《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》戦闘開始
ジャンクヤードの外へのハッチを開ける時、手が震えた。
いよいよ、マンティス型ケーレスとの戦闘だ。師匠いわく中ボス級らしい。
訓練後、戦や相手の特を解析し、対策する。
初めてこの世界で一夜を過ごしたが、ほとんど五番機の中だ。
コウはすでにシルエットという機械に夢中だった。
工夫は、限られるなかで行った。
シルエットサイズの発進用スロープを上っていく。最終ハッチを開けたら、スタートだ。
ハッチを開ける。
廃墟は閑散としている。
そしてこれだけ視界の開けた場所だ。お互いをすぐに知した。
距離は――二キロ弱。
師匠からの報を反芻する。強敵のマンティス型との戦闘をこれより開始するのだ。
今ならわかる、意思無き殺意。
目標を破壊するためだけに存在する、機械。マーダーという総稱は間違いない、とコウは思った。
蟲型なのも理解できる。蟲にはない。
マンティス型は背面からレールガンを展開し、五番機に向かい撃準備を開始する。
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コウは回避行を取らず、そのまま突っ込んでいく。
なぜならば――
「すまない」
そっと呟いた。
彼は、無人のシルエットを盾にしていたのだ。
力が生きている限り、高次元投処理は有効だ。ならば近付くまでの盾にならないか、思案した。
そのなかで、右腕がない狀態のベアを見つけたので、活用させてもらうことにしたのだ。
空気を切り裂く轟音とともにレールガンが発される。これだけでも、初速の早さがうかがい知れる。
秒速二千五百メートル。マッハ七以上。軸をずらすことはできても回避は不可能だ。
撃ったと思ったら著弾している。ベアが大きく揺れた。
拡張された五が訴える。想定していたより、速くはないとじるのだ。
レールガンの弾速でさえ、コウが認識できるレベルにまで落とし込まれている。
いける。コウは確かな手応えをじた。
一発、二発目、次々に著弾する。
想定以上にベアはかった。
ベアの殘っていた左腕が弾け飛ぶ。腳も破壊されそうだ。
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十二発撃ったあたりだろうか、マンティス型の撃が止んだ。この間、わずか1分ほどだ。
「充電中だ。レールガンは連に向かない」
師匠が後ろから説明してくれた。
絶的な距離と思われたマンティス型との距離はかなり詰められた。
まだ油斷はできない。
マンティス型は距離を取りながら、機関砲を取り出す。コウが初めて見た、星アシアでの殺人現場で使われた武だ。
機関砲は銃を回転させながら次々と弾丸を発する。
ベアを手放し、五番機がローラーダッシュで走り出す。
「この程度ではすぐに裝甲は抜かれない。だが、直撃をけ続けてはさすがにダメージも蓄積する。レールガンまでのつなぎだ。それに備えて蛇行を」
「わかった!」
五番機をスラローム走行させる。
弾丸は回避できない。しかし線はずらせるのだ。相手の火管制システムが未來位置をどう予測し、それを上回るか――
多被弾しながらも五番機にはダメージがない。
再びレールガンが連続して撃される。
全弾回避は無理だ。サイドステップを併用しながら回避行をするが、數発もらう。
鈍い音とともに、左肩部分や左の裝甲が砕け散る。
レールガンの弾頭は貫通しない。発される速度が音速を超えると目標に當たった時點で高溫高圧になり、目標を破壊するのだ。
シルエットの裝甲で防ぐことが出來るのが本來ならあり得ない現象なのだ。
それでも威力は絶大だ。機が悲鳴をあげ、バランスを崩し転倒する。
足底部のローラーで移中だったため、バランスが不安定だったのだ。これはコウの失態だ。
十二発。マンティス型は全て撃ちきった。
「くっ」
コックピットの緩衝機能は極めて優秀だ。転倒によるパイロットへのダメージもほとんどない。
そこに――思わぬものが目にはいった。
赤黒く広がった染みに浮かぶ砕けた頭蓋。片がこびりついている。
コウがこの基地にきた當日、殺された人間たちのものだろう。裝甲車を破壊するための大型機関砲の掃は、直撃をけなくても人を殺すのに十分たる威力を持つ。
恨めしそうな、泣いているかのような頭蓋。無念をじた。
彼らは戦うことも、選択肢もなく殺された。
ぞっとした。
そして――思い出す。自分の稽古の日々を。
ベランダの窓ガラスを鏡代わりにし、無心に刀を振っていた日々。
人を殺す技ではあるが、誰かを殺すために振っていたわけではない。
自分の業の無駄を省くため。敵は自分なのだ。
しかし、今敵は目の前にいる。
彼には戦う手段がある。
「わかった」
どこの誰かもわからない骸(むくろ)に語りかける。
多分、同郷だろう、としかわからない人間。しかし仇は取る。それが言葉として、出た。
思考は一瞬――リカバーのための行は早かった。
起き上がろうとする五番機に対し、マンティス型の死の鎌が振り下ろされる。
マンティス型の恐ろしさは、その両鎌だった。
格闘できる多腳戦車というわけだ。
この悪魔が嫌らしいところは対シルエット戦を見據えての近接武――両腕があることだ。
中ボスとはよくいったもの。
対シルエット戦を見據えて作られた殺人兵なのだ。
五番機はすぐに立ち上がり、間一髪振り下ろされた鎌を避ける。
「位置取りだ、コウ。いかなる戦闘でも、位置取りが重要だ」
「そいつを取らせてくれなくってな!」
コウの頭の奧が冷えていく覚がわかる。覚の補助機能というものだろう。
「何かある筈……あれだ」
練習もほとんどしたことがない、とある型を思い出した。
剣でいう脇構え。左肩をせり出し、腰を落とす。そして刀剣を後方に構えるのだ。
この構えは甲冑を著た人間を想定している。可部がない甲冑狀態で、足払いなどを警戒しつつ相手との距離を詰めることができる。もともとカウンターに適した構えだ。
裝甲をにまとったシルエットには、最適の構えといえる。コウは限界のなかで閃いたのだ。
再び迫る、反対側の鎌。
振り下ろされた腕に対して、すかさずタイミングを合わせて斬りあげ、後ろに引き切るように半歩下がる。
自らの攻撃の早さが仇となる。マンティス型の右腕は見事に切斷された。
追撃は緩めない。そのまま頭部を真っ二つにし、二度、三度剣を振るう。重い音とともに、破壊されていく。
左腕の攻撃がくるがもう遅い。
コウはすでに懐のなかだ。
今度はマンティス型の當たりだ。
高次元投処理で判明したのは、撃武より當たりや、シルエットのパンチやキックのほうが有効打になりやすいということもある。
安定と重量があるマンティス型の當たりは要警戒だ。すかさず半歩退いて躱した。
コウはそのまま殘された左の鎌をかいくぐり、左側面に回り込む。こうなるともうマンティス型のきは封じられる。
生の戦いではこうはいかない。
機戦闘のコツは位置取りだ。コウはこの戦いの中でじ取っていた。
ここからつかずはなれず、斬撃を幾度ともなく加える。
「これで!」
が裂けそうだ。
再度、タイミングを合わせ、最後の一撃を見舞う。
マンティス型は両斷された。
力が途切れたのか、上半はかなくなる。
発はしなかった。
「よくやったな! コウ」
「ありがとう、師匠!」
「改めておめでとう。ようこそネメシス戦域へ。君が生還できたことを心より歓迎する」
貓が福音のように告げる。
コウは泣きそうになった。
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8 76僕はまた、あの鈴の音を聞く
皆さまの評価がモチベーションへとつながりますので、この作品が、少しでも気になった方は是非、高評価をお願いします。 また、作者が実力不足な為おかしな點がいくつもあるかと思われます。ご気づきの際は、是非コメントでのご指摘よろしくお願い致します。 《以下、あらすじです↓》 目を覚ますと、真っ白な天井があった。 橫には點滴がつけられていたことから、病院であることを理解したが、自分の記憶がない。 自分に関する記憶のみがないのだ。 自分が歩んできた人生そのものが抜け落ちたような感じ。 不安や、虛無感を感じながら、僕は狀況を把握するためにベットから降りた。 ーチリン、チリン その時、どこからか鈴が鳴る音が聞こえた。
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