《「気がれている」と王家から追い出された俺は、自説通りに超古代銀河帝國の植民船を発見し大陸最大國家を建國する。 ~今さら帰って來てくれと言っても、もう遅い! 超テクノロジーを駆使した俺の建國史~》エルフを救え!

ベルクの執務室から飛び降り……酒がっていたせいで落下の制に失敗し、って転んだ後。

くじいた足を魔で癒した俺は、イヴが待つちょっとお高めの宿へと帰還を果たしていた。

「イヴえも~ん!」

「どうしたんだい、アスルび太君?」

「語呂悪いなっ!?

ともかく、一つ問題が生じた」

そして室るや否や、かくかくしかじかと先ほどのやり取りを説明したのである。

ちなみにだが、この説明をけていたのはイヴのみではない……。

攜帯端末のテレビ通話機能を利用し、隠れ里の待機組にも話を聞いてもらっていた。

『魔らがそれほどの徒黨をすとは、獣人國においても例がありません』

『いかにも……。

拙者が経験したいかなる戦場よりも、過酷なものとなるでしょうな』

端末のディスプレイに映された映像には、ウルカら待機組がずらりと居並んでいる。

こちらは攜帯端末越しに會話しているが、向こうではブリーフィングルームに備わった通信機能を使って會話しているのだ。

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……余談だが、実際に使ってみると、この攜帯端末って死ぬほど便利だな。

『しかしながら、義を見てせざるは勇無きなり!

エルフなる種族は、話に聞けどお目にかかったことはありませんが、魔はあらゆる種族にとって共通の敵……!

まして、これを討ち果たすことで此度(こたび)の目的が果たされるとならば、これぞまさしく一挙両得!

アスル様! 我らサムライ一同、ここは一所懸命となって戦いまするぞ!』

固く拳を握りながら、バンホーがそう力説する。

……サムライたちが持つ義俠(ぎきょう)の心、まことにあっぱれという他にない。

彼らサムライは俺と同様、『マミヤ』から得られた裝備を用いての訓練を積極的に積んできている。

その実力は現在の大陸において……一騎當千とはいかずとも、百の兵には匹敵することであろう。

これが意味する事実は一つ!

……全然、數が足りないのである。

まるっきり! 數が! 足りないのである!

いくらこっちが超兵で武裝しているとはいえ、報告通りの數を相手取るならこの十倍はしいところであった。

「シミュレーションしました。

ここにいる全員で助けに駆けつけた場合、全滅することになります」

「まあ、バンホーたちのことは頼りにしているが、そうなってしまうな。

質の暴力で補うにしても、限度というものがある」

ハッキリ言い切るイヴに苦笑いしながら、これには同意を示す。

びいきを差し引いてもサムライの心意気は素晴らしいが、現実は心意気だけでどうにかなるものでないのは、彼らの祖國が示していた。

『むう……』

せっかくあげていた意気を折られ、さりとて反論も見つからずバンホーらが押し黙った時だ。

ディスプレイの片隅にウィンドウが開き、別の人が顔を出す。

『なら、マスター。

オレ様たちがどうにかしようか?

人間や改良種を傷つけることはできないが、あんたらが言うところの魔は話が別だ。

遠慮なく、祭りに上げてやれるぜ?』

キートンである。

なるほど、彼のみならず、『マミヤ』が誇る三大人型モジュールの威力たるやすさまじいのひと言だ。

それこそ、一騎當千どころか一騎當萬……いやいや、一騎當億の働きをしてくれることだろう……。

だが、これは、

『わたしは反対です。

キートンさんたちの力はすさまじいですが、すさまじすぎます……!

わたしもバンホーと同様、直接の面識はありませんが、エルフという種族の暮らしぶりは聞き及んでおります。

此度(こたび)の戦(いくさ)は、彼らの生活圏を守る戦い……。

らをなぎ払うと同時に森までなぎ払ってしまっては、これは援軍の皮を被った兵糧攻めのごとき所業です』

『は、ハッキリ言うねえ……姫さん……』

ウルカに論破され、キートンの聲音(こわね)が小さくなる。

我が賢い嫁にかかれば、超古代の産もかたなしだな。

『む……ですが、キートンどのなら破壊された森を再生することもあたうのでは?』

『そうか! その手があったぜ!』

今度はバンホーがそう提案し、キートンも勢いづく。

……が、俺もウルカも、その程度のことは想定した上で話をしているのだ。

「それはなしだ。

エルフらの心象(しんしょう)というものがある……。

破壊した後、元通りにしたところで、はいそうですか、ありがとうございますとはならんさ。

彼らが守りたいのは、今現在の暮らしであり森なのだからな」

腕組みしながら、俺はその提案を卻下した。

「マスター。

ここは皆さんに、マスターの考えを示すべきだと思われます」

ここで話してるのはのみなので、いつも通りマスター呼びとなったイヴに、そううながされる。

「そうだな……」

俺はそう言われて、自分の考えを話すことにした。

実のところ、何をどうするかの絵図はベルクと話していた時點ですでに完している。

さっさとそれを話さなかったのは、バンホーを筆頭になんか勝手に盛り上がってしまったからであり……。

俺がそれを良しとして、靜観していたからであった。

何事も、自分の力で考えてもらうことが大事だからな。

無論、中にはそれを苦手とする者もいるし、そういった人間にはさっさと指示を與えてやった方が、本人も安心するものだが……俺の配下たちはそうじゃない。

その意気も志(こころざし)も高い、得がたき仲間たちだ。

最初は厄介な一団が迷い込んできたと思ったものだが……事によれば、いや、間違いなく……『マミヤ』以上の拾いであると言えるだろう。

どれだけの超技で造られていようと、しょせん、道は道に過ぎぬ。

人間以上の寶など、この世には存在しないということだ。

それはそれとして、バンホーとはもう二度とく〇おくんを遊ばないけどな!

「俺の考えは、基本的にバンホーと同じだ。

我ら全員で迅速(じんそく)にかの自治區へ乗り込み、これを救援する……」

『ほう! そうおっしゃって下さいますか!?』

一生一人用ゲームで遊んでいて頂きたいサムライが、我が意を得たとばかりに勢いづく。

「とはいえ、戦うのは我らだけではない。

そうした場合、どうなるかはイヴが語ってくれた通りだ。

だから、だ……」

そこで一度言葉を區切り、攜帯端末のディスプレイに映った全員を見回す。

そしてニヤリと笑いながら、こう言い放ったのである。

「古い人が言ったように……みんなで、戦おう」

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