《VRMMOで妖さん》100:出迎えよう。
「あっ」
「どうしたの?」
の採取を始めてしばらく経ち、そろそろ十分な量が溜まろうという頃になって失態に気付き聲を上げた。
「いや、シルクを還したままだった。これやってる間に服を洗っておいて貰えば良かったよ」
「あぁ、そういえばそうだね。まぁ著る服はあるんだし、急ぐことでも無いんじゃない?」
「そうなんだけど、ちゃんと洗っておかないと乾いたらパリパリになりそうなんだもん……」
一応流しはしたけど、染み込んだよだれはまだ殘ってるかもしれないし。
「よし、これくらいあれば大丈夫でしょ。それじゃ、お姉ちゃんはこっちをお願い。私はちょっとシルクを呼んで、お洗濯を頼んでくるよ」
「はーい。頑張ってね」
「何を頑張るっていうのさ。まぁよろしくー」
お姉ちゃんに飴作りを任せて、屋敷に戻ってホールでシルクを召喚しなおす。
おかえりー…… って、なんで現れるなり玄関を開けてキョロキョロしてるんだ?
あっ。玄関を閉めて振り向いた顔が「あの人が居ない…… やっぱり……」って表だ。
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頑張れってこれの事か……
「えっと、シルク。大丈夫、心配するような事はないからね。とりあえずさっきの服を洗って、干しておいてもらえるかな? 終わったら好きにしてて良いからね」
りつけた様な笑みでコクコク頷き、すぐに場に向かっていった。そんなに私のそばが怖いか。
まぁ當然だけど、先は長いなぁ。がんばろ……
さて、どうなって…… あれ、居ない。
どこいった? あぁ、そっか。を溫めないといけないんだったな。
さっき私が空けたスペースで火を焚いて、鍋にれて溫めてるようだ。
……最初から鍋に集めれば良かったんじゃないの?
「お、どうだった?」
「ダメだった…… お願いしたら助かったとばかりにすごい勢いで離れて行ったよ」
「あはは。ん、そろそろいいかな。雪ちゃん、火の始末お願いできる?」
「ん、わかった」
飛び散らない様に、あまり勢いを付けずに水を撒いていく。
一応消えた後もしかけ続けておいて、きちんと消火しておいた。
鍋の中を混ぜているお姉ちゃんの後ろから覗きこみつつ聲をかける。
「どう、は足りたかな?」
「うん、大丈夫だね。ちょうどいい量だったみたいだね」
「よかった。それにしても、カトリーヌさん遅いねぇ」
「うーん、上陸しないとやり直せないとか? 単に【妖】が出難いのかもしれないし」
あ、言ってたら丁度メッセージが屆いた。なになに?
『やっと引けました』
え、これだけ? まぁ引けたって事は判るからいいんだけどさ。
「出たみたいだから迎えに行ってくるよ」
「あ、待って待って。あとは棒にして切るだけだし、私も一緒に行くよ」
「スキルの訓練はどうするの? あ、量もないし數しいから細めにお願い」
「はーい。で、よく考えたら材料もあんまり持ってないから、このままここに居てもやれる事がないんだよね」
「あぁ、そういえばそうだね」
「だからどこかでお手伝いさせてもらうか、ダメなら材料を買い足してこようかなと」
「そっか。それじゃさくっと……って後は切り口にまぶすだけか。手際いいなー」
「よし完っと。雪ちゃん、れる箱はどこかな?」
「あ、無いよ。ボックスに放り込んじゃうからこっちに頂戴。あ、そうだ。手を出してー。はい、お詫びとごほーびも追加で」
お姉ちゃんの手の平に三粒乗せて、殘りをポイポイとボックスにれていく。
「わーい。うん、おいしー。あ、雪ちゃん雪ちゃん。ちょっとあっちでお鍋にお湯かけてもらえるかな」
「うん、いいよー」
先ほどのたき火の上で、表面に引っ付いたときなを流すため強めにお湯をぶつける。
ついでにを集めたお椀も一緒に。
なんか洗車してるみたいだなこれ。もしくは泥のついた長靴とか。
「おっけー。あれ、流すだけで良いの?」
「うん、あとでまとめて洗っちゃおうかなって。それじゃ、行こうか」
お姉ちゃんは洗いをまとめた袋を鞄に放り込み、立ち上がって歩いていった。
まぁ持ち主がそれで良いならいっか。私も遅れないように付いていこう。
ポチ、いくよー。
っていうか君、あれだけ皆でわーわー言ってたのに自分だけのんびりしてたな?
助けてくれても良かったんじゃないか? まぁいいけどさ。
路地を抜け東通りに出て、港までまっすぐ歩く。
こちらに用事があるプレイヤーはあまりいないだろうからか、人がないな。
そういえば釣りとか出來るのかな? まぁ私は釣る側っていうより餌ってじだけど。
港についても続報が來ない。
「んー、何も言って來ないなぁ。職業やスキルで迷ってるのかな?」
「かもねぇ。まぁのんびり待とうよ」
お姉ちゃんはその場にしゃがみこんでポチをで始めた。
「だねー……ってまたか、変にタイミング良いな。三番埠頭に來るってさ」
「はーい。確か雪ちゃんも三番だったよね?」
「えーっと、多分そうだね」
お姉ちゃんがポチを抱き上げようとして抵抗されてる。
そのうち本當に嫌われるぞ?
とりあえず三番の端まで來て、出現エフェクトが出るのを待つ。
……あ、出た出た。
「お姉ちゃん、ちょっとそこでポチと待ってて」
「え、なんで?」
「験しないと解らないだろうけど、慣れないうちは巨人の威圧って凄いんだからね?」
「巨人って…… うん、まぁ言いたい事は解ったけどさ」
雪ちゃんがちっちゃいだけなのにーとかボヤいてるけどスルーしよう。
後で呼ぶからと言っておいて、一人で近づいていく。
「カトリーヌさーん」
「あっ、白雪さん。お待たせしました。しかし、これは思っていた以上に凄い世界ですわね……」
「でしょう? とりあえずお姉ちゃん達はあっちで待っててもらったから」
「あれがミヤコさん…… 私のくらいまでしか無かった方が、あんなにも大きく…… うふふ……」
……これ、気を遣わなくても良かったかな。
「えーっと、まぁひとまず落ち著いて。まずは飛べるようになろうか。翅はかせるかな?」
「んっ、んっ…… すみません、し外部からかして頂いても?」
「はいはーい」
背後に回って翅の中ほどを手に取る。
「ひぅっ!?」
「あ、ごめん! くすぐったかったよね。そーっと、ね」
自分ので解ってる筈なのにやってしまった。
そっと両方の翅を持ち、ゆっくりと開いたり閉じたりしてみる。
「ええと…… こんなじ、でしょうか」
おっ、いた。
「おぉ、ここに力を込めれば良いのですね!」
「そうそう。初めに覚さえ摑めればあとは慣れだねー」
「本來無い部位の作というのは難しいですね。粘とった時はあんなに簡単でしたのに。不思議なですわねぇ」
「いやったこと無いから解んないけど、どう考えてもそっちの方が難しそうな気がするよ」
「あちらは不思議な程に馴染み、すぐに自在にかせるようになりましたわ。もしや、私は本來あのような姿で生まれる筈だったのでは……」
「いやいや無い無い無い。何を言いだしてるのさ」
反応に困る事を言うんじゃないよ、まったく。
「で、翅もかせたことだし飛んでみようか。【浮遊】を念じるだけで大丈夫だからやってみて」
「はい。……おぉ、これが空を飛ぶ覚ですか」
「翅をかすとらかにけるからね。うん、それじゃそろそろ待たせてるお姉ちゃん呼んじゃおう」
手を振って大聲で呼びかけ、こっちに來てもらう。
あのさ、怖がらせないように離れててもらったのになんで走って來るかな。
「おぉ、これは…… なんという迫力でしょうか…… あぁっ、もう我慢がっ!」
「なぁーっ!? たーっ!」
「ちょっ!? なにやってんの!?」
駆け寄ってきたお姉ちゃんが次の一歩踏み出そうとした場所に、【浮遊】で仰向けになってり込むカトリーヌさん。
間一髪でお姉ちゃんの反応が間に合い、踏みつける寸前に前転を敢行して飛び超えていった。
「いったぁー…… 危ないよー、カトリーヌさぁん……」
「惜しかったですわ…… しかし、寸前の景も素晴らしいでした。あの迫りくる靴底の絶…… はぁ、良いです…… あれだけでもこのになった甲斐があるというですわぁ……」
「あの、せめて最初のガイドが終わるまでは大人しくして…… ほんと、お願いだから……」
しり傷の出來たお姉ちゃんに【妖吐息】を吹きかけて、転がったままくねくねしてるカトリーヌさんに懇願しておく。
本當に頼むよ……
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