《VRMMOで妖さん》69:もぐもぐしよう。
お姉ちゃんがポチに釣られている間にレティさんがシルクを確保し、アヤメさんを先頭にして皆で屋臺へ向かう。
そういえば何か忘れてるような…… あ、裏庭の雑草対策の確認か。まぁそれは明日で良いな。
呼び込み合戦をスルーして焼きそば屋臺へまっすぐ向かう。悪いけど決定済みなのだ。
「らっしゃい! 三つでいいのかい?」
「あぁ。あとこの子たちにもお願い」
「勿論だ! ……あいよ、お待たせ!」
いつものように置かれたお皿の上に飛んで行き、クッションに座ろうとする。
「お?」
著地したところで突然両脇に白い手が差し込まれ、
「おお?」
持ち上げられて引き寄せられ、
「おおう?」
ぽふっと腳の上に座らされ、お腹の前に大きな手が添えられて、
「むぐっ。 ……おいしい」
口に焼きそばを押し込まれた。
いやいやいや。待って待ってシルクさん、何この流れる様な捕獲からの給餌。呆気に取られて普通に想言っちゃったよ。
こらー、はなせー! くそう。お腹の前の手でをがっちりホールドされてて、じたばたしても全然抜け出せない。
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無理矢理押しのけようにも、この格差じゃ表に出てて弱化してる今でも無理だし。
っていうかなんでそんな満足げな顔してるのさ。
「えーと、シルク? 自分で食べられるから、放してもらえないかな?」
首を振られた。えー。まさかの反逆だよ。
「ん゛んっ、ふー。……よし。あれだ、主人のお世話をするのもシルキーの仕事ってことなんじゃないか?」
頷いた。いや君、家事をやる妖のようなじゃなかったの? 連れ回してるから家事させてあげられてないけどさ。
っていうか笑い過ぎなんだよアヤメさん。確かにちょっと素でおいしいとか言っちゃったけどさ。
「もしかして私が連れ回して家事をさせてないから、その分余計にお世話したくなってる? むぐっ」
頷きながら押し込まれた。それに関してはごめんよ。でもアリア様の所に行ったのは仕方ないし、著せ替えも楽しんでたんだから許しておくれ。
明日からはもうちょっと家の事をやらせてあげよう。このままじゃ毎回こんな姿を曬すことになってしまうかもしれない。
流石にこれは恥ずかしい。私は児ではないぞ。
「シルク、明日からもっと家の仕事をさせてあげるから自分で食べさせてくれない?」
ってちょっと、そんな「私にお世話されるのはそんなに嫌なの?」みたいな悲しそうな顔しないでよ。
いや、そういう事ではないんだけど。むぅ、泣く子には勝てないか…… いや、泣いてはいないけどさ。
「うぅ、解った解った。今日はこのままでいいから」
よかった、笑顔に戻った。ほんとに泣きだされたらどうしようかと思ったよ。
「それはともかく、皆は見てないで自分の分をむぐっ。……ごめんシルク、タイミングは読んでしいんだけど」
なぜ喋ってる所にねじ込んでくる。逆に皆に見せようとしてるのか……?
というか皆、そんな溫かい目で見ないで。逃げたくなるから。むぐっ。
「……ちゃん。雪ちゃん、起きて。皆食べ終わったよ?」
……はっ。え、あれっ、私寢てた!?
完食してぼーっとし始めてからの記憶が無い。うぬぅ、シルクのぷにぷに恐るべし。
こら、なでなでするんじゃないよ。解放しなさい。
さて、周りの優しい視線は見えない事にしてと。
いつもならこのままログアウト場所に行くところだけどちょっと寄り道させてもらおう。
「お姉ちゃん、ちょっと買いたいがあるから荷持ちで付き合ってもらえないかな?」
「ん? いいよー。何買うの?」
「晝に紅茶を買ったんだけど、ティーセットを持ってないからお客さんに出せないなーと思って」
「なるほどー。レティちゃん、売ってるお店知らないかな?」
「確かあちらの方に…… あぁ、ありました」
茶や食、他にも様々な小が置いてある店の前に來た。輸雑貨屋さんみたいな品揃えだな。
幸いというか、店だけあってそこまで種類が多くないのであまり迷わなくて済む。
というか都合の良い事にポットとカップ四客のセットが置いてあった。これでいいや。
ティースプーンは五本まとめて売られてる。ホームセンターでよく見るな、こんなの。
全部合わせて銅貨九十枚か。
「それじゃお姉ちゃん、それを家までお願い」
「まかされよー」
お釣りの銅貨十枚をボックスにねじ込んでいく。シルクが手伝ってくれるから結構楽になったな。
「つーか何気に白雪って私らよりよっぽど金使ってるよな」
「そういえばそうだよね。思いつきみたいなじでポンと銀貨出してるし」
「買ったというお茶はお幾らだったんですか?」
「銀貨二枚のちょっと良い奴にしたよ」
「金持ってるなぁ…… しかしどうやってそんなに稼いでるんだ?」
「なんかり行きで果に蜂かけるサービスをやる羽目になってさ。これ一つで銅貨二枚っていう価格設定なのにお客さん一杯だった」
「雪ちゃんは可いからね!」
「ごめん意味が解らない」
なんか久しぶりに言われた気がする。どうでもいいか。
「雪ちゃん、これどこに置けばいいかな?」
「ちょっと待ってね。あ、どうもモニカさん。これ、持ち上げる時にはどこを持てばいいんですか?」
家に帰って、階層の持ち上げ方を聞くために呼びに行こうと思ったら既に出てきてた。
別に使用人じゃないだろうに、なぜわざわざ帰ってくるたびに出てくるのか。
「お帰りなさいませ、白雪様。そしていらっしゃいませ、皆様。このように、明らかに脆い場所以外でしたらどこでも大丈夫ですよ」
「おー、凄いな。中はこんななのか」
「ありがとうございます。それじゃお姉ちゃん、この辺の空き部屋に……と思ったけど後でいっか。早速使おうよ。モニカさんもお茶をどうですか?」
「よろしいのですか? それでは私が淹れましょう。これを使えばよろしいのですね?」
「はい、お願いします。シルク、缶を出してくれる?」
なんか小さい聲で「神よ……」とか呟いてるクマはスルーして玄関のドアを開ける。
家の中なら軽々持ててるけど、出た途端に負荷が増えて辛そうになる。
即座にレティさんが下に手を差し込んで引き継いだ。流石の気遣いスキルだな。
「一度管理室で洗って參りますね。々お待ちください」
モニカさんがティーセットを持って管理室に向かった。
さて、皆の口に合うといいんだけど。
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