《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》閑話 TSW-R1の系譜
「シルエットの扱いになれたようだね」
「ああ。面白い」
コウはなにより、シルエットとの一が好きだった。
車よりもバイクよりも充実を與えてくれる。
このまま戦い続けるのも悪くはないかもしれない。昔の剣豪ぽいか、と自問して否定する。剣豪の時代に戦は終わっていた。
なくとも今は戦なのだから。
「食糧は君にとって大変ありがたいな。お、シルエット洗浄対応の服があるぞ。著替えるといい」
「服まで。これはありがたいな」
服を著替えた。メタルアイリスの制服だろう。帽子、ジャケット、カーゴパンツ、下著類の一式だった。白の作業著はお役免だ。
彼らの提供してくれたレーションはとても味しかった。師匠によればコウが食べていたのは、本當に長期保存用で、最低限の栄養補給しか考えられてないそうだ。
食事を終えたあと、再度五番機のコンソールから様々な報を手していく。
「TSW-R1、か。誰が作ったのか。どうしてこんなに斬撃に向いた機なのか。それが不思議で仕方ない」
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「それは設計者に聞くしかあるまいね。確かに新機構が組み込まれている」
「どのような?」
「関節部分はアクチュエイターとエンコーダだけではないんだよ。簡易的な疑似人工筋で覆われているんだ。これはTSW-R1が初採用だ」
「よくわからないが凄そうだな」
「機の運は跳ね上がったね。また人工筋は裝甲材も兼ねている。しかし欠點も多かった。コストが跳ね上がるし、互換も減る。互換が減るということは兵站においても不利だ。高能機の宿命だね。重量が増えて積載能力が劣る欠點もある」
「剣一本だったのはそれでか。メタルアイリスの反応みたら時代錯誤らしいし」
自分でもそう思う。
古來戦場では弓、槍が主力だ。戦國時代では刀より木刀のほうが杖代わりになるし重寶されていたらしい。
近付いて斬るなど、近代兵でやる戦法ではない。
いくら高次元投裝甲が高能とはいえ、距離を保ち相手よりイニシアティブを取る。これは重要なはずだ。
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「TSW-R1を設計したのは、転移者企業TAKABAの鷹羽兵衛という人でね。本人が剣の達人だと言われている」
「た、たかばひょうえだって!」
普段めったに大きな聲を出さないコウが大聲でんだ。
「どうした。珍しい。聲を荒げて」
「……俺の地球での勤め先。會長の鷹羽兵衛さんなら、確かに剣の達人。俺と流派は違うけど。一刀流と二天一流だったかな。そのお孫さんの修司さんと俺が仲良くて。話もよくした人だ」
彼の勤め先は主に自車のエンジンや船外機、バイクの生産が主な中規模の會社だった。
流派は違えど剣や居合いをやっている人間は珍しい。鷹羽の祖父と孫の修司とはよく話したり、個人宅の道場で型を見學させてもらったものだ。
要らぬやっかみも増えたが、気にしていなかった。
殺されかけるとは夢にも思わなかったが、逆にいえば五番機の設計思想は鷹羽兵衛の経験に基づくでそれに助けられている。何があるかわからないものだ。
「そうか。會長、自分の知識ありったけぶっこんだ機を作ったのか。そして出來たのがTSW-R1と」
五番機と自分は接點があったのだ。
これは偶然と思えなかった。運命があるとしたら、まさしく彼が乗るための機だった。
「彼は十年前この地に転移してきた。最初はろくに資金もなかったが自ら率先してシルエットに乗り込み、傭兵をやって資金を稼いだと聞く。そして三年でTAKABAを起こし、五年前このTSW-R1が完したところでエリアが襲撃されたのだ」
「加速重視かつ、重量増やして安定を増し、重心移を優先させたというところか。剣に特化しているのもうなずける」
ぶつぶつと呟いている。
TSW-R1には言われて見ればみるほど鷹羽會長の意思が込められているように思えてきた。
「フェンネルOSならではだね。例えば歩行という行を分解すると常に前方に転倒する作だ。人間のきの重心移など君たちの時代のコンピューターではまだ難しいだろう」
「リアルのロボットのことはよくわからないんだ」
コウに説明されても理解は厳しい。
「TSW-R1はコストがやはりネックになったようでね。低率初期生産で終わってしまい、汎用を重視した改良型のTSF-R10の生産を始めている」
「試作は終わったけど、本格量産には至らなかったということか」
「それでも五十機は生産しているはずだけどね」
仕事でも試作、初期生産品関連はよくみているコウだった。部品に初エフがついているのですぐわかるようになっている。
とくに高級バイクや高級車は年の生産數もない。
「制式名稱の命名規則は社によって異なるが近接のwarrior、汎用のfighter、武裝改修のsoldierはどの社も共通かな」
「名稱のアルファベットで機の質が識別できるようになっているのか。R1の後継機の名稱がTSWからTSFに変わったということは機の質が変わったということか」
「近接向けのwarriorから汎用戦闘のfighterに代わっているね」
「Tは鷹羽、Sはシルエットかな」
「そうだね」
コウはより五番機に親近をじていた。
勤めていた會社の制作ということもだが、やはり近接戦闘向けに作られていたことが制式名稱からも明らかだからだ。
「しかしコウが鷹羽氏の知り合いとは思わなかった。彼の立志伝は有名だよ」
「會長と俺は移転に十年のズレがあるのか。遠い未來で會社を興すとか凄いな」
「彼が構築技士(ブリコルール)だったこともあるね。構築技士はオケアノス系列のコンピューターから報を取得できる権限や工場をかす権限があるのだよ」
「構築技士ってあれか。便利屋の?」
「便利屋ってレベルじゃないけどね? これから君と行く場所は構築技士でなければ意味が無い。私と出會ったのも運命なのだろう」
「そうか。會社を興すとか面倒そうだし俺はいいかな」
経営者になるということは大変なのだろう。
傭兵をやって社員を食わすとは責任の強い人だ。コウはそう思った。ここではもう會社組織ではないのだから。
自分には到底無理だ。
「君と向かう場所にある施設と相が良ければ、これから兵開発が行える。君を支える仲間も出來るはず。力強い拠點となるだろう」
「仲間とか兵開発とか想像つかないんだけど」
「なあに。部品(パーツ)を寄せ集め(ブリコラージユ)するだけさ。簡単だ」
「構築技士って実は凄い資格なんじゃないのか?」
「そうだよ? 一番ランクの低い等級でも引っ張りだこだ。無人施設の使用権限が増えるからね。君は無制限だから、なんでもできそうだ」
「メタルアイリスの人たちも知っていたのかな。俺が構築技士だってことに」
「知らないだろうね。いや、ID登録の時知ったかもしれないな。今頃大騒ぎかもしれない」
「熱心にってくれていたから、最初から俺が構築技士って知っていたのかな、と」
「自己評価が低いぞ! なくとも戦闘中に合流した君が構築技士だと知るはないよ。あれだけの戦果を殘したシルエット乗りだ。を張りたまえ。彼らは実績で君をチームにったのだ」
「それは嬉しいな」
自分でもよくわからない構築技士という肩書きでスカウトされたなら、悲しい思いをするところだった。
彼たちはコウという人間の技量をみてってくれたのだ。それなら理解出來るし、報われる思いだった。
このたび平最後の日にジャンル宇宙〔SF〕で一位を取ることができました。
読者の皆様、そしてご支援いただいた方に改めて禮申し上げます。
本當にありがとうございます!
誤字報告してくれる皆様、本當に助かります。この場を借りて禮申し上げます。
語も戦闘の連続でした。核心である兵開発施設手へ語は移ります。
明日令和元年初日には、ネメシス戦域の裝甲巨兵において、皆様にもお伝えできる形で何か出來たらと思い準備を進めております。
けれられるか今から不安ですが、広い心で経緯を確認していただければ幸いです。
引き続き応援よろしくお願いします!
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