《兄と妹とVRMMOゲームと》第ニ十話 その先の未來⑧

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

雷鳴ごとき咆哮。

そのびだけで壁を揺らし、天井から破片を降らせた。

ボスモンスターが魔力を放出すると、達に向かってマグマのような灼熱が再び、襲いかかる。

「くっ……!」

混沌とした炎舞を、達はかろうじて避けた。

「わっ! また、炎の壁で先に進めないよ!」

即座に鞭による攻撃で怯ませようとしていた花音は、目の前に現れた炎の壁に反撃の手を止める。

『エアリアル・アロー!』

奏良が唱えると、無數の風の矢が一斉にボスモンスターへと襲いかかった。

HPを示すゲージはし減ったものの、いまだに青のままだ。

は咄嗟に焦ったように言う。

「有、このままじゃ埒が明かない」

「ああ、分かっている。とりあえず、みんな、一度、回復アイテムを使ってHPを回復させるぞ!」

有は腕を組んで考え込む仕草をすると、唸り聲を上げるボスモンスターの様子を言いたげな瞳で見つめた。

「奏良、妹よ。これでし楽になるはずだ」

「うん。お兄ちゃん、ありがとう」

「有。君は人使いが荒い上に、全く効率的ではない。戦う前に回復アイテムを渡してほしかった」

有はボスモンスターを刺激しないように近づくと、花音と奏良に回復アイテムを放った。

屈託のない笑顔でやる気を全にみなぎらせる花音と、先の戦いを見據えながら、額を押さえて途方に暮れている奏良。

二人はけ取った回復アイテムを手に戦線を離れると、そこで一息つき、回復アイテムを口に含む。

花音と奏良はHPをしずつ回復させていく。

その間、が波狀攻撃を仕掛け、ボスモンスターの注意を引いていた。

くん、お待たせ!」

「狀況が狀況だからな。梨のために、全力を盡くさせてもらおう」

の代わりに、花音が前衛に立ち、後方で奏良が風の魔を放つ。

よ、回復アイテムだ」

「ああ。有、ありがとうな」

有から手渡された回復アイテムを呑んだことで、のHPはし回復した。

が振り返ると、ボスモンスターは瓦礫を薙ぎ払い、破壊の限りを盡くしていた。

強く輝く、明滅する炎、儚く燈るスケルトンの殘滓。

それらは見方によっては、暗い夜空の中で瞬く星空にも似ていた。

だが、もたらすものは、得の知れない禍禍しさだけだ。

「このままでは勝てないな」

ボスモンスターを見據えながら、奏良は事実を冷靜に告げた。

「奏良くん、奧の手とかないの?」

「僕の今のレベルでは、せいぜい弾に風の魔を込めて放つしかできないな」

花音が恐る恐る尋ねると、奏良は自分と周囲に活をれるように答える。

奏良は風の魔を使い、弾に魔力を込めていった。

弾の外殻が次々と変していく。

による武への付與効果ーー。

不意の閃きが、花音の脳髄を突き抜ける。

その様子を眺めていた花音が、興味津々な様子で言った。

「それ、私の鞭にもできないかな?」

「僕の今のレベルでは、自分自の武にしかできないな」

「……そうなんだね」

曖昧に言葉を並べる奏良に、花音は不満そうな眼差しを向ける。

だが、すぐに狀況を思い出して、花音は表を輝かせた。

「なら、ここのボスを倒したら、みんなでレベルアップできるね!」

「そうだな」

てきぱきと鞭をかし、ボスモンスターを翻弄しながら、周囲にを撒き散らすような笑みを浮かべる花音を、は眩しそうに見つめた。

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