《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第1話 新兵

緑深き森と、なだらかな草原が広がっている。の乾いた風が吹いている。

その草原の一角に、人影が5つ。十代半ばくらいの達だ。皆それぞれ、その中學のものと思われるバラバラな制服姿である。達は皆腰を落として、一心に足もと一面に広がる植を採っては、傍らのカゴにれていく。

菜摘みだ。初夏の日差しはもう強い。達は、日を選びながら、菜摘みを続けている。が降り注ぎ、風が木々を揺する音と、小鳥のさえずり、それしか聞こえない、のどかな風景であった。――――が。

ドォォォォォン!!

遠方で大きな音がした。長く響く音だ。5人のはうさぎの様に一斉に顔を上げ、不安げな表を浮かべる。森の方、木立の隙間から、音のした方角に土煙が立つのが見えた。

「逃げよう!」

1人がそう言った。

「Botが出たんだよ!」

もう1人が続けて言った。

達は聲を上げながら一斉に森を離れ草原側へ走り出す。その先の緑の中に、全長10m程の白亜のクルーザーがあった。

「急いで」

「早く早く」

5人は乗り込むと、その中の1人が運転席に勢いよく駆け込み、エンジンを起する。らかな駆音と共に、クルーザーは空中に浮かびながらき出す。

快調に加速し、森の中を駆け抜けようとしたその剎那。

クルーザーの後方の草木が弾け飛んだ。

先ほどの音と煙の正、Botがその姿を現した。

全長は6m程の球形、クリームの樹脂のような裝甲に、幾つかの黒い、スリットがっている。本から四方に架臺の様なアームがびていて、その先端には浮遊裝置、フローターが取り付けられている。そのフローターで木々の合間をフワフワと浮遊しながら、メインカメラで逃げるクルーザーを捉え、追いかけていく。

「やばいよ。追いつかれる」

Botがクルーザーに迫る。本下部から金屬製のアームを展開し、その先鋭な腕先をクルーザーに向けてばしてくる。

「きゃあああ!」

Advertisement

Botの腕がクルーザーに屆こうかというその剎那、巨大な落下が二者の合間に割ってった。

響き渡る轟音と飛び散る砂礫。

その轟音の中心にいたのは、肩高15m程の人型の兵だった。

その人型はゆっくりとを起こすと、その頭部がBotを視認する。

國鉄の骨格に白銀の裝甲、左手は巨大な四角盾と、その右手には自長の2倍はあろうかという長さの、長柄の槍を裝備している。

中型クラス(ケントロン・イソス)の人型戦闘兵

DEAMETER(デアメーテル)だ。

バババッ!!

Botが3條のビームを発した。白銀の巨人は避けるでもなくそれを肩でけ止める。命中したビームは裝甲の表面で弾かれ、の粒子が巻き上がった。

「みんな! 大丈夫?」

見上げる程の白銀の巨の、その大きな、壁面のような背中でクルーザーをかばいながら、DMT(デアメーテル)に乗る年、咲見(さきみ)暖斗(はると)が聲をかけると、暖斗のインカムは一斉に黃い聲で満たされた。

「あ、あのう、あ、ありがどうござ‥‥」

「ナイスフォロー。暖斗くん。助かったよぉぉ」

「ちょっと、ちなみさん、いちこのセリフに食い気味に來ないでよ!? ほら、いちこ。ちゃんと咲見さんにお禮言いなよ」

「え~。ちなみが悪いのぉ? 詩(うため)ちゃん」

「いいから。ちなみさん、ちゃんと運転して」

「まずは安全圏まで行くっス。咲見さんが戦えないっス」

目の前のBotを牽制しながら、達のそんな聲を耳だけで聞いて。

クルーザーがこの場から、十分に離れて行くのを確認して、暖斗はあらためて槍を構える。Botは「3機現れた」と聞いていたが。今視認できるのは目の前の1機のみだ。

「暖斗くん、他に2機いるけど、距離がある。合流される前にコイツを叩こう」

あの5人とは違うの聲と共に、灰の3 m程の球が、構えをとる暖斗のDMTの右側にフワフワと現れた。

Botに似てはいるがこれはKRM(ケラモス)、暖斗のDMTをサポートするドローン。

Advertisement

作しているのは、岸(きし)尾(お)麻(ま)妃(き)だ。

麻妃のサポートドローンは、暖斗のDMTのまわりをつかず離れず浮遊する。

「侵角度は100點満點。AI最善手だよ。上手くクルーザーを逃がせたね」

麻妃はし呑気な口調で言った。

「じゃあ、暖斗くんの初陣ということで。シミュ通りにやってみようか?」

「うん」

「重力子エンジンは異常ない?」

「うん、OK。正常出力だよ」

「よっし。じゃあ、回転槍(サリッサ)の刃部(じんぶ)回転を始めるよ? シールド殘量はアナウンスするから」

「わかった」

ゴリゴリゴリ‥‥‥‥ガリガリガリガリ‥‥‥‥

暖斗の答える聲と共に、回転槍(サリッサ)の回転が始まった。「サリッサ」というのはDMTが持つ長柄の槍の名稱だ。長い柄の槍で、その先端に半明の三角錐、先が尖ったドリル――刃部(じんぶ)を持つ。複雑な多面の角に刃が付いていて、それを回転させながら、戦闘は行われる。

Botがビームを撃ってきたが、暖斗は上手く躱した。

その間に、サリッサの回転が速まっていく。

「麻妃(マッキ)。まだ?」

「もうちょい。もうちょい回避してて」

そんなやり取りの間に、サリッサの刃部はその回転を増し、周囲に獨特の回転音が低く響き渡る。

「よし。暖斗くん、シールド殘量十分。サリッサ刃部の回転數が規定値を超えた。突撃(アサルト)して」

「了解。‥‥‥‥突撃(アサルト)!」

麻妃がそう言い終わるのを待たずに、暖斗機は風になった。

鋭く突撃した槍の一閃が、Botに突き立てられていた。

ガギン!!

視界が一瞬炎でふさがり、それが晴れると、大きく裝甲を削られたBotが目にってきた。

暖斗はそのまま槍に力を込めていく。

「おお! 暖斗くん、芯を食ってる。いいじ!」

Botから火花が飛び出てきた。回転する刃が複合樹脂の裝甲を研削し、フレーム、部骨格に達した証左だ。火花がまるで噴き出るのように、四方へ飛び散る。

Advertisement

「うおおお!!」

暖斗がさらにもう一段、槍を突き込む!

部を大きく穿たれたBotは、力なく地に落ち、スリットかられていたも消えた。

1機撃破だ。敵の殘骸からサリッサを引き抜く。と同時に、麻妃の聲がした。

「2機來てるよ! 5時の方向!」

「了解!!」

暖斗はそのまま引き抜いたサリッサを水平に薙いだ。右後ろの方向だ。

赤紫の槍先が一閃!!

背後から近づいていたBotはその槍先に打ちのめされ、巖壁に激突する。

Botというのは、AI搭載の移だ。前の戦爭の時に地雷のように、そこら中に敷設された。そのの3機が、暖斗たちの戦艦か、菜摘みの娘たちに反応したのだろう。

あらかじめ力された行パターンに沿ってく。全長6mという大きさから見て、小型のタイプだ。

普通に戦えば、中型クラスのDMTに敗ける要素はないが――――。

「3機目は7時。距離とってるよ。砲撃注意」

3機現れたBotの、最後の1機は暖斗に近接せず、一定の間合いでフワフワと浮いたままだった。1機目が予想外に早く落とされたので、消極的な選択をしたのかもしれない。

果たして、3機目は麻妃の予想通り、ビームを放ってきた。暖斗は左右に機して、弾を躱していく。何発かは盾や本に當たったが、裝甲の表面で弾かれての粒子に変わった。

砲撃を避けながら、上手く3機目のBotに近づいて、回転槍の一撃をれる。

バギン!!

急所に槍を打ち込まれたBotは、部機を四散させて煙をあげた。

「ビームによる裝甲損傷なしだよ。うん、これはイケそうだね。さすが暖斗くんだ」

麻妃の弾んだ聲が、暖斗の耳のインカムからってくる。

「シールドがちゃんと機能してるよね」

暖斗も答える。

暖斗機は長方形の巨大な盾を持つ。そしてそれとは別に、DMTのエネルギーを使って生み出される対學兵用の防システムが「シールドバリア」。先ほどから被弾したビーム砲を、DMTの裝甲表面での粒子に変えているのがそれだ。

巨大盾も含めて、DMTの全を覆っている。シールドを生み出すエネルギーが無くなるか、張られたシールドを上回るエネルギー量のビームに被弾するとシールドが割られ、本にダメージがる。

ちなみに、サリッサの回転刃のような理攻撃は、シールドでは防げない。あくまで學兵のみだ。理防の「盾」、學兵の「シールド(バリア)」この2つを使いこなしながら、戦闘が行われる。

「なんかさあ、母艦の方で盛り上がってるよ。『#暖斗くんカッコイイ』とかで」

「ええ? 麻妃(マッキ)。全回線(チャット)開いてんの? なんで?」

「そりゃあ、ウチがこの戦闘データ、リアタイで送信してるから。通信アプリで」

「よくこの距離で送信できたね」

「今さ、クルーザーのリスクオフで戦艦が進出してきてて。いやあ、みんな心配してたんだよね。Bot3。暖斗くんが排除できない、となると、この先の旅が難しくなるし、やっぱDMT戦闘は危険がともなうじゃん?」

「‥‥『パイロット枠』で選ばれたのは僕だけなんだし、16人中男子は僕だけなんだから、いいよ、こういう事は僕がやるから、あんまり気にしないでって言っといて」

麻妃は、大げさに聲をあげる。

「聞いた? 聞きました? 皆さん。どうですか。ウチの馴染みは男気があるでしょう?」

ちょっとディスられてる気がするが。

「ちょっと待った! ‥‥僕の音聲まで聞こえてんの?‥‥そっちに」

「うんうん。みんな謝してるって。『どうかご無事で帰ってきてね』って。あ、音聲だけじゃなくって、映像も送ってるから。ウチのKRM目線(カメラ)のヤツ」

「な‥‥!? 早く言ってよ」

暖斗は赤面した。今まで初陣に上手く集中できていたハズだけど、15人の子に注視されていたとすると、やはり気恥ずかしい。だいたい自分は、注目されるとしくじるタイプだ。

もう戦闘は終わりかと思われたが、生き殘りのBotが砲撃をしかけてきた。慌てて躱す暖斗。さっき巖壁に叩きつけてやった2機目が復活したようだ。

「シールドダメージ微小。暖斗くん。突撃(アサルト)できるよ」

「うぉ‥‥!」

麻妃の聲と同時に、回転槍を構えて突撃した――――。が、しかし。

Botに避けられてしまった。かなり華麗に‥‥。

サリッサの三角錐の大きな刃部が、空しく空を切る。

めっちゃ恥ずかしい。

とりあえず後進(バックステップ)して間合いを取った。

「‥‥暖斗くん。今『うおおお』って雄びあげようとして、ためらったでしょ」

「お、俺、雄びなんかあげねーし‥‥」

「いや、さっき言ってたじゃん。普通に。‥‥あと一人稱が『俺』になってるよ。そんなに子の目線を意識しなくていいって」

「べ、別に、してね~し。っていうか、そういうイジリは戦闘中は‥‥」

「あっ來た!」

先程のBotが、距離をつめながらビーム撃をしてきた。暖斗のMDTは盾でそれを防ぎつつ、敵の懐に飛び込んで長槍を繰り出す。突槍が何度か空を切ったが、かすめる刃部の回転が徐々にBotの裝甲を削っていき、敵の反撃は止まっていった。

ガギン!!

暖斗の繰り出した最後の一撃が、Botの急所であるスリットのをとらえた。

そのまま地面に押し付けて回転を叩きこむ。

裝甲が研削される白煙の後、金屬同士がぶつかる甲高い金斬り音、大量の火花とともに、Botは発四散した。

暖斗は、撃破を喜びつつも、心中複雑だった。

「思ったより手間取ってしまった‥‥。まだ新兵(ベイビイ)なのかな。僕は」

「やったね。暖斗くん。おつかれさま」

麻妃は、そう暖斗に聲をかけると同時に、母艦のIT解析部門に呼びかける。

「どう? 解析できてる?」

「ああ、暫定値だけど出たよ。結論から言うと、咲見くんはやはりギフテッドで、『アレ』が発癥する率は100%。あれだけMDT本に被弾したのに、エネルギー殘量が多すぎる」

麻妃の耳につけたインカムに、すぐさま返答の聲。聲の主はいが、利発そうな口ぶりだった。

それを確認した戦艦の艦長が、號令を発した。

「わかった。ありがとう。それじゃあ出番が確定ね? 醫務室の逢初(あいぞめ)さん、手筈通り準備をお願い。あと、庶務係の人中心にDMTデッキに集まって。暖斗くんを迎えるわ」

「‥‥‥‥はい」

艦長のインカムに、逢初(あいぞめ)依(えい)と呼ばれたの、小さな返事が響いた。

艦長は艦長席から降りながら。

「わたしもデッキで暖斗くんを迎えるよ。心配だし。その間ここを頼むわね」

戦艦の艦橋、そこにいる數人のが、艦長の聲に反応して頷いた。

*****

「あ~~良かった。何とかBotを撃破できたよ~」

戦艦「ウルツサハリ=オッチギン」へ帰艦する、DMTの隔壁縦席(ヒステリコス)の僕は、安堵の気持ちでいっぱいだった。

「途中、グダっったけどな」

「それは麻妃(マッキ)が、茶化すような事言うから」

「でもまあ、良かったよ。Botが排除できるんなら、このエリアの掃空ができる。そうすれば先へ進める。このガンジス島にある、わが軍の戦略資集積基地、ポイント=カタフニアに」

ポイント=カタフニア――僕らが、そこに行くように、と指示された場所だ。基地があって、きっとプロの正規軍人さんがいっぱいいるはずだ。

そこまで行けば、安全だろう。

だけど。

その間の航行は、この戦艦に乗艦する中學2年生16人、本當にこれだけのメンバーで行わなければならない。

そして、男子は僕ひとり。

「この戦艦を、みんなを守らなきゃ。この僕が。‥‥‥‥なんとしても!!」

程なくして、暖斗のDMTは無事著艦した。

暖斗はDMTの隔壁縦室(ヒステリコス)のハッチを開き、エンジンをアイドル狀態にする。

甲高いモーターの駆音と共に、開いていくハッチ。その向こう側に、タラップに並ぶ子たちの制服姿が見えてきた。

7人はいるだろうか? 何のために?、は愚問だ。みんな、初陣を飾った自分を出迎えに來てくれたのだ。

その暖斗の予想は自意識過剰などではない。ハッチが開くその向こうに、暖斗の姿をみとめると、子達は誰ともなくパチパチと拍手をしだした。

自分の初陣にしては大げさだと、素直にじた。暖斗は思考する。

さっき麻妃にからかわれたけれど、この戦艦「ウルツサハリ=オッチギン」は、僕以外は全員子。たった16人の中學2年生で運航されている。そのの7人が、わざわざDMTデッキまで「お迎え」に來てくれている。

正直こそばゆい。

そういえば麻妃が、「みんなで応援してた」とは言っていたっけ。後半の戦いが若干グダグダだったし、ハズいので足早に立ち去ろう。

そう暖斗は考えて、タラップに軽快に駆けあがった――――はずだった。

「待って! 咲見くん!」

ズダン。

艦長の聲が屆く頃には空しく、暖斗はタラップの階段で

思いっきりコケていた。――――のみならずアゴの辺りを痛打する。

「痛‥‥‥‥ぐっ」

痛てて。というセリフを慌てて飲み込んだ。カッコ悪すぎる。うわ‥‥やっちゃった。と頭の中が焦燥と忸怩(じくじ)で、こんがらがっていく。

痛いのもあったが、とにかく恥ずかしかった。

子たちが一斉に駆け寄ってくる。

「いや、大丈夫だから。皆さん、そんな大げさな」

暖斗はそう言った。いや、そうでも言わないとカッコがつかない。あわてて苦笑いを顔に張り付けてから――――立ち上がろうとして。

「‥‥‥‥?」

――――立ち上がろうとして。

「‥‥‥‥?」

――――立ち上がろうと、して?

暖斗は自の異変に気付いた。

首から下が、まったくかない――――。

「咲見くん。落ち著いてね。大丈夫。大丈夫ですからね」

艦長のの聲も、暖斗の耳にはらなかった。そのまま7人の子たちの協力で、擔架に乗せられ、醫務室へと運ばれた。

DMTの整備場所から醫務室へは、同じ1F。暖斗を乗せたキャスター付きのベッドが、戦艦の廊下を進んでいく。天井に向けた視線に、いくつもの廊下の照明が通りすぎて行くのを見上げながら――

――暖斗は呆然としていた。

だがこの先の醫務室で、さらに暖斗を困させる事態が起こる。そこで暖斗は、「たった1つしかない選択肢」を選択することを迫られる事になるからだ。

醫務室は、先述の通り、戦艦「ウルツサハリ=オッチギン」のDMTデッキと同じ、1Fで。

り口は両戸開きの自ドアだ。

「逢初さん、連れてきたよ」

「は~い」

艦長の言葉に明るい返事をした、逢初(あいぞめ)依(えい)、と呼ばれる

紺の襟の白セーラーとその元には赤いラインのった水のリボン。同じ紺のプリーツスカートと、なぜか制服の上から白――丈の短いドクターコートを著ている。艶やかなセミロングの黒髪は軽く白にかかり、白のの中に浮かぶ大きな黒瞳が、暖斗をのぞきこんできた。

顔の距離がすごく近い。

「あ~、アゴも打ってきてますね。ああ、外傷はないけど、してくるかな? これは~」

「ちょっとさわりますね」

は、暖斗のアゴにれた。

特有の、らかくしなやかな指が、頼りなげに暖斗の下顎をすうっとでる。

「痛い? ‥‥った覚はありますか?」

逢初が、その大きな黒瞳で質問してきた。

この時點で、暖斗のは、首から下がまったくかすことができなかった。

軽く息を吸って、口腔や舌がくのを確認しながら、取りあえず質問に答える。

「うん。うっすら、指がれたのがわかったよ」 と答える。

「よかった」

は、15㎝ほどの距離のまま暖斗を見つめながら、笑顔になった。

「下顎の打撲傷は大丈夫。言語の発音も異常は認められない、と」

そして、暖斗を連れてきた子たちに目配せする。

「‥‥‥‥ああ、私たちはじゃあ、これで。咲見くん、あとで岸尾さんも來ると思うから。の異常は、この逢初さんに聞いて下さいね。おだいじに」

そう言って艦長たちは醫務室から出て行った。

そうか、さっきデッキに子が集まったのは、僕を迎えるため――じゃあなく、けなくなった僕を運ぶため、か。

暖斗はそう考えた。

そうか、調子に乗ってイキリムーブをしなくて良かった。

ここ醫務室は、5 m四方くらいの白壁の部屋だ。部屋の隅には柱があって、そこに全方位から見えるモニターがある。暖斗にはよく判らない數字が並んでいるが、たぶん自分の脈とか圧なのだろう。

自分のいるベッドは壁に長辺を付ける形で置かれていて、天井に吊るされたカーテンを引けば一応簡易的に個室みたいになるじだ。

奧の方にも空間があるようだが、ここからではよく見えない。

ただ1つ、病院と似つかわしくないところがある、部屋の照明だ。白い蛍のライトでは無く、オレンジの、まるで夕暮れのような味と明るさだった。

まるで、そう、――――今から誰かを寢かしつけるような。

「さて、咲見くん」

夕日のような照明を背にしたが、キャスター付きの丸椅子、――ドクターズスツールという名前なのは後に聞いたのだが――、その椅子(スツール)を引いて、暖斗の寢るベッド傍らまでやっていた。そしてプリーツスカートがシワにならないよう、両手を後ろ手に回しながらゆっくりと著座する。

ドクターコートの間から見える水のリボンが、かすかに揺れた。

「あのう、僕のは治るの?」

暖斗は、単刀直に聞いた。

この、逢初とは、実は同じ中學でクラスメイトなのである。

學校ではほとんど會話をした記憶がない。

たしかこの春、2年生から同じクラスだったか。ほぼ面識がないが、「初めまして」をするよりは、まずはこの狀況を早く確認したい、そう考えたからだ。

は、笑顔のまま答えた。

「せっかちな質問ですね。でも自分ののことだし、心配ですよね。うん。じゃあ、細かい説明は省きますよ?」

そう言うと、は、左手の人差し指を立てながら続けた。

「まず、あなたのかないのは、DMTに乗って戦った『後癥』と呼べるものです。そしてそれは、適切な栄養補給と休息で完治、癥狀は消え去ります」

「よかっっった~!」

暖斗は大聲を上げた。

「いやあ、早く言ってよ。戦闘の衝撃で頸椎ガー、とかを想像したんだからね。なんだ、治るのか~。よかったあ」

暖斗の張が一気に解けた。それはそうだ。最悪「一生ベッドの上」を想像していたのだから。みんなと、この目の前のクラスメイトの様子から、その最悪はなさそうだとはじていたけれど。

とにかく、Botも撃破できたし、この癥狀も治るし、と、暖斗はやっと気持ちを落ちつかせることができた。

ああ、早く風呂にって自室でゲームでもやりたい。

「‥‥‥‥ん? 何それ」

疑問を投げかける暖斗の視線のその先には、の右手があり、その右手には、白いっているガラス製の小瓶がにぎられていた。

「何それ」

暖斗はもう1度たずねた。

小瓶の上部には、ラテックス製の造作(ぞうさく)がしてあった。暖斗にはそれに見覚えもあるし、自ら使ったこともあったはずだ。はるか昔の話ではあるが。

は、申し訳なさそうに、小聲で話し始めた。

「咲見くん。これがなんだかわかるよね。そのを治すためには、これで栄養を摂ってもらわないといけないんです」

逢初依は真顔だった。

「ええッ!! マジで?」

「うん。申し訳ないのだけれど」

「ウソでしょ!?」

「いいえ。わたしも醫學を修める。噓は言いませんよ」

暖斗は、けないベッドの上で首を振る。必死の形相だ。

「ちょっと待ってよ。いきなりすぎだよ」

「説明は省くと言ったから‥‥‥」

「省きすぎだって!! じ、じゃあ、治らなくっていいよ! それやるくらいなら!!」

逢初依は困り顔を作り、弟に諭すように、さらに顔を近づけた。

「そうもいかないわ。この戦艦で正パイロットは咲見くん1人。早く回復してもらわないと、みんなが困っちゃうし、あなたを治すこと、それがわたしの職責だし。それにまた、Botが出たりするかもよ?」

追い詰められた暖斗が、絶した。

「だってその飲み、ほ瓶とミルクじゃないかあああぁぁぁ!!!」

「‥‥‥‥」

依は困った顔のまま沈黙していた。絶してからしして、まわりが見えてきた暖斗が、頭に浮かんだある疑問をここで口にする。

それは恐ろしい質問だった。

「あれ‥‥、僕は今、その『後癥』ってヤツで首から下がかないんだよね?‥‥‥‥一、‥‥‥‥一、どうやって、そのほ瓶でミルクを‥‥‥‥飲む‥‥と?」

それまでその、からこぼれ落ちそうな黒瞳で暖斗を正視していた依が、はじめて目を逸らした。見れば、彼は不安げに髪をさわり、消えらんばかりに顔を赤らめている。

そして、うつむいて、

消えそうなほどのかすかな聲で、

こう囁いた。

「‥‥‥‥‥それは、‥‥‥‥‥わたしが」

※ 本気か!? ほ瓶はマジ無理! というそこのアナタ!!

ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!

ブックマーク登録、高評価が、この長い話を続けるモチベになります。

ぜひぜひ! お願い致します!!

評価 ☆☆☆☆☆ を ★★★★★ に!!

↓ ↓ このCMの下です ↓↓

Twitter いぬうと ベビアサ作者 https://twitter.com/babyassault/

Twitterでの作品解説、ネタバレ、伏線解説、ご要があれば。

    人が読んでいる<【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、女醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄光のラポルト16」と呼ばれるまで~>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください