《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》砲撃用意!

無人殺人兵マーダーの群れは數を減らしていった。

殘っている敵機は個の戦力が高いものばかり。

防衛している傭兵や守備隊、ファミリアによる義勇軍も損耗は激しい。死者こそないが撤退した機は多數だ。

ブルーもまた、アント型やテルキネスとの連戦に苦戦を強いられた。

近距離仕様に換裝して出撃したものの、敵の數はまだ健在だ。

迫り來るアントコマンダー型を、近寄られる前に対地ミサイルとバトルライフルの連攜で倒す。

一機倒すごとに弾倉換を強いられる。ウィスからの高次元裝甲を持つ敵はやはり辛い。

弾倉換しているところへ、大型の剣を持ったテルキネスが現れた。

向こうも近付く前に対地ミサイルを放ってくる。避けきれなかった。裝甲が砕け、よろめくが転倒だけは回避した。

「くっ」

この狀況はまずい。撃機はどうしても継戦能力に劣る。

空に影。彼の機を覆う。

テルキネスは予想外の攻撃をけたのだろう。一瞬上を見上げた瞬間、両斷されていた。

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ものの見事に真っ二つだ。

「コウ!」

ブルーはんだ。コウはビルの屋上から飛び降りてテルキネスに奇襲をかけたのだ。

謝します。非常識にも程があるけど」

三次元行ユニットをつけていない機がビルから飛び降りて攻撃するなど、無茶もいいところだ。

「補給に戻れ。戻ってきたら援護頼むよ」

そう一言告げて、再びビルの合間に消えていく。

ブルーは機を後退させつつ、呟いた。

「間近で見れば見るほど、ありえない……」

しかし、救われたのだ。

何故か思わず、笑みがこぼれた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「コウ。聞こえる? そろそろあの神様に止めを刺すよ」

ジェニーから通信がる。

「了解。何するんだ」

「ようやく再度の砲撃支援の準備ができたの。火力を集中させ、一気に行くわ。コマンダー型やテルキネスに注意、お願いね」

「了解!」

エニュオに一機のシルエットが近付いていく。機特化タイプだろうか。シルエットにしては細郭をしている。片手に筒狀のロケットランチャーを裝備している。

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各地から援護撃が飛んでくる。メタルアイリスの面々だ。ベアが目立つ。

特化のシルエットがエニュオに飛び乗った。撃墜すべくテルキネスが二機、迎撃に襲いかかる。

コウはその一機を背面から斬りつけ、そのまま戦に持ち込む。

もう一機のテルキネスはジェニーから集中砲火をけた。

エニュオの背に飛び乗ったシルエットは、大筒から信號弾らしきものを背面に打ち込んだ。

そのまま離する。

「コウ! 急いで離して」

『メタルアイリス』の面々も後退をはじめた。

「あの機は?」

「偵察部隊(リーコン)ね。今この場の役割は前線観測員《フォワードオブザーバー》ってとこかしら。――目標補足完了、ね。今から支援撃が再開される」

「そんな機があるんだな」

「メタルアイリスの間接撃部隊の他に、この街のファミリアたちの裝甲支援部隊との混合部隊を即席でね。これで仕上げってとこ」

一呼吸を置いて、全通信が響く。

『各自後退。これより間接支援撃にる』

ジェニーの號令が通信機を通じて響く。

『目標エニュオ。目標位置は2Aマーカー地點。エニュオ移時に注意されたし』

目標の確認と目標位置確認の撃號令が発せられる。

『攻撃は三段階。第一は対地ミサイル。第二、第三は榴弾砲による間接撃。第三は二目の著弾二分後。二連分を計畫撃のこと。友軍範囲に注意されたし』

各隊員および友軍に攻撃方法を伝達。

様々な通信がれる。

『こちら指揮車。各部隊へ著弾地點の修正計算式送付済み』

『こちら偵察機。計算式確認済み。問題ありません』

ジェニーのコックピットモニターは一斉に通信がる。

『こちらミサイル小隊。準備は完了した』

『こちら砲撃小隊。準備は完了した』

『ファミリア迫撃砲部隊。準備は完了した』

『各部隊、準備完了。――砲撃用意!』

各地より迎角修正を終えた部隊から通信がる。最後の通信は真っ白な大型犬タイプのファミリアが通信してきた。

『目標捕捉完了。対地ミサイル第一! 撃ち方始め!』

『ミサイル発。著弾まで殘り10秒』

ジェニーの命令が響く。著弾時刻の通告により、砲撃砲小隊とファミリア支援部隊の準備も進める。

遠く離れた地點で、三両の大型ロケットコンテナを裝備した裝軌裝甲車から二連のミサイルがそれぞれ発された。

『第二。間接砲撃。撃ち方始め!』

『初弾の飛翔確認。撃ち方開始。著弾まで殘り20秒』

砲撃砲小隊より通信がった。155ミリ自走榴弾砲より撃ち出される砲弾がうなりを上げる。

『第三計畫撃。間接砲撃。各自著弾時間調整。撃ち方始め!』

最後の號令が響く。

榴弾砲弾は撃ち出す角度によって著弾予測時間を調節することができる。同時著弾させることを計畫撃という。

二回分の砲弾を同時著弾させ、一目、二目で弱ったところに火力を集中させる作戦をジェニーは取ったのだ。

ファミリアの迫撃砲部隊は砲撃小隊より距離が近い場所からでの支援砲撃を行っている。百二十ミリの二連裝迫撃砲が互に砲弾を発している。

犬型や貓型のファミリアたちの時間合わせは完璧だ。

わずか三分にも満たない時間に集中砲火をけ続ける。

頭部を破壊されていなければ、対空レーザーや周囲のワーカー型に迎撃されていただろう。

ワーカーが數を減らし、迎撃機能が衰えていなければ集中砲火も効果が半減する。

いくら強度を高めた高次元裝甲も、數十キロ離れた場所から放たれる間接撃による集中砲火に耐えることはできない。

巻き込まれたアントワーカー型もほぼ撃滅し、かろうじていているだけの巨だけが殘った。

『間接支援撃終了。目標大破確認。各自、掃討戦に移行せよ』

ジェニーの號令が響く。

最後の掃討戦が始まった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「じゃあ、そろそろ破壊の神様に止めを刺しますかね」

コウは五番機をエニュオに向かわせる。

近くにはメタルアイリスのシルエットもいる。

「逃げろ!」

コウが思わずぶ。

エニュオに薄しようとしたメタルアイリスのベアが袈裟切りに倒されていた。

無造作に尾でベアをなぎ払う。そこに巨大なテルキネスがいた。

怒りに似たじさせるテルキネスが迫ってくる。

指揮機であろうか。他の機より一回り大きい。

五番機と似た大剣を構えていた。

斬り合いでは実はテルキネスのほうが有利だ。尾を裝備しており、三本目の腳となって極めて高い安定を誇る。

力任せの斬撃でも十分に致命傷だ。

だが――

コウには視えた。敵の斬撃の軌道。そして狙い。

大ぶりに見えてそれは前方を守るための軌道でもある。死ぬほど反復した居合いで、嫌というほど注意された軌道だ。袈裟切りは相手の骨のらかい部分を斬るためだけの技ではない。

これがシルエットの、覚を補う効果なのか。コウは直した。対人などしたこともない。試合だってろくに出たことがない青年を、五番機が補ってくれている。

補った上で、彼の指示を待つ五番機に強烈な信頼を抱いた。

「やれる」

小さく呟いた。五番機は応えてくれる。

どうするか?

ならば、下段から迎え撃つ。脇構えは剣の軌道をみせないためのものだ。機械ならば上に振り上げるという不利な作も、補える。

相手の袈裟切りのタイミングに合わせるように、剣を置くように水平に振った。強い風に逆らうが如く。

テルキネスの両手首はそのまま吹き飛ぶ。

そのきは予想していなかったのだろう。一瞬きが止まったところに、引いた大剣を突き出した。

テルキネスはをまともに貫かれ、行を停止した。

剣を引き抜き、そのまま力任せにを橫一文字に両斷する。

上半はゆっくりとずれ、そのまま音を立てて地面に落下した。

殘るはエニュオだ。

アントコマンダー型がまだ殘っている。こちらに気付き、排除のため、向かってきた。

だがその敵も音とともに大きくのけぞる。

「コウ! 援護する」

ブルーだった。補給を済ませ前線に戻ってきたのだ。

「借りは返した、っていうところじゃないか」

おどけながらも謝した。味方がいるという狀況は頼もしい。

「暢気な。こんな程度で返したことにはなりません」

抑揚のない聲が返ってくる。

コウはふっと口元を緩ませ、クイーンアント型のに飛び乗った。

大きく振りかぶり、とくにえぐれている部分を切り裂く。

クイーンアント型のケーレスは大きく上を反らし、地面に崩れ落ちた。

ウィスのパワーユニットが破壊され、力が停止したのだ。

彼らの勝利は間近だった。

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