《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》チュートリアル

2020年12月17日 レールガンの説明に加え、マーダーとケーレスの関係言及変更。

コウは機を起させる。後ろの後部座席にはちょこんと師匠が座っていた。

五番機の上に積み重なっている機たちを強引にどける。

五番機はついにき出したのだ。

意外と思ったのは、五番機は彼にアドバイス等を一切くれないことだった。

報のデータベース等は開示されるが、五番機は何も教えてくれない。

ジャンク・ヤードで有効そうな武がリストアップされてはいるが、対ケーレス戦闘においては有効なものはなかった。

拡張型バックパックがなかった。これがあるとウエポンベイやハードポイントの拡張も可能とのことだ。

つまり人間で言う、手で持つ武裝しか常用できないのだ。

悩んだ末、五番機が最初から使っていた剣を使うことにした。

もちろん片手に撃武、もう片手にこの武を持つことは可能だったが、機のコンセプト的にも剣一本のほうがよいと判斷したためだ。

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他のシルエットが撃武の裝備用ラッチを裝備しているのに対し、この五番機はそれすらないのだ。

「あのマーダーはケーレス系に屬するマンティス型だ。ケーレスは戦場に現れる悪霊のことだよ。多腳により安定を高めてある。主武裝は中口徑レールガン。副兵裝に多銃ガトリング砲を裝備してある」

「レールガン。それは知っている」

「最大程は二百キロあるぞ。威力は三十メガジュール以上、戦車砲の約三倍だな」

「二百……キロゥ? 三倍? 斬る前に死ぬな」

「あくまで最大程だ。地平線を考えてみたまえ。平地なら十キロ程度だし命中率とは関係ない。拠點攻略にはいいがね。必中距離は砲塔のブレもあるから二キロ圏。弾速はわかりやすくいうとマッハ七以上だよ」

「うへえ」

それだけでも絶的な報だ。

師匠は若干気まずそうに、コウの顔を覗き込む。

「正直に言おうか。あのマンティス型。君の世界のゲームでいえば、中ボスってやつだ。レールガン持ちなど、ケーレスでも多くはないよ」

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「チュートリアルなしでいきなりボスか」

強そうとは思っていたが、ボス級とは。

予想外の師匠の告白に、コウも思わず苦笑した。無理ゲーという奴か、と心思ったのだ。

「君の時代の戦車、腔砲の必中距離が五百メートル。戦車には近付いて歩兵が薄攻撃を仕掛けるしかない」

「蟲型といっても、実質戦車みたいなもんだな。なんで人型兵でやりあわないといけないんだ」

「嘆いても仕方無い。レールガンは連には向かないし、よほど當たり所が悪くない限り一発で沈んだりはしないから安心したまえ。人類側にも戦車や裝甲車はあるんだが、ここにはない以上仕方ない」

「どういう理屈かだけ教えてくれ。実際に戦うにしても、斬ったほうが強いと言われてもぴんとこないんだ」

「詳しくは後日な。説明するのは凄く面倒。シルエットも敵の裝甲も、高次元投裝甲という、高次元化処理されている裝甲を使っているので質量効率が數倍になる。錆びもしない。五番機はさらに構造上防力が上がる処理をされている」

師匠はとても面倒そうに告げる。だがコウにとってその言葉だけでお腹いっぱい、理解の範疇外だ。

「全然わからん……」

「そういうものだと覚えておきたまえ。高次元投された特殊な分子結合をするマテリアルに変質する。パワーユニットから出力されるウィスというエネルギーが重要でな。ウィスは五次元の電磁気力と重力の特を一つにしたエネルギーで、そのウィスを通すと強靱になる」

「五次元とかよくわからないが、その狀態になると、くなるってことか」

「ユゴニオ弾限界を引き上げることもできる」

「なにそれ……」

「裝甲が強靱になると覚えておきたまえ。い、ではないぞ。正確にいえば三次元では計測できない質量と厚みが増す、という表現が正しいんだけどね。そしてそれだけ質に対しても有効なのが、レールガンということだな」

「強靱だからっていって油斷はできないわけだな。そして敵も同様なんだろ」

「一番てっとり早いのは、同じく高次元投処理された武で毆ることだ」

「注意點は?」

「武を投げても無駄だ。投げるならワイヤーなりをくくりつけて使ったりする必要がある。五次元のエネルギーであるウィスを通さないと意味が無いんだ」

「手に持てと」

「そういうことだな。ワイヤーはシルエットの標準裝備みたいなもんだぞ」

作してわかったことがある。歩行と移が別なのだ。通常移や巡航移は、足底部によるローラー移。歩行は戦闘用だ。

歩行できるのにローラー移できるとは、と疑問に思っていると師匠が答えてくれた。通常歩行時に歩行者が巻き込まれないようにするため、らしい。

戦闘時に二足歩行に切り替えるのは手。踏ん張りがきくので安定が格段にあがるとのことだ。これには納得できた。

歩行時の機の揺れによる、上下運。コックピットのほうで衝撃を吸収するので、まず揺れないらしい。

ワイヤー作も作業用の基本作として組み込まれている。視覚を知し、その場所へアンカーを打ち込むことになる。応用が効きそうだ。

作學習モードに切り替え、剣の振り方を覚えさせる。

これは簡単だ。イメージを機が読み取るのだ。

もちろん人間とシルエット。可範囲に大きな違いがある。それを考慮してイメージし、覚えさせる。

「敵の殘骸もある。そこで試し切りしたらどうだ」

「真剣……っていっていいのか? 持つのは一年ぶりだな」

コウは一年に一回、剣の師匠から真剣を借りて、使う訓練をしていた。真剣は値段が高く、銃刀法の関係で所持も面倒だ。

ケーレスだったであろう殘骸もあったので、それで早速試し切りしてみる。

金屬同士がぶつかる耳障りな音とともに、切斷された。

「叩き斬る、といったじか」

斬ったはある。金屬音は鋼材をプレス剪斷した音に似ている。

「高次元投化されたといっても、元の質が大事だからね。剣も重金屬で出來ている」

剣の構え、振り方を設定する。日本刀と勝手が違うので要調整だ。

それでも応用できることはしていかないといけない。

次々に設定をし、改良を加えていく。

OSの優秀さも加わり、機は徐々に納得のいく作に変わっていく。

次にローラー移と歩行の切り替えだ。

ローラー移中に衝撃をけると転倒しやすい。ただ、歩行だと速度に限界が出る。

時はやはりローラー移のほうがいいのだろう。

後方移は速度が落ちる。安定がやはり極めて落ちるのだ。

次は歩行に切り替える。

驚いたのが左右のステップが機敏なことだ。これによって回避行を取ることが容易になる。

また前方へのダッシュも優秀だ。師匠が言うには、この機はとくに優秀だそうだ。

後方へ下がるのはローラー移よりさらに遅い。

ローラー移し、歩行に切り替え、素振りする。

剣での攻撃パターンは三つに絞る。

本來は一種類ぐらいに集約されるらしいが、他に手持ち武もなく、剣の振り方の登録が可能のようだ。

格闘ゲームのように近距離、遠距離で自的に切り替えてくれてもいいのにな、とコウは心思ったものだ。

驚いたことに五番機はジャンプもできた。重い割に腳の能もかなり良いらしい。

できない機も多いよ、とは師匠の弁だ。

ローラーダッシュから歩行、右にサイドステップ。そして前ダッシュからの斬撃。

これを反復して繰り返す。

「チュートリアルだろ?」

「チュートリアルだな」

思わず二人で笑った。

「本來ならシルエットは、オペレーターやコントローラーのサポートがる。人が多いらしいぞ。私で殘念だったな?」

「師匠も可いぞ」

「ニャアアア!」

師匠が後ろで激しく抗議した。

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