《地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇は殺そうとしてきた兄への復讐のため、來訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝國を手にれるべく暗躍する! 〜》第7話 破局

そしてグーシュの乗る馬車と護衛及び先発隊二百人は、儀式できらびやかな甲冑にを包んだ皇帝を筆頭とした皇族達と近衛騎士団、そして不安にかられる五十萬の民衆に見送られながら出立した。

グーシュとミルシャは馬車の中から、その景を眺めていた。

「あー、見送られる方は楽で助かったな」

ちょうど皇族一同が並ぶあたりを過ぎた頃、グーシュはミルシャに語りかけた。

「甲冑を著られて馬車から顔を見せていればいいですからね、逆にお見送りになる方々は大変です。あの甲冑で馬車が見えなくなるまで直立不とは」

「まああれも皇族の義務というやつだ。普段贅沢な暮らしをしているんだ。その上皇帝になる気も無いような奴らは、あれくらいの事はせんとな。皇族の威厳を保つ手伝いもしない奴らに皇族でいる資格なんぞない」

皇族には貴族のように貴族院で議員として活する義務も、領地を経営する義務もない。彼らに求められるのはただ、皇族という大陸を統べる一族を維持する役割のみだった。

もっとも、この事が皇帝になる気のない大多數の皇族への蔑みや危機となっているのだが。

「皇族と言えば、お著替えのときにガズルが來たそうですね。何かされませんでしたか?」

「いや、あの好男、珍しくでないで行ってしまった。だが代わりにこれを置いていった」

そう言ってグーシュは首元の隙間を促した。そこには帝弟が渡した青い寶石の首飾りがぶら下がっている。

「相変わらず見事に絶壁ですねぇ……」

「……その絶壁に毎晩すがりつくのはどこのだれだ?」

馬車の空気が……冷たくなる。

「…………この首飾りですか? きれいなのにあの男が持ってきたと思うと気持ち悪いですね」

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「正直わらわもそう思うが、よく見てみろ」

ミルシャが顔を近づけて覗き込むと、青い寶石の奧に何やらごちゃごちゃとした裝飾が見て取れた。何やら複雑な紋様の様なが薄っすらと見えるが、詳細はわからない。

「ご機嫌取りだかなんだか知らんが、街で出會った人がわらわ宛に渡したとか言っておった」

「びじ……」

ミルシャの表にヒビがった。グーシュというは、非常ににモテた。由々しき事態だった。

「わらわの支持者とか言っておったが正直胡散臭かった。だが突き返すにしては珍しい細工でな。つい興味深くてけ取ってしまった」

「……他意は……ございません……ので? 」

「ちょっと本當に怖いぞ……しかしこうしてお前に嫉妬されると安心するな」

そう言ってグーシュはミルシャの頭を甲冑をつけたままでくしゃくしゃとでた。

「これであの叔父はわらわにびてるつもりだろうが、卻って手出ししてきたらぐらでも蹴っ飛ばせばしは懲りる。わらわは子爵領についたらこいつをバラして、この寶石の奧の細工がどうなってるのか調べるつもり、それだけだ」

「海向こうからの使者が來ているこの時に、殿下は本當に豪膽なお方です……」

そんなやり取りをしていると、馬車が停車した。帝都の外周を出て、人里から離れた場所に予定通りついたのだ。

グーシュはここで、この死ぬほど著心地の悪い鎧をぎ、今後五日間の旅程を過ごすのだ。

休憩場所で鎧をいだグーシュはそのまま、先遣隊の近衛騎士団の兵士たちにミルシャを連れて聲をかけて回った。

というのも、いだ鎧を鎧櫃にしまうのも、鎧係による一時間ほどのパズルを経なければならなかったからだ。

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そしてグーシュはこういった時間を見逃さず、兵士や司、にあれこれ言って回るのが好きだった。

張しておるのか? なーにわらわに任せろ。海向こうからの使者と言っても同じ人。怖がるよりも楽しみなくらいだ」

「うん、新米か? 疲れたか、干し果実でも食うか? あまりくなってると足を痛めるぞ」

「噂ばかり信じてビクつくな、帝國騎士団ならどんとしろどんと。あんまりくなってるようなら、今夜はわらわが添い寢してやろうか? 」

こうして部隊を一巡して馬車に戻ったグーシュだったが、兵士たちと會話しているときと違って不満げだ。

「子爵領への増援。その先遣隊にしては隨分新米が多いな。噂を聞いて海向こうへの不安でくなっとるやつばかりだ」

「この部隊編は近衛騎士のイツシズでしたね……皇太子派の筆頭です。考えたくありませんが皇太子さまが? 」

ミルシャが周囲を窺うように視線を鋭くする。そして手元に車の壁にかけていた剣を引き寄せた。

「わらわがああしてデカデカと全権大使に名乗りでてしまったからには、何かしらきを見せるかもしれんが……それはなかろう……というか無いと信じたいな」

グーシュにしては隨分と弱気な言葉だった。ミルシャは驚きながら主の方を向いた。

「なぜですか? 実際速さを優先と言って護衛をなくした上に、そのは新米ばかり。あまりに骨です」

「兄上は優秀な男だ。この海向こうのとの初めての渉という時に、全権大使を殺すなどという國益に反する事はしないだろう」

「ですが……」

「よしんば、あの兄がそんな事を考えたとしたら……」

その言葉と共にグーシュが浮かべた表を見て、ミルシャはゾッとした。

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「國益よりも目先を優先するような愚か者だっとしたら……わらわのこの十八年はなんだったんだ……」

(「いいですか、グーシュ……父や兄はこの帝國を統べる偉大なお人……信じなさい、そして切磋琢磨して長を助けなさい……あなたはそうすれば……」)

「利でかない人間の事はわからない。母上が信じろと言った父上と兄上はわらわと同じ考えでいていた……だから今まで信じてきた……もし、もしも兄上が愚かものだったら……わらわはお前以外の誰を信じればいいのだ……」

し、遠くを見たままのグーシュを、ミルシャは抱きしめた。

(ああ、このお方は……僕がなければ……)

「大丈夫です……大陸全てがあなたを裏切っても、僕は絶対に……」

そのまま數刻ほどした頃、最初の野営場所にたどり著いた。

馬車から降りると、グーシュはいつものように兵士たちと一緒に火を囲み、同じ食事をとった。

その様子をミルシャは、し離れたところからホッとして眺めていた。すると、不意に聲をかけられた。

「ミルシャ殿」

「ハッ、はい。どうしましたか、隊長殿? 」

聲を掛けてきたのはこの部隊の隊長を務める近衛騎士だった。その表は険しい。

「本當に皇室用天幕をはらなくてもよろしいので?」

「グーシュ殿下のご希です。非常事態ゆえ馬車の床で十分とのこと。その代わり兵士たちの疲労をしっかりとり、萬全の狀態で子爵領にたどり著くようにと仰せです」

「ならばいい」

それを聞くと、険しい表のまま近衛騎士は去っていった。ミルシャは厳しい目で近衛騎士の背後を見る。

グーシュは大丈夫と言ったが、とても安心できる狀況ではない。

グーシュは行力も判斷力もあるし、人心掌握にも長けてはいた。もっともミルシャの見た所それは、グーシュと離れた立場の者たち、一般兵士や下級吏といった存在に限られた特技のようだった。

グーシュに近い立場になればなるほど、利と益でくグーシュについていけなくなってしまう。誰も、グーシュの利と益以外の部分には気がつけない。逆にグーシュは自分が當たり前だと思う利でく事を気味悪がり、距離をとって的に行する者たちが理解できない。同じ考えを持ち、慕っていた者たちが突然豹変するのが理解できない。故に明るく、豪放磊落に振る舞ってもその実休まることがない。

ましてやそれが自であり、同類と思っていた存在であるなら……。

(これ以上グーシュ様に皇太子様を疑うような事は言えない……なら……)

「僕がお守りするんだ……」

主と兵士たちの笑い聲が響く野営地で、は強く誓った。

翌朝、夜のうちに水につけていた干しを、そのまま付けていた水ごと溫めたを朝食にすると、一行は天幕を片付けて出発した。

ミルシャは昨日の事を踏まえて、努めて普通に振る舞おうとしていた。會話の容にも気を使う。

「わらわはなんだかんだ言って甲冑が好きだな。重くて暑苦しいが、こんなわらわでも甲冑を著込むとが引き締まる」

「初耳です。いつも諸國の姫君が甲冑を著ていると、がしたいとしか言いませんから」

「そりゃはな……裝束なら兎も角鎧では何も出來ん。だが男なら鎧を著たままがいいな。いや、いっそずっと鎧を著込んだままの男がいれば最高だな。格好いいし、中の無骨での生えたを見んですむ」

「またそのようなことを……」

余談だが、皇室の者や各國の王族、認められた甲冑を持つ権利を授けられた者だけが公式行事や會議で全甲冑を著込むことが出來る。それほどまでに甲冑の持つ価値と格はこの大陸では重んじられる。

実の所、全金屬鎧が実戦で用いられた事はこの大陸では殆どなかった。

統一戦爭のし前、金屬技の発達で全金屬鎧の製造が可能になったのと、ほぼ同時に強力な石弓が普及した。

甲冑はこうなると期待の新防でもなんでも無い。ただの重くて著心地の悪い、高価な鉄の服に過ぎない。

ところがこの鉄の服に価値を見出したのが統一をし遂げたボスロ帝だった。

石弓によって軽裝鎧しか著ていない軍勢の中、行軍や実戦を度外視した全鎧を著込んだ偉丈夫であるボスロ帝は目立った。

前線での指揮はもちろん、會談や降伏を迫る際、その圧倒的な威圧は対峙するものを圧倒した。

統一戦爭の最中、薬式鉄弓が登場し、ますます甲冑の価値が下がると、逆に鉄弓を防ぐためにボスロの甲冑はますます大きくなり、やがて人間の郭がわからなくなるほど大きくなった。

やがてそんな重甲冑を著ることができるのは皇族だけとなり、鎧そのものや著る権利自を部下や屬國への恩寵とした。

だからこそ、皇族は甲冑の一族と呼ばれ、今回のような事態に際し、甲冑を著たものに応じるものは甲冑を著たものでなければならないのだ。

そんな會話をしていると、馬車が突如止まる。

ミルシャが何事か、と外に問うと、窓越しに顔を見せた隊長が、ガイス大橋を通るのでお靜かに、と言った。

ガイス大橋は帝都から一日のところにある橋で、迂回路のない子爵領と帝都を結ぶ唯一の道でもある。

下の川まで高さは50ダイス、大人の背丈50人分にもなり、もし落ちれば命はない。

しかも大橋とは言うが小さな子爵領へ向かう道のため、石が積まれたしっかりとした土臺と作りに反して道幅は狹い。

「転げ落ちるほどではありませんが、用心は必要です」

「すまんな隊長、よしなに」

「はっ。よし、隊を三班に分けるぞ! 先行、馬車護衛、後衛に……」

「いえ」

隊長の言葉を遮ったのはミルシャだった。グーシュと隊長が驚きの表を浮かべる。

「全隊で一列になって渡りましょう。萬が一に備える必要があります」

「……なるほど、襲撃を恐れておいでか? 」

「はい。ついでに言えば橋ごと僕たちを落とすことも警戒していました。あなた達が一緒なら、避けることが出來るかと……」

それを聞いて、グーシュは舌打ちをしてミルシャの肩を摑んだ。

しかし、隊長は不意に頬を引きつらせた。不自然だが、笑っているようだ。

「付き人として主を心配するその意気やよし。しかし考えが淺いですな。確かに我らがあなた達の敵対者の一員であるならば、なるほど我らごと橋を落とすことなどしますまい」

「そうです。失禮なのは承知ですが……」

「しかしもし、敵対者が不退転の決意を持っていれば我らごと落とすでしょう。もしくは我らが敵対者の仲間だとすれば、橋の真ん中で馬車を集団で落とすかも知れませんな」

「そ、それは……」

言いよどむミルシャの頭に、グーシュは拳を軽く落とした。

「馬鹿者が。兄上の裏切りの事を心配したのだろうが、この者たちが全員裏切り者ならばどのみち詰んでいるんだぞ……ごちゃごちゃ言わずにどっしり構えておれ」

「し、しかし殿下……」

涙ぐみグーシュの方を向くミルシャの頭を、グーシュは軽く抱きしめた。

「ほんとに馬鹿だな……昨日のわらわを見て考え込んでいたのか……悪いことをしたな……隊長殿、どうか気を悪く……」

「なんのなんの」

隊長は破顔して答えた。笑顔のつもりだろうが不気味だった。

「付き人の鑑(かがみ)ですよ、何を怒りましょうか。それに殿下、我ら一同気さくに接してくださる殿下を害することなどありません。事実今回の護衛は実力以上に殿下を慕うものを志願を募り集めました。ましては今は海向こうのとの初めての渉という一大事。派閥だのでくことではありません。それにですな……」

「「それに? 」」

主従の聲がきれいに重なると、隊長の笑顔は一層不気味になった。

「この大きな石橋を壊すような仕掛けなど出來ませんよ。この石橋を一気に壊すような仕掛けなど、殿下がここを通ることが決まってから用意することなど出來ませんよ」

隊長の笑い聲を聞きながら、深刻になっていたミルシャは赤面した。

結局、隊列は護衛と馬車を一度に渡した後、輜重隊を渡すことになった。

渡る前に馬車から顔を出したグーシャは、周りの兵士にお主たちも気をつけよ、と聲をかけた。ミルシャが周囲の兵の顔を見ると、なるほど、グーシュの言葉に破顔して喜びを表す兵たちばかりだった。

そしてミルシャが馬車の窓を閉じる。

それをみたグーシュは、高いところが苦手なミルシャに聲をかける。

「どうも高いところは苦手でな。こっちに來て手を握ってくれるか」

それにミルシャは、気遣いを知ってか知らずか「殿下は本當に高いところが苦手ですね」と答えると、グーシュの隣に移した。主従は固く手をつないだ。

瞬間、轟音が響いた。

誰もがそれを、大量の火薬が発した音だとは気が付かなかった。

薬式鉄弓しか火薬の使いみちが無く、そもそも火薬の生産を作硝丘と呼ばれる糞尿などをかけて硝石を人工的に生産する施設に頼り、ほとんど生産量が無い大陸において、誰もが聞いたことの無い程の大音量だった。

頑強さで知られたガイス大橋は、の數秒でグーシュとミルシャ、隊長。そして輜重隊五十を除く百五十の兵と共に濁流に飲まれていった。

帝都側の街道上では、突然の慘狀に兵たちが騒いでいる。

喧騒をよそに崖下では薬を炸裂させた男たちが功を喜んでいた。

「いかな化けでも、火薬を大量投することの威力は知らなかったようだな。そしてその乾坤一擲の策を、実行可能な火薬を準備していた我ら。カスティ殿下と我らの帝國をする心の勝利だ! 」

喜びに湧く男たち。しかしそのうちの一人が川を見ながら懸念そうにつぶやく。

「しかしこれでは死を確認できませんな」

川は川上で起こった雨で増水しており、馬車はおろか一緒に落ちた兵士の死すら見えなかった。

「この高さに水だ。よしんば生きていても流されて助かるまい。やつが空でもとべんかぎりはな」

そういって男たちは引き上げようと撤収の準備を行う。

不意に、上の兵士たちが再び騒ぎ始めた。

「なんだ? 」

黒盡くめの男たちもその喧騒に気がつく。その時、甲高い、キィィィィィィィっという聞いたことの無い、形容しようの無い大音量があたり一面に響いた。

「な、なんだ!? 」

「あ、あれを見ろ!? 」

濁流の真上を、甲高い音とすさまじい風を撒き散らしながら、炎のように揺らめく何かが下流に向かって飛んでいった。大きさはちょっとした家ほどもあるだろう。

「一何が起きているんだ? 」

男たちはすべからず混していた。無理も無い、今起きた出來事は彼らの理解をあまりに超えていた。

一部の兵は剣や弓矢を取り出し、意味もなく周囲を警戒しだした。いや、意味はあったが、あまりに遅く、力不足だった。

「あ」

間の抜けた聲と共に、武を構えた男たちが次々に倒れだす。

隊長の男が警戒すると、何やらパシュ、パシュという音がするたびに仲間が倒れていた。

とうとう、武裝した男たちが全員倒れ伏すと、あたりに人間程の大きさの炎がゆらゆらと現れ、周囲を囲む。

次の瞬間、丸い鉄兜を被り、足首まである外套を著込んだ達が現れた。こちらに黒い長方形の箱の様なを向けている。その先端には腕ほどの長さの剣がついていて、それを威嚇するように向けてくる。

そして流暢なラト語で話しかけてきた。

「両手を上げて、地面に這いつくばれ。早くしろ」

「畜生……本當に化けが出てきやがった……気の無い聲しやがって……」

「早くしろ」

「ああ、くそ刺すなよ、畜生……」

「特務4課β2より管制ジブリール、対象を確保。これよりルニ宿営地に護送する、送れ」

『ジブリールよりβ2、了解した。カタフラクトを一機派遣する、その場で300待機、送れ』

崖下で謎のと衛星軌道の會話が行われる中、崖上の喧騒は一段落し、早馬が帝都へと報告に向かった。

翌日の朝。

帝都にグーシュリャリャポスティ以下百五十名が橋の崩落のため行方知れずという連絡が行われた。

報告を聞いた皇帝は王笏を取り落し、皇太子は呆然と立ち盡くしたという。

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