《VRMMOで妖さん》76:想に引こう。

「へぐっ」

お姉ちゃんの後頭部にアヤメさんの手刀が叩き込まれた。

「もうちょっと言い方ってものがあるだろうが。どうやら人それぞれ魔力の味が違うらしいよ。あの子は焼き芋の味だったそうな」

「あぁ、確かに芋だのライチ野郎だの言ってたな」

「で、溶かしたら更に味しくなるらしい。でも結局の所、人間を味しいって言ってる事には変わりないか」

やっぱりそこに落ち著くのか。いや、やったのは事実だから文句も言えないけどさ。

「まぁ襲ったりはしないから大丈夫って本人が言ってるのを信じるしかないんじゃないかな。もし襲われてもすぐに食べられるようになる訳じゃないみたいだから、相打ちくらいには出來るだろ」

信用が無いのか萬一の話なのか。後者だと思いたいね。

「ある程度接しなきゃいけない分、まだ抵抗しやすいか。まぁ食べた直後の様子はともかく、今の妖さんを見る限りは大丈夫そうだな」

うんうん。でも溶かす事への抵抗は減ってしまった気もする。

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まぁあの慘狀を見て、また見たいとか言う人も居ないだろうし大丈夫だろ。

「おっ、帰ってきたみたいだね」

あれ、兎さんが肩を貸してる。熊さんの足取りが怪しいぞ。

大丈夫かな、衝撃が強すぎたんだろうか。俯き気味で顔がよく見えない。

「おかえり。はい、著てた服」

「ほら、著いたぞ。け取れよ」

魔人さんが出迎えて服を返してるけど、反応が薄いな。本當に大丈夫か?

「妖さん、こいつどうしたんだ? なんか復活してからずっとこんなじなんだけど」

ん、なんかピクッてしたぞ?

「うーん、なんと言いますか。平たく言うと溶かして食べちゃいました」

「食べたって…… え、噓、マジで?」

あ、一歩下がった。でも熊さんが下がらないから、すごい不自然な勢になってるな。

「気持ちは解るけどマジです。一応事故みたいなだって主張はしますけど」

「どんな事故が起きたらっておわっ!?」

突然、俯いていた熊さんの頭部が跳ね上がった。ビックリしたー。

……あ、これ大丈夫じゃない奴だ。完全に々ダメな表だわ。

「食べられるのって…… すんっごい、気持ち良い……」

うん、駄目だこれ。というかキャラ変わってないか?

兎さんの肩から手を降ろして離れて、両手を頬に當てて目を瞑り覚を反芻している。

「えっ、溶かされるのよりもっと良いの!?」

おいやめろ、話を膨らませようとするな。嫌な予しかしないんだよ、この流れ。

「全っ然別だねー。無駄死にのあんたと違って、私のは妖さんのとなりとなったのさー」

待て、落ち著け。確かにMPは凄い沢山回復したし、お腹は一杯になったけどさ。

「ずるい! ねぇ、どんなじだったの!?」

何がずるいというのか。やめて、周りの皆もちょっと興味持ち始めるのやめて。

「いやー、溶け始めたあたりからもうかなり気持ちよかったんだけどさー。なんていうか、マッサージなんて比じゃないじ?」

「うん、そこまでは私も験したから解るよ。気持ち良いよねぇ」

「どんどんが崩れて行っても覚はあるんだけど、途中からはもうそれがの何処なのかさえも判らなくなってねー」

まぁそりゃ引っ付いてた所とかどんどん混ざっていってたし、手も足も無くなってたもんね。

「ただ何かがれてるって事は解ってたかなー。何かって言っても地面と服くらいだけど。音は聞こえてたけど、目は見えなくなってたねー」

「あー、わかるー!」

何なんだその共は。他の人全然付いていけてないよ。

っていうか完全には判ってないんじゃないかな? 混ざった事に何も言って來なかったし。

「で、気持ち良さも十分に堪能したしって事で妖さんに聲かけた訳だけど」

「いやぁ、あれ怖かったよー」

「そうなの? 自分じゃ普通に喋ったとしか思ってないんだけどねー」

「お前が溶けたときも十分ホラーっぽかったからな?」

「あー、そうなんだ。自分じゃ解らないもんなんだね」

「俺らはあの時耐えられずに吐いたんだぞ」

「あっ、もしかしてあの時何か當たったのって……」

げっ、気付いてたの!?

「あぁ、それ妖さんの」

「ストップストップ。あー、ごめんなさい」

隠してたことも含めてね。とりあえず目の前で頭を下げておこう。

「いいよいいよ。別に今更だし、気にしてないよー」

ほっ。よかった。

「もういいかーい?」

「あっ、ごめんね」

「そんでまぁ、のどこかに妖さんに口付けされた訳だけど」

口付けって言うなよ。確かに付けたけどさ。

「うんうん、私が気になるのはそこからだね」

「妖さんのちっちゃい口の中にちゅるっと吸い込まれてさ。そこでをかき回されて、妖さんの舌で唾とぐちゃぐちゃに混ぜられて……」

やめろ、恍惚とした顔でほうってため息つくんじゃない! いかがわしい雰囲気を出すな!

大丈夫かこれ、キマっちゃってないか? 開発、そのうち本當に訴えられるんじゃないか?

でもそうか、覚が有るって事はそういう事か。うわぁ……

「妖さん、人のパーティーメンバーに変な趣味を植え付けないでくれよ……」

「いや、これ私のせいなんですかね…… 確かに責任が無いとは言えませんけど」

「うん、解ってはいるんだけどさ。この有様じゃぼやきたくもなるだろ?」

「とりあえず他の妖が出てきたときに、われてフラフラ付いていかない様に気を付けてあげて下さい」

「だねぇ…… この分じゃ本當に行きかねないよ」

兎さんの気苦労がどんどん増えていく。ごめんよ。

「で、ごっくんされてお腹の中に落ちて行ったら、今度はそこでほろほろ崩されていってさー。あの覚は現実じゃ絶対に味わえないねー」

そりゃそうだろ。というかそこまでも全部無理だよ。

「多分そこで取り込まれたんだろね。覚が途切れたよー。それを私が全部消えてなくなるまで、何回も何回も繰り返すんだー」

うぅ、勘弁してくれ。こっちを見るお姉ちゃんの目が「うっわぁ……」ってじだよ。

さっきとは別の方向で思いっきり引かれてるよ……

私はそういうのじゃないから、その目は熊さんに向けてくれよぅ。

「へぇー、いいなぁ。私もやってみたーい」

うわぁ、ここにもう一人居たよ。

「お前、何回デスペナ貰う気だ。昨日の分もまだ取り戻してないだろうが」

良かった、おじさんが止めてくれた。殆ど喋らないから影薄くじるな、この人。

「うーん、仕方ないかー」

「私としても他のパーティーになるべく迷かけたくは無いので……」

「延べ七回分もその子らにデスペナ食らわしてる奴の言う事じゃなくないか?」

「好きでやったのは一回も無いから。事故と周りに押されただけだから」

「事故はともかく、流されたらやるんじゃん」

「もー、いいのー!」

「雪ちゃん……」

くそぅ、殘念な子を見る顔でこっちを見るんじゃない!

私だって申し訳ないとは思ってるんだよ。デスペナの上に埋めに一日使わせてるんだから。

「食べられるのって、イイ……」

「妖さん…… これどうしよう?」

「私に言われてもどうしようも…… わざと敵に食べられに行かない事を祈ります」

わたしわるくない。噛まれれば痛みで正気に戻ると思おう。

治らなかったら、うん、どうしようね。

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