《兄と妹とVRMMOゲームと》第八話　籠の中のは星を求める④

紘と梨、そして徹が『創世のアクリア』からログアウトしたのは、澄み渡る青空が広がる、心地よい晝下がりの日だった。

『帰還不能狀態』になってから、今日で一ヶ月経ったことになる。

紘達は気がついたら、病室のベッドで寢かされていた。

點滴が施されており、近くの機には攜帯端末が置かれている。

「紘、梨がいないな」

起き上がった徹は、周囲に視線を巡らせ、ここが二人部屋であることを認識する。

病室には、自分達以外は今はいないようだ。

紘は攜帯端末を手に取ると、院している病院に対して、梨の病室に立ちる際の面會許可を申請した。

「梨の病室は、上の階にある集中治療室だ。梨のに、復元裝置(エンバーミング)を設置して腐敗しないようにしている」

「集中治療室。いわゆる、面會謝罪狀態か」

「梨が存在しない半年が、どんな理由で辻褄が合わされているのか、確認する必要がある」

徹が納得したようにきの鈍い両手をばしていると、紘はふらつきながらも立ち上がる。

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そして、點滴臺を支えに病室を出た。

「『魂分配(ソウル・シェア)のスキル』って、記憶作も施せるんだな」

自の攜帯端末を手に取った徹もそれに倣い、慌てて紘の後を追いかける。

すれ違う患者や看護婦達をよそに、紘は病院の通路を歩き、エレベーターに乗り込んだ。

「二度と、梨を死なせるわけにはいかない」

「……ああ」

「そのためなら、私は何でもする」

「俺も、梨が生き返っていられるなら何でもする」

紘の決意に応えるように、徹は點滴臺を両手で強く握りしめる。

半年前ーー。

梨が死んだのは、梨の両親の離婚が原因だった。

だからこそ、半年前のあの出來事を、紘と徹はいつまでも忘れられない。

徹が呼ばれ、紘が待ちんでいた梨の誕生日は、悔やんでも悔やみきれない日になってしまった。

あの時、両親の離婚を止めることが出來たらーー。

梨を守ることが出來ていたらーー。

梨は、両親の言い爭いに巻き込まれて死ぬことはなかったかもしれない。

否応なしに思い出す半年前の苦い記憶を振り切って、紘は徹とともに目的の梨の病室に向かう。

目的の病室にたどり著いた紘と徹は、面會謝絶の表示が解除されていることを確認してドアを開く。

「梨」

「梨、大丈夫か？」

「ーー痛い」

夢の中にいるようなふわふわとした意識の中で、梨は頭を押さえていた。

その様子を見て、紘は重いを必死にかすと、梨のもとに歩み寄った。

「梨、無理はするな」

「う、うん」

頭痛の痛みに耐えながら、梨はぎこちなく答える。

「恐らく、『魂分配(ソウル・シェア)のスキル』を使用した影響だろう。しばらく休めば、落ち著くはずだ」

「そうか」

紘の言葉に、徹は安堵の表を浮かべる。

紘は毅然とした態度で周囲を見渡した後、やがて梨の頭を穏やかな表で優しくでた。

「私はこれから、病院の醫師と今後のことについて話し合ってくる。梨が存在しない半年が、どんな理由で辻褄が合わされているのか、確認する必要があるからな」

「梨はまだ、安靜にしていろよ。俺も一緒についていてやるからな」

「うん。怖くて苦しくて心細いけれど、それでも待っている」

徹の追隨に、梨は不安そうにしながらもをませてこくりと頷いた。

「先程、病院側とやり取りをしたメッセージでは、翌日の夕方までには、徹の両親とともに叔父と叔母も見舞いに來る。この病院は今、私達と同じようにログアウトできなかったプレイヤー達が多く院していて、病院側はその対応に追われているようだ」

「父さんと母さんには、明日の夕方まで會えないのか」

「叔父さんと叔母さんに會うの、久しぶり」

紘の説明に、徹と梨がそれぞれ想を口にする。

だけど、その再會が葉うことはなかった。

その翌日の夕方、とれ替わるように、梨が再び、深い眠りへと陥ってしまったからーー。

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