カリリア跡の時間限定クエスト。

それは、跡を攻略して奧に潛んでいるボスを倒すという、代わり映えのしないスタンダードなものだ。

だが、時間制限があり、報酬もすごいことから、とんでもないボスが待ち構えているのではないかと跡の前では噂されていた。

「お兄ちゃん、くん、すごい人だね」

馬車に乗って、目的地のカリリア跡にたどり著いた花音は、慨深げに周りを見渡しながらつぶやいた。

この世界に一つずつしか存在しない伝説の武を手にれられるとあって、跡に集まったプレイヤーの數も半端なかった。

「本當、すごい人だな」

花音の言葉に、は頷き、こともなげに言う。

「だけど、有、俺達だけでクエストを達することができるのか？　さすがに、三人だけで攻略するのは厳しいと思うけどな」

「いや、もう一人、ギルドから派遣してーー」

「よお、まさか、三人だけで、この跡に來るとはな」

有の聲を遮って、達の前に十人のプレイヤーが現れた。

「何か用か？」

有が訝しげな表を向けると、リーダー格の男が進み出る。

全に纏ったレア裝備やただならぬ雰囲気からも、彼が上級者プレイヤーだということが分かる。

「このクエストはな、初心者歓迎じゃないんだよ。さっさと帰りな」

男は好戦的な笑みを漲らせて、達を追い払うように手をかざした。

「帰るわけにはいかないぞ、、妹よ」

「なら、ログアウトさせて、すぐにでも帰らせてやるよ！　『雷鳴拳』！」

有の返答に、男は足裏を発させた。

スキルを使って、瞬く間に急接近。

天賦のスキル。

それは、自の武が持つ特を最大限に生かして、技を放つスキルだ。

「有！」

完全に虛を突いたはずの攻撃を前にして、有の前に出たは完璧に対応してみせた。

男が叩き込んできた豪快な一撃を流れるようなきでいなすと、は追撃とばかりに剣を振り上げる。

「なっーー」

それだけで、男のは大きく吹き飛び、HPが一気に減った。

頭に浮かぶ青のゲージは、半分以下に変化する。

スキルを使っていない相手によって、自分のスキルを止められた。

その事実は、彼の自尊心を貫いた。

「舐めるな！」

「ーーっ」

男の拳が何度もを襲うが、一撃も當たることもなく、避けられてしまう。

「てめえーーっ！」

「くんに手出しはさせないよ！」

花音は鞭をばすと、割ってろうとした男の仲間の腕を絡み取り、バランスを大きく崩させる。

「ーーくっ！」

『クロス・レガシィア！』

驚愕に目を見開いた男の仲間達に対して、花音がそのまま、天賦のスキルで間隙を穿つ。

「うわわああああっーーーー！！」

花音の鞭によって、宙に舞った男の仲間達は凄まじい勢いで地面へと叩き付けられた。

頭に浮かぶ青のゲージは、それだけで瀕死の狀態である赤に変化する。

「くそ、おまえら、撤退だ！　覚えてろ！」

男は逃げ出し、男の仲間達も慌てて彼の後を追った。

「口ほどにもない奴らだったな、、妹よ」

「お兄ちゃんは何もしていなかったと思うよ」

「ああ」

杖を構えた有がここぞとばかりに告げると、と花音は呆れたようにため息を吐いたのだった。