《地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇は殺そうとしてきた兄への復讐のため、來訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝國を手にれるべく暗躍する! 〜》第4話 引きこもり生活からの卻
用語解説とかって需要ありますかね?
「賽野目さん! どういうつもりですか? この娘はいったい……」
一木が隣で目をつむったまま座るを見て、賽野目に問いかける。の首の後ろからは外部接続用のケーブルがびていて、一木の首筋に接続されていた。
「ああ、サガラ社の新型だ。シキは試作型の醫療SLだといったろう? この娘は言わば正式採用型だな。よくあるんだよ、SSの試作をSLで一旦作って試験するわけだ」
「だからシキに似てるんですか……けど、いきなり仮想空間に送り込んでくるなんてどういうつもりですか? 俺だってこのままじゃ良くないってことくらい理解ってますけど、今すぐにどうこうは……」
「いや、だからね。君にサプライズしたくてね」
賽野目の言葉に疑問を持つ一木。サプライズとは?
「どういうことですか? 」
「だ~か~ら~、君へのプレゼントだよ。シキが壊されて、さぞ落ち込んでいるだろうと思ってね。新しいパートナーだよ、データは君好みに設定したつもりだから大切に……」
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次の瞬間、一木は老人を突き飛ばしていた。ガタイのいい老人のが勢いよく吹き飛び、部屋のロッカーに突っ込む。毆りつけなかったのはほんのしの理が働いたのか……。
この時代の人間が時折見せる、一切の悪気も悪意もなくアンドロイドをあつかいするこういった対応に耐えられなかったのだ。ましてや一番大切な存在を失ったばかりだと言うのに。
「申し訳ありませんが必要ありません。この娘には悪いですが、自分にとって妻……パートナー足り得る存在はシキだけですので……」
「君は……本當にシキをしてくれたんだね……本當にありがたい……だからこそ、君にはその娘が必要だ……あっ」
瞬間、ロッカーにめり込んでいた賽野目の表が驚愕に変わった。そしてジェスチャーで何かを伝えようとしている……一何があるのだろうか? そして一木が賽野目が示す先を見ると……。
「一木……弘和さんは、わたしが必要では無いのですか……そうですか……」
ボロボロと眼球洗浄を垂れ流すの姿だった。
普通、アンドロイドはを顕にすることはあるが、特に軍用であるSSは、有限である洗浄をに合わせて流すことは殆どない。流すのは人間に自のを強く伝えたい場合だけだという。
一木もシキの涙を見たのは二回だけだった。
そして、一木はこの涙に打ちのめされた。
(……何をやってるんだ俺は……この娘たちをモノ扱いしているのは俺のほうじゃないか……不貞腐れたおっさんが、製造間もないこの娘に……)
自分のパートナーの元に連れてこられて、あってみたら相手が不貞腐れたロボットのおっさんで、その上いらないとまで言われたこの娘の気持ちを考えて、一木は二週間ぶりに冷靜になった。
賽野目博士の事にしてもそうだ。一木が冷凍睡眠されてから140年経っているのだ。
今の怒りにしても、結局の所江戸時代の人間が現代人の覚に怒り狂っているようなものだ。
現代の人間には、ある程度現代の人間にしか理解し難いアンドロイドへの態度や常識がある。その事を肝に銘じていかなければならない。もっとも、あまりに目に余る場合はその限りではないが。
兎も角、この娘のためにも好意は好意としてけ取ろう。一木はそう思いなおすと、泣いてるに向き合った。よく見るとかなり長がある娘だ。モデルのようだ。
「……大きいな……って見た目じゃないな」
「傷病者搬送時を見越して従來の歩兵型より大柄になっている。長は180cmあるぞ」
小柄だったシキの記憶との齟齬で妙な覚に囚われつつ、一木は訊ねた。
「ごめんよ、さっきのは……ちょっとした間違いだ。君の事を聞かせてくれないか? 名前は? 」
涙を蛇口をひねるように止めて、は答えた。
製造したてのアンドロイド特有の、極端な表現にし戸う。
「一木弘和のパートナー兼、一木弘和代將の副として製造されました、マナ大尉です。あなたは私を必要としてくれますか? 」
背後でニヤつく賽野目博士の視線を気にしながら、一木は頷いた。
どうも全て博士の手のひらの上だったようだ。とは言え頃合いだ。しは前向きにき出す、いいきっかけなのだろう。このまま腐って過ごすよりは、このマナというSLを大切にしてあげなければ。
「一木弘和だ。よろしく、マナ」
それから二週間。
この……二十世紀生まれの覚でいう所の二人目の奧さんと、一木はうまくコミュニケーションが取れずにいた。この上新しい職場で働くと思うと気が重い。
神的な疲労もあるが、今日はずっと現実空間にいて々疲れた。
一木は仮想空間ですこし休むことにした。
「マナ、俺はし仮想空間で休むよ」
一木としては自分だけ休むつもりだったが、マナはそう思わなかったようだ。
「では、私もご一緒します」
「いや、マナはを見張って……」
斷ろうとする一木に対して、首からケーブルを引き出し、一木の首筋に差し込もうとするマナ。しばし2mのロボットと180cmのが、窮屈そうに座る座席上でもみ合う。
數分後、折れたのは一木だった。
「……し眠るだけだぞ……」
「寢るだけですか……添い寢は? 」
「添い寢……したいのか? 」
「したいです。妻なので」
「妻だからか…………まあ、それくらいなら」
そして意識を視界の隅にある仮想空間のアイコンに向ける。GO VR OK? というアイコンが浮かび上がる。
OKの部分に意識を向けた瞬間、一木の意識は一瞬途切れ、再び気がつくと異世界派遣軍のシャトルから、こじんまりとしたアパートの一室へと移していた。
生の頃、一人暮らしで住んでいた部屋を再現した空間だ。ここでは一木は生ののアバターを得て、人間だった頃の覚をいくらか取り戻すことが出來た。
數週間前まではシキとあれやこれやした空間でもあった。
「はあ……よっこいしょ」
一木は窓際にあるクッションを枕に橫になった。季節の設定は春。疑似覚とは言え、今はもうじることの出來ない暖かな風をじることが出來た。
すると、り込むようにマナが隣に寢そべる。
現実では見下ろしていたマナが、仮想空間では數センチ背が高い。その覚がどうにも不思議にじられた。
「吸いますか?」
元を強調してマナが問いかける。
「吸わない……というか何をだ」
「では歌いますか? 」
「歌わなくていい……隣にいてくれればいいよ」
「はい。一緒にいますね」
そう言うと、マナは靜かに目を閉じた。
大したこともしていないのに、ドッと疲れがにじみ出てきた。
「俺の人生って……波萬丈すぎないか……なあ、シキ……」
機の上にある寫真に目を向けながら、一木は獨り言ちた。
これから更に、艦隊や師団の面々と會わなければならないと思うと気が重いが、願わくば気の合う同僚と部下であることを祈るしか無い。
今は亡き前妻の顔を眺めながら、一木は眠りについた。
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