《「気がれている」と王家から追い出された俺は、自説通りに超古代銀河帝國の植民船を発見し大陸最大國家を建國する。 ~今さら帰って來てくれと言っても、もう遅い! 超テクノロジーを駆使した俺の建國史~》ファースト・オーダー

『話はイヴからの通信で聞いてるぜ……?

しかし、オレ様の手でこんな風にした大地を元に戻すっていうのは、なんだか掘ったをまた埋めさせられるような気分になるねえ』

「……何?」

キートンから放たれた聞き逃せない言葉に、思わず訊ねる。

「その言葉からすると……もしかして、『死の大地』を作り上げたのは、お前なのか?」

『ああ、先代マスターの命令でな。

先代はあんたと違って、人間やその改良種の力だけでやるべきだと考えてたからな。

かといって、『マミヤ』を破壊するのも忍びないってんで、人が立ちれないような過酷な環境をこさえてそこに封印したのさ』

返事はカラッとした聲音であったが……。

俺にとっては、衝撃的な事実である。

――『死の大地』。

すべき祖國――ロンバルド王國がそのまますっぽりとるくらい広大なこの一帯は、一応は王國の領土であり……今では俺の領地ということになっていた。

一応、というのには理由がある。

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とてもではないが、生が生息できる環境ではないからだ。

水源と呼べるものはなく、常に熱気が立ち昇る大地はひび割れており、巖ばかりが突き出た不の土地である。

ここに生きるのは、奇跡的に適応したのだろう昆蟲類のみ……。

の腕に覚えがあり、並々ならぬ執念を燃やしていたこの俺だからこそ五年も探索行を続けられたが……。

並の人間ならば、三日ともたずにを曬すことであろう。

そのようなわけで、ここには一切、人の手がることはなく……。

ロンバルド王國の流刑地として、また、隣國たるファイン皇國との広大に過ぎる國境線として、機能していたのであった。

それがまさか、人為的に作られたものであったとは……!

いや、よくよく考えればこれは想定されてしかるべきことだった。

この五年で嫌になるほど理解したことではあるが、『死の大地』を構する地質は――なくとも王國側から見た場合――隣接していたハーキン辺境伯領のそれとあまりに異なりすぎている。

それこそ、神のイタズラか何かのように。

実際には、眼前で膝をつくキートンの仕事だったわけだ。

「キートンの言葉は全て事実です。

彼は先代マスターの命に従い、マスターが『死の大地』と呼んでいるのだろう一帯を作り上げました。

それは、逆説的に言うならば――」

『――當然、元に戻すこともできるってわけさ。

まあ、當時もかなりの年月を使ったんで、さすがに一朝一夕とはいかねえけどな』

イヴの解説を、キートン自が引き継ぐ。

――元に戻すこともできる。

そのひと言が、頭の中を何度も駆け巡った。

それはつまり、ロンバルド姓を失う前からの悲願であった、『死の大地』を緑地に変えるという願いが果たされるということ……。

これから先、俺がさねばならない――建國の礎たる、かな土地が手にるということだ。

「……ひとまず、キートンの力が見たい」

使命と野心を中で燃え上がらせながら、俺は努めて落ち著いた聲を放つ。

キートンの実力を知ること……それは必須事項だ。

ならば、ここはし無理な容を告げて限界を見てみよう。

「何も、今すぐ『死の大地』全域を蘇らせろなんて言わない……。

そうだな。今いる大空の直上。

そこに十分な水源を作ることは可能か?」

とりあえず人と呼べる者はこの場に俺ただ一人な現狀だが、將來を見據えるならば水源は必要不可欠である。

だが、これまで語ってきた通り……直上に存在するのは、ひび割れた大地ばかりが広がる不の荒野だ。

そこに水源を作り出すというのは、すなわち無から有を生み出すことに等しい。

とはいえ、かつての昔には存在したのだろうから……おそらくは、現在のハーキン辺境伯領か、はたまたファイン皇國領のどちらかから流れていた河川をせきとめ、現在の狀況を生み出したのだろう。

ならば、ここに水源を作り出すというのは、巨大な人工河川を作り出すということ……のはずだ。

いくら超古代技の産であっても、簡単なこととは思えぬ。

……初対面の人? に無茶振りをするのは心が引けるが、ここは一つ、心を鬼にして彼を試そう。

『そのくらいなら、朝飯前だ。

しかし、水源を作るだけでいいのか?』

「え?」

しかし、キートンの返事は実にあっけらかんとしたものであり……。

俺は思わず、間の抜けた返事をしてしまったのである。

『イヴから伝えられたオーダーじゃ、緑あふれる大地に変えてしいんだろ?

なら、水源とセットで、そうだな……。

とりあえず、半徑五百メートルばかりを緑地に変えちまおうと思うんだが、それで構わないか?』

「そ、それができるんなら、もちろんそれに越したことはないんだが……」

……ハッ!?

いかん、想定外の答えについつい圧倒されてしまった。

大言壯語、誠に結構であるが、こればかりは確認しておかなければならない。

いかなる事業においても、納期というものは付きなのである。

「……でも、お時間がかかるんでしょう?」

揺のあまり、口調が変になってしまった。

だが、これは聞いて當然のことだ。

言うまでもなく、植というのは育つのに時間がかかる。

これはあれだな。水源をどうにか……希的観測を含め一週間ほどでこさえたとして、そこにどこからか種を持ち込んで……。

うむ! どんな魔法を使っても最短で一ヶ月はかかると見た!

……それでも、十分すぎるくらいに神の業(みわざ)であるが。

『まあ、オレ様も久しぶりだからな……ここ、笑いどころだぜ? ロボットに過ぎた年月は関係ねえ。

さておき、ざっと三十分くらいってところか』

「は? 三十分?」

またも発してしまった間抜けな聲を無視し、キートンはトントン拍子で話を進めてしまう。

『よっしゃ! そういうことなら善は急げだ。 植える植の選定は、オレ様のセンスに任せてもらうぜ?

イヴ! オレ様の働きぶりをマスターに中継してやってくんな!』

「了解しました」

イヴが無表にうなずくと、その髪が今まで以上の速度で激しく彩を変える。

「――うおっ!?」

俺が驚き、飛びのいてしまったのも無理からぬことであろう……。

突如として眼前の空間が四角い額縁(がくぶち)のように切り取られ、そこへ『マミヤ』の外側……大空の様子が描かれたからである。

いや、これを描かれた、と表現してよいものか、どうか……。

それは絵畫などではなく……。

まさに今、この瞬間の様子をそのまま額に収めたかのようであった。

『それじゃあ、行ってくるぜ!』

言うが早いか……。

キートンの巨が――俺が地下へ連れてこられた時と同種の――不可思議なに包まれ、この格納庫から消え失せる。

すると、額が映し出す景の中に……『マミヤ』の外で雄々しく立ち上がるキートンの姿が現れたのであった。

「イヴ、さっきから気になってたんだが、これは?」

「はい、外の様子を中継しています」

「分かりやすく説明してくれ。

今起こっていることを、これで見せていると解釈していいのか?」

「イエス。

その解釈で間違いありません」

「そうか……!」

ようやく目の前で起きてる現象を理解し、これにかぶりつきとなる。

『久しぶりの仕事! はりきっていくぜ!』

額の中で、キートンが力強く両腕を掲げていた。

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