《スキルリッチ・ワールド・オンライン~レアというよりマイナーなスキルに振り回される僕~》第六章 ナンの町へ 5.盜賊退治

イーファンの宿場を出た一行は、ナンへ向かう街道を徒歩で進んで行った。

「そろそろ人里を離れたな。シュウイ年はクロスボウを出しておいた方が良いぞ」

「ボルトケースは腰に付けて、クロスボウは肩に掛けておくか、背中に背負(しょ)っておくんだね」

「はい」

言われたとおりにクロスボウを左の肩に掛けておく。僕は右利きだから、こう掛けておいた方が便利だからね。現実とは違って、ベルトがずり落ちてくるような事は無い。ゲームって都合良くできてるなぁ。

そろそろモンスターの活領域だというので、【気配察知】と【蟲の知らせ】、ついでに【嗅覚強化】を起しておくと、早速【蟲の知らせ】が反応した。

「ケインさん、この先に何かがあるようです。【蟲の知らせ】が反応しました」

「もうかい?」

「便利だな、そのスキル」

「便利なのはシュウイ君の方だと思うけどね」

し行くと、馬をつけていない馬車が道を塞いでいた。【気配察知】と【嗅覚強化】が、周りに潛んでいる気配を報せてくる。

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「お~い、手伝ってくれぇ~」

「どうしたんだ?」

「ゴブリンに襲われて逃げてきたんだが、馬が外れて逃げちまった。せめて馬車を道の脇に寄せたいんだ」

(「ケインさん。馬車の中に二人、右手の茂みに二人、左の木のに二人、その後ろの木の上に一人。多分木の上にいるやつは弓を持ってます。それから、ゴブリンの臭いはしません」)

(「判った。弓使いは私がやる」)

(「じゃあ、右の二人は僕が」)

(「他の皆もいいな?」)

( 「「「「OK」」」」)

「それは大変だったな。ちょっと待ってくれ」

そう言うとケインさんはのんびりと肩に掛けていた荷を下ろした。僕もそれに倣(なら)う。いやぁ、さすがにトッププレイヤーの行は勉強になるなぁ。さて、僕も準備しておくかな。

左手奧の木から弓使いがもんどり打って落ちてきた。きっとケインさんの風魔法だろう。すかさず僕も右手の茂みに隠れている二人に【腹話】をかける。

(「後ろだよ」)

慌てて振り返った盜賊の後ろ首に手裏剣を飛ばして……二丁上がり。殘りは他の人たちが殺(や)ってくれたみたいだね。気配が無くなった。

ポーンという電子音が聞こえてウィンドウが現れたので、容を確認する。

「おおっっ♪ スキルが五つも増えてる」

パーティメンバーが斃(たお)した相手のスキルも確率でるのかぁ。味しい仕事だったなぁ。増えてるのは……

【お座り】相手のレベルが自分の二倍以下の場合、相手を十秒間お座りさせる。ただし、Lv1ではお座りしている相手を攻撃する事はできない。相手が複數でも発する。

【掏(すり)】相手が持つアイテムをランダムで一つ、気付かれないまま手できる。ゲーム日數で五日以に再使用した場合、プレイヤーがイエローネーム化する。イエローネームは教會で懺悔して十萬G以上寄進すれば解除できる。

【イカサマ破り】イカサマを見抜く。Lv3以上になると、相手のイカサマを失敗させる。

【反復橫跳び】反復橫跳びが上手くなる。育てると、サイドステップによる回避がパッシブで可能になる。

【日曜大工】本格的なものは作れないが、簡単なものなら大抵作れる。

うん。なかなか良さそうなラインナップだね。

シュウイがスキル欄を見て悅にってる頃、「黙示録(アポカリプス)」の面々はちょっとした騒ぎになっていた。

「……何だ、この裝備品の山は……」

「所持金もアイテムも丸ごと殘していったじね……」

「アイテムバッグまで落としてるなんて……」

「なぜ、こんな事に?」

「決まってらぁ。シュウのやつしかいねぇだろうが……」

「ナントの店に裝備品を売ったと言っていたが……こういう事か」

「お得意様って言ってた意味が判ったわね……」

「肝心のシュウは何してんだ?」

「……何か凄く喜んでるみたいね」

「あ、冷靜に盜賊の品(ドロップ)を集め出した」

盜賊が落とした品(ドロップ)を回収して皆の方を振り返ると、何か変な顔をしてこっちを見ている。何かあったのかな?

「どうかしましたか?」

「あ~、いや、この裝備品なんだが……」

「あ~、パーティメンバーにも【解】と【落とし】の効果は適用されるみたいですね」

「やっぱり君のスキルか……」

「エレミヤの【アイテムボックス】があってよかったぜ……」

・・・・・・・・

その頃運営管理室では、モニターを見ていた若いスタッフがチーフである木檜(こぐれ)に聲をかけていた。

「チーフ……【解】と【落とし】の効果はパーティメンバーにも適用されるみたいです。盜賊たちのドロップが凄い事になってます」

「まぁ、考えてみれば不思議ではないな。パーティにってない相手から【落とし】のお裾分けを貰ってたんだから」

「それにしても……これじゃどっちが追い剝ぎか判りませんね」

・・・・・・・・

同じ頃、禮拝堂では死に戻りの五人(・・)が力無く突っ伏していた。

「PKの掲示板に載ってたのはこういう事か……」

ぐるみ剝がれて、スキルまで盜られたよ……」

「無一文でどうしろってんだ……」

「NPCの三人は復活できなかったのか?」

「判らん」

「……とにかく何とかして拠點まで戻るぞ。それから一件を裏掲示板に流す。早く警報を出しておかんと、被害が拡大する一方だ」

いつしかシュウイは悪墮ちプレイヤーたちに災害扱いされていた。

「スキルコレクター」はレアスキルの蒐集に意的なユニークスキルですが、斃した相手から常にスキルを奪う訳ではありません。ただ、斃した相手がPKや盜賊プレイヤーの場合は、強奪の確率が若干上がります。

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