《兄と妹とVRMMOゲームと》第十八話 その先の未來⑥

達が部にってから一時間、ようやく踏み込んだ最奧部。

綺麗に磨かれた大理石の壁の至るところに、深い亀裂が穿たれている。

堅牢に跡を支える柱は、あるは崩れ落ち、あるは倒れ、今でも跡上部を支えているものでも無傷で済んでいるものはほとんどない。

まるで小型の臺風が、跡最奧部躙しつくしたかのような慘狀だった。

「ここにボスがいるのか?」

くん、お兄ちゃん達の援護、頑張ろうね」

剣を構えたが肩をすくめて、鞭を地面に叩いた花音は喜満面に張り切る。

「高位ギルドしか倒せていないボスか。報も曖昧だし、厄介だな」

インターフェースで表示させた要領を得ない跡攻略報に、奏良は不愉快そうに肩を落とす。

「この荒れ模様、ここのボスは難敵だな」

そのれがたい慘狀を前に、有は杖を強く握りしめて骨に眉をひそめる。

その時、突然、跡最奧部が振した。

どこからか、地鳴りのようなものが聞こえる。

最奧部の層を、鬼火が宙を漂う。

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やがて、それらが一ヶ所に積み重なり、形をしていく。

「ーーって、わっ! お兄ちゃん、ボスが出たよ!」

目の前に現れた巨大なモンスターに、花音が怯えたように有の背後に隠れる。

どくろのような驚くほど大きな頭部には、のように真っ赤な目が不気味なを放っていた。

大きなどくろの頭部に、白骨でを構した巨大で歪な軀を持つスケルトン。

それが、カリリア跡に潛むボスモンスターの全貌だった。

モンスターの巨大さ、醜悪な形狀、何より全から醸し出している兇悪な雰囲気に、達は圧倒され、言葉にできない恐れをじる。

「ボスモンスターは、スケルトンの変異か」

はインターフェースを作して、ボスモンスターに付隨した報を目にして言った。

、奏良、妹よ、後戻りはできない。全力で葬るぞ!」

「ああ」

「うん」

「逃げられそうもないからな」

有の指示に、と花音が頷き、奏良は渋い顔で承諾した。

「ーーみんな、攻撃が來るぞ!」

びと同時に、有達は一斉に散開した。

飛び込んできたボスモンスターの拳が、地面に突き刺さる。

砕かれた床の破片が、壁まで吹き飛んだ。

拳がまともに當たれば、死亡。

砕けた破片に當たっても危険。

ボスモンスターは一撃で、達をゲームオーバーにするほどの力を備えていた。

ゲームでゲームオーバーになったとしても、強制的にログアウトされるだけだ。

データは初期化されてしまうが、再度、プレイすることができる。

だが、今までみんなで培ってきたバトルと経験が全て無駄になってしまう。

達にとって明らかに分相応な戦いだが、このボスモンスターを倒せば、転送アイテムを使って街などへの移が楽になる。

危険な賭けだったが、達は敢えてボスモンスターを攻略するという勝負に出た。

ボスモンスターが魔力を放出すると、達に向かってマグマのような灼熱が襲いかかる。

「くっ……!」

混沌とした炎舞を、達はかろうじて避けた。

「わっ! これじゃ、前に行けないよ!」

即座に鞭による攻撃で怯ませようとしていた花音は、目の前に現れた炎の壁に反撃の手を止める。

『エアリアル・アロー!』

奏良が唱えると、無數の風の矢が一斉にボスモンスターへと襲いかかった。

HPを示すゲージはし減ったものの、青のままだ。

「はあっ!」

跳躍したの剣が、ボスモンスターに突き刺さる。

しかし、理攻撃が効かないため、ほんのわずかほどもHPは減らない。

恐らく、今回の跡攻略の報酬である『伝説の武』なら、魔による付與効果が見込めるため、ボスモンスターに一撃を加えることができただろう。

だが、そのような武は、達は持ち合わせていなかった。

ただ、別のかたちでの努力は実った。

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

ボスモンスターは方向転換をして、ターゲットをに絞ったのだ。

『元素還元!』

有は、に注意を向けたボスモンスターの隙をついて、炎の壁に向かって杖を振り下ろした。

杖の先端の寶玉が、蛍火のようなほの明るいを撒き散らし、炎の壁は崩れ落ちるように消滅する。

「お兄ちゃん、ありがとう! よーし、一気に行くよ!」

花音は跳躍し、ボスモンスターへと接近した。

『クロス・レガシィア!』

今まさにに襲いかかろうとしていたボスモンスターに対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。

花音の鞭によって、宙釣りになったボスモンスターは凄まじい勢いで地面へと叩き付けられた。

さらに追い打ちとばかりに、花音は鞭を振るい、何度も打ち據えたことで、ボスモンスターの頭は陥沒する。

だが、理攻撃が効かないため、ほんのわずかほどもHPは減らない。

しかし、頭が陥沒したため、ボスモンスターはのたうちまわって足掻く。

「攻撃は効いているはずなのに、ダメージがないのって反則だよ!」

痛みに苦しむボスモンスターの様子とは裏腹に、実際にはHPは全く減らなかったという違和のある事実。

それを間近で目撃した花音は、不満そうに頬を膨らませてみせる。

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

『エアリアル・アロー!』

怒りに吠えるボスモンスターに対して、奏良は再び、風の魔を放つ。

HPを示すゲージはし減ったものの、まだ青のままだ。

「有、どうする?」

ボスモンスターへの攻撃を繰り出しながら、は問う。

「実際に効果があるのは、僕の魔だけだ。このままでは勝てないな」

「ねえ、お兄ちゃんの持っているアイテムで、何とかならないのかな?」

奏良の鋭い指摘に、花音は踴るようにを回し、鞭を振るいながら有を顧みた。

「殘念だが、妹よ。俺が先程、作したアイテムは、全て回復アイテムだ」

「そうなんだ……」

有の率直な言葉に、花音はがっかりしたように肩を落とす。

「みんな、來るぞ!」

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

達を見據えたボスモンスターは、狙い誤つこともなく、達めがけて破壊のを放った。

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