《「気がれている」と王家から追い出された俺は、自説通りに超古代銀河帝國の植民船を発見し大陸最大國家を建國する。 ~今さら帰って來てくれと言っても、もう遅い! 超テクノロジーを駆使した俺の建國史~》獣人たちとの初顔合わせ

地表のみならず、そこかしこに自生するリンゴの木さえも包み込むほどの大きさにが膨れ上がり……。

そ(・)れ(・)は、姿を現した。

――大きい。

皇國に焼き払われてしまった、獣人國王城の天守閣よりも巨大な建造である。

その全てが、見たこともない不思議な輝きの金屬で覆われており……。

遠目に見れば巨大に過ぎる怪鳥のようにも思える巨が、の中から徐々に徐々にせり出し……その巨を宙へ浮かべているのだ。

「……凰(ほうおう)?」

侍らに囲まれながらこれを見上げたウルカが、伝説にうたわれる霊鳥の名をつぶやく。

なるほど、これは祖國が興る際、初代獣人王の前へ姿を現し導いたというかの鳥を想起するに、十分な威容であった。

だが、伝説には、霊鳥が金屬で出來ていたなどとは一切語られていない……。

ならば、全く別の存在であるはずと、バンホーはしかとその姿を見據える。

見據えたところで、何ができるわけでもないのだが……。

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ともかく、巨大な金屬怪鳥は、上空十メートルばかりのところで上昇をやめ、ふわりと滯空しはじめたのであった。

恐るべきは、いかなる原理でそうしているのか……一片の風さえも生じていないことであろう。

底部からあの球と同じが発されているのを見るに、それがこの巨を浮き上がらせていると見てよかった。

気がつけば、泉を中心に広がっていた巨大なは消え去っており……。

それに包まれていた草花やリンゴの木は、何事もなかったかのように元と同じ姿を現す。

顔を見合わせたウルカたちは、間抜けに口を開けないよう注意しながら、上空を見上げるばかりだ。

『せっかくの木々をなぎ倒したくないのでな……。

し、移させてもらうぞ』

金屬鳥から、先ほどと同じ聲が響き渡る。

ならば、これなる存在の正は鳥ではなく、乗り……。

さながら、宙に浮かぶ巨大な船と呼ぶべき存在なのであろうか?

もっとも、宙に浮かぶ船などという馬鹿げた存在など、聞いたこともないが……。

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『船』は、宙空をるようになめらなかきで、ゆっくりとその場を移し始める。

人間が歩くほどの速度で移する『船』は、泉を中心とした緑地の端……見飽きた荒野が広がっている地點まで移すると、また徐々に徐々に……その船を降下させた。

――プシュリ。

……と、空気の抜けるような音が響き渡る。

それで『船』はそのきを停止させたが、その代わり、左舷部の一部が展開すると、そこからスルスルと階段がびてきた。

「バンホー……」

「ウルカ様、行ってみましょう」

忠臣に力強くうなずかれ、ウルカを中心とする一団は階段の前まで移する。

果たして、ばされた階段の最上部……『船』の口に、その青年は立っていた。

「出迎え、謝する!」

多勢へ話しかけることへの慣れをじさせるその聲は、例の球や『船』から響いてきたものと同一である。

その裝いの、なんと奇抜(きばつ)なことか……。

種族は、ごく當たり前の人間……この大陸で最も數多い種族である。

しかして、著ている裝束は、おそらく大陸のどこを探しても見つからぬものだ。

皮革(ひかく)とも、植の素材を用いた布地とも異なる。

奇妙な沢の服は人の手によるものとは思えぬほど見事な製(ほうせい)であり、青年のへぴったりとりついているかのようだ。

意匠もまた、見たことがない獨特のものであるが……どことなく洗練された、紳士然とした品格をじさせる。

これなる服に包まれた青年の容姿は、どことなく高貴さをじさせるものだ。

しかし、長年ろくな手れをしていなかったかのようなざんばらの黒髪といい、不ひげといい、奇妙ではあれど整った服裝とはどこか乖離(かいり)をじさせた。

総じて、奇抜(きばつ)にして奇矯(ききょう)。

ウルカはおろかバンホーですら、これまで出會ってきた人間のくくりにはれられぬと直する青年だったのである。

青年が階段に一歩足を踏み出す……。

すると……おお……どういうことか?

まるで擬態型魔法生(イミテーター)か何かのように、階段が勝手にき……青年を地面まで運び始めたのだ。

階段が運ぶのは、青年のみではない……。

そのすぐ後に、をも運んでいた。

こちらもまた、奇妙なである。

年の頃は、ウルカよりわずかに上であろうか……。

種族は青年と同じく人間のように思えるが、腰までびた髪は種々様々な合いのを発しており、しかもそれは常に変化して留まることを知らぬ。

服裝は青年のそれを婦人用に仕立てたようなもので、作りめいて整った顔は、まばたき一つせず階下のウルカたちに向けられていた。

髪のや、まばたきせぬことと並んで奇妙なのは、彼の上とほぼ同じ大きさの箱を背負っていることだろう。

服に使われている布地と似たような素材で作られたその中に、何がっているのか……それを推し量る(すべ)はなかった。

ついに青年が地面に降り立ち、続いて降り立ったがその傍らに控える。

そして青年は口を開くと、堂々とした聲でこう名乗ったのだ。

「我が名はアスル! ロンバルド18世の命に従い、この『死の大地』を治める者!

招かれざる來訪者たちよ、名と目的を伝えられよ!」

その瞳が、まっすぐにウルカを見據えていた。

--

久しぶり……実に五年ぶりに王族らしい名乗りを上げた俺は、一団の中心人らしきを見やる。

実際に指揮しているのは、すぐそばへ控えている初老の――サムライだろう。

だが、一見しただけでただならぬ力量をじさせる彼に守られているそのこそ、獣人たちの中で最も分が高いことを昔取った杵柄(きねづか)で見抜いていた。

おそらくは、ファイン皇國に攻め滅ぼされた獣人國の貴人……それもかなり、分が高かった生まれのだ。

年若いながらも高貴さをじさせる顔立ちといい、『死の大地』をここまで歩んできてなおつややかに輝く銀髪といい、王城の舞踏會に招いたならば注目の的となること疑いなしである。

獣人を実際目にするのはこれが初であったが、キツネの特質を備えた頭頂の耳がなんとも言えずらしかった。

著ている服は薄く末な……獣人國伝統の帯でまとめるそれであったが、生まれながらに持ち得た貴(たっと)き魂がそれで隠せるはずもない。

さて、高貴な生まれなのは間違いないが、果たしてどのような分なのだろうか……。

まさかまさかとは思うが、滅ぼされたはずの獣人國王家が隠していた最後の生き殘りだったりしないだろうな?

その場合、事態は果てしなく面倒なことになるのだが……。

ともかく、努めて堂々とした立ち姿を曬しながら俺は向こうの返禮を待った。

余談だが、奪われた姓こそ名乗らなかったものの、俺の名乗りは全て現狀の事実である。

……まあ、獨立して反起こす気満々なんだけどね。

果たして、初老のサムライ――オオカミのごとき獣耳を備えた彼が、一歩進んで膝をつく。

同時に、以外のサムライ全員がそれに従い、膝をついた。

ただそれだけの作でも、全の練度をじさせる……。

そして初老のサムライは、きっと顔を上げてこう名乗ったのだ。

「アスル殿! 丁寧な名乗り謝いたす!

拙者は獣人國の侍大將バンホー!

そして、こちらにおわすが……」

バンホーなるサムライがに向けて片手を掲げ、その名を伝える。

「……獣人國の姫君、ウルカ様にござる」

獣人國の姫君だった、ウルカ様にござるか。

……さすがは、長年探し求めた超古代文明のを発見した日だ。流れというものが來ている。

どうやら俺は、一番面倒で厄介な場合を引き當てたようだ。

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