白雪に呼ばれても聞こえないじゃん」
「そんなぁ!! うぅ、【聴覚強化】を取るべきかな」
ソロでやってるんじゃないんだから、そういう無駄遣いはいかんよ。
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