《「気がれている」と王家から追い出された俺は、自説通りに超古代銀河帝國の植民船を発見し大陸最大國家を建國する。 ~今さら帰って來てくれと言っても、もう遅い! 超テクノロジーを駆使した俺の建國史~》キートンの威力
果たして、そんなものが必要なのだろうか……?
準備運のようなものを終えた鋼の巨人が、右腕を突き出す。
『オラクル――――――――――ドリルッ!』
するとその瞬間、彼の右腕が――変わった!?
人間と同様、五指を備えていた金屬製の右手が……。
一瞬、流のように……あるいは不定形生(スライム)のように波打ちうごめくと、その形を変じさせたのである。
それは例えるなら――騎乗槍(ランス)。
右の下腕部全が、らせん狀のみぞを掘られた騎乗槍(ランス)に変形したのだ!
「あれがキートンの主裝備。
本人が言うところの、『オラクル・ドリル』です。
見た目通りの機能を持つだけでなく、回転と同時にナノマシンを散布することでより効率的かつ安全な掘削(くっさく)を可能としています」
「うん、何言ってるのか全く分からん!
というか、回転するの? あれ?」
「はい、ドリドリと回転します」
「ドリドリと、か……」
イヴの解説を聞きながら見ていると、なるほど。
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ドリドリ……というよりは、ギュイーン! と……。
キートンが変じさせた右下腕部全が、猛烈な勢いで回転し始めたのだ!
なるほど、これは騎乗槍(ランス)などという原始的な武ではない。
ドリルというらしい、俺の全く知らない武? だ!
『――とおっ!』
固唾を飲んで見守っていると、大きく膝を曲げたキートンが、巨に見合わぬ跳躍力を発揮した!
人間の垂直跳びは、そうだな……俺がやったとして、50センチから60センチがせいぜいであろう。
だが、キートンの跳躍力は……その全長をはるかに超える!
何しろ、全高30メートルはあるだろう『マミヤ』がすっぽり収まっている大空の天井部へ、たやすく到達したのだ。
一、天井を設けられていなければどこまで跳べるのか……想像することもできぬ。
だが、驚くべきはそれだけではない。
『――うおおおおおっ!』
雄びを上げながらドリルを天井に突き刺すと、キートンの巨が見る見るに土中へと飲み込まれていったのである。
そう……飲み込まれていった、だ。
ただ、を掘ったわけではない。
その証拠に、あれだけの巨がり込んだというのに……天井からは土くれ一つたりとも落ちてこなかったのである。
「キートンにかかれば、掘削(くっさく)にまつわるあらゆる事故は発生し得ません。
安全、確実に地上及び土中開発を遂行します」
「なるほど、本當にものすごいんだな……」
イヴの言葉に、全をわなわなと振るわせた後……。
一切の変化がなくなった額を見やりながら、はてと首をかしげる。
「それで……その……なんだ……。
俺はここから先、どうやってあいつの働きぶりとやらを見ればいいんだ?」
「どうやら、そこまでは計算していなかったようです」
イヴが無表に、無な言葉を告げた。
あまりにもあんまりな片手落ちぶりに、俺があ然としている中……。
キートンは、はりきって任務を遂行していたのである。
--
『やっぱり、土はいいぜ!
こうしてを掘っていると、生きてるって実が湧いてくる……!
もっとも、オレ様はロボットだけどな!』
誰にも見られておらず……。
誰にも聞かれていない中……。
キートンは小粋なジョークをえつつ、久しぶりの任務にまい進していた。
自慢のドリルを使い、土中を縦橫無盡に掘り進む!
何しろ、かつての昔……母船『マミヤ』を封印するために、地中を含む付近一帯を改造したのは自分である。
人工頭脳に刻まれた記憶を辿れば、せき止めてある地下水脈へたどり著くなど容易であった。
『地下水脈への到達確認!
これより凍結を解除し、地上への経路を作り出す!』
そうびながら、ナノマシンによる凍結処理を施されていた水脈を溶かし……たちどころに溢れた水流を導くべく、縦を掘り進める。
どんない地盤も、巖盤も関係はない。
自慢のドリルを用いれば、それらは豆腐のようにたやすく砕できた。
今のキートンは――土中を突き進むミサイルそのものだ!
地盤沈下などは起きぬよう、計算し盡くしたルートで地下を掘り進めること、しばし……。
『――とおあっ!』
ついに水流を導く経路は地上へ到達し、キートンは実に千年ぶり以上の太を全の裝甲で浴びることになったのである。
『へへ、いいもんじゃねえか……!』
勢いのまま、上空數十メートルの高さまで飛び出したキートンは、振り向きながらそうつぶやく。
いかんせん、土中を巡ってきたために、にごり切ってはいるが……。
地上では確かに、巨大な噴水のごとく水が噴き出し……久方ぶりに過ぎるうるおいを大地へ與えていたのである。
『さて、どんな植を植えてやろうか……!』
足裏のバーニアからプラズマ・ジェットを吹かして滯空しながら、しばし、思案した……。
だが、人工知能の思考は早い。
すぐに植えるべき植の種子を決定すると、ドリルと化した右手を地上へ向けたのである。
『改良種子弾――発!』
ドリルに掘られたから……。
無數の種子と超濃度の料が、地上へ向けて噴されていく……。
放たれた種子は、銀河帝國の伝子改良技を用いて作り上げられた人造品種であり……。
地上へ到達すると同時に水分と養分を吸い取り、たちまちを張り発芽し、をばし葉を生み出し……。
その、一部に至っては、自然界ならば樹齢數年はあろうかという立派な樹木へと長を遂げたのであった。
しかも、それらはただの樹木ではなく……。
張り巡らされた枝には、見るからにみずみずしいリンゴが実っている。
銀河帝國設立よりも、はるかに昔……。
キートンらにとってすら、伝説として伝えられている地球の神話にのっとったチョイスであった。
『どうだ、マスター?
実時間きっちり三十分!
オーダー通り、『マミヤ』の直上、半徑五百メートルを緑地に変えたぜ!?』
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「ああ……!
すごい……すごいぞ……キートン!
土中での途中経過は全く伝わらなかったが、とにかくこの結果はすごい!」
『マミヤ』を発見した時にも思ったことであるが……。
どうも俺は、興すると語彙力(ごいりょく)を失う傾向にあるらしい。
「『死の大地』に、こんなかな地下水脈が存在したとは……!
そして、それを地上に導いたお前の手腕は、見事のひと言だ!」
ともかく、経過が分からない間、イヴに教わっていたトランプなる遊を放り出した俺は、地上の様子を映し出す宙空の額へかぶりついていた。
額の中では、まだまだ土を含んでにごってはいるものの……書で読んだオアシスのごとく湧き出している水場と、その周囲にを張る草花やリンゴの木たちが切り取られている。
「イヴ! これ、実際に起こっている出來事なんだよな? な?」
「はい、キートンのカメラと同期した地上の映像です」
「ん……?
それって、キートンが見てるものをここに見せてるってことか?」
「イエス」
髪のだけは種々様々にきらめかせ……。
顔はあくまで無表なイヴに、問いただす。
「だったら、同じ方法で途中の働きぶりも見れたんじゃないか?」
「その場合、ただただ地盤や巖盤の映像ばかりが流れることとなります。
スキャンした土中の図を映すこともできましたが、理解が難しいと判斷しました」
「そ、そうか……気を使わせたんだな」
イヴの言葉に、うなずく。
「ともかく、キートンの実力は見せてもらった!
これはやれる……!
やれるぞ……っ!」
拳を握りながら、喜びに打ち震えている俺であるが……。
この時、全く予期せぬ一団がこちらへと近づきつつあったのである。
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