《兄と妹とVRMMOゲームと》第五話 籠の中のは星を求める①

「ーーわっ! お兄ちゃん、くん、これを使ったら、ゲームの世界にれるみたいだよ!」

攜帯端末を掲げた花音が調子の外れた聲を上げる。

スマートフォンに似たその端末には、畫期的な機能が搭載されていた。

インターフェース機能が備わっており、これだけでVRーーバーチャルリアリティを堪能することができた。

「そのようだな、妹よ」

絨緞に座っていた有は攜帯端末を橫にかざし、視界に浮かんだゲームアプリを、指でれてインストールを開始する。

インストールを終え、ゲームを起させたことで、達の視界は、先程までいた有の部屋からゲームのナビゲータールームへと変わった。

「すごいな。攜帯端末だけで、ゲームの世界にれるなんて……」

「うん、すごい!」

「他のVRMMOゲームでは基本、ヘッドマウントディスプレイを裝著しなければならないが、『創世のアクリア』では攜帯端末を使うだけで、ゲームの世界にログインすることができるとはな」

の言葉に答えるように、花音と有は興味津々で周囲の様子を伺う。

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『初めまして、わたくしはナビゲーターの『ペンギン男爵』と申します。皆様のサポートを務めさせて頂きます』

その時、目の前にナビゲーターのペンギンが現れた。

赤いリボンを付けていること以外は通常のペンギンの風貌と変わらない、そのスポットナビゲーターはぺこりと頭を下げる。

「ペンギン男爵さん、可いね」

『どうも』

花音が歓聲を上げると、ペンギン男爵は照れたように頬をでる。

『それでは、キャラクターメイキング畫面へと移行させて頂きます。まずは、パラメーターを振り分けて下さい』

「パラメーターから? キャラクターネームの設定とはないんだな」

「ネームは基本、実名で登録することになるようだ。もっとも、実名で登録することへの危険は大いにあるが、そこは運営側がセキュリティを強化することで補っているようだな。また、実名で登録することで、ゲームで得たポイントなどを、お店などの商業施設で使うことができるようだ」

が怪訝そうに首を傾げていると、ヘルプを表示させた有が訥々と説明した。

「パラメーター、どうするかな」

が思い悩んでいると、腕を組んだ有はとんでもないことを口にする。

「よし、初期ステータスのポイントを、素早さに全振りするぞ!」

「お兄ちゃん、私も素早さに全振りするー!」

「素早さに全振り!?」

有と花音の突拍子のないポイント振り分けを見て、は呆気に取られてしまう。

やがて、更なるペンギン男爵の指示に従い、達はそれぞれ自のアバターを作した。

『キャラクターメイキングが完了しました。それではスキルを設定致します。スキルによって、使用することができる武が確定致します』

「ああ」

が応じると、達の周りが蒼いに縁どられていく。

呼吸するように揺れるその蒼は、煌めく海のようなだった。

「こちらが、あなた方のスキル名となります」

蒼いが消えると、ペンギン男爵は軽い調子で指を橫に振り、達の目の前にそれぞれのスキル名を可視化する。

「俺のスキルは、『アイテム生のスキル』だな。使える武は、杖とメイス。後方支援のものばかりか」

有がし不満そうに指先で自のスキル名にれ、適當にスライドする。

すると、音もなく、スキル名が消え去った。

「お兄ちゃん、くん、私は『天賦のスキル』だよ! 使える武は、全種類ってすごいね!」

「……全種類、『天賦のスキル』っていいな」

両手を握りしめて言い募る花音に熱い心意気をじて、し羨ましそうに頬をでてみせる。

「俺は、と……『魂分配(ソウル・シェア)のスキル』って何だろう?」

がヘルプを表示させて、スキルの種類を確認しても、自分のスキル名は見つからない。

ペンギン男爵は申し訳なさそうに進言した。

様、あなた様のスキルは特殊スキルとなります』

「特殊スキル?」

『現狀の四つのスキルには、當てはまらないスキルになります。特殊スキルは、この仮想世界『創世のアクリア』のみならず、現実世界をも干渉する力と伝えられております』

「現実世界をも干渉する力……」

ペンギン男爵の説明を聞いて、は自のスキルに想いを馳せる。

魂分配(ソウル・シェア)のスキル。

それはどういうカタチで、現実世界に干渉していくのだろうか。

『『魂分配(ソウル・シェア)のスキル』。様の魂を他に分け與えるスキルとなります。ですが、こちらは一度きりしか使えない力のようですね』

「……一度だけか」

突きつけられた自のスキルのデメリットに、は肩を落として落膽する。

ペンギン男爵の指示の下、達は自が使う武を決めていく。

『では、全ての準備が完了しました。ようこそ、想いを幻想へと導く世界、『創世のアクリア』へ』

ストーリーを語ると、ナビゲーターのペンギン男爵が消える。

やがて、達が持っていた攜帯端末が先程、設定した武へと変換した。

同時に、達の周りの景も、異世界へと映り変わる。

そして、達は『創世のアクリア』の世界へと招かれたのだった。

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