《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》開発ツリー

2021年1月4日 設定間違い訂正。マーダーは人間が開発された⇒ストーンズへ提供された、です。

數時間は経っただろうか。

仮眠室のベッドで橫になろうとすると、大型犬がいた。ファミリアだろう。コウが寢る予定のベッドの床にいた。

綺麗な小麥の、ゴールデンレトリバーに似ている。

ヴォイが他にもファミリアがいるといっていたことを思い出した。疑問には思わなかった。

「ゴールデンか! ファミリアかな?」

コウは好きである。貓も犬も好きだった。

犬は目を開け、優しい瞳でじっとコウを見ている。

コウはベッドに座り、ゴールデンに向かって話しかける。

「おいで。お前はしゃべれるのかな?」

その言葉に犬はコウと同じベッドの上に移してきた。

犬は首を橫に振った。師匠はファミリアでも會話できるタイプとできないタイプがあると言っていた。後者ということだろう。

「お前、綺麗な並みだなあ。ふかふかだ」

コウはそっと耳の付けで、首下をなでる。

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首から背中の並みを手櫛をするようにでてみた。気持ちよさそうに目を細めていた。

「大きな森がたくさんあるから散歩しても楽しそうだ。俺と散歩するかい?」

近所の大型犬の飼い主が、いつもぼやいていたことを思い出す。大型犬は散歩距離も長いのだ。散歩コースが短いとストレスが溜まってしまう。

「わん!」

嬉しそうに吼える。そのまま巨をコウに押しつける。コウは抱きしめる形になった。

ぺろぺろとコウの頬を舐める。

コウも嬉しくなり、しきりに犬の頭やをなでる。

「にゃあ?」

今度は貓が現れた。コウのベッドの下にいたらしい。

目つきの悪い灰のチンチラペルシャだ。かなりの巨だ。茶虎ので、斑點はない。鼻ぺちゃで目付きがガンを飛ばしているようにもみえる。

「おお、貓! お前も可いな。俺は昔ね。貓飼っていたんだよ」

有無をいわさず両手で摑んでベッドに上げるコウ。

貓はびっくりして固まっている。コウの聲音は普段より優しい。

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貓はおとなしくコウにでられていた。

ブラッシングしたいが、そんなブラシは無いので手櫛だ。

「お前もファミリアか? しゃべれる?」

「にゃあ?」

どうやらこの貓も會話できないらしい。意思は伝わるようだ。

額をちょこちょこでたあと、首下をくすぐるようにでる。

でられるのも飽きたのか、貓はコウの足下へ移し、丸くなって眠ってしまった。

犬はコウの頭で寢そべっている。

「おいおい。枕にしてしまうぞ」

「わん!」

どうやら枕にしていいらしい。恐る恐る頭を乗せると、犬も本格的に寢る姿勢になった。コウを見守るように扇型に寢そべっていた。

さすがに頭を乗せたままだと悪いのでしずらす。頭を押しつけるように寢る。

お腹と並みのが心地よい。

「師匠がいたらなあ。ひょっとしてお前たちは師匠がいなくなった俺をめにきてくれたのかな」

返事はない。しかし犬はコウの頭に腕を載せ頭を押しつけてくる。犬の顔がコウのすぐ隣にあった。

半ば抱きかかえられるような形になってしまう。

敵意のないたちに囲まれて、くつろいで眠ることができそうだ。

コウはうつらうつらしながら、穏やかな眠りに落ちていった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

目を覚ましたコウはうつ伏せに寢ていた。

優しいらかなに埋もれている。昨日のゴールデンの………ではなかった。

固まった。けない。

頭を抱きしめられている形になっているのだ。きつくならないよう、そっと頭部に腕を添える形で。

らかい…… 夢でなければ思い當たる人は一人しかいない。

「アキ……?」

「おはようございます。コウ」

アキは目を覚ましていた。すぐに返答があった。コウが目を覚まさないようずっと抱きかかえていたのだろう。

「俺はゴールデンと一緒に寢ていて」

「私です。そのゴールデン」

犬耳と尾をぴこぴこしながらアピールしているが、コウは抱きしめられている形なので見ることはなかった。

「え、あ、あの! ごめん! そうかセリアンスロープってに変できるんだっけ」

アキの髪、今思えばあのゴールデンそのものだ。

セリアンスロープをただのケモ耳人間と思い込んでいたコウだった。

「コウ…… いやらしいにゃ」

足下で寢ていた、寢間著姿のにゃん汰がいた。ジト目がコウに突き刺さる。言い訳しようもない狀況で辛い。

なでたり元に頭を突っ込んだりしたのはコウ自だ。

「にゃん汰なんでいるの?」

「酷い言われようだにゃ。昨日のぶさ貓が私にゃ」

「ぶさ貓って。可いじゃないか。があって」

「鼻もひくいし目つき悪いにゃ。本気で言ってるにゃ?」

「鼻ぺちゃで可いじゃないか。本気で言ってる」

「ふん…… 好きにゃ。しばらくアキといちゃつくといいにゃ」

「いちゃつくって、おい!」

にゃん汰は出て行った。

コウはまだアキに抱きしめられたままだ。

「アキさん…… とても幸せなのですが、ご迷では。そろそろ離してもいいんだ」

ギャルゲかラノベのような出來事だ。幸せといったが、過言ではない。

「幸せならいいじゃないですか。私は嬉しかったですよ、昨日。あんなふうに接して貰えて」

コウを抱きしめている腕が優しく力を増す。それが事実であることを語っていた。

「大型犬見るとテンションあがるんだ。昔は白い大型犬も、思わず抱きついてしまって」

近所のグレート・ピレニーズは子供好きで、抱きついても怒らなかった思い出があった。

「じゃあ毎日一緒に寢てもいいですね」

「そ、それはアキに悪い」

「私は歓迎ですよ? ――森を一緒に散歩しようなんて言ってくれた人、あなたがはじめてです」

「散歩はしよう」

「ふふ。楽しみです。でもお困りみたいですから離しますね」

ようやくアキが離してくれた。

薄い著のみのアキに顔を真っ赤にするコウ。

アキは目を細めてコウを見つめている。

「スキンシップ、大事ですね」

「あ、ああ」

慣れしていないコウはそうこたえるのが一杯。

彼の気持ちを知ってか知らずか、アキは穏やかに微笑んでいるだけだった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「ってわけで朝っぱらから二人でいちゃついてるんだにゃ、こいつら」

にゃん汰が憮然とした表でヴォイに愚癡ってる。

本気で怒ってるわけではない。からかっているのだ。ヴォイは熊ながらにやにや笑っている。

アキの方はにこにこ笑い、コウは気まずそうに目を逸らした。

ここは食堂だ。だだっぴろい大きさの中、彼らはぽつんと座っている。

「やるなあ、コウ! さっそくアキの好度をマックスか!」

「ええ。一緒に散歩しようというのは、犬型セリアンスロープにとって求婚と同じこと。私もあそこまで言われては」

頬を染めながら言うアキに、目を丸くするコウ。

「え? 本當?」

「……噓に決まってるにゃ。コウ、覚えておくにゃ。だってはしたたかにゃ」

呆れたジト目で、冷ややかにコウに忠告をするにゃん汰。

コウは隣を見ると、犬耳を伏せてぺろっと舌を出すアキがいた。

「まあ散歩しようとか言ってくれたら、そりゃ懐くよな」

「ですよね!」

何故かヴォイがアキに理解を示す。アキは我が意を得たりとばかりに尾をぶんぶん高速に振っている。

「って、話は変わるけど、ちゃんと食事あるんだな」

強引に別の話題を振るコウ。

暖かいスープにピザ。炭酸飲料。この星にきて食べる、懐かしい料理。

「千年以上前の食材だけど鮮度に心配はないにゃ。野菜魚穀、數千トン分は搭載されてるにゃ。私の手料理ありがたく食えにゃ」

「ありがとう、にゃん汰。凄く味しい。でも數千トンって凄い量だな」

「そうでもないにゃ。その三倍は備蓄できるにゃ。この船は約一萬人収容できるから一ヶ月分ぐらいかにゃ? 私達だけなら余裕にゃ」

基本ファミリアもセリアンスロープもベースとなる生と同じ構造を取っているが、食事はあくまで嗜好品だ。

一萬人はコウがいた時代の空母の収容人員を上回る數字だ。

食事を終えた三人は、五番機の方針を確認した。

「うむ。はっきり言おう。技の退化が著しい。【ソピアー】はよほど絶したんだろうな」

ヴォイがため息じりに吐き捨てた。

「そんなに?」

「ああ。コウにわかりやすく例えると木刀や竹槍で戦車と戦っているようなもんだぞ。ラニウスはまだいい。主流のベアなどは乗用車に追加裝甲積んだような狀態でしかないな。星間戦爭時代ならただの武裝ゲリラだ」

「人類が押されるのもわかったにゃ」

「狀況は想定以上に酷かったですね。私達も【ソピアー】の技制限で星間戦爭時代の技再現は難しいです」

「マーダーはストーンズへ提供された兵で、技は高いが不完全。だがそれゆえ【ソピアー】の超技の制限も、【人間に寄り添う】という基本理念も存在しない。確かに厄介だ」

彼らは現在のシルエットの能力では、対マーダー戦闘を考慮しても不利という結論に達していた。

「俺は何をすればいいんだ」

「技を引き出し、拡散させることだな。どうするかは俺には皆目見當つかないが、アストライアがやってくれるさ」

「拡散させる必要は?」

「人類へ供給する量産機をすべてこの施設でまかなうことは不可能だからな。ただ、今の人類に與えてもよいかの判斷はコウ次第というところか」

「どうやって技を引き出せばいいのかすら分からない」

コウも途方にくれていた。

世界はこのままではストーンズ率いるマーダーに制圧される。しかし撃退に功すれば彼が拡散した技で人間同士の戦爭になるという。

そもそも何をしてどんな技を引き出せばいいかわからないのだ。

『そこは私が補足しましょう。オケアノスからは私を通じて技報が引き出せます。ですが、あなたの想定するもの以上のものを引き出すことはできません』

的に!」

『あなたの時代から開発された、または開発予定の兵に関する技報を引き出すことは可能でしょう。そしてその応用範囲の技の使用許可は下りるはずです。あなたが目撃したレールガンはその代表です』

「そうか。レールガンはあった。レーザー兵は…… 戦車の裝甲を貫くにはほど遠いって話しだった」

『別の例を。例えばあなたが最強の兵しい、といってもオケアノスは技提供しません。いわゆるロボットアニメやゲームの兵を例に出しても無理でしょう』

「え、アニメとゲームだめ?」

『ダメです。設定の幹たる架空の粒子や金屬が存在しないのですから、オケアノスは回答しようがないのです』

にべもないとはこのこと。軽くショックをけるコウだった。

「わかりやすい説明どうも」

アニメとゲームが封じられ、どういう技を引き出せばいいか、ますますわからなくなった。

ウィスがあるからいいじゃないか、といったら怒られそうなのでやめておく。

『一つ一つ発展させ概要をつかんでいくしかないでしょう。ゲームで例えるなら開発ツリーみたいなものといえば伝わりますか?』

「ああ、それならわかる」

『はい。開発ツリー形式であなたをサポートいたします。戦車、航空機を開発し、どの技が必要かあなた自が知りながら、シルエットに応用できそうな技を引き出してください。あなたの知識や求が増えるとオケアノスも回答しやすくなるでしょう』

「うぅ…… 凄い遠回りだな……」

開発ツリーといわれてもゲームでしか知らないのだ。

『各地の構築技士たちは自分たちの知識の応用で技を引き出しています。詳細を把握する必要はありません。的なイメージが必要なのです』

「俺らもサポートするから気楽にいこうぜ!」

「ああ、頼むよ。ヴォイ」

「うちらもいるにゃ」

「ですね」

途方にくれるコウに聲をかける三人に、コウは謝のまなざしを送るのだった。

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