《「気がれている」と王家から追い出された俺は、自説通りに超古代銀河帝國の植民船を発見し大陸最大國家を建國する。 ~今さら帰って來てくれと言っても、もう遅い! 超テクノロジーを駆使した俺の建國史~》隠れ里へようこそ!

――奴隷。

端的(たんてき)に言えば金で自を売り、一般的な階級社會の外側へそのを落とした者たちの総稱であるが……。

実のところ、一般的な労働者との違いは曖昧(あいまい)なものである。

確かに、王國が定めた法によれば、明確に最下層の分として位置づけられているが……。

そうは言っても、一部の例外を除けば基本的に同じ國で生まれ育った人間たちだ。

これを極端にさげすんだり、人ならざる者がごとく扱う者などそうそういなかった。

仕事の容も、主に力仕事を任されてはいるが、それはこの時代においてごく一般的なことであり……。

者からすれば、せっかく大枚をはたいて買った奴隷を使いつぶすなど言語道斷であり、力盡き死するまで働かさせることも、極度の飢えに悩まされることもそうはない。

実の所、寒村で一家の臺所事をひっ迫させるよりは、口減らしとしてそのを売り、都市部で奴隷として働いた方がよほど上等な生活ができるのだ。

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そのようなわけで、ロンバルド王國における奴隷制度というものは極めてゆるい分制度であり、都市部と地方との経済的格差をある程度解消させる役割も擔っていたのである。

だが、それでも奴隷と一般的な労働者との間には一つの大きな違いが存在した。

奴隷制度の仕組みを考えれば、ごく當然のことではあるが……。

自由な分の労働者と異なり、奴隷には買い手を選ぶ権利も仕事を選ぶ権利も存在しないのである。

ハーキン辺境伯領において名うての奴隷商として知られる男に、今回購された五十人ばかりの奴隷たち……。

彼らはその事実を、痛いほどに理解することとなった。

別は全て男

年齢は、十代後半から二十代後半の新人奴隷たちであるが、を落とした事はそれぞれに異なる。

そんな彼らであるが、共通の見解として、この奴隷商に買われたのならば領都ウロネスで、水夫なり人夫なりとして働くことになるのだろうと思っていた。

しかし、その予想はあっさりと外れることになる。

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奴隷商いわく、

――お前たちには、『死の大地』との境界付近で開拓作業に従事してもらうことになる。

……とのことであった。

まったくもって、予想外の仕事である。

開拓作業というだけならば、分からないでもない。

ご領主様の深謀遠慮(しんぼうえんりょ)など奴隷落ちするような人間には推し量る(すべ)もないが、人間の生活圏を広げますます領地を栄えさせようというのは子供でも分かる理屈だ。

しかし、それをあえて『死の大地』との境界付近で行おうというのは……。

他に適切な候補地などいくらでもありそうなものであり、これには首をひねる他になかった。

だが、いくら首をひねろうが疑念を投げかけようが、しょせんは奴隷分……。

拒否権など、存在するはずもない。

奴隷の宿命として彼らの肩には焼き印が押されており、もし、この差配に不満を覚え逃げ出したりなどしようものなら……。

こればかりは王國の法も厳しく、その場で切り殺されたとて文句は言えぬのである。

そのようなわけで……。

結局はバカなエルフの勘違いだったという魔の大発生騒も収まったある日、奴隷たちはハーキン辺境伯の部下だという騎士數名に率いられ、件(くだん)の開拓予定地へと旅立ったのであった。

このように些末(さまつ)な任務を任せるのが信じられぬほど練揃いの騎士たちは、人格的においても優れており……。

旅は極めて順調で、一行はなんの問題もなくその地へ到著する。

到著して、驚いた。

――何もない。

……からである。

主要な河川から距離があるために放置されてきたのだろう……。

その場所にはただただ、未開の地が広がっているだけであり……。

これからここを開拓しようというのに、拠點を作るための資材も道も何もかも……一切が存在しなかったのである。

代わりにいたのは、ただ一人の男のみ。

「やーやーやー。

よく來てくれた。

私がこれから諸君らを率い、新たにかな村を作り上げるものである」

なんとも言えず、うさん臭い男であった。

頭には細い布を巻きつけて髪を隠しており、そんなものかけて視界が塞がらないのか心配になる黒ガラスの眼鏡をかけている。

聲は意外と若々しいものであったが……。

顔を隠したい事があるのは、明白だ。

著ている服こそごく一般的な旅人のごときものであったが、それが逆に怪しさを増す結果となっている……。

「――辺境伯の命に従い、奴隷たちの輸送を完了しました。

それと、伯からこれを渡しておくようにと」

「お、すまんな。

いや、前回ウロネスに行った時はカミさんへの土産を買う暇がなくてね」

騎士から何かの包みをけ取った男が、それを大事そうに抱えた。

そして、真面目な聲を作ると騎士たちにこう告げたのである。

「伯からどのように言われているかは分からないが、諸君らもこの任務を不審に思ったことだろう。

だが、誓って義に反するようなことではなく、將來、ますますこの地を栄えさせるための布石であると理解してしい」

そう言いながら、懐をまさぐって油紙の包みを取り出し騎士の一人一人へ手渡していく。

「まあ、今はこれで味い酒でも買ってごと飲み込んでおくことだ。

それと、伯のことをよく助けてやってくれ」

見ようによっては、何かの賄賂がごとく見える景である。

だが、その言葉にも態度にも有無を言わせぬところがあり……。

まるで、王族か何かがそう言い聞かせ、褒を與えているかのようにも思えてしまうのだ。

「さ、それでは行った行った」

「――ははっ!」

ひらひらと手を振る男に見送られ……。

騎乗した騎士たちが、その場から駆け去って行く。

その姿が遠く見えなくなったことを確認すると、男は何も言えず立ち盡くすのみの奴隷たちへ向き直ったのである。

「さて、諸君らへ命じる記念すべき最初の仕事であるが――」

もう、顔を隠す必要はないということか……。

男が黒ガラスの眼鏡を取りながら、そう言い放つ。

だが、彼の顔をよく確認することはできなかった。

「――まずは眠れ」

どこからか取り出した、不気味な面を被ったからである。

いや、それだけではない……

男は同時に、金屬製の筒を放り投げた。

奴隷たちの中心へ落ちた筒の両側から、猛烈な勢いで桃の煙が噴き出していく!

とっさのことで、息を止めることもできずそれを吸い込んでしまうと、猛烈な眠気が襲いかかってきた。

これは何かの――魔!?

だが、この人數を一度に眠らせるとは……。

「……済んだ。

迎えをよこしてくれ」

薄れゆく意識の中で、男がそう言っているのを聞いた。

--

そして、目を覚まし……。

生まれて初めて目にする獣人らに引き立てられるように、奇妙で巨大な乗りから降りた彼らは、それを目にした。

こんこんと水が湧き出る大きな泉を水源とし……。

見るからに整備された、小規模な田園がその片隅に広がっている……。

瞠目(どうもく)すべきは、麥に似ていなくもない作を捕食しているそ(・)れ(・)であろう。

全てが鋼鉄で形作られた、牛よりも大きい箱……。

付きのそれが意思を持つかのように振る舞い、たわわに実った作を魔よりも兇悪な牙で噛み砕き飲み込んでいるのだ。

そのそばで妙な板を持つ獣人が平然としていることから、これは人に害する存在ではないのか……?

いや、そもそも奇妙奇怪といえば……。

眠らされた自分たちが乗せられていた、この巨大な鳥とも船とも呼べる存在は一……?

「隠れ里へ、ようこそ。

諸君を歓迎する」

田園の近くにいくつか建てられた、見たこともない造りの長屋……。

ちょうど、奴隷たちの人數分ほども部屋があるだろうそれを背にしながら、頭の布も外した先の男が両手を広げる。

この隠れ里というのが、何を目的とし、どのような手段で築かれたのかはまったく分からない……。

まして、連れてこられたここで何をさせられるのかも……。

だが、奴隷たちのに、年期にじたときめきにも似たものが湧き上がっていった……。

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