《VRMMOで妖さん》86:立てこもろう。
「雪ちゃんごめんってばー、謝るから機嫌直してよー。んもう、レティちゃんがいぢめるから雪ちゃん拗ねちゃったじゃない」
視線から逃げる為に、窓から自分の部屋に飛び込みカーテンを閉めた。
恥ずかしさで頭からお布団に潛り込んで丸まった私に、お姉ちゃんが外から呼びかけ続ける。
バルコニーを指で軽く叩いているのか、定期的に振が伝わってくるけど無視だ。
「私と一緒になってうわぁとか言ってた奴の言う事でもなくないか?」
ほんとだよ。お姉ちゃんも痛い子を見る目で私を見てたじゃないか。
「うっ。それはその…… そう、だから謝ってるんじゃない。ほら、レティちゃんも一緒に謝ってよ。バラしたのはそっちなんだから」
「そうですね…… 白雪さん、申し訳ありません。々口が軽くなってしまいました」
許さないもん。斷固立てこもってやるのだ。
ん、なんだこの音? なんかガラガラって…… うわっ、ベッドがく……っ!?
「おーい、私も謝るからさっさと機嫌直せよー」
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しまった、階層のロックをしてなかった!
天井を取り払われて、ベッドごと捕まってしまったらしいぞ……
「っていうか白雪、布団から出てんぞ?」
はうあっ!? 突っつくなよう!! やめろー、ツンツンするなー!
慌てて布団を下げつつ前進してスッポリ収まる。よし、これで死角はないぞ。
むしろ死角しかないぞ。全方位布団で全く見えないからな。
「雪ちゃん、許して? ほら、ご飯食べに行こうよー」
「おーい、そのまま意地張るならベッドごと市場に連れていくぞー」
いや、流石にそれは勘弁してしいぞ。
「しかもレティに、尊いものを扱う様に恭(うやうや)しく掲げさせて」
本當に勘弁してくれ!?
「やめてよ…… ってあれ? あっ…… よし。やめてよ、悪目立ちにも程があるでしょ」
もぞもぞと頭を出して抗議…… しようと思ったら向きが違ったので、一旦引っ込んで布団の中で反転し、再度もぞっと出て抗議する。
気を付けないと翅が引っかかるから、なかなかきづらいな……
「嫌なら観念して出てこい。私だって恥を曬したんだ」
むぅ、お姉ちゃんはともかくアヤメさんがそう言うなら仕方ない。
私のせいでダメになった挙句、ボディにいいの貰う羽目になったからな。
「わかったよぅ…… あ、ベッドはちゃんと戻しておいてね」
「あぁ、解ってるよ。そういえば、廚房の確認は何だったんだ?」
「昨日寢る前、シルクに大豆を炒っておいてって頼んだんだけど、どうなったか確認してなくてね。もしまだ殘ってて、私が死ぬタイミングで続きをやってたら危ないなって」
「なるほど。でもなんで大豆を?」
「きなを作ろうと思ってね。正確に言うなら採取したも使って、きな飴を作ろうかと」
「ほー。ってか白雪のサイズで數個ずつやるより、誰かにまとめて炒ってもらった方が早くないか?」
「いやぁ、元々は時間が余りそうだし何かやることないかなーって思い付きだからね」
「あー。で、お仕事がしいシルクちゃんにやらせてあげた訳か」
「そゆこと。あ、そういえば呼び直してなかった」
とりあえずシルクだけを呼んでみる。
出てきて周囲を確認し、ぐしゃぐしゃになったお布団を見つけた。
どういう反応をするかと思ったら、凄く嬉しそうな笑顔でいそいそとベッドに向かって行ったな。
お仕事がしたくて堪らないんだなぁ。
「シルク、大豆はどうなったかな?」
問いかけてみるとパッと振り返って頷いた。出來てるって事かな?
ベッドを整え終わったシルクに一旦出てきてもらい、アヤメさんに三階を持ち上げてもらって廚房を覗く。
シルクがっていって、豆のった箱の橫に立って得意げな顔になった。
おぉ、全部終わったのか。仕事が速いなぁ。
「よしよし。よく頑張ったね」
仕事ぶりを稱えてなでなでしてあげる。嬉しそうで何より。
「でも雪ちゃん、そこからどうやってにするの?」
「ちゃんとすり潰す道も作ってるよー。ほら、これ」
「あの…… 大変申し上げ難いのですが、この大きさでは炒り豆を潰すには重量が足りないのでは……?」
「…………あっ」
おおう…… そうか、私にとっては重くても、豆を砕ける程の重量は無いんだ……
「変な所が抜けてるな」
「うぅ、うっかりしてた…… こんなので潰せるのは、私のくらいなもんだよ……」
「なんでそこで変な自の仕方をするのかな、雪ちゃん……」
頑張って作った時間が丸々無駄だったよ。
いいんだ、ちょっと作業楽しかったし。うん、そうでも思わないとやってられない。
でもそれじゃどうするかな、この大豆。
「空いた時間で私がやってやろうか?」
うーん、あんまり當てにするのも…… でも仕方ないかな?
ん、シルク、どうしたの? なんか不満げな…… あぁ、自分でやりたいのか。
でも丁度いい道が今は無いからなぁ。今のところは諦めてちょうだいね。
「うん、それじゃお願いしようかな」
「任せろ。道はこっちで用意するよ。他の事にも使えるだろうしね」
それは助かる。金銭的にはともかく、買ってここまで運ぶのが難しいからね。
「そんなに量は無いけど、完したら皆にも配ろうと思うよ」
「お、それじゃ早いとこ作っちゃいたいな。今日は狩りに出るのを休んで、生産スキルの訓練でもするか?」
「あー、それも良いねぇ。戦ってばっかりっていうのも疲れるしね」
「そうですね。回復薬を自分で作れば、しはお金も節約できますし」
「よし、それじゃ今日は各自で生産訓練といこう。まぁそれよりまずは朝ご飯だな。いろいろありすぎて、もう結構な時間経ってるぞ」
「そだね。今日は何たべよっかなー」
「シルクは一緒に行く? それともお家の仕事やってる?」
問いかけるとすぐに出て來て、上がったままの階層をガラガラと下げて閉じる。
考える事も無く即決したな。
「ほれこい、シルクちゃん」
すかさずアヤメさんがシルクに背を向けて膝をつく。
乗っけるの気にってるなぁ。
お姉ちゃんがまたしても出遅れたって顔してるけど、諦めましょう。
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